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2017年4月27日 (木)

第51回全国自衛隊サッカー大会、ベスト4決まる

駒沢オリンピック公園第二球技場、補助競技場で行なわれている、第51回全国自衛隊サッカー大会だが、本日27日は準々決勝4試合が行われ、本大会のベスト4が決まった。



駒沢第二球技場
海自 下総 2-3 空自 入間・横田基地
空自 FC 3DEP 4-1 海自 A.N.F.C



駒沢補助競技場
海自 美保 2-0 空自 浜松
海自 大村航空基地 1-5 海自 厚木マーカス



以上の結果により、明日行われる準決勝は以下のようになりました。
4月28日(金)駒沢補助競技場
10:00 空自 入間・横田基地 vs 空自 FC 3DEP
12:00 海自 美保 vs 海自 厚木マーカス



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やはり今大会も、昨年まで関東リーグ2部で戦っていた厚木マーカス(今シーズンは神奈川県リーグ1部所属)と、過去に埼玉県リーグ1部まで登ったFC 3DEP(今シーズンは埼玉県リーグ2部)の力がやはり抜きん出ているのは間違いない。自衛隊の大会とはいえ、この2チームは単なる「部隊サッカー部」としてだけではなく、地域に根ざしたクラブチーム的な役割を持っているからこそ、やっているサッカーの「質」というものが一味違う。基本的には『自衛隊員だけ』で構成していることもあり、一般のクラブチームのように『新しい戦力』を増やしにくいというマイナス点はあるものの、そんな中でも常に高いレベルを維持しているのは、日頃の鍛錬ぬきには語れない。



そして今日のFC 3DEP(以下三補と称す)は、前回大会(2015年大会)において、同じくベスト8で激突し、1-1の末PK戦で敗れた海自 A.N.F.C(厚木なかよし)が相手となり、「今度こそ勝つ!」という強い気持ちを持って試合に挑んできた。



さて三補だが、この大会に向けてというよりも、埼玉県内の大会出場のため、実は1月8日からすでに今年の公式戦が始まっていた。そして埼玉県リーグの方も4月の頭から始まっており、試合勘という部分では問題ナシの状態だった。さらに今シーズンは、東京国際大学のセカンドチームや、ザスパ草津チャレンジャーズなど、自衛隊大会にはいないであろう、レベルのチームを相手に公式戦や、TRMをこなして来たこともあり、チームのベースアップは確実に進んでいた。



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だが、全てがいいことだけではない。これまで三補のサイドアタッカーとして活躍してきた春本選手は今大会、空自入間・横田基地メンバーとして参戦であるし、チームのエースに成長した真木選手は、研修などもありしばらくチームから離れており、復帰というか出られる試合は29日のみという状況だった。確かに「全自」では、普段の県リーグ公式戦では登録メンバーではないため、参加しない齋藤雄太(大成シティ坂戸FC所属)や、小木曽真悟(アルマレッザ入間所属)の2人が「助っ人」として入って来てくれるものの、やはりベースとなる主力戦力が抜けてしまうのは痛いところ。だからこそ、今大会では点取り屋として田代選手の活躍が期待されたが、今日の試合を含めて、十分すぎる活躍を見せている。しかし、三補の躍進を語る上で、熊谷哲平という人物の存在を忘れてはいけない。



大東大卒業後、ザスパ草津の前身である、リエゾン草津でプレーし、その後はシンガポールリーグでプロとしてプレーした経歴を持つ、異色の自衛官。さらにこの「三補」だけではなく、オギ、雄太とともに、飯能ブルーダー(現・アルマレッザ入間)、坂戸シティ(現・大成シティ坂戸)でもプレーした選手で、サッカー選手としての実力、そして指導者、トレーナーとしての実力も、自衛隊という枠を飛び越した存在でもある。そんな彼の指導方法、トレーニング方法、サッカー理論をチームに長い間植え付けてきたこともあり、近年ではマーカスと並ぶ存在に成長してきた三補。また、プロに近いとも言えるほどのサッカー論理以上に注目したいのが、『まずサッカーを楽しめ!』ということを重視している点だ。



