カテゴリー「女子サッカー」の記事

2011年10月31日 (月)

圧巻のマナドーナ

先週の熊谷のほぼ10倍となる、2,139人の観衆を集めた西が丘で行われた日テレベレーザの試合。現代表、元代表を多数擁するベレーザに、女版俊輔の異名もある宮間あやが所属する湯郷belleの対戦ということもあり、さすがに注目度が高かった。

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そしてこの試合でもっとも輝きを放ったのは、ケガから復帰してから好調を維持する「マナドーナ」こと、岩渕真奈だった。

[ベレーザスタメン]
ーーー岩渕ーー永里ーーー
ー有吉ーーーーーー木龍ー
ーーー伊藤ーーー原ーーー
須藤ー村松ー岩清水ー長船
ーーーーー松林ーーーーー

[湯郷スタメン]
ーーー松岡ーー有町ーーー
ー中野ーーーーーー中川ー
ーーー宮間ーー高橋ーーー
加戸ー秋葉ーー安田ー壷井
ーーーーー福元ーーーーー

試合は開始16秒にいきなり岩渕がシュートを放ってスタート。その直後の1分にも岩渕ー永里の連携からCKを奪い、2分にはこの試合を通して湯郷守備陣を苦しめ続けた縦への速い展開から岩渕が裏を狙っていく(ここはオフサイド)。そして5分にもCKを奪うと今度は須藤が頭で合わせてゴールを狙っていく。

立ち上がりはベレーザの2トップの速さに完全に翻弄されてしまう湯郷。ボランチ伊藤の位置で左右に展開して、そこから縦に速いボールが入る。湯郷守備陣は2トップに速さに完全に遅れを取りキープを許してしまうと、そのすきに2列目が次々とゴール前に進入してくる。いや、この日はボランチだけではなく、代表CBである岩清水のロングフィードも実に正確であり、試合のペースは完全にベレーザのものとなっていく。

この試合では宮間 vs 伊藤、原というボランチ対決が期待されていたが、この日はベレーザの速い潰しの前にまったくといっていいほどボールが宮間に繋がらず、前半はほとんどボールを触る機会が訪れない。それに対してベテランの伊藤は速さこそないものの、実に緩急をつけたボールさばきでゲームを組み立て、原も積極的に前に出て厚みのある攻撃を生み出していく。

ゲームの流れは完全にベレーザのものであり、あとはどのタイミングで先制点が入るかであったが、32分についに均衡を破るゴールが生まれる。

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原からボールを受けた伊藤は、前にスペースがあることを確認すると見事なコントロールで縦パスを通していく。そこに岩渕が絶妙のタイミングで走り込んでシュート! これが決まってベレーザが先制。

ここから先は、スピードで上回るベレーザのやりたい放題。得点を奪った直後の33分、今度は左サイドに展開した岩渕がまたもドリブルがDFを抜き去り中へボールを流すが、ここは右アウトで絶妙なボールを送るという高度な技術を見せつけていく。さらに35分には、永里妹が細かいスペースを突いて2列目から入ってきた有吉にスルーパス(ここもオフサイド)。さらには38分には、またも岩渕ー永里の連携から守備を崩してゴールを狙う。

40分には今度は有吉が左サイドを突破してゴール近くまで進入。中へボールを送ると木龍がシュート! 決定的場面だったが、代表GKでもある福元が気迫のセーブでゴールを死守。しかし、こぼれ球に永里が反応してまたも決定機を迎えるが、ここは枠を外してしまう。

そして42分、相手ボールをカットした岩清水が前線にフィード。これが見事にスペースに流れ、走り込んだ永里があさっり決めて2点目。さらに45分、CKのチャンスからまたも須藤が頭で狙い今度はドンピシャで3点目をゲット。

もっと僅差の試合になるかと思われたゲームだが、すべての面でベレーザが上回り、湯郷を圧倒。注目された宮間の展開、ゲームメークだが、相手の速い出だしの前に完全に沈黙してしまい、宮間だけではなくチーム全体がいいところを出せないまま前半を終えてしまった。

後半に入ると、有吉、岩渕にいいようにサイドを破られてしまい、自陣に釘付けとなってしまった右MFのポジションに有町を配置して、FWに中川理恵を投入してゲームの流れを変えようと策を打ってきた湯郷。しかし、後半に入ってもベレーザの鋭い出足は衰えず、47分に木龍が後半最初のシュートを放ち、48分には岩渕がシュートを放つなど、前半同様に相手を圧倒していく。

