カテゴリー「JFL」の記事

2014年4月26日 (土)

アマチュアカテゴリーの再編を考える

昨年までは日本フットボールリーグの一員だったカマタマーレ讃岐がJリーグDivision2に昇格し、さらに優勝を果たした長野パルセイロを始めとした9チームがJ3リーグへ戦いの場所を移して行った。そして今年は新たにファジアーノ岡山ネクスト、鹿児島ユナイテッド、レノファ山口、アスルクラロ沼津、ヴァンラーレ八戸、FCマルヤス岡崎の6チームを加え、14チームで優勝を争っているこのリーグだが、やはり集客面で大きな原動力となっていたJを目指すチームがこのリーグから去ってしまったため、観客動員数という面では前年度よりも現時点で若干ダウンしてしまっている今季のJFL。



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確かに、新しく参戦してきたクラブは4桁台の集客を記録しているところもあり、すべてがダウンという訳ではないが、全体的に見てやはり集客という部分でダウンという結果が出ている現状だ。しかし、Jリーグが始まる前の暗黒期と呼ばれた日本リーグ時代、そして旧編成のJFL時代と集客数を考えれば、ものすごい差がある訳ではない。言うなれば、「昔の姿」に戻っただけという考え方もできるのだ。そこで今回は、日本フットボールリーグ(以下JFL)や地域カテゴリーを含めた「アマチュアカテゴリー」の将来像というか、あくまでも私案だが、こういう形にしてみてはどうだろう? というものを提示したいと思う。



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そして私案ついては、かなり乱暴な言い方をしてしまうが、JFLという全国リーグを、今こそ発展的な意味を含めて解散すべきだと思うのだ。そしてもう一つ、地域カテゴリーの中でクライマックスにもなっている、全国地域リーグ決勝大会も廃止すべきだと思うのだ…



いきなりこんとことを言い出せば、間違いなく「バカか?」と思われるかも知れない。だが、J3というJリーグの新しいカテゴリーが生まれた今、なぜかそのリーグと「並列である」と位置づけられているJFLが中途半端な存在となり、このまま今の形でリーグをやり続けていても、クラブの負担が増すことになるだけであり、あまりメリットもない。それでアマチュアカテゴリーはいいのか? という思いがあり、そう考えるようになった。



これまでに経済的な問題から、JFLからドロップアウトすることを選択したクラブはあったし、今現在JFLにいるクラブだって実際のところ、(運営に)余裕があるクラブはほとんどない。かつて年間運営費4億円以上といわれ、J2クラブよりも充実したクラブ運営を誇っていたHonda FCとて、不況の波を受けて今では最盛期の1/4以下の予算で活動している。そしてソニー仙台も、震災で本社社屋が被災するなどの災難に見舞われたこともあり、こちらも全盛期と比べて運営費用は縮小されている。そして、Honda、ソニーと並んで、リーグ最古参になる横河武蔵野FCも、横河電機社員で構成されていたサッカー部から、年々姿を変え、横河電機がスポンサーの一つとなったクラブチームに生まれ変わり、今は社員ではない選手の方が多くなりつつある。



さすがに年間何千万円という予算がないと、クラブ運営ができないカテゴリーであり、規模の大きい企業が母体となっているチームですら厳しい状況になっている。そしてリーグの中では、母体となる企業や大口スポンサーを持たない栃木ウーヴァやMioびわこ滋賀、ヴェルスパ大分といったクラブチームはさらに厳しい状態の中での運営となっている。だがそれでも、ウーヴァやMioは昨年、J3参戦を表明した。



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なぜJ3なのか? ということに対しては、両者とも「地元が誇りと思えるようなクラブになり、子供たちにスポーツを通じて夢を与えたい」という、もっともらしいスローガンを掲げている。しかしだ。そこでどうしても一つ疑問が生じてしまうのだ。「J3(Jリーグ)じゃなければ夢を与えられないのですか?」ということであり、じゃあJFLカテゴリー以下では夢を与えられないんですか? 地域の誇りにはなれないのです? という疑問をどうしても感じてしまうのだ。そして本音の部分をつつけば、「Jリーグ」という言葉だけが欲しいんですよね? という話になってしまう。



ウーヴァを例に出してしまうが、栃木県には先行してJリーグに上がっている栃木SCの存在があるのだが、この先駆者の存在もあり、人気(集客も含む)、知名度だけではなく、スポンサー集めという部分でも劣勢を強いられている状況にある。毎年のクラブ運営も、本当にギリギリのところであり、選手は当然アマチュア契約であり、練習場の確保ですらスタッフが奔走している状態だ。そして運営力が整っているクラブや強いチームになることを目指しているクラブであれば、「成長するための新陳代謝」として、適正な数で選手の入れ替えを行っているのだが、ウーヴァの場合は毎年何人残るかわからない、開幕直前まで何人入ってくるのかわからない状況が続いている。良くも悪くも、選手が「ここでやり続けられるか?」というのが、大きなポイントになってしまっているのだ。



また試合運営に関しても、良く言えば「手作り感」を感じるのだが、悪く言えばボランティアまかせであり、プロリーグの試合を運営するにはまだまだである、ということを認めざるを得ない現状がそこにある。



厳しいことを書いてしまったが、決してウーヴァというクラブが嫌いなのではない。多田監督も「ないないづくし」の中で、どうすれば粘り強く戦えるか? を考えて試行錯誤を続けている。そしてクラブをなんとか支えようとサポーターもボランティアも必死に頑張っていることを知っている。だがそれでも、今のクラブ運営が無理なくやれているのか? と言われた場合、申し訳ないが「はい、そうです」とは言えない状況がそこにあるからこそ、厳しい言葉になってしまうのだ。



そんな厳しい現実の中にいるクラブが、目標と位置づけた「J3リーグ参入」。それに対して、第三者がケチをつけるのは良くないことだとわかっているのだが、どうしてもその方向性や判断が解せない点もあるのだ。なぜJ3なのか? という部分に対しては、上記にもあるとおり「名前」が欲しいというのが正解である。そしてJリーグの仲間になれば、スポンサーも増え、集客もアップする「はず」という甘い考えがあるのだが、それで本当にクラブが良くなり成長していくのか? ということに対して疑問は大きく残る。



チームを存続させるために、敢えてJ3(Jリーグ)を選ぶ判断が、本当に正しいことなのであろうか? そこで現在Jリーグにいるクラブが、実際にJリーグ昇格を果たした年に、そのクラブがホームタウンの商工会議所向けに講演会を開いた時の話をちょっと付け加えておきたい。



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内容については、おおざっぱに要約してしまうと、「地元にJクラブがあれば、試合のある日などは消費が増加するし、アウェーサポがたくさん来るから宿泊需要も見込めます。さらにグッズ収入もすごいですよ。この街にJクラブがあることは凄いことなんですよ!」ということであり、写真の写りが悪いですがプレゼン資料の中身を見てもらえればなんとなく内容の想像がつくと思いますが、結果的にはこの講演会で熱弁を振るっていた内容は絵に描いた餅にしかなっていません…(笑)



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確かに、甲府や岡山のように、社長から末端の営業スタッフまで、同じ方向性を持って「可能性が1%でもあればチャレンジしよう」と取り組んだことにより、運営がどんどん良くなっているクラブもある。だがそれらのクラブは少数派であり、実際のところはなんとか黒字、もしくはトントン、もしくは赤字のクラブが大半と言ったところであり、どこも苦しい懐事情に変わりはない。さらにはクラブライセンス剥奪の危機に瀕しているところもある。



例に出した講演会は、某クラブの元社長が講演したものだが、見事にその未来像に反する現状を作り出してしまっている。だからこそ、「Jリーグの一員になれば変わる」なんていう、安易な論調になって欲しくはないのである。またウーヴァにしては、置かれている立場やバックボーンは違えど、同じようなクラブ規模と考えられていたY.S.C.C.のJ3リーグ参戦表明が、「自分たちも乗り遅れてはならない」という発想に行き着いた要因の一つになっていた。また、余談になってしまうが、この件について横河武蔵野の運営担当者も、「いろいろな意味を含めてショックでしたね」と語っているぐらいであり、「えっ? YSさん、手を挙げたの?」と思った人、そしてクラブ関係者も多かったことは事実だ。そしてその考え方が昨年6月の準会員申請に繋がって行くのだが、さすがにそのハードルは簡単に超えられるほど甘くはなく、準加盟申請については見送られてしまった。



しかしだ、仮にウーヴァが準加盟クラブとなり、今年度からJ3の一員になれていたら、クラブ運営は好転していたのだろうか? そしてもう一つ、今地域リーグにいるクラブが、身の丈に合わないまま、JFLに行ってそのクラブと選手、そしてサポーターすべてが幸せになれるのだろうか? 上記にも記しているが、Honda FCですら運営が厳しい状態である。また、これまでにアルテ高崎、ジェフリザーブス、プロフェソール宮崎、ジヤトコ、三菱水島が資金難からリーグ撤退を選んでおり(リザーブス、宮崎、水島は成績でも降格でしたが…)、アマチュアの雄としてリーグを牽引したSAGAWA SHIGAとて、社内における事業整理において、事実上に廃部に追い込まれてしまった。



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そんな厳しい現状がある中で、今年4月からは消費税が8%にアップし、ガソリンに関しては増税分だけではなく、環境税まで新たに盛り込まれたことにより、さらにリッターあたりの価格はアップしており、試合遠征費の部分でさらなる負担がクラブに降り掛かって来てしまっている。こんな状況から考えて、これから先、JFLのクラブ数を増やすことが正しい判断なのだろうか? いや、そもそも論でJ3が出来た今、JFLが全国リーグである必要性があるのだろうか? と考えるのだ。また、地域に愛されるクラブ、地域スポーツの中心的存在になるものというのが、Jクラブではないとダメ、全国リーグに所属しているクラブでないとダメである、ということもないと思うのだ。さらにJFLというリーグで、入場料収入がクラブの「主たる収入源」になっていない現状を考えた場合、全国リーグで有料試合を運営するメリットはないと考えるのが妥当だと思うのだ。



しかし、だからと言って、アマチュア選手たちの活躍の場や目標を奪ってもいけない。だからこそ、J3が出来た今こそアマチュアリーグの再編成を急ピッチでやらなければいけないのである。このまま、地域リーグ、地域決勝、そしてJFLというピラミッドを続けて行けば、経済的問題から消滅してしまうクラブも生まれてくるはずだし、JFLとJ3の「順列」もあいまいなまま。だからこそ、アマチュアリーグを身の丈で運営出来るリーグに再整備する必要性があると考え、まずJFLというリーグを解散させ参加チームをホームタウンの地域リーグに戻す。さらに現行の全国地域リーグ決勝大会も廃止として、その上で旧JFLクラブを含めて、地域リーグ決勝大会の進化版(地域リーグ版・チャンピオンズリーグ構想の)大会を新設し、これをJFLの代替案として「全国リーグ」として開催するのはどうだろうか?