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自分たちがやっていても、楽しいと思えないサッカーをしていたら、見ている人に自分たちのサッカーが響くわけがないし、つまらないと思うはず。だからこそ、やりたいサッカーをやりきって、まずは自分たちが楽しみ、充実感を味うことを重視している。そんなプレーが出来ていれば、必ず見る側にも響くし「楽しい」と思ってくれるはず。だからこそ『まず楽しもう』ということを大事にするのが、三補イズムというか、熊谷イズムの基本。自衛隊のサッカーなんて誰が見るの?と思うかもしれない。しかし、少なくもともマーカスや三補、そして厚木なかよしなどの、全自の上位常連チームのレベルは、決して低いレベルではないし、見ていて十分面白いと感じるものだし、自衛隊の大会だけではなく、これらのチームの視線というものは、内向きだけではなく、外にも向けられているのである。



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さて、話を試合の方に戻すが、前半の立ち上がりから勢い良く前からのプレスを掛け、三補になかなかチャンスを与えず、ゲームの流れはなかよしが握っていく。しかし、末永、新井の真ん中2枚が固めるディフェンスラインと、中盤の雄太がしっかり体を寄せ、攻められながらも決定的な場面を作らせず、前半をスコアレスで折り返す。そして後半に入ると、一気に攻めのギアを上げた三補は、両サイドアタッカーの桑本、オギのチャンスメークから、どちらも田代が中でしっかり決めてリードを広げていく。そしてスコアを3-1としてアディショナルタイムに突入したが、ここで普段の県リーグ公式戦では絶対に見られない連携で得点が生まれることとなる。シティ所属の雄太がドリブルで持ち込み、相手DFを十分引き付けた上で、フリーになったオギにラストパス。これをアルマレッザ所属のオギがしっかり決め、さらに得点を重ねて4-1と、最高の形で「リベンジ」を達成して準決勝にコマを進めた。



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この試合、間違いなく前半は海自 A.N.F.Cはいい動きをみせていた。しかし、三補からすれば、じっくり構えて焦らずやれば、間違いなく流れを取り戻せるという自信があった。これこそ、普段から県リーグやカップ戦で、高いレベルの相手と対戦することで「もまれてきた」からこそ、生まれてくる自信というか、「試合慣れ」という部分が顔を出した場面でもあった。



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こうして、準決勝は「入間ダービー」が実現したのだが、上記にも記したとおり、相手チームには春本選手がいるし、空自入間チームを統率するのは、これまた元三補の河崎健太郎氏。この「空自入間・横田基地サッカー部」も、三補同様にアグレツシブに攻撃的なサッカーを目指すチームである。入間ダービーといのは間違いないが、それ以上に「三補イズムダービー」とも言えるこの試合は、とても面白い試合になりそうだ。



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今年の自衛隊サッカー大会も、あと2日。そして4試合でラストを迎えることになるが、明日は平日開催ということもあり、観戦するのが難しいという人も多いだろうが、ぜひ29日に味の素フィールド・西が丘で行われる3位決定戦、決勝戦は観戦して欲しいところ。 そして、「日本一礼儀正しい」と言われる、自衛隊サッカー大会のみどころの一つである表彰式が見られるのも、最終日の特典。「整列、敬礼、回れ右、休め」の号令に、一糸乱れぬ動きを見せるこの表彰式を、この機会にぜひ決勝戦と合わせて一緒に見てはどうだろうか?