しかし、後半20分を過ぎた辺りから徐々にベレーザの運動量もダウン。そしてその流れの中で68分、CKのチャンスを得ると宮間からのボールに松岡がヘッド。これはバーに阻まれたが、中川(理恵)が詰めて1点を返す。ベレーザの運動量も下がり始め、これで追い上げムードが上がっていくかと思われた。だが、実際には湯郷もなかなかペースが上がっていかない。

代表では2列目の攻撃的MFに位置する宮間だが、チームではボランチの位置に入っているのだが、この一列後ろにいることがフィットしていないのか、宮間からのパスがことごとく繋がらない。いや、同点に追いつきたいという気持ちが強すぎ、焦りからか無理なダイレクトパスを連発してしまい、これが無情にもミスに繋がり反撃の糸口を結果的に無くしてしまうこととなる。

ベレーザも前半のような動きが出来なくなり、湯郷もその隙を狙えず、やや膠着した試合となってしまう中、73分に今度は守備で岩渕が魅せてくれる。左サイドで中野にボールが入ったとき、猛然とチャージに入ったのがFWの岩渕。攻撃だけではなく、守備面でも積極性を見せた岩渕。試合後には「好調を維持しているので、絶対に自分たちがINACの無敗を阻止したいですし、優勝も諦めていません」と力強くアピール。

ワールドカップで思うようなプレーが出来ず、その後もケガで戦列を離れるなど、苦悩の時間を過ごしたが、これが逆に気持ちを強くする結果に繋がり、復帰後はこれで5戦連発と一気に波に乗った感もある。この勢いを持続していけば、次のオリンピックこそ、チームのエースになれるかも知れない。

さて、試合だが、結果的に湯郷の「攻めあぐね」もあり、試合は3-1のまま終了したが、全体的にみて、やはり新旧代表選手を揃えるベレーザのサッカーの「質の高さ」を改めて実感することとなった。最終ラインからの正確なロングフィードだけではなく、高い位置からのプレスや、攻め方のバリエーションの豊富さ。今日の出来を持続していれば、首位を走るINACにストップをかけることは十分可能と感じた。

また、次世代のなでしこジャパンを担う存在として、センターバックに入っている村松智子、そして左MFとして出場した有吉佐織は実に面白い存在になると感じた。村松も岩渕同様、U-17ワールドカップで活躍した選手であり、将来性が高いの当然。また有吉も神村学園→日体大とエリートコースを歩んできた選手。ちょうど明日で24歳の誕生日を迎えるが、なでしこリーグだけではなく、代表での経験を積んでいけば大化けするタイプ。スピードで勝負するサイドアタッカーの今後にも大いに期待したいところ。

ということで、先週と今週、2つの試合会場に足を運んだが、やはり下位と上位には大きな差があることを実感した。だが、この日鴻巣で行われた狭山 vs 新潟の試合は1-1のドローで終わるなど、確実に下位チームも経験値を上げて中位グループになんとか食いついていこうとする姿を見せてくれている。

上位チームには「世界と戦うこと」を意識してほしいし、下位グループには「上位への挑戦」を常に頭に入れた成長をしていけば、リーグ全体がいい方向に成長していくはず。この日も各会場で多くの観衆を集めたが、正直にいえば「なでしこブーム」に乗ってきたライト層なファンが多いことは否定出来ないだろう。

しかし、そのライト層を引きつけなければリピーターにはなってくれない。しいては、ファンがいなければリーグもクラブもやっていけないのである。だからこそ、なでしこリーグ全体として、その「ライト層」に「また見てみたい」と思わせるゲームをする必要があり、ライトをコアに変えて行かなければならない。そういう観点からすれば、この日、ベレーザが見せた試合は実にライト層を取り込みやすい試合であった。

スターが活躍し、それ以外の若手、ベテランも実力を発揮して「こんなにおもしろい試合をしているんですよ」ということを強烈にアピール。また、前日の大学リーグ終了後、赤羽駅東口で「明日、なでしこリーグの試合が西が丘であります」と一人で告知活動をしていたサポーターがいたが、このような素晴らしい活動をしてくれるサポーターがいたことをとても嬉しく感じた。