今シーズンで考えれば、JFLクラブのアウェーゲームは全部で13試合。そして2チーム増える来年からは15試合となる。だが、このチャンピオンズリーグ制を導入した場合、初年度だけは参加クラブ32チームと設定し、これを4チーム/8グループに分けて、予選リーグを6試合づつを行う。また、各グループ上位2チームが16強に進み、準決勝までをH&Aでの対戦形式とし、決勝のみ中立地(国立や埼スタ、日産スタジアムなど)で一発勝負というレギュレーションを想定する。そしてこの形の場合、予選ラウンドから決勝まで進んだとしてもアウェー(と中立地)でのゲームは7試合で済む。これであれば、間違いなく現状に比べて遠征費の削減になるし、勝ち進めば勝ち進んだだけ、勝利給(現時点でJFLが勝利チームへ支給している強化費の進化版)を出す形にすれば、勝ち進んだチームの負担を軽減することもできる。そしてこれとは別に各地域リーグを戦えば、現状の試合数とほぼ変わらない数字となる。また、大会自体は敗れた時点で敗退になので、それ以上の試合は無くなるので、言い方は悪いがリーグ戦終盤の「消化試合」的な形の試合をやる必要性もなくなるのだ。



そしてもう一つ、サッカーチーム(クラブ)で最も大事なことは、「Jリーグ」のクラブになることではなく、地元に愛される存在になり、いつまでもクラブが続いて行くということではないだろうか? と考えるのだ。2005年にザスパ草津がJ2リーグ参戦を果たした年から、バブル的にJクラブの増加が始まり、ついに3部リーグまで生まれてJクラブの総数は51となった。川淵初代Jリーグチェアマンは「Jクラブが100チームぐらいできれば…」と、発足時に語っていたのだが、本当にそれに近づく勢いになってきたし、まだまだ入会を希望しているクラブは地域リーグやその下のカテゴリーにも存在しているので、拡大傾向はあと数年続いて行くことが予想される。



だが、そのJクラブには簡単になれる訳ではなく、Jリーグ側が規定している項目をクリアし、さらには財務状態も良好にした上で、地元自治体やサッカー協会とも密に連絡を取れる体制(いわば「根回し」ができるような関係)を築けないと、「仲間入り」を果たせないのだが、結局のところ無理をしてJ3に滑り込んだとして、簡単にバラ色の未来像を作りあげることは難しいと考える。



さて、話を地域リーグ版チャンピオンズリーグ構想に戻したいのだが、初年度のみJFL参加クラブを救済?する意味を兼ねて、32チーム参加の大会を想定し、8グループによるリーグ戦を行い、勝ち残った16チームによる決勝トーナメントで優勝を争うという形とする。そしてこの大会をJFLに変わる「アマチュア版全国リーグ」という位置づけにし、アマチュア日本一を競うものとする。そして参加チームの内訳も考えてみたいのだが、まず初年度は前年JFLを戦いっていたクラブは自動的に参加(一応16クラブとする)とし、前年度の各地域リーグ優勝クラブ(9チーム)もこれに続く。また、関東と関西では、リーグ戦とは別にカップ戦も行っているので、こちらの優勝クラブ(2チーム)も加え、これで27チームとなり、残りが枠の「5」に関しては、これを大学生などに解放してみてはどうか考えるのだ。



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昨年JFLが「参加希望」をつのった際に流通経済大学が手を挙げているとおり、なんらかの形で「全国大会」に参戦したい大学は決して少なくはない。そしてかつて、流通経済大学がJFL参戦時に三門(現横浜FM)や宇賀神(現浦和)、武藤(現仙台)などの選手を生み出した実績もある。学生とは違う社会人を相手にする中で成長し、このリーグで経験を積んだことがブレイクに繋がり、プロになるきっかけとなったリーグだからこそ、流経大以外の大学勢にも参加してほしいと思うのだ。そしてもう一つ、大学サッカー界の中でトップチームから漏れてしまった選手に試合をする機会を与えるという名目で、「I(independent)リーグ」という名称のリーグ戦を開催しているが、正直なところこのリーグが本当に選手のモチベーションアップに繋がっているのか? と考えた場合に「yes」と即答出来ない面も存在している。



中には「なんとなく試合をこなしている」という選手もいる。しかしその反面で「俺だってやれる」と思っている選手もいることもまた事実。であるならば、大学の二軍戦という中で、言い方は悪いが「ガス抜き」をし続けるよりも、社会人と真剣勝負をして「アマチュア日本一の座」を争った方が、選手のモチベーションアップに繋がるし、自信もつく。さらには埋もれた逸材の発掘になるのではと考える。また社会人側同様に、大学側にとっても1年間かけて全国リーグを戦うのではなく、この形式であれば、遠征費という面での負担は少なくなるので参加しやすくなる。そう考えた場合、かつてJFLに参加していた流通経済大学、国士舘大学や静岡産業大学、そして地域リーグに参戦している中京大学や新潟経営大学、関西大学など有力大学の参加も望めるかも知れない。



そして2年目以降は、大会を24チームによる形に固定化し、前年度の優勝チーム、各地域リーグ優勝、準優勝チーム(※前年度大会優勝チームと被った場合は、該当リーグの3位チームが出場)の19チームに、残り5枠を大学参加枠とする。また、大会運営に関しても、各地域リーグはこれまでどおり各地域連盟と社会人連盟の主催とし、地域リーグ版CLに関しては現JFL事務局で運営するという形にするのが、一番スムーズに行くのではないだろうか?



さらに悪い意味ではなく、JFLを地域リーグに吸収させることで、無理くりで「並列」と言っているJ3との関係性を明確に分けることが可能になってくる。そもそも論で、Jリーグの仲間であるJ3と、アマチュアリーグであるJFLが「並列である」というのも、おかしな話であると考えるのだ。また、これについて「いや、J3だってプロリーグではないから、ある意味でJFLと同じだ」と考える人もいると思う。そしてその考え方についてだが、ある意味で正解だと思うし、ある部分では違うとも考えている。いや、それよりも「J3」というリーグが、すべての面を含めて「グレー」であることが一番いけないと思うのだ。



確かにJリーグ側は、J3リーグを管轄してはいるものの、このリーグを明確に「プロリーグである」と位置づけてはいない。しかし逆に「アマチュアリーグです」とも言ってはない。また、参加クラブの考え方にも違いがあり、長野の美濃部監督や町田の相馬監督は明確に「Jの名前がつく限り、プロフェッショナルなサッカーをする義務があるし、選手もプロフェッショナルな身の振る舞い方をしなければいけない」と語るなど、限りなく「プロリーグなのだ」という考え方を前面に打ち出しているクラブもあるが、福島ユナイテッドやグルージャ盛岡、Y.S.C.C.のように、身の丈にあった経営をして、まずはしっかりと戦えるクラブの基礎を作り、その中で地元の熱を高めて行きたいという考え方を持つクラブも存在する。



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まあいろいろな意見や考え方はあるものの、それを含めて「プロの一員」と考えて妥当なのがJ3リーグである、そしてこのような形で3部リーグが出来たのであれば、JFL(4部)が無理にでも全国リーグである必要性はもうないと思うのだ。そして何よりも、アルテ高崎やジェフリザーブスのように、チームが消滅してしまうという形だけは避けなければいけないと思うし、そんなクラブが生まれないように防止策を考え、さらには参加しやすい環境(リーグ)を作るのが協会の役目であり、そのためにも一日でも早くアマチュアカテゴリーの再整備を実現してもらいたいし、もっとクラブ運営が楽になるようなリーグ体制を確立していってほしいと願いたいのだ。そして地域版チャンピオンズリーグとは別に、各地域リーグの開催方法にしても、従来のH&Aの形だけではなく、九州(kyu)リーグが採用している「集中開催」を参考にして、より良いやり方を模索して経費削減に繋がる形を一部のゲームで取り入れてもいいと思うのだ。



どちらにせよ、J3が拡大して行けばしていくほど、存在意義が問われてくるJFL。別に今JFLというリーグに、在籍しているクラブを「いらない」と言っている訳ではない。逆に言えば、今JFLにいる、いやJFLに残ろうとするクラブの「この先」を考えている、考えたいからこそ、やはり避けては通れないアマチュアカテゴリーの再編成。これを最後まで読んでもらい、皆さんもどのように再編して行くことが好ましいか考えてもらえれば幸いと考えます。そして今回の内容については、近いうちに予定している、JFL加藤事務局長へのインタビュー時に、ぶつけてみたいとも思っております。

2014年4月 3日 (木)

挑戦し続けるNEXTチームという存在

ファジアーノ岡山NEXT、鹿児島ユナイテッド、レノファ山口、アスルクラロ沼津、マルヤス岡崎、ヴァンラーレ八戸という6つの新顔を加え、全14チームで優勝が争われる第16回日本フットボールリーグ。さらに今季は前半をファーストステージ、後半をセカンドステージとし、それぞれのステージチャンピオンが年間チャンピオンを争うレギュレーションに変更された。さらに優勝争いと同時に毎年注目となる残留争いだが、来期から16チーム制でのリーグ運営となることにより、今季所属しているチームの地域リーグ降格はナシがすでに決定している。

さて、開幕から先日の試合で3節が終了したが、首位に立っているのは現時点でHonda FCであり、そこは別に驚くべきことでもないのだが、2位に鹿児島、そして4位に山口がつけていることは驚きでもある。昨シーズンからの積み重ねのある佐川印刷やソニー仙台といった「企業サッカー部の雄」が、Honda FCとともに上位を独占するかと思われたが、そこに新加入の鹿児島や山口が入って来ているのは大健闘と言ってもいいだろう。

そしてもう一つ、今シーズンの注目になると思われていたのが横河武蔵野だった。昨シーズン、地味に長野パルセイロと並んでリーグ無敗記録を作り続け、吉田監督が植え付けた「堅守速攻」のスタイルが完全にチームのものとなり、2014シーズンはついに優勝を狙えるチームになるのでは? と思われていたが、シーズン終了直後から激震に次ぐ激震がチームを襲うこととなる。

チームの絶対的柱であった瀬田達弘が引退。さらにベテランとしてチームを裏で支え続けた熊谷、常盤も引退。小林陽介も退団(引退→松本山雅スクールスタッフに就任)、そして2014シーズンに急成長した藤吉、上田らはJ3クラブへの移籍を決断し、レギュラークラスとして活躍した矢部、冨岡、関野をも移籍。昨シーズン32人登録されていたメンバーのうち、半分の16人がチームを去るという異例のシーズンオフを迎えた吉田武蔵野。

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さすがに吉田監督も新チームの構成には頭を痛めたのだが、監督はブレることなく昨シーズンのやり方を踏襲しながら、同じように「戦いながら成長していく」という方向性のもとで、2シーズン目をスタートさせていた。

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さて、第3節はホームにファジアーノ岡山NEXT(以下岡山)を迎えてのゲームとなったのだが、試合序盤に観衆の視線を釘付けにしたのは見事なムービングサッカーを披露する岡山の方だった。32人の登録選手抱える武蔵野に対して、岡山は16人しかいない。さらにこれまでの試合を含めて控えは最低限の3人だけで戦っている岡山。だが、立ち上がりから人もボールも良く動く岡山ペースで試合が始まり、4分にこのチームでは「大ベテラン」とも呼べる新中がファーストシュートを放って、勢いを確かなものにして行く。さらにCKと同等の距離と正確性を持つ、新中のロングスローが大きな武器となり、序盤の武蔵野は完全に自陣に釘付けとなってしまう。また、トップ下に入る19歳コンビの幡野、藤岡が実にいい動きを見せ、多彩な攻撃パターンを強敵相手に次々と披露していく。

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さらに19分、新中が中で落とし、入って来た幡野がシュート! ここはDFがなんとか足を伸ばしてカットしたものの、こぼれ球が詰めていた呉の足下に転がり、両チームにとって最初の決定期をここで迎えたのだが、シュートは枠の外に外してしまい、チャンスを惜しくも活かせなかった。

このピンチを相手のシュートミスという形で乗り切った武蔵野は、20分以降から瀬田がいなくても変わらない! ということを印象づける強いフィジカルを活かしたハイプレス、そして後ろからのロングボールを多用し、徐々に岡山の高いラインを押し下げて行く。そして30分を過ぎた頃から武蔵野の速い潰しのペースがさらに加速して行くと、今度は岡山が沈黙の時間を迎えてしまう。これが昨年1シーズン積み重ねて来たチームの強みだった。レギュラークラスの大半が退団という形を選択したものの、吉田武蔵野は揺らぐこと無く、残った選手と新加入の選手たちでこれまでどおりのサッカーを見せつけることに成功する。

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さて岡山だが、どう見ても「若さ」が出てしまった。確かにメンバーには新中と西原という「年長選手」がいるものの、それ以外の選手は17〜20歳と、U22選抜以上の「若手集団」である岡山。いい流れで試合に入れたと思ったら、徐々に相手の力に押し込まれ、前半30分以降は完全に自分たちのサッカーを見失ってしまう。さらに悪い流れの状況が選手の判断すら惑わしてしまう。終了間際の43分、左サイドを守る寄特が簡単にサイドを抜かしてしまい、中でフリーの選手が2人いるという状況を与えてしまい、この時間で痛恨の失点を許してしまう。

しかしハーフタイムを挟んで岡山は「もう一度自分たちのサッカーを思い出そう。そして切り替えの速い攻撃を仕掛けようと」と選手に指示を与えると、そこから岡山も息を吹き返して、五分とまでは行かないものの、粘り強い守備から速攻で活路を見出して行く。さらに80分を過ぎた辺りから、武蔵野の運動量に陰りが見えだすと、左サイドからの展開から最後は前半に決定期を外していた呉が今度こそ蹴り込み、ついに同点。

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その後はさすがに両者とも消耗戦となり、決定打を打ち出せないまま1-1のドローで終わったが、前節4失点と惨敗を喫した武蔵野にとっても、まだ勝利こそ上げてない岡山にとっても、実りのあるドローと言える内容で試合の幕は閉じた。

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武蔵野のゲームプランについては、本当にブレがなく、誰が出ても変わらないんだ! ということを改めて強く印象づける試合であったし、試合を重ねて行けば間違いなく上位争いには絡んでくるだろうと予感させた。そして健闘した岡山だが、何よりも「序盤の輝き」はこの試合で一番の光るものだったと感じさせた。

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最年長の新中剛史は、前線で本当にいい活躍を見せたし、若い選手が多い中でも存在感を大いに発揮させてくれた。また、独特のドリブルリズムと多彩なパスでゲームにアクセントをつけた幡野貴紀、高校を卒業したばかりだが、早くも大人と対等に戦う加藤健人と田中雄輝など、ベテラン2人以外の若い選手は、どれも「ダイヤの原石」と言っても過言ではないだろう。そして加藤と田中は、チームに所属しながら岡山大学の学生としても活動するなど、地元岡山との関わりを持ちながら、選手としてだけではなく、人としても大きく成長しようとしている。

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かつてジェフ千葉、徳島、愛媛などのチームが、セカンドチームを持って活動を続けていたが、これらのチームは資金難という状況なども重なり、セカンドチームを手放す結果となっている。また岐阜や群馬も社会人カテゴリーのセカンドチームを持っているが、さすがに全国リーグへの参入に対しては「考えてはいない」とコメントしている。どのJクラブも、セカンドクラブを持つだけではなく、トップチームの運営ですら厳しい状況のチームが多い中で、東京や横浜、大阪、福岡とは違い、お世辞でも「都会」とは言えない岡山、さらにはトップチームはJ1ではなく、まだJ2のクラブなのだが、なぜJFLという、金のかかるリーグに挑戦していくのか?