2017年4月23日 (日)

三補、タイトル奪還へ白星スタート

第51回自衛隊サッカー大会・初日
駒沢オリンピック公園・補助競技場
FC 3DEP(空自 第三補給処サッカー部) 1-0 陸自 FC伊丹sta
得点者 25分田代

正直なところ、27日の準々決勝までは余裕でしょ? と思っていましたが、どんな大会でも最初の試合というものは難しいもの。特に三補の場合、この大会では「マークされる」チームの一つであるため、さすがに楽に勝たしてはもらえなかった。

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確かに最初からいい感じでボールが回り、サイドからチャンスを何度も作ったが、相手もしっかり中を固めていたこともあり、なかなか崩せずじまい。結果的に、GKが前に出ていたところを田代が見逃さず、意表をついたロングシュート1発で勝負が決まったが、反省点というよりは「初戦の硬さ」というものが出てしまったかと? という試合でもあった。

その点に関しては、この試合でゲームキャプテンを務めた斎藤雄太(普段は大成シティ坂戸FCに所属)も『初戦はどうしてもこうなりがち。まずは勝つことが大事だから、悪くはない。継続して自分たちのサッカーやっていきましょう』と話している。

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得点は1点しか奪えなかったし、崩して奪った得点ではない。だが、繋いで崩す、バイタルまで侵入する、連動した攻撃をやるということは出来ていたし、このチームのレジェンドでもある熊谷哲平も『アイデアが大事。考えてプレーしよう』と声を掛けていたが、場した選手たちも、そこは意識しながらボールを回していた。ただ、得点力という部分に関しては、普段このチームでキャプテンを務める、真木基希不在というのも影響している。先月から、仕事上の都合で他部署に研修に出ているそうで、明日以降の欠場がすでに決まっており、出られるのは最終日(3位決定戦or決勝戦)のみとなるそうだ。米子北高校在籍時に選手権出場の経歴を持ち、部隊配属後にすぐに中心選手としてチームを引っ張っる存在になった彼が不在なのはやはり痛いところ。だからこそ、今大会ではもう一人のエースでもある、田代廣奈にかかる期待は大きいところ。

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しかし、今日の相手である陸自 FC伊丹staだが、粘り強い守備で対応し、攻撃面でも後半の30分には『あわや』というシーンを作り出し、最後まで三補を苦しめた。多分、本来の所属している普段のリーグカテゴリーから考えれば、実力差があるのは間違いない部分だが、この大会の面白さとは、部隊の名誉というものが掛かってくることもあり、普段の実力以上の力がでるからこそ、見ていておもしい試合が結構生まれるもの。

確かに大会の優勝チームを見れば、ほとんが去年まで関東リーグに在籍していた厚木マーカスなのだが、当然他のチームが優勝したこともある。この大会に出場してくるチームは、みんなマーカスや三補に、そしてなかよし(海自 A.N.F.C)と言った、上位進出の常連チームに勝ちたいのである。その『勝ちたい』という強い意志があるからこそ、番狂わせも起きるし、何より試合時間が決勝、3位決定戦以外は35分ハーフの70分でゲームが行われる。90分でやれば、カテゴリーが上のチームの優位はなかなか揺るがないが、70分であれば番狂わせも起こりやすい。これこそが、この大会の面白さなのかもしれない。

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明日以降も、駒沢オリンピック公園の補助競技場、もしくは第二球技場で大会が行なわれているので、ぜひ興味がある方は会場に足を運んでみてください。

2017年4月21日 (金)

一種カテゴリークラブの登録減少傾向を考える

今回は、一種カテゴリーの中で中心となる、社会人サッカー(アマチュアカテゴリー)に関わる、アマならではの過密日程の話と、一種クラブの登録数減少傾向について考えていきたいが、まずは『過密日程』の話から初めて行きたい。



先週の日曜日、普段からお付き合いのある埼玉県リーグ1部所属の大成シティ坂戸FCの公式戦へ行ってきた。そしてその試合後、シティの小西選手と中村選手と一緒に、次に行われたアルマレッザ入間 vs ドリームス(東京国際大4軍)との試合を観戦した。そこでは、選手ならでは視点や戦術など、なかなか興味深い話をしながらの観戦となったが、ちょっとした雑談の中から「選手と仕事」の話になり、それが「社会人サッカーと過密日程」という話まで発展(笑)。