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なでしこが今、ブームなのは誰でもわかる。しかし、そのブームを一過性のものではなく、継続性のあるものにしなければならない。そのためにクラブやリーグもいろいろ策を考えるが、サポーターやファンにでも出来ることがあるはずだが、それを実践する「行動するサポーター」がどんどん増えていくことにも期待したいところである。

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プレナスなでしこリーグ2011第15節 @西が丘
日テレベレーザ 3-1 湯郷belle
[得点者]
32分岩渕、42分永里、45分須藤(ベレーザ)
69分中川理(湯郷)

[ゲームスタッツ]
シュート数:ベレーザ14、湯郷6
ゴールキック:ベレーザ6、湯郷15
コーナーキック:ベレーザ4、湯郷4
直接FK:ベレーザ11、湯郷9
オフサイド:ベレーザ3、湯郷2
PK:ベレーザ0、湯郷0

2011年10月23日 (日)

AS狭山、今季初の連勝

今季というか、何年ぶりかに女子のトップリーグ(なでしこリーグ)の試合を見た。朝はあいにくの雨だったが、試合が始まる13時にはほとんど雨が止んだ熊谷陸上競技場。対戦カードはASエルフェン狭山 vs ジェフユナイテッド市原・千葉レディース(以下ジェフL)だ。

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世間はワールドカップ優勝の効果もあり「なでしこブーム到来!」という感じであり、代表選手を数多く擁するINACレオネッサの試合には、J2なんて目じゃないほどの観衆が押し寄せているが、天候の悪さや、そして代表組が誰もいない(ジェフには丸山佳里奈がいるが前十字靱帯損傷で欠場中)この試合には、Lリーグ当時とあまり変わりのない光景(まばらな観客数)がそこにあった。

[狭山スタメン]
ーーーーー村岡ーーーーー
ー齋藤ーーーーーーー薊ー
熊谷ー澤田ーー高橋ー田子
ーー山本ー笠嶋ー柴田ーー
ーーーーー有馬ーーーーー

[ジェフLスタメン]
ーーー深澤ーー筏井ーーー
ー安本ーーーーーー井上ー
ーーー山田ーー加賀ーーー
細川ー高橋ーー河村ー千野
ーーーーー有馬ーーーーー

ホームの狭山はこれまで2勝10敗で現在8位。対するジェフLは4勝1分8敗の勝ち点13で6位。前節の福岡Jアンクラス戦で今季2勝目を挙げた狭山は、調子は上向きで今季初の連勝を狙うために気合いは十分。それに対してジェフLは前半戦の第7節までが4勝2敗と悪くないスタートだったが、5月8日の伊賀FC戦(1-0)以降勝ち星に恵まれず順位をズルズルと下げてしまっている。

そんな両者の対戦だが、最初のチャンスを掴んだのはジェフL。2分にCKを奪い、その直後に深澤がファーストシュート。5分には筏井がゴールを狙うと、その一連の連続攻撃から今度は加賀もミドルを放っていく。メンバー表上のシステムは4-4-2だが、守備に回る時間以外は細川が一列高い2列目に入り、安本も前線に入って3-4-3的なポジションを取り、前線の3人が流動的な動きを見せて狭山の守備に的を絞らせない。

試合の入り方としては、完全のジェフLのペースだったが、6分にミスからあっけなく先制点が狭山に転がり込むこととなる。狭山FW村岡がボールを持つと、前線に走り込んだ薊にパスを送る。ペナルティエリアに入るかはいらないかの地点に飛んだボールに対して、DFとGKが対応に出る。しかし、ここで両者がそれぞれ判断ミスを犯してしまい、処理できずボールは後ろから入ってきた薊のもとへ。

GKはボールを処理しようと前に出てしまいゴールはガラ空き。そんな場面で、フリーでボールをかっさらった薊は、落ち着いてボールをゴールを流し込んで狭山が先制。

ここまで、ポジションを頻繁に入れ替えるジェフL攻撃陣にやられっぱなしだった狭山。しかし、先制点を奪ったことで落ち着きを取り戻し、狭山が盛り返しを見せていく。10分には、またも前に出すぎたGKの位置を確認して、薊がミドルレンジからゴールを狙うがここは惜しくも枠の外。11、12、14分と立て続けにいい形を狭山が作り出し、ジェフLゴールを脅かしていく。

先制点を奪われてから、ペースを相手に奪われてしまったジェフLだが、18分に細川の左からのクロスに中で待っていた安本がスルー。そして流れたボールに対して後ろから入ってきた井上が見事に合わせて同点。