今や、どのJクラブもユースカテゴリーチームを持つようになったが、高校を卒業した時点でトップに昇格するか、大学に行くか、それ以外の道でサッカーを続けるか? しか、選択肢は無かった。だが岡山は敢えて不況の世の中でありながらも、地元に根付いたクラブとして挑戦し、さらに地元人材の育成に貢献しようとしているのだ。メンバーの大半は、今年〜2年前にユースから卒業した選手達で構成されているNEXTチーム。そして岡山県出身の選手もそれ中に当然含まれている。彼らを「はいここまでです」と見切ること無くチャンスを与え、その中で自分たちで一つでも高いカテゴリーを勝ち取り、トップで通用する人間になろうと努力を続けている。

岡山よりも歴史も規模も大きい千葉が、最後は「投げる」こととなってしまったセカンドチーム(最後の名称はジェフリザーブス)。関東近県という場所ではなく、広島の隣に位置する岡山と言う場所で、J2の中でも精力的な営業活動を見せ、さらには地域貢献などを行い、急速にクラブ規模を大きくしつつあるファジアーノ岡山。正直、トップチームのサッカーというものは、それほど詳しくはない。だが、この日NEXTチームが見せたサッカーは、光るものがあったし、将来性を感じさせる選手が何人いたこともあり、個人的には一気に今シーズンの注目チームになった感もある。

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そしてもう一つ、JFLと分裂して生まれたJ3リーグでは、U-22選抜というチームが戦っているが、年齢的には彼らとほぼ同世代に当たるNEXTチームが、交わることは無いが彼に対して、厳しいリーグを戦うこと、そして限られた人数の中で連携を高めることで、彼ら以上のパフォーマンスを見せる選手に成長していくかという点でも見比べて行きたいところである。

最後に、若い選手たちをまとめあげる、牧野監督にも話を伺ったので掲載しておきます。

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Q:試合を振り返っての感想をお聞かせください
前半というか、ゲームの入り方自体は決して悪くなかったというか、むしろ良かったと思いますね。ただ、それをいい状態のままで起承転結の結びの部分までしっかり「結ぶ」というところまでできるようにしたいと感じたゲームでした。

それができないままで時間が進んでしまうと、なんらかの自分たちのミスにより流れを相手に奪われてしまうし、そこからリズムを崩してしまう、そして失点しまうというように、さらに悪循環に陥ってしまうことがちょっと続いているので、いい流れの中から起承転結で結びの部分まで行けるようにクオリティをもっと上げて行きたいところですし、そんなようなことをハーフタイム中にも話をしました。

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チームのコンセプトである切り替えを早くしたり、走力で相手を上回ろうとか、そういうところを改善していこうと後半に向けて指示しましたが、合うところ、合わないところがありながらも、最終的にはまあなんとか同点に追いつけたので結果的には悪くはなかったのかな? とも感じますが、本人(選手)たちも結果にしても内容にしても満足はしていませんので、引き続きいいサッカーを目指しながらチームのベースとして考えている、走ること、切り替えを速くすることなど原則的なことをしっかり抑えながら少しづつクオリティを高められればと思っています。

Q:試合の入り方は本当に良かったと思いますが、30分以降相手に押し込まれてしまいましたが、今後どう修正していきたいとお考えですか?

試合の中には『流れ』というものがあるので、そういう時間になったときに押し込まれた状況をどう立て直して行くか? というやり方をもっと身につける必要があると思います。もっと走力を上げることだったりとか、いろいろな判断を自分たちでやれるようにしないといけないし、ゲームの中で流れが変わるということは、どんな試合にだってあるごく自然なことなのだから、もっと自分たちで修正できるようにしないといけません。

そういう状況に陥ったときに、選手たち自身がどういう状況が原因で悪くなっているかを判断できるようになってほしいのです。ラインの押し上げが悪いのか? 起点が前線で出来ていないのか? それともイージーミスからなのか? とか、プレーをしながら客観的に分析して対処して行けるようにすることが大事だと思っていますし、そういったことを含めて技術だけではなく、判断面においてもしっかりとした考え方ができる選手になってほしいところです。

まあ、ベンチからもリクエスト(指示)は出しますが、そういったことがある前に、選手たちがプレーしながら学んで行くことが大事だとも思っています。

Q:JFLの中で「選手育成」が目的となるこのチームですが、カテゴリーが地域リーグから上がった今の率直な感想と、これからのチーム育成についてお聞かせください

地域リーグですと、いい状態(流れ)のままで簡単に点が入りましたが、今(JFL)でしたらディフェンスは固いし、(相手の)連動性もあるので、そう簡単に点は取れません。では、そういう時間が続くのであれば、選手たちとともに「どうすればいい形を作れるか、どうすれば点を奪えるか」を、それぞれが考えてプレーする必要性が出て来ています。以前だったら、練習でやった形で崩せていましたが、カテゴリーが上がった今はそう簡単にはいきません。

だからこそ、選手たちそれぞれが(サッカーを)考えるきっかけになるし、そこで考えて実践(プレー)していくことにより、自分たちの質を上げることにも繋がって行くと考えています。そういうことを続けることにより、いいチームにもなるし、いい選手にもなる。そしてその上で、トップチームでも必要とされる選手になって行くと思いますが、JFLでプレーする機会を得たことは、選手たちの意識を見直すいい機会になったとも思っています。

2013年11月15日 (金)

長野パルセイロ、JFL初制覇

2013年11月10日、ついに長野パルセイロがJFL制覇を果たした…

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2010年の地域決勝を準優勝という結果で乗り切り、2011シーズンから戦いの場を北信越から全国リーグであるJFLに舞台を移した長野。かつて「北信越4強時代」をともに戦った松本山雅、ツエーゲン金沢と比べて1年遅れの「JFL入会」となってしまったが、初年度から立場をいきなり逆転。山雅とのダービーは1分1敗であったものの、年間順位ではその上を行く2位でフィニッシュし、その力はダテではないことをアピール。

2年目となる2012シーズンは、追う立場から「追われる立場」となり、相手からも研究されたこと、そしてアルテ高崎のリーグ退会という事態により、2試合少なかったということも重なり、勝ち点自体は初年度の63と比べて5pt下がった58で終わってしまった。しかし、結果的にはこのシーズンも2位フィニッシュと、マークされている中でもしっかり結果を出せるチームとして、成長した姿を見せることに成功した。

そんな長野だが、なぜいきなり結果が出せたのであろうか? やはりその点を考えて行くと、クラブが安易に「勝つためのサッカー」やるのではなく、「上でも通用するサッカー」の完成を、一貫指導でやって来たことが根底にあることを見逃せない。

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指導者が変われば、ガラリと変わるクラブもあるが、長野の場合は2006年からバドゥ体制をスタートさせ、途中からコーチとして加入した薩川了洋が引き継いで監督となったため、結果的にバドゥ時代の流れをそのまま引き継ぐこととなった。そして、そのサッカーの中身だが、「地域リーグ相当のサッカー」ではなく、バドゥが理想とした誰に見せても恥ずかしくない「魅力的なパスサッカー」が、この時点でスタイルとして身に付いていた。

しかし、2006年から始まった「戦国北信越」で、ライバル2チームに遅れをとってしまい、さらに地域リーグ決勝大会を前にしてやや不安定な戦いを見せていた長野。だがこの時の地域決勝レギュレーションでは、かつての大会のように「この大会だけの助っ人」を呼ぶことは出来ない。では、どうすれば不安を解消できるのか? その答えをクラブは鈴木政一という「頭脳」で補って来た。魅力的なパスサッカーは出来るようになってきた。しかし、この当時はリトリートして堅実路線のサッカーをやってくる相手に対して、打ち勝てるほどチームは熟成はしていなかった。

本番までたった2ヶ月という時間しかなかったが、大橋を見違えるようなボランチに育て上げ、これまでの「イケイケで勝ちきる」術しかなかったチームに「グループワーク、負けない戦術」をチームに植え付け、これが更なる成長へのスパイスとなって行くのであった。

さて話を今年のことに戻そう。

薩川退任からしばらく時間が経ち、後任が元徳島ヴォルティス監督の美濃部直彦氏と決まり、1月16日から新体制が本格スタートしたのだが、クラブが美濃部監督に求めたのは「結果を出しながらも、新しい『ながの』を作り、さらなる成長をさせてほしい」という、やや難しい要求が彼に課せられていた。

指揮官として、結果を出せ!というのは、ある意味難しい話でもない。ただ単に勝つだけであれば、徹底的に相手を研究してリスクを負わないサッカーをやればいいだけのこと。だが、これまで培って来た魅力的なサッカーを、さらに成長させてほしいという注文が付いて来ていたのだ。

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そんな中で美濃部監督は、攻撃的姿勢を強く打ち出した4-3-3という形をベースにチーム作りを進めて行く。また、これまではサイドバックが定位置だった有永のポテンシャルに目を付け、彼を中盤の新しいキーマンに起用するなど、開幕に照準を合わせた改革を進めて行く。

だが、シーズン突入直後の長野に合う言葉は「試行錯誤」であった。4-3-3と言っても、ボランチ2枚型ではなく、大橋をアンカーに置くワンボランチ型の超攻撃的スタイルだったのだが、攻撃的MF2枚とアンカーの距離感が上手く保てず、大橋はまったく攻撃に絡めずやや精彩を欠き、チームも勝ってはいるものの、戦略的に勝ちきったのではなく、結果的に「過去の積み重ね」だけで勝っている状態が続いた。

そして美濃部監督は早い段階でアンカーシステムに見切りをつけ、大橋ー有永のボランチコンビで中盤を固定。さらに慣れ親しんだ4-4-2システムに戻すと、チームは一気に流れを掴んで行く。そして状態が上向きになってきた前半戦の途中から、やっと美濃部カラーというものが色濃く出るようになって行くのであった。

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あくまでも攻撃はエース宇野沢が中心であるのだが、強いチームは「どこからでも点が取れる」ということを信条とする美濃部監督は、ポジションに関わらず「行けるなら行け、そして打て」ということを練習から言い続けて来た。その結果、今シーズン試合出場したフィールドプレーヤーで、得点に絡んでいないのは2人だけという数字が残るなど(※野澤も現時点では無得点だが、アシストは記録している)、美濃部流の成果がこんなところでも顔を出していた。

ここまでを見ると、美濃部流の改革とは攻撃面だけなのか? と思われてしまうが、実は一番の改善点は「守備」であったことは見逃せない。昨シーズンの1試合あたりの平均失点は1.06であったが、今シーズンは第32節時点で0.65と、大きく改善されている。これはディフェンスリーダーとして成長した大島の活躍もあるのだが、それ以上に「前からの守備」、そして「カバーとリスクマネジメント」の徹底があったことを忘れてはならない。

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第29節の町田ゼルビア戦では、おもしろいように相手のサイドプレーヤーを引きずり出して、裏のスペースを作ると、3人目の選手がそのスペースを突いて攻撃していくという形を見せた長野。攻撃という面では思い通りの場面であったのだが、今季の長野「その逆」をほとんどやらせていないところが大きなポイント。そしてその守備をやりきるにあたり、FW陣の献身的な動きを見逃すことは出来ない。前からプレスに行くことにより、相手が一度ボールを下げる。そしてボールを下げている段階で、中盤がラインを押し上げ、さらに最終ラインはパスコースを切る動きを準備(予測)していく。また、サイドなどでの守備においては、どの位置でプレッシャーをかけに行くか? 誰がフォローに入るのか? ということも、しっかり約束事を決めていたことが守備の充実に繋がって行く。

その結果として、美濃部監督はシーズンの失点率を「0.75」で抑えたいと考えていたのだが、それ以上の結果となる「0.65」という驚異的な数字を生み出し、これが1シーズンでの連続無敗記録更新(現時点で24試合)の大きな要因となっていくのであった。これまでの薩川体制時の長野は、正直に言えば勝つときと負けるときの差が大きかった。言い換えれば、いいときと悪いときの差がまだまだ大きかったし、悪い流れをどう乗り切るか? という部分がチームで補えていなかった。しかし、今の美濃部体制においては本当に隙がなく、状態が多少悪くても選手それぞれが「凌ぎ方」をしっかり身につけたと同時に、いい判断が出来るようになってきたのである。

優勝が決まったブラウブリッツ秋田戦などは、内容という観点から見れば、かなりワーストに近い内容であった。だが、試合を見ていて「負ける気がしない」というか、守備が安定しているので、少なくとも失点することはないだろうと思っていた。そしてこの試合の決勝点を挙げたのが、今季初ゴールとなったサイドバックの西口であり、ここでも美濃部監督が理想とする「どこからでも点が取れる」ということを、見事に証明した瞬間でもあった。(ただ、警告2回で退場というおまけもついたが…)

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そしてもう一つ、美濃部流の素晴らしいところとして、選手のモチベーションアップ方法の上手さと、選手起用の「妙」という部分が、シーズンを通して目についた。

どの試合においても、「勝っても負けても反省すべき点はあります。今、ウチは負けてはいませんが、だからといっておごりをもってしまっては絶対にいけません。負けていないから『いいんだ』ではなく、我々は常によりベストな状態を求めていきたい」と語り続けて来た美濃部監督。5月になってから以降、公式戦では天皇杯を含めて1敗もしていないチーム状況にありながらも、選手たちには「さらなる向上」を求め続け、さらに「これぐらいやっていれば大丈夫だろう」と、隙やおごりを見せるような態度を取った選手には厳しく接して来た。

では、なぜそこまでしてベストを求め続けるのか?