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『今日みたいに、前日から比べていきなり10度以上気温が上がるとキツいっすよね』と日体大サッカー部出身である中村選手が話すと、かつてザスパ草津チャレンジャーズでプロを目指してプレーしていたコニが『ダイキさん、出てきていきなりヘバってましたよね(笑)』と振ると、さらにダイキが『いや、オレ今日これから仕事なくてホント良かったわ(笑)。あったらヤバかった』と続ける。そこで私が、『そういえばさ、マヒト(千葉選手)は去年、アメリカ出張から帰ってきて、すぐに試合に出てたよね?』と話を振ると、二人は『そうそう、人数足りないからって、無理に来てもらったんすよね』となり、さらに『中居さん(前シーズン限りで引退)もそれ、あったよね』となり、『これ、社会人ならではの過密日程っていうヤツだよね(笑)』という感じで話が続いていった。



ここまで、かなり個人的な話ですいません。
さて大成シティ坂戸FCには、何名か『前所属・ルミノッソ狭山』という選手がいますが、彼らがかつてプレーしたチームは職場からの援助も打ち切られてしまったこともあり、最終的に廃部という形になってしまったが、今なお本田技研工業の社員として普段は仕事に励んでいる。そんな中で、会社での業務の一環として、海外出張や研修などがあり、社会人ならではの『過密日程』というものとも戦いながらプレーすることもある。また、ホンダで働く選手だけではなく、他の選手も『オレ、今日これから仕事なんで、後半15分ぐらいで交代にして』なんていう場合もあるし、実際に開幕戦でこれはあった。



彼らは本当にサッカーが大好きで、やれる限り高いレベルでやりたいと常に願っている。しかし彼らプロ選手ではなく、普通の会社員として生計を立てていることもあり、仕事とサッカーの両立というものをやっていかなければいけない。まあ普通の社会人サッカーをやっている人なら、ごく当たり前の話でもあるが、このようにハードのスケジュールな中でプレーしている選手もいるんだ!ということも、ぜひ知ってほしいところ。また、現在は中国社会人サッカーリーグに所属する三菱自動車水島FCは、JFL所属時代『夜勤明けでそのまま遠征』なんていうハードなスケジュールをこなしながら試合に挑んでいたなんていうこともあった。



過密日程というものは、言い方は悪いが、別にACLを戦うJクラブ勢や、日本代表の『海外組』だけの話じゃない。



でも社会人サッカーの面白さ、魅力、好きになるポイントというのは、見ている側と同じように普段は仕事をしながら、空いた時間にトレーニングして、週末の試合のためにすべてを努力する選手たちが、週末のピッチ上でガラリと別人となることじゃないかな?と思ったりもする。そう、アイドルのキャッチコピーではないが、普通の社会人が「週末ヒロイン」ならぬ『週末ヒーロー』になるということこそ、魅力であると言えるだろう。



彼の実力はプロに比べてしまえばそれは低いかもしれない。だが、自分と同じような生活をしている人間が、週末になるとちょっと輝くヒーローになる。そんな見方が出来れば、カテゴリーに関係なく、そのにあるサッカーや選手に対して、自然にリスペクトできるはず。そしてこの件は、サッカーだけの話じゃない。どんなスポーツであろうと、競技志向でやっているアマチュア選手は、もっとリスペクトされていいと思う。そして見る側が、そんなアマチュア選手たちを支えることこそ、『そのスポーツの裾野を広げる』ということにも繋がっていくし、スポーツ文化というものを地域に広げていくきっかけになるし、減少傾向が進んでいるアマチュアクラブ数の歯止めをかけるきっかけにもなると考える。



さてここまで、仕事と競技の両立という観点で見てきたが、ここからは『アマチュアカテゴリーの減少傾向』という部分にもっと触れていきたい。



2016年度の都道府県ごとの正確なデータが出ていないところもあるため、ここでは社会人サッカー連盟がこれまでに公表してきた数字(2007年度〜2015年度まで)をもとに、一種カテゴリークラブの登録数が減っている現状をまず記していきたい。