同点となり、再び勢いを取り戻したジェフLの前に、またも防戦一方となってしまう狭山。全体の押し上げが上手く行かず、ラインが間延びしてしまい、なかなかボールが繋がらなくなってしまう。さらには、マイボールにしても散らす、揺さぶるといった攻撃がほとんど出来なくなってしまい、守備面でもジェフLの攻撃に対してバイタルエリアでのチェックが甘く、たびたびゴール前への進入を許してしまう。

このままでは逆転されるのも時間の問題かと思われたが、38分、薊が右からクロスに対して、ジェフL河村のヘディングがクリアミスとなってしまい、そのままゴールに吸い込まれていき痛恨のオウンゴール献上となってしまう。

先制点はDFとGKの連携ミス、そして2点目もクリアミスと、両方ともやらなくてもいい失点を与えてしまったジェフL。

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前半はこのまま2-1と狭山のリードで折り返したが、後半の立ち上がりは前半とは打って変わって狭山が押し込む形でスタートしていく。

2分にFK、CKのセットプレーからチャンスを掴み、3分にもDF笠嶋が前線に上がってチャンスを広げると、またもCKを獲得。前半は相手の出方を見過ぎてしまい、ペースを奪われてしまった狭山だが、後半の入り方は積極性を出そう、そして早い時間で3点目を奪って楽に試合を進めようという意図のもと、ラッシュを仕掛けていく。

そして8分、攻め込んでくる狭山に対して、またもジェフL守備陣がミスを犯してしまう。バックパスでの連携が乱れた直後のプレーで、GKがまだ戻り切っていない姿が目に入った薊は、競り合いから流れてきたボールを迷わずループ気味のシュートで狙っていく。そして、これが決まって狭山はリードを2点差に広げることに成功。

なでしこジャパンやリーグで首位を走るINACはいいとしても、なでしこ中位〜下位レベルになると、守備においての不安定さはちょっと目に付くところがある。この日のジェフLの3失点はすべてミスからであり、しっかりクリア出来ていれば失点しなかったであろうし、両者に言えることとしてバイタル部分をもっとしっかりケアしていれば、それぞれ楽な試合運びが出来るはずなのに、それが出来ていない現状がそこにあった。

試合の結果は、終盤のジェフLの猛攻を凌ぎきり3-1で狭山が勝利したが、内容自体はまだまだ改善すべき点も多く、手放しで喜べるものではなかった。この日は、攻撃の核となる丸山、清水といった中心選手を欠いたジェフLであったからこそ凌ぎ切れた感もあるのだ。現に、タレントが揃っているINAC(0-8)や日テレ(0-6)には完敗を喫してしまっているのだが、この日の試合で感じた全体のラインをコンパクトに出来ない点、バイタルエリアのケア、クリアの確実性が上がっていかない限り、やはり上位と戦って勝つにはまだまだ難しいといえるだろう。また、これも両チームに揃って言えることなのだが、ゴールキックが悲しいほど飛ばないのである…

トップレベルのチームであれば、それなりのキックが出来るのだが、この日はセンターラインを超えるようなあまりなく、ボールはほとんどがペナルティエリアを出て10〜15Mぐらいの位置でカットされてしまい、またピンチを招いてしまうという悪循環を繰り返していた。

さらには、GKのレベルがフィールドプレーヤーの成長の速さに追いつけていない現状も気になってしまった。飛び出すタイミングの判断、スローイング、パントキックの距離、正確性など、まだまだ修正していくことは山ほどあると感じた。GKというポジションは「やりたい」という選手が決して多くはないため、いい人材が生まれにくいこともあるのだが、それぞれのチームだけではなく、JFAや各都道府県協会と連携して「女子GK育成プラン」をこれまで以上に取り組んでもらいたいと感じた。

なんかここまで、文句ばっかり書いてしまったが、Lリーグと呼ばれた当時から比べて、今のリーグは下位チームでも確実にレベルアップしていることだけは間違いない。後半途中からの出場となった、狭山の渡辺彩香はゲームの流れを変える役目を果たし、やや単調な攻撃が続いていたチームにアクセントを見事につけてくれた。まだ22歳と若い選手であり、今後の成長が楽しみな選手となりそうだ。また、後半戦から加入してきた山本りさも、すでにディフェンスラインの要になってチームの連勝に貢献。