美濃部パルセイロにとって、JFLでの優勝、そして数値目標を達成することは、あくまでも通過点でしかなく、監督もクラブも目標地点を「J(J2)に上がった時に堂々と戦えるチームにすること」を目標に置いているからである。

美濃部監督は、JFLで優勝するだけであるなら、今のサッカーをやらなくても、もっと別の方法でもっと簡単に勝てる戦術はあると断言する。しかし、簡単に勝てるサッカーをここで選択したとして、そのやり方のまま上で通用する訳が無いことは徳島で指揮を執った経験上、それも熟知している。また、そんな戦術をやった上で勝利しても、見に来てくれるファンが楽しめない、そして共感を持ってくれないという考え方もあり、JFLというカテゴリーにいながらにして、常にJ2、いやJ1を意識したサッカーを目標に掲げ、選手それぞれに向上心を求めて来た。これこそが、美濃部監督の会見で頻繁に出て来たキーワードである「メンタリティ」の部分であり、こんな教えがあったからこそ、リーグだけではなく天皇杯でも快進撃を続けているのである。

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そして選手起用についてだが、かつて徳島で柿谷曜一郎を開花させたように、このクラブでも畑田と岡田を上手く競わせて、揃って見事な成長を遂げさせている。

シーズン当初、攻撃的MFの一人にとして畑田真輝の存在が大きなものと考えて来た。しかし、攻撃のセンスは高いのだが守備面での献身さがやや足らず、さらには周囲との連携も未成熟であり、一時期はスタメンを外される時期もあった。普通であれば「干された」と感じてもおかしくはなかった。そんな時に、セレッソ大阪から武者修行を兼ねて岡田武瑠がやってくると、あっという間にそのポジションに岡田が腰を据えることとなった。しかしそんな時にこそ、美濃部監督とコーチングスタッフは練習から畑田をしっかり指導し、終盤を迎えた時期から畑田の動きが見違えるようになり、再びレギュラーの座を奪い返した。

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また、カターレ富山から移籍して来た松原優吉だが、大島、川邊、西口らのデキが良く、シーズン当初はかなか出番が無かった。しかし、普段からマジメに練習に取り組む姿を見ていたスタッフは、彼を使うチャンスを探っていた。そんな時、いきなり予想外な形で出場のチャンスを与えられたのだ。

第19節の武蔵野戦、スコアレスで迎えた試合終盤、彼に最前線に立ってパワープレーの起点となれという指示のもと、ピッチに送り出された。ラストの短い時間であったため、結果は出せなかったが慣れないポジションでもしっかりファイトした姿にスタッフが手応えを感じ、そしてその後に導入となった3バックシステムではガッチリポジションを不動のものとして行くのだった。

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このように、選手をうまく競わせたり、うまく成長させる美濃部流育成術。過去にこのチームにスパイスを与えた鈴木氏とはまた違った指導法により、成長のベクトルをさらに伸ばすことになった長野。1シーズンでの総合勝ち点という面では、過去の記録である「83」という数字には到達しないが、JFLの歴史の中で、強く、そして美しいチームとして語り継がれる存在となった長野パルセイロ。

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今シーズン限りでJFLというステージを卒業することになるのだが、最高の形で最終年を迎えることが出来たと同時に、来るべき「Jリーグ」というステージに向けて、確固たる足場を作ることが出来た美濃部体制1年目。しかし、監督もクラブも「来年」のことは正直眼中には無い。あるのは「3年後」にどんなチームが完成するか? というところであるのだが、まずはその前に「J3のオリジナル11」となる長野が「J3初代王者」として、J2というカテゴリーにたどり着けるか気になるところ。

JFL初優勝の余韻は今なお残っているが、監督も選手もそれぞれ「これは通過点」と、いたって冷静であり、視線は早くも「その先」を見据えている。美濃部監督の言葉を借りれば「おごることなく、常に過去を振り返って次をさらに良くして行きたい」ということを、もっと徹底できれば、来シーズンも、おのずと結果が着いてくるはず。

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このチームの戦い、来シーズンも目が離せなくなりそうだ…

2013年11月 1日 (金)

多彩な思いが交錯した野津田劇場

10月20日に行われた長野パルセイロとのアウェーゲームで、完膚なきまでに叩き潰されてしまった町田ゼルビア。結果としてクラブは、もう1敗どころか引き分けで終わることさえも許されない正真正銘の「崖っぷち」に立たされてしまった。そしてもう一つ、あまりにも無残であり、無策ともいえる試合内容で敗れてしまったことが、次節でどう影響してくるかも不安なところであった。

個人的な意見であるが、今季のJFLにおいて、長野よりも町田の方がシーズン当初は戦力的には上であると予想していた。いや、あれだけのメンバーが揃っているのであれば、目標に掲げたはずの「J2復帰」は絶対条件であったはずである。だが、秋田前監督には申し訳ないが、JFLではトップクラスの戦力を持ちながらも、それをうまく活かす「術」が、あまりにもなさすぎたのでであった…

ショック療法ではないが、秋田監督を更迭し、楠瀬直木氏を今年もまた監督代行に据えることとしたが、やはり一度「方向性」を見失ってしまうと、チームはなかなか「本来の姿」を取り戻せないものである。楠瀬監督代行も、なんとかチームを立て直そうと必死の指導を続け、さらには教え子たちを途中から呼び寄せるなど、あの手この手で再建の糸口を探り続けて来た。

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そんな中での、痛すぎる長野戦での惨敗。そしてチームの方は、「それでも自分たちのサッカーをやり続ける!」と頑になるのではなく、謙虚に、そして冷静に前節の「マイナス要因」を分析することとなり、その結果としてカバーしきれなかったサイドの守備、そして相手2トップを警戒するために3バックシステムを導入してきたのであった。

しかし、讃岐戦の前半はお世辞でも「良くなった!」とは思える内容ではなかった。確かに手数は多く出せるようになったし、前節のような「裏をとられまくる」というシーンもほとんどなかった。しかし、町田が繰り出した攻撃に関しては、すべてはスカウティングを徹底的に行ってくる「北野讃岐」の想定内というか、「手のひらの上で踊らされるだけ」という印象を受けてしまった。確かにポゼッションでは上だったかも知れないが、バイタルエリア前のブロックを崩すには至らず、ボールを失ってはカウンターという展開が目につき、これは讃岐のペースだろう… と思ってしまう前半戦となってしまう。

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そして後半戦だが、讃岐がやってきた「アメフト式?」とも言える、かなり斬新なキックオフ戦略にちょっとびっくりだったが、そこで後ろから入って来たロングボールへの対応で太田がファールを取られてしまいFKを讃岐に与えてしまう。そしてキッカーとしてスポットに立ったのが「町田出身」である高橋泰だった。

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そして豪快に右足を振り抜くと、きれいな弾道を描いた無回転弾は町田ゴール右上に突き刺さり、後半開始早々に讃岐が待望の先制点を上げることとなる。そしてその後も高橋、木島良輔の「帝京コンビ2トップ」+アンドレアがいい攻撃を見せ、さらに追加点か? というシーンが続出。試合は完全に讃岐のペースであり、このまま町田は「終戦」を迎えてしまうのか? と思われた。しかし、万全を期したはずの「北野采配」が「まさか」を呼ぶこととなる。

ややアンドレアの運動量が衰え始めたと判断した北野監督は、55分ぐらいの段階から関原を用意し、そして61分に交代で彼を投入。しかし、この采配が結果的に裏目に出てしまうのであった。それまで、町田の右サイドはアンドレア(讃岐の右MF)の攻撃力の前に、なかなか攻めに転じる機会を伺えなかったが、この瞬間から町田にとって「サイドでの脅威」が消えた瞬間となり、その隙をついてボールを回した町田は、後半から入った鈴木が起死回生の同点ゴールを奪う!

こうなると、勢いは町田に移って行くのだが、そんな中で71分に日高が警告を受けた際に、判定に疑問を持った楠瀬監督代行が「カードの安売りをするな!」という発言をしてしまう。そして、元JFL得点王でもある大坪主審は迷うこと無く「退席処分」を命じるのであった…

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この「安売り発言」の伏線として、66分に受けた鈴木の警告処分があったのだが、公式記録上は「反スポーツ行為」となっているこの判定については、「これでとるの?」という少々厳しいジャッジでもあった。そしてこのシーンだが、簡単に言えばプレーが止まっている時に、水を飲むために一度ピッチを出て、戻ってくる際の「入り方」がルール通りではなかったということらしいのだが、言い方は良くないが「運が悪い」というか、あまりにもルールに厳格すぎるものどうかな? という印象もあった。そして町田にとっては、これで鈴木が累積4枚となってしまい、次節の出場停止が決まってしまったのである。

しかし、この退席処分がチームの闘争心をさらに煽ることとなり、そしてもう一度「讃岐の左」が試合を動かすポイントとなっていく。

75分、右サイドでボールを受けた鈴木がそのままサイドを駆け上がり、PA内までドリブルで侵入。そしてこの侵入に対して、波夛野がうまく対処出来ず倒してしまいPKを献上。そしてこれを獲得した鈴木がそのまま決めて、ついに町田が逆転。

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それにしても、普段から対戦相手を研究し、対策を練り、さらにはしっかりとしたゲームプランを見せる讃岐が、予想どおりの交代をしたはずのポジションから綻びをみせることになるなんて…

試合後の北野監督も「途中までは思い描いていたゲームプランどおりでしたが…」と語っているが、まさにその通りでもあった。誰もが、高橋が決めた先制点で勝負ありと思ったことであろう。その後も守りにおいてはしっかりブロックを作り、攻撃に転じた場合は素早く2トップへ供給する展開で、勝利は目前かと思われた讃岐。だが、「運動量が落ちて来たから」と代えたはずのアンドレアのポジションが、皮肉にも失点に繋がってしまうとは…

運動量は下がったとしても、やはりボールを持ったら木島良輔同様、相手から見れば脅威だったアンドレア。彼がいたらかこそ、町田から見た「右サイド」のマッチアップで不利な展開であったのだが、その要因がいなくなれば、攻略するチャンスも生まれてくるし、代わりにはいった選手のマークがズレたことも失点の遠因となったことは否めない。

試合の展開を読む、交代の流れを読む、そして「勢い」がどう転んで行くのか? ということを予測することは、決して簡単なことではない。例えば、アンドレアの交代をもう少し伸ばしていれば、どうなったかもわからないし、楠瀬監督代行の退席処分がなければ、選手の戦い方というか、メンタルの部分で火がついたかどうかはわからないところでもある。

さて試合の方だが、2-1となってからは無理をすることもなく「このまま終わらせよう」という意識が強かったこともあり、やや守りに重点を置いた町田が、ラストの讃岐の猛攻を凌ぎきり、1点リードを守り切り、J2復帰への「道」を次節につなげて行くことに成功した。

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そして試合後、退席処分となってしまった楠瀬監督代行が、試合について語ってくれたが、その中でも印象強かったものは、やはり「外的要素」についてだった。