まず、一種カテゴリークラブの登録数がピークを迎えたのは、日本がワールドカップ出場を決めた1997年度で、この時の登録数が7968チーム。そしてここから10年後の2007年度は6646と減少したが、2015年度の統計で調べた際には、ピーク時の数字から約4割減となる、4842チームと大きく数を減らしてしまっている。また、各県の登録状況を見てみると、面積の広い北海道(382)がやはり一番多く、2番目に兵庫県の366、3番目に埼玉県の342と続くが、300以上の登録クラブ数を記録するのはこの3地区だけとなっている(4位以下は静岡286、東京271、京都233、愛知157、福岡151、神奈川147、大阪142)。それに対して最小は秋田県の19で、山形25、青森・和歌山28、三重31という順になっている。



さらに10年前の登録クラブ数と比較した際に、結果的に登録数がプラスになっているのは宮城県(58→113)と福岡県(108→151)だけで、静岡県(462→286)、埼玉県(509→342)、兵庫県(478→366)は100クラブ以上の大幅減となっている。また、正全国的な確な数字は出てはいないものの、2016年度は神奈川県を除いたほぼ全地区でさらに減少が進んでいる模様だ。



このように、各都道府県協会に登録する一種カテゴリークラブ数の減少に、なかなか歯止めが掛からない状態が続いており、日本サッカー協会も全国社会人サッカー連盟も喫緊の課題として改善に取り組んでいかなければいけないという認識はそれぞれ持っている。また社会人連盟側では、登録が減少していく要因を、登録費用や大会参加料などの問題や、試合会場の確保や試合運営に関わる手間、3級以上の審判資格保持者の所属が必須になる件などがネックになり、登録数が増えていかないというのが大きく影響していると考えている、



このような『煩わしさ』が登録増を阻む要因になっているのは疑いのない部分でもあるが、それ以上にインターネットの普及が進んだこともあり、やりたい仲間だけを募って、自分たちだけで『サッカーを楽しむ』という環境が進んでいることも大きく影響しているだろう。登録するためには費用も手間もかかるし、規則もある。さらに『競技志向』ではなく、とにかくサッカーを楽しみたい!という、『エンジョイ志向』のクラブや個人は、より登録というものを避ける傾向にあると言えるだろう。



楽しんでやりたいのに、時には本気のチームとやらなければいけなくなる。そうなれば、相手にも失礼になるし、何よりやっている自分たちが面白くなくなってしまう。だからこそ、自分たちと同じようなレベルが集まり、独立した自分たちのリーグを作ってやったほうがいいというのは、ある意味で自然な流れでもある。



そんな現状に対して、特に社会人連盟の方では、『エンジョイ志向』の人たちが、どうすれば登録してくれるか? どんなメリットを作っていけば登録が増えて行くか、ちょうど今試行錯誤を続けている最中でもあるのだ。その中の一案として、登録費用の無料化案や、ビギナークラスの公式リーグ戦を設定するなど、いろいろな案を検討すると同時に、登録しているクラブへの「サッカーファミリーとしての特典」というものをどう設定するか?を練っている。



社会人連盟では、現状の「全社」「地域CL」「クラブチーム選手権」という、3本の柱を崩すこと、日程を変更していくということは考えていないとのことだが、社会人連盟の牛久保会長は『何よりもエンジョイ志向の人たちを、まずサッカーファミリーの仲間になってもらうことが大事だと考えます』と話してくれているように、これらのサッカー志向層も取り組める大会作りというものをやっていきたいと考えているし、アマチュアでは大会への参加する際の遠征費や、その大会でかかる経費を負担するようなプランも検討していきたいと語ってくれている。



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エンジョイ層を取り組むことで、どう一種カテゴリーが変わっていくか? ということを見通すのは、現状ではちょっと難しい話かもしれない。しかし、高校、大学まで本気でサッカーに打ち込んでいた選手が、卒業と同時にプレーする機会がない、プレーするクラブがない。だからプレーすることをやめてしまうというのは、サッカー界にとって損失だし、もしかすればそのまま埋もれてしまう才能もあるかもしれない。どんな形であろうと、プレーする場所を提供し続ける。そして生涯現役というものを実践し、サッカーというスポーツが日本の文化となっていくために、もっと本気で協会も連盟も、いわゆる『エンジョイ層』というものを代表チームを頂点とした『サッカーファミリーの仲間』として取り込んでいく必要がある。