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ここまで、勝ち星に恵まれなかった狭山だが、前節の勝利で意気が上がっていることもあり、個々の能力では上と思われていたジェフLの選手にも、必死に立ち向かい、終盤の猛攻を凌ぎきって勝ち点3を奪ったこと、そして今季初の連勝(順位も7位に浮上)を飾れたことは、チームにとって大きな力となるだろうし、経験となっていくはず。

一気にブームとなった感もあるなでしこリーグだが、実際のところはINAC一人勝ちといった感もなきにしもあらずである。リーグにスター軍団があることはかまわないが、実力も人気も一極集中になってしまっては、そのリーグの発展や進化の妨げになってしまう可能性もある。

資金力があって、いい選手を集めることは決して悪いことではない。しかし、リーグ全体の発展のためには、そんなスター軍団に対して、資金力の乏しいチーム、戦力的に劣るチームは、今以上に努力を重ね、そのスター軍団に一歩でも近づけるようにならなければならないし、独走にストップをかけなければリーグ戦のおもしろみが色あせて行ってしまう。

だからこそ、リーグ発展のためには言い方は悪いが、INACが独走するよりも、この日、連勝を飾った狭山や福岡が上位チームを脅かす存在に成長することが一番だと思うのだ。

また、女子サッカーは高校、大学(短大)を卒業してしまうと、なかなか活躍する場がないことは否定出来ない事実でもある。そんな現実があるからこそ、なでしこリーグで活躍するクラブや、次にトップリーグ入りを狙うチャレンジリーグのチームが、もっともっと成長してやる気のある若い選手たちにとって、魅力ある「受け皿(クラブ)」となって欲しいのだ。

世界チャンピオンとなった日本の女子サッカー界だが、その強さを支えるのは一握りのトップ選手だけではない。彼女たちがレベルアップし続ければいいという問題でもないし、リーグを支える多くの「非代表選手」たちが、それぞれ「なでしこリーグは世界チャンピオンのリーグなのである」という自覚と、自分も「代表候補の一人である」と思ってプレーし続けることこそが、リーグや代表の発展を推し進める原動力となるのだ。

日本が世界王座を防衛していくには、トップ選手を脅かす存在を作り出す(生み出す)ことであり、さらには上位チームと下位チームの差を縮めていくこと、そしてトップの下であるチャレンジリーグのレベルを上げていき、女子サッカー界の底上げをしていくことが重要なのである。そのためにも、狭山や福岡、そして多くのチャレンジリーグのチームたちが、もっともっと頑張って欲しいのである。

経済的に厳しい中でやりくりしているのはよくわかる。この日の試合会場運営も、ベンチ入りしていない選手たちが会場のあちこちを走り回り、ボールパーソンや、担架要員も下部組織の選手たちが務めていた。そして、会場案内やチラシ配布も選手やチームを支えるボランティアの手により、お金をかけずに自前でやりくりしている。

大きな資金力と、人気選手を擁しているチームよりも、なんとなく応援したくなるじゃないですか…

この日は、あいにくの天候ということで会場には220人しか集まらなかったが、チームというか、クラブのやる気は会場に集まった人たちには必ず届いたはずである。大きなことはいきなり出来ないが、小さなことからコツコツと…

どこぞの政治家の言った言葉ですが、その言葉同様に、ASエルフェン狭山も小さな事を積み重ねて大きな存在になって貰いたいと感じたのである。

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プレナスなでしこリーグ2011第14節 @熊谷
ASエルフェン狭山 3-1 ジェフ千葉レディース
[得点者]
6・53分薊、38分オウンゴール(狭山)
18分井上(ジェフL)

[ゲームスタッツ]
シュート数:狭山11、ジェフL13
ゴールキック:狭山12、ジェフL9
コーナーキック:狭山6、ジェフL7
直接FK:狭山10、ジェフL8
オフサイド:狭山3、ジェフL1
PK:狭山0、ジェフL0

2011年8月19日 (金)

国民栄誉賞よりも大事なこと

サッカーを愛する人間として、なでしこジャパンのワールドカップ初優勝は本当に嬉しかったし、あの粘り強さ、メンタルの強さ、そして修正力の高さは本当に素晴らしいと感じました。

監督や選手たちがコメントで語っていた「元気を与えたい」という言葉には説得力があったし、選手たちの活躍は日本に活気を与えたと思います。しかし、サッカー界の人間としては、元気を与えた、莫大な経済効果をもたらしたということよりも、今、サッカーで世界を目指そうとしている子供たちに大きな夢を与えたことが一番の収穫だったと思っています。