「点を取られてから(闘志に)火がつくとか、こういう非常事態になってから本気になるっていうのは外的要素だと思っています」と、辛口なコメントも残してくれたが、それはそれで正論だとも感じるのだ。

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本来なら、「自分たちが主導権を握り、しっかり繋いで相手の動きを封じ込め、プロクラブらしい堂々としたサッカーをやりきって勝つ」というサッカーを目指す楠瀬ゼルビア。そして目標のサッカーに近づきながら、その中でJ2復帰を目指すスタンスだが、やはりこの日のような内容では、まだ目標に近づいているとは言いがたいところでもある。

やはり、このようなコメントを聞く限り、やはり楠瀬監督代行は「いい指導者だよなあ…」と思う反面で、決して「生粋の勝負師」ではないんだよなぁ…とも感じてしまうところ。本来なら、理想などはかなぐり捨てて、「現実路線」を突き進まなければいけない状態でありながらも、やはり魅力的なサッカーをやって、ファンに喜ばれるクラブにしたいという思いを持ち続ける監督代行。

それも決して悪いことではない。だがしかし、今の町田に「理想論」はいらないのである。カッコ悪くてもいい、監督が目指すサッカーじゃなくてもいい、とにかく目の前の試合に対して、何が何でも勝つということが重要なのである。確かに楠瀬代行は「外的要素はよくない」という持論を展開したが、今は「なりふり構わず」という言葉こそが、町田に合う言葉なのだと思うのだ。

やはり「J2復帰」を目標に掲げている以上、どんな困難な状況でもチャレンジする必要はあるし、応援を続けてくれるサポーターに応えるのも、プロクラブとして重要なこと。残された今季の試合はあと4試合。どれも簡単な試合はないし、讃岐があと勝ち点4を上乗せした時点で、得失点差から考えて2位以内フィニッシュが難しくなる状況は変わりはない。

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しかし最後まで諦めない姿勢を見せて戦うことこそ、応援してくれる人すべてに対してに出来る唯一の「恩返し」である。そして「指導者・楠瀬直木」としても、残り4試合を全勝で乗り切れれば、育成の楠瀬から「勝負師・楠瀬」としての評価も上がって行くはずだ。

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最後に、この試合後に見せたある選手の「思い」をここで伝えておきたい。

その選手とは、かつて町田ゼルビアでプレーし、そして今は讃岐のエースとしてチームを牽引する木島良輔だ。

試合後、一人だけチームの輪の中に合流せず、スタンド下で悔しい思いを噛み締めていた木島。試合後にそのときの感情を聞いてみると、このような返事が返って来た。

「個人的に感情がこみ上げて来そうだったから、ちょっと恥ずかしくなったので一人になりたかっただけです(笑) まあ、自動昇格(JFL優勝)を個人的には目指してやってきたつもりだったし、当然、チームも諦めるわけじゃないです。

だからこそ、残り全部勝たなければいけなかったのに、勝てなかったということ、そして町田というクラブが前にいたクラブだったので、ここで結果出して恩返しがしたかったという思いがあり、なんかいろいろ思うことがあってあんな感じになりました。まあ、(町田に関しては)特別な思いは当然ありましたが、北野監督からも「平常心で行け」と言われて来たので、普通に入ったつもりでしたけど、どこかで力が入っていたのかな? とも感じています」

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そして、そんな感情的になっていた試合後の木島を励ました人物こそ、帝京高校の先輩でもあり、現在は監督として彼の面倒を見る北野監督、そして木島にとっていつになっても「頭が上がらない存在」でもある、かつて帝京高校を率いた名将・古沼貞雄さんであった。

そして先輩と「先生」に声をかけられ、気を取り直した木島が向かった先は、讃岐のロッカールームではなく、なんと町田サポーターのもとだった…

コメントにもあるとおり、「特別な思いがある」と言っただけあり、サポーターに挨拶がしたかった木島は、ロッカーにも戻らず、そのままの姿でゴール裏に向かい、サポーターから受け取ったトラメガを手にしてこんな言葉をかけたのである。

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「今日は本当にありがとうございました! 自分は(町田を)裏切って松本に行きましたが、また町田でプレーするようなことがあったら応援してください!」

少ない言葉であったが、木島良輔らしい「小憎らしい」言葉が、なんとも印象的であり、町田サポーターの心にも大きく響いたはずである。

楠瀬監督代行のコメントの中にも「木島は充実していると思う」というがあったが、かつての自分勝手な彼であれば、こんな「粋」なことはしなかったであろうが、選手として、そして人として充実した「今」があるからこそ、こみ上げてくる感情が出て来たのであろう…

波瀾万丈のサッカー人生を歩んで来た木島良輔にとって、このクラブに行ったこと(実際はかなり「おしかけ」でもあったが…)は本当に正解だったと思うし、このクラブがなければ、人間的な「さらなる成長」がどこまで伸びていたかは微妙でもある。何はともあれ、彼の選択が間違いではなかったし、これから先に続くサッカー人生でも幸多きことを望みたいところでもある。

2013年10月28日 (月)

楠瀬監督代行「ウラ」会見(全文)

町田ゼルビア vs カマタマーレ讃岐戦後、退席処分になってしまっていた楠瀬直木監督代行のコメント全文です。

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試合についてはまた後ほど。

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ーシステムを4バックから3バックに変えてきましたが?

「システムありきの話はあんまり好きじゃないんですけどね。まあ先週、長野さんにサイドのウラを再三突かれてたこともあり、しっかり裏のカバーをやろうということと、相手の2トップ(木島、高橋)はゴール前での嗅覚もある2人なので、(センター)2枚じゃきついかな? 『もしかしたら1点くらいはやられてしまうんじゃないか?』と思っていたので3バック導入を考えていました。そして今週、湘南とやったトレーニングマッチで手応えを感じていたので、そのまま行きました。

また、コースケ(太田)の状態がここ最近よかったので、どこかで使いたいとい思っていました。それにね、チーム全体に「コースケさんが出ると安心する」というのもありましたから。久しぶりの試合でしたが、本当に良くやってくれたと思いますね。

ただ、もうちょっと前(前線)の2トップと、アンデルソンともう一人ボランチプラスかなんかの4人でシュートに持って行けるようになって欲しいなあと思っていたんですね。(ウチのスタイルとして)サイドバックはどんどん上げていくんだけど、逆に(攻撃陣が)それに頼っちゃっているんだけど、そうじゃないんだよね。カマタマーレなんかさ、木島(良輔)と高橋だけでなんとかしちゃうし、あともう一人ぐらい入って来てシュートまで持って行ってしまう。

そのぐらいの、なんとかいうかな? 決定力というか「決める!」という気持ちを持って行かないとダメなんだけど、ウチで言えば木島(徹也)も突破していったけど、最後の部分でグズグズッとして終わっちゃったじゃないですか?

ああいうところをね、ちゃんとシュートで終われるところなんかが、木島や高橋の方が一枚上手だし、いいプレーをしていたと思うんだけど、だからこそ(ディフェンスラインを)3枚にしたのはいいんだけど、前の方は4人ぐらいでしっかり崩してもらわないとしんどいかなあ…と思うんですよね」


ー後半から投入した鈴木孝司のゴールについては?

「鈴木は僕はいい選手だと思いますよ。ただやっぱり、今は(チーム内で)競争が行われている中で(スタメンで出られなかった)悔しさもあっただろうし、(途中から出た場合)振り抜くとやっぱりアイツも結果を出してくれるけど、なかなかスタートから出して行くとね、落としちゃったり、人を活かそうとする動きを考え過ぎちゃったりで、自分が活きるプレーに関してはちょっと省略というか、そういうことから入って行ってしまうんですよ。でも、(途中出場で)時間が少ない中で結果を出さなきゃいけないという、追い込まれた状況の中で使った方が、結果が出るのかな? とも思っています。

だからね、力はあるのはよくわかっているのですが、そういう状況に追い込まれなくとも、力を引き出せるようになるには、もう少し時間がかかるのかなあとも思っています」

ー前の試合に比べると、前線でよくボールが動いていましたが?

「前線でフリックとかして繋いで行こうとしていましたが、ああいうところが安易なんですよね。もう少しちゃんと繋いでいけばいいのに、あんなフリックなんかしなくと、ちゃんとやっていればもっと繋がって行くのにね。そこが(過剰な)自信のところなのかわかりませんが、軽くなってしまうんですよね。

最初ちょっと怖いのか、縦に急いだ部分もありましたが、それも大事なのはわかりますが、根性据えてちゃんと周りを見て受けて行けば、(自分たちの)サッカーで崩せていけるはずなんですけどね。ちょっとそこはね、行ったり来たりやっぱりね、その間に勝ち星落としたり、この前のように大敗してしまうと疑心暗鬼になって怖くなってきたりするのでね、そこはもうちょっとしなければいけないし、まあ、今日はホント勝てたのは大きいし、1点目の取り方にしても良かったので、これを自信に変えて頑張って行ってくれればいいと思います」

ー試合前の「メンタリティの部分」がポイントとなると話されていましたが、先に点を取られ、監督(代行)ご自身も退席処分となってしまいましたが、逆に厳しくなった中で(逆境を)跳ね返せましたが、今日の選手のメンタリティについてどう思われますか?

「僕が考えるメンタリティとは0-0の中で、どんだけいいサッカーが出来るか? なんですよね。追い込まれた中での火事場のクソ力じゃないですけど、点を取られてから(闘志に)火がつくとか、こういう非常事態になってから本気になるっていうのは外的要素だと思っていますので、やっぱり0-0の時にしっかり仕掛けて行く、リスクを持って上がった以上はシュートを打って終わるとか、そういうふうにしていかないとね。やもすると、最初に1点入ったりすると、安心してしまって後からバタバタしてしまったりすることもあるので、裏付けの部分がもう少し出来ていればいいかなあと思うんですよね。

でもね、僕が退席になってしまってからは、まあ、選手がどんだけ外の声(スタッフ)の声を聞いているかわかりませんが、「やるっきゃない」と思ってくれて、押し込んで行って点が取れて、最後のFKの場面も含めて、押し込まれていてもそれをはじき出せたことにつていは、(チームが)伸びて活きているなあと感じますよ。まあ、メンタル的には弱い訳ではないので、(チームの歯車が)噛み合っているかどうかというところだし、自信を持って行ければ、ちょっと目標(2位以内)からは離れていますが、次の試合、次の試合と積み重ねをしていければと思います」

ー残り4試合も、自信を持って平常心で行くということですか? それとも何かメンタル的に火をつけるとかありますか?

「いあやもう、勝たなければいけないので、火がついたヤツを使っているというか、火をもっと起こせるように競争させている訳でして、だからって、サブの選手の火がついてない訳ではないので、そこはもう競争の中でやってます。誰もね、諦めているヤツやそっぽを向いているヤツはいないけど、それでもね。連敗になっちゃうと、そっぽを向きだしてしまうのも出てくるので、今日は(鈴木が)2点取ってくれて(チームが)助かったし、本当に良かったと思います」

ー監督さんはなぜ退席になってしまったのですか?

「いや、暴言をはいてしまったからです(笑) 『カードの安売りをするな!』と言ったんですが、その一言だけですよ。ただね、(相手を含めて)選手同士もよく(累積警告数が)わかっているし、今日の試合も当然大事だけど、その次もそうなんだから、向こうの木島なんかもファールされたにも関わらず『出さなくていいよ! OKOK!』と言うぐらいでしたからね。お互いに大事さがわかっていたのに、でもねえ審判がねえ…(笑) 僕もね、その一言だけだったので、注意かなぁ?と思ったんですが。でもね、『カード安いなあ』と侮辱しちゃいけないんですよ! と他の監督さん… となればいいのかな?

まあ、(審判を)リスペクトしているつもりなんですけどね、ただやっぱりウチも孝司が次、出られないということもあったので。それにしても孝司のカード、プレーが止まったときに水を飲みに外に出たんだけど、その後でそっとタッチラインのところから戻って入って来たことたまたま主審に見られてカードですよ。僕も「それぐらい」とは思いますけど。それに、プレーが始まる前だからねえ…

でもね、そんなの木島なんかいろいろうまいことやってますよ(笑)もう、駆け引き本当にうまいから(笑) まあ次は(孝司が)ベンチにはいられないけど、やっぱり1週間の積み重ねが大事なんで、すぐに切り替え、秋田は本当にいいチームなので一生懸命やっていきたいです」

ー事前に警戒していた木島と高橋ですが、やってみての印象はどうでしたか?