今のアンダーカテゴリーサッカーの話題といえば、J3カテゴリーの拡大が最大の話題でもあるが、J3クラブを拡大することに以上に、しっかりとしたアンダーカテゴリーと、幅広い底辺や土台というものを、まずはしっかり作っていくことのほうが大事なのでは?と思うのだ。J3というカテゴリーにも「定数」というものが、近い将来生まれることとなる。そうなれば、J3からJFLに降格するクラブも当然出てくることとなる。そうなった時に、JFLや地域リーグといった『受け皿』が脆弱であったら、落ちてくるチームが受けるダメージは相当なものになってくるもの。またちょっと視点を変えると、現状の地域リーグでは、大学勢のセカンドクラブの進出が各地で増えてきているのだが、そこでプレーしていた選手たちが卒業する際に、プレーしようと思ったら元の場所(カテゴリー)より下でやるしかなかった。だからやめてしまった…では、それも悲しいこと。



大学勢の進出を、単純に悪とは決めつけないし、時代背景的にも各地域リーグの1部で大学勢が有力クラブになることは仕方がないことでもある。だが、仕方がないで終わらせてしまったら、『彼らの卒業後の場所』というものの選択肢を減らしてしまう結果にも繋がってくる。だからこそ、登録クラブ数は増えてほしいし、今1部や2部にいるクラブは、なんとか切磋琢磨して、ともに同じリーグで戦う学生たちの『受け皿』としての役目も担ってほしいとこと。また、そんなアマチュアクラブを盛り立て、やる気をさらにアップさせるのは、見る側の役目でもある。



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一種カテゴリーの再浮上とは、クラブ、協会、サポーター、それぞれが自分のできることを考え、それを行動に移していくこと。それができた上で、初めて綺麗なサッカーピラミッドというものが完成するのだが、今はまず社会人連盟と各都道府県協会が、どんなテコ入れをするか見守りたいし、サポーターたちの盛り上げにも期待していきたい。

2014年4月30日 (水)

もっと知って欲しい自衛隊大会

毎年4月下旬に行われる自衛隊サッカー大会。今年で48回目となったこの大会だが、先日の27日に決勝が行われ、単独クラブとして関東リーグ2部にも所属している(海自)厚木マーカスが2年ぶりに王座奪回を果たし、これで最多優勝記録を17回に伸ばして今年の大会は幕を閉じた。



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それにしても、毎年この大会を見ていて驚かされるのが、年々大会のレベルが上がって来ていることだ。カテゴリー的に考えれば、参加チームの頂点が関東リーグに所属している厚木マーカスを筆頭に、それ以外のチームは県リーグの1部~3部という感じであり、昨年優勝を果たした空自第三補給処サッカー部(以下FC.3DEP)は埼玉県リーグの2部所属クラブといったところ。あくまでもカテゴリーだけで見てしまえば、地域リーグよりも「下」の大会と見られてしまうかもしれない。



だが、実際に試合を見ていると、そこに「県リーグ相当」と思われる試合は意外に少なく、逆に「おおっ!」と感じるような試合もある。さらにどの参加チームも優勝を狙うとともに、自衛隊でサッカーをやる人間であれば「マーカスに勝ちたい」と誰もが思うもの。そのため、大会の常連チームである下総・館山、海自大村、陸自滝ヶ原、厚木なかよし(マーカスとは姉妹クラブのような関係である)、さらには前回王者であるものの「マーカス相手に圧倒して優勝したい」と、チャレンジャー精神を持ち続けるFC.3DEPといった出場チームは、普通の仕事とは違う大変な任務の中で、限られた時間を有効に使って、より質の高いサッカーを目指してトレーニングに励んで来たのである。