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前置きが長くなってしまいましたが、昨日、なでしこジャパンメンバーや監督スタッフを含めた選手団に国民栄誉賞が贈られました。

そのこと自体、「サッカー村」に属する私も嬉しいと思います。
しかし、単純に「なでしこ、おめでとう!」と思えない感情もあります。

ワールドカップで優勝するということは、サッカーを長年やって来た&見てきた人間からすれば本当に快挙だと思います。私事ですが、本気で現役をやっていた小学校〜高校時代(1979〜1989)からすれば、男子であろうと女子であろうと世界制覇するなんて夢のまた夢だったし、優勝なんてキャプテン翼だけの世界だと思っていました。

それを見事に成し遂げたなでしこジャパンの活躍に、おもわず涙してしまいましたが、いざ、国民栄誉賞が決まると、えっ? なんか違くない?? という感情も…

そういう賞のあげるタイミングというか、受賞を決める基準が適当かつ、あいまいであり、政治(政権、もしくは空きカン)の、人気取りのためのツールとしてに使われていることに納得がいかないのです。

なでしこが受賞することには否定はしません。
しかし、彼女たちが国民に感動と希望を与えたのであれば、北京オリンピックで金メダルを取った女子ソフトボールはどうなんでしょうか? あのチームだって十分国民栄誉賞に値するのではないでしょうか? もっと別の言い方をすれば、オリンピックで3連覇した柔道の野村忠宏さんはどうなんでしょうか?

ちなみに、一時は大ブレークした女子ソフトボールですが、日本代表のエースである上野選手が所属するルネサスエレクトロニクス高崎の試合にはそれなりに観衆が集まりますが、それ以外の試合ではほとんど観衆もまばらと言った状況で、ブームは一過性で終わってしまっています。

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では、今の女子サッカー人気、いや、なでしこ人気を一過性のブームで終わらせないため、さらには人気を支え続けるに何をすればいいか、そして何が出来るか? を考える必要があると思います。

単純にリーグを大きく成長させていくには、女子サッカーをサポートしてくれる企業、団体を増やすことが一番とですが、それはD通さんやサッカー協会、さらにはなでしこリーグ事務局がやること。ただ、チーム単体でもこれまで以上の営業活動をしていかなければなりません。協会や事務局は「なでしこ」のブランド力が一気に上がったこともあり、新規スポンサー(パートナー)獲得は以前より楽になっていくでしょうが、クラブ単体の方は非常に難しいと感じます。

INACのように、代表選手を多数抱えるクラブであればいいのですが、代表選手のいない伊賀FC、エルフェン狭山や福岡Jアンクラス、さらには2部カテゴリーにあたるチャレンジEAST、WESTに所属するクラブは非常に厳しい状況であることは変わりはないし、月額の活動費を払いながらプレーしているトップ選手も少なくはない。(トップリーグ下位チームの年間総予算は1500万〜3000万程度と言われている)

代表一人勝ち、さらにはスター軍団の一人勝ちでは、そのリーグというか、女子サッカー全体の発展には結びついては行かない。今、なでしこブームでにぎわう女子サッカー界において、いかにこれまで以上のお金を集め、それをうまく分配できるかが大きなポイントであると考える。

そしてファン、サポーターの側も、ブームを一過性で終わらせないためにも、ぜひとも会場に足を運んで欲しいのだ。人が集まる事により、そのスポーツの注目度は高まり、そして集客性が見直されていく。そうなれば、投資する側はメリットを見いだすもの。観衆のいないリーグには、さすがに協賛してくれる企業や団体は出てこないですから…

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無料試合であろうと、有料試合であろうと、さらにはカテゴリーに関係なく、そこにあるサッカーを自分の目で確かめる、そしてそこにあるサッカーを楽しむことこそが、ファン、サポーターに課せられる指命ではないだろうか?

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無駄に話が長くなってしまいましたが、国民栄誉賞なんて贈るよりも、文科省がサポート体制を強化してくれたり(実際にこの話は浮上しておりますが…)、メディアがリーグの試合結果を毎節報道するだけでもリーグの価値というか知名度は徐々にでも浸透していくと思うのですよ。

まあ、すでに受賞式も終わってしまったので、あーだこーだ言っても何も始まりませんが、この受賞が、この先から始まるオリンピック予選、そして本大会で変なプレッシャーにならないことを願いたいと思います。