「やっぱりいい選手ですよね。高橋なんかパンチ力はあるし、どっからでも打ってくるし、木島良輔なんかはJFLでやっているのはもったいないし、J2、J1でやっていてもおかしくない選手。それにね、ますます選手としても良くなっているから、十分上でも通用すると思うね。

ただ、本当に今は身も心も讃岐でクラブのことを考えてサッカーが出来るようになっているから。今までは「使われたらやるぜ」だったけど、ほんと、このクラブをどうにかしたいとサッカーをやっているからこそ、充実していると思うし、いい選手になったと思いますね」

2013年10月25日 (金)

誇るべきサッカーで長野を変えろ

先週末の日曜日、町田ゼルビアをホーム・佐久に迎えた試合において、優勝を争うライバルに対して力の違い見せつけて勝利し、5月1日の第9節・武蔵野戦から始まったJFL公式戦無敗記録を「21」にのばし、ついに1シーズンでの最多無敗記録()タイに到達。さらに天皇杯の予選、本戦を含めた公式戦も加えれば、実に25戦無敗が続く長野パルセイロ。

JFLでの無敗記録自体は2001-2003年、2003-2004シーズンにおいて、それぞれ33試合という数字を残した大塚製薬(現徳島ヴォルティス)。しかし、1シーズンだけでの無敗記録だけに絞った場合は、2004シーズン前期第1節~後期第6節までの21試合ということになっている。

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このように、盤石の強さを見せるようになったこのクラブ。さらに今年の天皇杯においては、J1名古屋グランパス、J2ギラヴァンツ北九州とJクラブを連続撃破し、11月20日に行われる4回戦では、唯一ここまで勝ち残った「都道府県代表」として、現在J1首位の横浜Fマリノスに挑むことが決まっている。

これまでは、JFLカテゴリーという「小さな枠の中」では注目されていたクラブだったが、普段Jクラブの試合しか見ていない層からすれば、まだまだ未知のクラブであったかも知れない。しかし、名古屋戦の勝利が決して「フロック」ではないことをアピール出来たことにより、間違いなく知名度はアップしたはず。そして来年から始まる「J3」というリーグでイニシアチブを握るクラブの一つとして、一般世間にもアピールできたことであろう。

これだけ見れば、クラブは順風満帆と思えるかも知れない。

バルディエール・バドゥ・ヴィエイラ、薩川了洋という名のある指導者が監督して采配を振るい、若い選手たちを育成してきた。さらに鈴木政一や安達勇輔といった「勝ち方を知る人」「育成に長けた人物」をスタッフとして招聘し、チームやクラブの弱点をしっかり補ってきた。確かに北信越のライバルたちに比べると、JFL昇格、そしてJ2参入は先を越されて来た。だがこのクラブには、「J規格に見合うスタジアム」がないため、どんなに急いでもJ参入が出来ないという高い「壁」があった。だが、それを逆手にとったという訳ではないが、クラブはじっくり時間をかけ、来るべき「J元年」に向けて、誰に見せても恥ずかしくない堂々としたサッカーを披露出来るクラブを作り上げようと力を注いで来た。

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誰もが「薩川続投でいいじゃないか?」と思ったのは昨年の11月のこと。しかし、彼は惜しまれつつ長野を去ることとなり、美濃部直彦氏が新監督になることが発表された。そんな状況であったため、新しいチームはどうなっていくのか、不安と期待が入り交じっていた。そして迎えた新シーズン初戦は、まだまだ新監督が目指す「緻密なサッカー」が選手に浸透してはおらず、試行錯誤中であることを色濃く見せていた。

だが、これまでの「豪快なアニキ」の薩川から、おちゃめではあるが、サッカーにおいて時には「マニアック」ではないか? と思うほどほど細かい点にこだわり、さらには選手たちに「プロ選手はどうあるべきなのか?」を厳しく問う美濃部流がチームに浸透しだすと、恐ろしいほどにチームはいい方向に向かいだした。

現在、JFLに所属する長野だが、やっているサッカーの質は、限りなくJ2でも通用するレベルに達しているし、天皇杯という一発勝負だけではなく、今のままJ2のシーズンを戦っても残留できる力を十分備えている。そしてこのクラブにはチャレンジリーグ所属の女子チームもある。さらにU-15だけではなくU-18チームの整備も進みだし、地域に根ざしたスポーツクラブとして活躍の輪を広げようとしている。

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やっぱり順風満帆じゃないか? と思われるかも知れないが、一つだけそうではないこともあるのだが、それは今季における観客動員数についてだ。

以前も取り上げたが、今年の観客動員は昨年度の1試合平均2810人よりも500人近くも少ない2341人(※第29節時点での数字、ホームゲーム14試合が対象)となっており、チームが最高の結果を出している反面で、集客という面では苦戦が続いている。

確かに、ホームゲーム14試合のうち、6試合で雨天(※開幕戦はゲーム中は曇であったが、キックオフ直前まで雹が降るなど大荒れの天候だった)に見舞われるなど、天候面で運に見放されてしまった部分もあった。しかし、雨が降っているから集客が悪かったということは、言い換えれば「パルセイロというクラブが『ながの』という街に根付いていない」ということの裏返しなのではないだろうか?

「今日はサッカーがある日だね。でも雨だから止めようか…」

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これでは、まだまだサッカーがこの地に根付いていないと言われてしまっても仕方が無い。そして今回、町田戦の前日に開催されたイベントでも話をさせてもらったが、長野というクラブが最大のライバルと見なすクラブと「集客」を比べた場合、どうしても「劣っている」ということを認めざるを得ない状況なのである。

最大のライバルというのは、当然ながら松本山雅FCを指している。

やっているサッカーは素晴らしい。そしてクラブは迫り来るJ元年に向け、逆算しながら順調な成長を続けてい。また、サッカーを柱に、地域に根ざしたスポーツクラブとしての活動するなど、言葉のとおり「Athletic Club」として広がりを見せている長野パルセイロ。だが、集客だけはどうしてもまだまだ「J基準」を満たすには至らない。そしてそのライバルとは、カテゴリー差以上に観客動員数では大きく離されそうになっている。

では、最大のライバルである松本との違いはなんなのか? 「松本の応援はいろいろなバリエーションがあって楽しいからでは?」という意見がイベントで出ていたが、私個人としてはそれは大きな理由ではないと考える。

やはり大きな要因としては、「官(クラブ)」ではなく、「民(サポーター)」が主導となって、草の根運動的に広がりを見せたからということと、スタジムアムにおける雰囲気の「重さ」の違いであったように感じるのだ。

いくつかのJクラブでは、招待券を配ったことでリピーターが増加し、集客に結びついた例はあるものの、近年J2に上がって来た新興クラブでは、その策が上手く行っていない例の方が多くなりつつある。しかし、松本の場合は同じ招待券を配るにしても、会場を盛り上げよう、クラブをサポートしようという有志の人たちが力を出し合い工夫を重ねて来た。サッカーを見る、クラブを応援するということ以上に、「アルウィン」というスタジアムを「人と繋がり合う場所」として捉え、年齢・性別・職業を問わず、誰でも気軽に仲間になれる「地域コミュニティ」であることをアピールし、これが見事に集客に繋がったと考えるのだ。

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今のアルウィンには、当然ながらリピーター層は多いのだが、これがゴール裏だけに限らず、メイン、バックそれぞれにまんべんなく広がりを見せている。また、ファン、リピーター層の年齢バリエーションも豊かである。ゴール裏はやはり若い人が多く、女性層も決して少なくはない。また、バックスタンドの方では、言い方は悪いが「おばさん層」が、グループ単位で応援に駆けつける姿も見受けられる。

やはりこれらに共通して言えることとして、サッカー、そして松本山雅というクラブを応援するということも重要なポイントなのだが、それ以上にスタジアムで「仲間とのひとときを楽しむ」ということが、会場に足を運ぶ理由の一つになっていることだ。

人と人が繋がり合う場所だからこそ、初めての人に「入りやすく」してあげる空気がなければ上手くは行かない。そういった点では、松本山雅は「官」主導ではなく「民」が自主的に動いた結果が、とてもいい状況を生み出している。

それに対して長野はどうだろうか? 確かにサポーター有志はここ数年、松本サポーターに負けないぐらい、地域慈善活動、草の根運動を広げているし、暫定ホームとしてしばらくお世話になる佐久にも出向いて、いろいろな活動をしている。だが、これらの活動が目に見えるほどの集客には結びついていない現状がそこにはあるのだ。では、それはなぜなのか? あくまでも個人的主観となってしまうが、マジメさ故の『入りにくさ』があるのではないか? と考えている。

長野サポーターは本当に一生懸命やっているし、彼の気持ちも知っている。だがいかんせん、いい意味でも悪い意味でも「マジメ」な部分があり、ちょっとそれが「取っ付きにくい」に繋がっているのかな? とも感じてしまうのだ。全てを「松本に見習え」という訳ではないのだが、もっと軽くというか、いい意味で「バカになれ!」があったら、もう少し変わって行くのかな? という気もする。

そしてもう一つ、サッカーの魅力が上昇している今だからこそ、長野の人たちに「Jにも負けない素晴らしいサッカーが地元にある」ということを、もっともっと広めて、メインやバックの客層を広げて行くのも一つの手段ではないだろうか?

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今、長野がやろうとしているサッカー、そして目指す到達点は、本当に誇りとしていいものである。だからこそ、それをもっと自慢に思ってもらいたいし、誇りとして認識して欲しいのだ。そしてそれを「キラーコンテンツ」としないでどうする? という感じでもある。まだまだ長野の人に「パルセイロ」という存在がメジャーなものではない現状があるのだが、新しく生まれ変わる南長野の球技場(そして佐久の競技場)が、素晴らしいサッカーを「肴」に、老若男女問わず、サッカー談義、スポーツ談義に花を咲かせる「場」として成長して行って欲しいと願いたいところでもある。

2013年7月17日 (水)

薩川了洋が信頼する副官の存在

7月13日に南長野で行われた長野パルセイロ vs FC琉球の一戦は、長野の「新旧指導者対決」や薩川了洋が昨年の11月18日以来、257日ぶりにこの場所に戻ってくるということが多くの人の注目であった。しかし、個人的には薩川了洋より「この人」の地元凱旋の方が感慨深いものがあった。

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その人の名は小湊隆延。

長野パルセイロ、そしてFC琉球を応援する人以外、ほとんどその名を知らないと思われるが、今季から薩川氏とともに、FC琉球のヘッドコーチとして故郷、長野を離れて遠く沖縄の地でコーチとして選手を指導し、そして自らも「プロ」の指導者としてのチャレンジを続けている人物だ。

そしてこの人だが、長野パルセイロの前進である、長野エルザの元選手であり2000年からは監督とし指揮を執った人物でもある。さらに2002、2005年は北信越リーグで優勝を飾り、地域リーグ決勝大会進出を果たし、パルセイロの「礎」を築いた指導者の一人といっても過言ではなく、選手として監督として長野県国体選抜チームやフットサルチームに関わるなど、地方サッカーの発展に尽力を尽くしてきた人物でもあった。

しかし、長野エルザがプロへの道を進みだした2006年に、個人的な事情もあり一度はクラブを去った。だが忘れられないサッカーへの情熱、そしてクラブから要請もあり、2008年から再び指導者として帰ってきた。

これまでは、地方公務員として働きながらサッカーに携わってきた彼だが、この年からは退路を断ってクラブの職員として育成部の指導者としての道を歩みだした小湊氏。子供の頃から長野でサッカーを続け、本格的な指導者として帰ってきた今こそ、地域のサッカー少年に夢を与えたい、そしてみんなが愛してくれるクラブを作りたい… そんな思いが彼を後押ししてコーチングスタッフとして道をさらに突き進む事に。

そして2010年からはトップチームのコーチとして、薩川了洋を補佐する立場になった。

2歳年下の薩川氏を補佐することとなった小湊氏だが、現役生活のキャリア、そして指導者としてのステータスは、正直なところ大きな差があった。日本代表への選出こそなかったものの、J1リーグ311試合出場に天皇杯優勝(第78回大会)など、輝かしすぎる経歴を持ち、柏レイソルの下部組織で指導者としての道を歩み始めた薩川氏。それに対して、小湊氏の現役生活は北信越リーグどまり。

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経歴という面ではあまりにも差のある二人だったが、時には熱く、時には冷静にサツを支える「お兄さん」として、薩川氏から絶大なる信頼を得るには時間は掛からなかった。そして、熱心にいろいろなサッカーを研究し、そして対戦相手を的確に分析する小湊氏は、薩川体制に無くてはならないものとなっていた。

また薩川氏だけではなく、現U18日本代表監督の鈴木政一氏や、現在クラブのスポーツディレクターとして活躍する足達勇輔氏などの存在も大きかった。大物といえる指導者たちからも薫陶を得て、コーチング術の幅も広がっていった。そんな小湊氏だからこそ、薩川現琉球監督は新天地でも「副官」として彼の存在を求めたのである。

そして彼とサツの関係として、どうしても忘れられないのが、2012年シーズンの最終戦、南長野でのY.S.C.C.戦での出来事である。

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主審の判定に対して異議を唱え、退席処分になってしまった。当然ながら、この試合は薩川了洋の南長野ラストゲームだった。そんな大事な試合で、自分が退席処分になってしまったことを、非常に悔やんでいた。だが、それとて「サツを退席にはできない」とばかりに、小湊氏が先に行ったような感もあったのだ。

選手としては天と地ほどの差があった二人。そして本来ならば知り合う機会すらなかったかも知れない二人。しかし、パルセイロというクラブが二人を引き合わせ、そして今では薩川了洋がもっとも信頼する副官にまでに成長した小湊隆延。

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選手としてではないが、指導者として一歩一歩高いステージに上り詰めようとしている小湊氏だが、今は「沖縄のため」に頑張っている。それはそれで応援したところだが、ぜひとも近い将来、必ず「地元長野のため」に、いい指導者になって帰ってきてもらいたいものである。

2013年7月15日 (月)

緻密な美濃部流が長野を変える

改めて思う事だが、長野パルセイロというクラブは毎回素晴らしい指導者をよく見つけてくるものだ…と、本当に感心してしまう。

プロへの道を歩みだした地域リーグ時代、選手補強以上に驚きだった元イラン代表監督・バルディエール・バドゥ・ヴィエイラ氏の監督就任。さらにその後は、後に監督となる薩川了洋(現FC琉球監督)氏をコーチとして招き、JFL昇格に向けてのここ一番で現在はU18日本代表監督として指揮を執っている鈴木政一氏を強化部長に抜擢。そして今年からは、Jリーグでの指導経験が豊富な美濃部直彦氏を新監督に迎えた。

さて、通常のクラブであれば「監督交代」ということは、少なからずリスクがついてくるものでもある。積み重ねてきたものが、監督によって変わってしまう、または崩れてしまうおそれもあるからだ。しかし、この長野では交代があっても実にスムーズな流れを維持していることは、本当に驚きでもある。

パルセイロとして3人の監督を迎えた訳だが、指揮官の知名度もさることながら、その時代にあった的確な人選をしていることも見逃せない。

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地域リーグからJを目指そうとしたクラブ創成期(あえてそう表現します)は、クラブも選手もまだ若かった。だからこそ、みんなの「お父さん(おじいちゃん?)」として広い心で育て上げてくれるバドゥは適任だった。

そのバドゥの指導により、子供からユース年代(※比喩表現です)に成長したチームに、クラブは「お父さん」だけではなく「アニキ」の必要性を感じ、熱い男、サツカワを招聘。

そしてチームは熟成を続ける中で、絶対に負けられない時期を迎えると、「アニキ」よりも冷静に現状を分析できる「戦略家」が必要と判断し、鈴木さんを強化部長として招いた。すると、短期間のうちに「負けない試合運び」ができるチームとなり、見事JFL昇格を果たした。

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JFLにカテゴリーを上げると、長野のサッカーは見事に花開いた。バドゥが理想としていた、見ているひとがワクワクするようなサッカーを「サツカワ体制」の中で表現し、2年連続準優勝という好成績を残した。しかしクラブは、J2昇格イヤーと位置づけた「2016年」を見据えて、続投でもおかしくなかった薩川氏との契約を終了させ、さらにいいチームにするために美濃部氏を招聘。

2年連続JFLで準優勝し、JFLで1、2を争うほど充実した試合をするチームの指揮官となった美濃部氏には、それなりのプレッシャーはあった。これまでのサッカーの質を下げてはいけないし、逆にもっと高いレベルにまで成長させなければいけない。また、プロへの道をあゆむクラブだからこそ、選手の技術だけではなく「心」もプロフェッショナルにしていかなければいけない。

ただ単に、勝てるチームにするだけでは意味が無い。Jリーグのクラブにふさわし「堂々とした戦い方」を身につけさせること、そして子供たちの目標(模範)となるような「プロフェッショナル」な選手を育てることが彼に課せられたミッションであった。

サッカーの内容に関しては、システムこそ4-3-3から慣れ親しんだ4-4-2に戻ったが、サッカーの質、やろうとする内容は、これまでの試合より充実度、完成度は明らかに高くなってきている。先日、練習試合で対戦したザスパ草津チャレンジャーズ監督の木村氏は「去年までは立ち上がりとか、苦しい時には前に(長いボールで)蹴ってきたけど、今年は全然変わりましたね。どんなときでもしっかりボールを繋いでいくし、人が本当によく動いています」とチームの変化を語り、さらに昨年まで指揮を執ったFC琉球の薩川監督も「いやあ、前回の対戦の時よりも強くなっているよね。あっ、琉球が変わってないだけか?(笑)』と、チームの成長を認めている。

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そんな成長するチームの中で、注目したいポイントとしてあげるのが、美濃部監督が目標としている「数値設定」だ。例えば、どのチームでも年間はこの数までは勝利しようとか、この数だけは勝ち点を積み重ねたいという目標を設定するチームは少なくはない。だが、美濃部監督は勝ち点だけではなく、事細かくそれぞれのポジションに目標値を設定している。

簡単なところでは、失点率と得点率。1試合における平均失点は0.75、そして平均得点を1.67以上に設定し、これに合わせて守備の戦略や攻撃プランを組み立てていたのだ。前半戦のラストゲームとなった町田戦での話だが、美濃部監督は「勝ち点としては、我々が最初に設定していた数値はクリアできました。しかし、失点率という部分では、今のところで0.83であり、目標の0.75をクリアしてはいないので、そういうところから考えても、まだまだ成長しなければいけないのかな? とも思っています」と語ってくれたが、この琉球戦でも無失点に抑えた事で、ついに目標値である0.75に到達。

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長野サッカーといえば、多彩な攻撃力ばかりに目がいきがちだが、実は美濃部監督が就任してからは守備面での向上が如実なのである。昨年も準優勝を果たしが、得点57に対して失点は34でこの数字は失点、得点ともリーグ4位。そして1試合平均での失点率は1.41だったのである。それに対して、やっと半分をこえた時点だが、昨年の数字と比較すれば約半分に近い数字となっているのだ。美濃部監督は「お客さんに楽しんでもらえるサッカーをやりたい」とは言うものの、楽しんでもらえるサッカーをするには、まずはいい守備をしなければいけないという観点から、守備陣だけではなく、前線の攻撃陣にも積極的な守備戦術を施してきた。

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確かに、引退した籾谷に代わってディフェンスリーダーとなった大島は、かなり安定感を増してきた。しかし、大島や川邊が落ち着いた対応を見せられるのは、宇野沢や藤井といった前線の選手が、積極的な「前からのディフェンス」を見せているからである。そしてどの位置でプレスを掛けにいくのか? どの位置で奪いに行くのかということに対しても、監督は緻密に選手にアドバイスしているのだ。また、先日の琉球戦では移籍後初ゴールを決めた岡田も、攻撃面だけではなく積極的な守備を見せていた事は見逃せない。

薩川前監督の時代から、さらに緻密なサッカーが出来るようなった、長野パルセイロ。

確かに、薩川時代でもJFLのトップクラスであったことは間違いない。だが長野市には、J2基準を満たす箱(スタジアム)がなかった。それ故に、2011年シーズンは松本山雅の成績を上回りながらも、ライバルのJ2昇格をむなしく見送るだけだった。しかし、ライバルがJFLからJ2に戦いの場を移していく中で、ついに長野パルセイロは行政をも動かし、スタジアム改修への道にたどりいた。それでも完成はまだ先であり、結果的に最短でもJ2参戦は2016年からとなってしまっていた。

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だが、長野パルセイロというクラブは、この期間を「Jにふさわしいクラブなるため」の有意義な準備期間にしようとしている。「急がば回れ」という言葉があるが、今の長野には実にふさわしい言葉だと思うのだ。誇らしい新スタジアムとともに、堂々とした戦いのできるチームとして、J2元年を迎えるのも悪くはないはずであり、「2016年」に向けて真のプロ集団になるための準備を進める美濃部パルセイロには、これから先も注目していきたい。

2013年7月12日 (金)

美濃部監督が望むJ3の理想像

薩川体制から替わった今季も、優勝争いの中核として安定した力をみせつけている長野パルセイロ。

後半戦に入って2戦目の7日、前日に首位讃岐が敗れた事もあり、この武蔵野戦で勝てば首位浮上の可能性がある中で試合を迎えた。しかし、そんな大事な試合は日中でもっとも厳しい暑さとなる時間帯の13時からと、難しいコンディションの中で試合は始まっていった。

ゲームの方だが、予想どおり厳しい暑さが選手たちから「本来の動き」を奪い取っていく。そんな状況の中で、立ち上がりは効率よく長いボールを前線に入れて全体をプッシュアップさせていく武蔵野がペースを握る。それにしてもここ最近の武蔵野の戦い方は、シーズン当初に比べて格段に良くなってきている。

3バック、フラット気味に並ぶ中盤の4枚、そして1トップ2シャドーの形。

2月に見た練習試合では、正直今年もダメなのか? と思ったほどひどい出来だった。しかし、粘り強く戦い方を続けていく中でチームはどんどん成長し、先日のブラウブリッツ秋田戦では今季最高ともいえるパフォーマンスを見せ1-0で勝利し、戦えるチームに成長していることをアピール。

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高いレベルのサッカーを見ている人からすれば、武蔵野のサッカーは面白くないかもしれない。だが、限られた予算、限られた練習時間、そしてこれしかいない選手の中で、どうやればしっかり戦えるのか? どうやれば完全アマチュアクラブでも、Jを目指すチームと対等にやり合えるのか? そしてどんなサッカーをやれば人の心をつかめるのか? という難問に対して吉田監督と選手は必死に向き合い、一つの答えにやっとたどり着こうとしているのだ。

そのキーワードに「ひたむきさ」がある。

まあ、ごく当たり前のことなのだが、結果がなかなか出ない状況の中では、どうしても「別の方法論」を求めがちになってしまうこともあるが、監督も選手も「しっかりスタイルを作ろう」と、一つのサッカーに粘り強く取り組んできた。そして必死に、ひたむきにボールを追う姿勢が、今の組織的な守備と速い展開に繋がりつつあるのだ。

そんな相手に対して、やや受け身になってしまった長野は、なかなかセカンドボールを拾えず、連続した攻撃には繋がっては行かない。だが、そんな硬直した状態の中で輝きを見せたのが、セレッソ大阪からレンタルでやってきた岡田武瑠(たける)だった。

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木曜日に行われたザスパ草津チャレンジャーズとの練習試合でスタメン組に抜擢され、週末の試合でスタメンデビューか? と期待されていたが、ついにその時はやってきた。タイプ的には昨年まで在籍した向慎一(現町田ゼルビア)に近い選手だが、ドリブルのキレは彼以上であり、将来的にはセレッソの先輩にあたる、香川や乾、清武や柿谷といった選手に続く逸材になる可能性もあるだろう。そして彼のドリブル突破からチャンスを作り出し、試合の流れを少しずつ長野がたぐり寄せていく。

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さらにセットプレーから川邊裕紀の決定的なシュートが生まれるが、ここは武蔵野のキャプテン金守がギリギリのところでクリア。後半に入っても長野が押し込む展開が続いていくが、武蔵野において今季一番の成長株である上田陵弥がいいカバーを見せ、なんとか凌いでいく。

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後半の立ち上がりで先制点が欲しかった長野だが、ここで点が奪えないと苦しい展開になってくる。粘り強く守る武蔵野だが、ただドン引いているだけではない。数少ないチャンスであったが、途中交代で入った若狭が必死に走ってゴール前まで駆け上がりチャンスをお膳立てしていく。

終盤に入り、体力的にも厳しくなってきた両者だが、どうしても勝って首位に立ちたい長野は、普段とは違う攻撃で応戦。80分に奮闘していた岡田に代え、DFの松原を投入。当然ながら、3バックにしたわけではない。彼が最前線に立ち、ターゲットマンとして攻撃のキーマンとなっていく。

試合後の美濃部監督は起用について、このように語ってくれている。

「選手たちにね、これから先にあるだろう『絶対に勝たなくてはいけない試合』をどうやってものにするかを考えてもらうメッセージとして松原をピッチに送り出しました。

今年、我々はJ2に上がれないが、来年は上がれる状況になる。となれば、何としても勝たなければいけない場面は必ず出てくると思います。J2昇格を賭けて戦っていれば、戦術を変えてでも勝ち星をつかまなければいけない時は出てくる。そういう重要性を示すために、松原を入れてパワープレーに出ました。

本当はね、高さのあるFWを入れられれば一番いいんだけれども、今はケガ人も多いのでああいう形になってしまいましたがね。でもね、普段と同じようなサッカーだけではなく、時としてこういう形でやらなければいけないということを覚えてほしかった。

昇格を争う中でね、絶対に勝たなければ(落としては)いけない試合が生まれてくると思うんですよ。だから来年の(厳しい)戦いを想定して、自分たちのサッカーではない形をやってでも勝つんだ!ということを示したかったし、我々は勝ちにこだわるメンタリティをもっと持って欲しいと思っています。

選手はみんなね、頑張ってプレーしていると思います。でも、頑張っただけで満足していたらその先はありませんし、(ステージの上がった)この先の厳しい戦いでは勝ち抜いていけません。こういう拮抗した試合で、どんな形でもやりきって勝利していくことが上に行くことに繋がっていく。そういうことを選手は理解してほしいです」

短く繋いでポゼッションで相手を圧倒するサッカーをやってきた長野にとって、パワープレーというものは、あまりお目にかからなかった。そのサッカーは美濃部監督になっても変わらなかったが、ここにきて「その先」を見据えて戦術の幅を広げようとする美濃部パルセイロは、明らかにこれまでの「長野」から大きく生まれ変わろうとしている。

さて、結果的に両者とも得点を奪えずスコアレスドローで終わったこの試合。武蔵野は3戦連続、そして長野は2試合連続で無得点試合となったのだが、両者とも決して内容は悪くはなかったことを付け加えておきたい。

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また、松尾の負傷以降、宇野沢頼りが強かった長野の攻撃陣だが、ここ数試合では藤井がいい連携を取れるようになったし、新戦力として迎えた岡田も可能性を見せた。そんな若い新戦力に負けじと田中恵太も、なんとかスタメンに食い込もうといいプレーを見せている。あとは、この日武蔵野に押し込まれる要因にも繋がってしまった、中盤の底の部分。ここをどう底上げしていくが、さらなるステップアップのポイントとなっていく。

そしてこの試合のあと、美濃部監督からJFLに存在する問題点と、J3というリーグへの理想も合わせて語ってくれた。

「やっぱりね、こんな状況(炎天下)の中でやったら、普段練習でやっていることの半分も力を出せないですよ(笑)

まあ、こんな環境の中で試合をするのもJFLの一つだから、言い訳をしてはいけないですけれど。ただ、お客さんに本当にいい試合を見せたいと思うのなら、やはりこの時間に試合をすることはどうかとも思います。

来年からJ3というリーグが始まりますが、プロアマ混在のリーグから、プロになるのだから、こういうところ(試合開始時間)とか、もっと調整してほしいですね。ただ単にJFLからJ3というように、看板だけ付け替えて「プロ」ですよ! なんていうのは、リーグの発展にはなっていかないですから。

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やはりね、プロリーグになるんだから、実力もそうですが、会場とか運営とかもしっかりしていかなければいけないと思います。また、レフリーのジャッジについてあれこれいうのも何ですが、Jリーグではアクチュアルプレータイムを増やそうと努力しているのに、JFLではダラダラと流していることが多いんですよね。

そういったところでも、Jとは違いがあるので、そんな部分も含めてJFLとはしっかり違うんだ、というプロリーグになってほしいと思います」

このJFLの試合開始時間については、あのフィリップ・トルシエも、現在はFC東京の監督であるポポヴィッチ氏も、その他にも多くの監督が「こんな気候、こんな時間帯にサッカーをやらせるのはおかしい」と警鐘を鳴らし続けてきた。

しかし、JFLというプロアマ混在のリーグにおいて、予算の都合や会場を抑える都合上、夏場とて昼開催となってしまいがちのクラブも存在している。それはそれで仕方の無いことなのだが、プレーする選手にも試合を見に来る観客にとっても厳しい環境であることは間違いない。だが、今後はJFLからJ3に分かれてプロになっていくのであれば、その点も改善していかなければ「プロリーグ」にする意味はない。

J3であろうと、「プロ」の看板を出しているかぎり、プロフェッショナルなプレーを見せることと同時に、プロの「興行」としてふさわしい会場を作り出していく義務もある。チームの方が今以上の力をつけることは当然だが、それと同時にクラブも「体力」をつけつつ、いい興行とするための創意工夫していくことも大事。またクラブだけではなくリーグ側も、今まで以上にレフリーの育成を進め、どのカテゴリーでもいいジャッジできる人材を育成してほしいと願いたい。

さてJ3に関してだが、現在JFLに所属し、J2復帰を目指す町田を筆頭に、準加盟申請がすでに通過し、参加確実となっている5クラブ(讃岐、金沢、長野、秋田、相模原)に、以前からJ準加盟申請を続けている琉球、福島。そして藤枝MYFC、Mioびわこ滋賀、栃木ウーヴァ、Y.S.C.C.といったクラブもJ3への道を歩みだしている。さらに地域リーグに所属するヴァンラーレ八戸(青森県)、グルージャ盛岡(岩手県)、tonan前橋(群馬県)、アスルクラロ沼津(静岡県)、FC鈴鹿ランポーレ(三重県)、奈良クラブ(奈良県)、レノファ山口FC(山口県)の7チームも名乗りを上げ、J2復帰の可能性を持つ町田(もしくはJ2からの降格チーム)を含めた19チームの中から、J3の「オリジナル12(もしくは10)」が決まることとなる。

正直なところ、JFL所属クラブからJ3へ変わっていくのが、実力的に考えて理想かもしれないが、Mioびわこ滋賀、栃木ウーヴァ、Y.S.C.C.の3クラブに関しては、もっと運営規模を大きくしていかなければ、ちょっと厳しいかもしれない。また、地域から「飛び級」を狙うクラブは、最低でも実力、運営規模を合わせて「JFL相当である」ということをアピールできないと厳しいというか、認められないだろう。

美濃部監督が「J3になるのだから、それにふさわしい舞台を用意し、そのうえでお客さんが満足してもらえる試合をしたい」とも語ってくれているが、これをクリアできるかはJ3への大きな加入条件となってくるはずだが、そのためには実力+資金力に加え「政治力」も必要ではないだろうか?

まあ、参戦が確実視されているクラブ以外に、どこが「J3のオリジナル」になるかはまだわからないが、選手にも観客もハッピーになれる試合会場を作れるクラブが揃って欲しいと願うかぎりだ。

2013年7月 3日 (水)

帰ってきた町田の闘犬

町田ゼルビアにとって、先週は激動の一週間でもあった。

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6月23日、前期のラストゲームはホームで優勝を争うライバル、長野パルセイロと対戦したが完膚なきまで叩き潰されたのであった。美濃部体制に変わったものの、自分たちからアクションを起こし、しっかり繋いで崩していくサッカーの長野は、前期のラストゲームで今季最高の形を見事に示した。

それに対して町田は、恐ろしいほど無策であり、相馬、ポポヴィッチ、アルディレスが築き上げてきた「はず」の、攻撃的サッカーのかけらすら消え去ってしまっていた。そして皆さんもご存知の通り、秋田豊氏は翌日の24日に監督の座を解任され、楠瀬直木GMが監督代行としてチームの最前線に立つ事となった。

解任劇については、あの試合というより、その前のHonda FC戦でもそうだったし、もっと遡れば、ホンダロックとのゲームでスコアレスドローになったときに、すでに「無策」は露呈していた。まあ、SC相模原戦で今季初勝利を挙げたが、あの試合で見せた「効率のよさ」が、今季の「秋田ゼルビア」の鍵になるのかと思ったが、実際は違っていた。

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常勝鹿島で「勝ち方」「勝つ術」を、身を以て体感した秋田豊だからこそ、町田のサッカーを変えていくのかと思った。しかし、その後は現実路線のサッカーをする訳でもなく、これまでのゼルビアがやってきたような魅力的なサッカーをする訳でもなく、中途半端、いや何がやりたいのかわからないまま、時間だけがどんど過ぎてしまっていた。

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さて、もう過ぎてしまった話についてはこれぐらいでいいだろう。

今、町田ゼルビアにとって一番の重要な問題は、楠瀬監督代行がどうチームを変えていくのか? というところだけだったが、見事とは言い切れないものの初戦となるソニー仙台戦では「方向性」をしっかり見せてくれた。

試合は追いつかれてのスコアレスドローと、ホームゲーム、そして代行が指揮を執る最初のゲームとしてはあまりいい結果ではなかった。だが、相手は町田の一つ下の順位につけており、好調をキープしているソニー仙台であると考えれば、ベストではないが決して下を向く結果でもなかったと考える、そして、純粋にやっていたサッカーの内容と、選手の「戦う気持ち」という面にフォーカスを当ててみれば、わずか3日という準備期間の中では上出来とも言える内容をみせてくれたのである。

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やはりというか、当然であるが選手をいじってきた。

開幕戦以来、正直「干されていた」キャプテンの太田康介がピッチに戻ってきた。そして藤田をこれまでやっていたSBに固定し、前線にはアンデルソンを迷う事無く起用。

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確かに、90分間のゲームとしてみたときには、ソニー仙台の方が手数も多く、ゲーム自体もどちらかと言えばソニーのものだったことは間違いない。だが、そんな中でも町田は攻守の切り替えを速くして、これまでとは明らかに違う姿勢を見せていく。意図の見えない選手起用に、方向性が定まらない戦術。そして、時には選手に「リアクション的な動き」も要求したことがあった秋田前監督。だが監督が代わり、町田は息を吹き返した。

そんな「変化した町田」のキーマンになったのが太田康介だった。
彼は技術的には決して巧くはない。だが、ヤツ(あえてそう言わせてもらいます)には若い選手をも引きつける闘争心と強いハートがあった。

中大でキャプテンでありながらも、卒業後にプロになれなかった。卒業後に入るチームがなく、結果的に地元の埼玉SC(現さいたまSC)に入団。さらに翌年はザスパの下部組織であるチャレンジャーズチームへ。しかしここでも最終的にプロ契約を結べず、プロの道を半ば諦めて横河武蔵野へと活躍の場を移す。だが、この選択が彼のサッカー人生を大きく変えることとなり、このチームで選手として大きく飛躍し、その結果として町田が「プロ」として彼を迎えたのであった。

大学卒業から7年掛かってやっとJリーガーとしてデビューした彼だからこそ知り得る、サッカーをやれることへの喜び、そして周囲への感謝。さらに、裏街道が長かったからこそ知っている苦労。そんな経験があるからこそ、今の若い選手たちから兄貴分として尊敬され、絶大なる影響力を持っていた。

だからこそ、代行は「チームを再建させるための柱」に太田康介を選んだ。
しかし、別に今季のチームキャプテンだから、柱として選んだ訳ではない。

会見でコースケ起用について質問をしたが、その答えはすでに町田の公式HPにアップされているので、そちらを読んでもらえれば、詳しくわかると思うが、「こいつとなら心中してもいい」という言葉こそ、このチームの総意であり、その思いが彼の起用となっていった。

自分自身、開幕戦以来出場機会がなくなり、ときたま交代で試合に入るぐらいで、本来なら誰よりも苦しい時であったかも知れない。しかし彼は、「キャプテンという立場もあったので、さすがにそういう姿は見せられなかったこともあり、努めて普通にみんなと接していました」と語ってくれたとおり、常に明るい表情でチームをまとめ、試合前はこれからピッチに立つ選手たちに、ロッカールームで鼓舞してきた。

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そんな彼らしい「そぶり」を仲間だけではなく、GMもスタッフも見てきていた。
だからこそ、あの「彼となら心中してもいい」という言葉に繋がっていったのである。

さて彼のプレーだが、試合の入りでは非常に微妙だった(笑)
試合後に「別に緊張していたわけでは無かったのですが、久々の試合だったこともあり、ボールの動きや芝に慣れなくて、ミスを連発してしまいました」と語ってくれたが、確かに入り方は危なっかしかった。だが、徐々に試合にも慣れていくと、「町田の闘犬」ぶりを発揮。チームをもり立てる役目や、後ろからの速いタイミングでパスを入れ、リズムの良い攻撃の流れを作り出してくれたのである。

結果的に最後の最後でソニーに追いつかれてしまったのは、チームとしての課題でもあるが、それ以上にソニー仙台の「負けで終われない」という意地が勝ったところであり、あれはあれで仕方の無い部分でもあった。

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だが、秋田体制のときのドローと比べて、もやもや感がなかったこともまた事実。まあ、いきなり好スタートを切れればいいが、試合後の雑談の中でも「まだまだ課題はあるし、もっと町田らしいサッカーを築き上げていかなければいけない」と語っていた楠瀬監督代行にとって、満足できなかった試合であるが、代行も選手もそしてサポーターも「手応え」を感じた試合であったのではないだろうか?

あと残り16試合。

代行も選手も「優勝」は諦めてはいない。しかし、「チーム再建」という課題もやりつつ目標への道となる町田。半年間という遠回りをしてしまったが、今季の3強という立場は揺るぎないし、実力は当然持っている。だからこそ、この苦難を成長の糧として、さらなるポテンシャルアップを期待したいところだ。

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