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いや、高いレベルを目指すのは、ここにあげたチームだけではなかった。4大会ぶりの出場となった陸自習志野も、ひそかに上位進出を目指していたのだが、準決勝では連覇を狙っていたFC.3DEP相手に、しっかりとした戦略を練り、まさにしてやったりの「粘りの戦い」を見せ、本大会における「番狂わせ」を達成。そして初の決勝進出となったが、ここでは準決勝のような戦略を練るのではなく、真っ向勝負で挑んだのだが、残念ながら力の差は如実であり、王者マーカスに完敗を喫してしまったが、この敗戦が必ず来年以降の躍進に繋がることを予感させてくれた。



このように、目標となる高いレベルのチームの存在があり、そこに勝利することを目指したことにより、大会のレベルが上がって来たことは間違いなのだが、それとは別の角度で、なぜこの大会がおもしろいのか? を考えてみたい。



そしてその答えについてだが、この大会には今のサッカー界だけではなく、現代社会が失いつつある光景がそこにあるからこそ、「おもしろい」「魅力的」と感じるのではないだろうか? 



ではそのおもしろや魅力とはなんなのか?



端的に言えば、強い意志と強い肉体を持ったものにしか出来ない、強靭でフェアなサッカーがそこにあるからであろう。この大会とかではなく、普通に子供であろうと大人であろうとサッカーではファールはつきものであり、倒す、倒されるというのはどこの試合にだってある。当然、倒された中には本当に大ケガに直結する場合もある。だがその反面で、本当はたいしたことがないのに、時間稼ぎやカードを期待して大げさに倒れる場合もある。しかしこの大会では、みんな大げさなそぶりはしないし、早く次のプレーに入ろうとなんとかすぐに立とうとする。また、倒されたからと言って、怒りを露にして食って掛かるような仕草をしたりする選手もいない。



そう、鍛え上げらた肉体だからこそ、多少の痛みにも我慢できるし、鍛えられた精神があるからこそ、次への切り替えがすぐに出来るのである。確かにこの大会では、FC.3DEPやマーカスのように、フィジカルだけに頼らないで繋ぎで圧倒しようとするチームもある反面で、自衛隊らしいフィジカルサッカーを続けているチームある。だがそういうチーム同士の試合だからと言っても荒れる訳ではなく、とてもクリーンでフェアな試合がほとんどなのである。



また、ここ最近の社会の流れとして、仲間や職場の団結よりも個性の方が尊重される時代に変わって来ていると感じるが、この大会を見ていると「団結力の素晴らしさ」というものも、実はいいものなんだなあ…感じるのである。近年の大会ではマーカスを筆頭にFC.3DEPや下総・館山と言った強豪チームが大会を引っ張って行く存在になっているが、それ以外のチームは申し訳ないが、実力がやや下であることは否定できない。そんな中で、どんな分野でも「チームワーク」という言葉をよく耳にするが、特にこの大会ではチームワークをさらに上回る「団結力」というものが、想像以上に大きな力を生み出す原動力になっていると強く感じるのだ。



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自衛隊という組織では、ほとんどの任務や演習が集団で行うことばかりであり、それをこなす上で年齢も出身地も階級も違う仲間が集い、意思疎通をはかってそれらを乗り越えて行く。だからこそ、常に一人はみんなのために、みんなは一人のための意識が強く、これが任務においてだけではなく、サッカーやスポーツの世界でも色濃く反映されている。さらにここに、OBたちの思いや期待、所属部隊の名誉のためにという意識が加わることで、実力以上の力が備わることもある。そして強い団結力が生まれるからこそ、準決勝で習志野はFC.3DEP相手に番狂わせを達成することが出来たし、決勝でもマーカス相手に最後まで1点を取ろうと諦めない姿勢を見せてくれた。



こういったフェアな姿勢や、一つにまとまった団結力を見られる大会というものは、実は近年においては少ないのでは? と思うのだ。そしてこういう大会こそ、子供たちが見本とすべきなのでは? と感じるのだ。レベル云々ではない。スポーツをやる選手として、フェアプレー精神を持ち、スポーツマンらしく正々堂々とした振る舞いを見せてくれるこの大会を、もっと多くの人に知ってもらいたいと思うのだ。そしてもう一つ。この大会のラストを飾る表彰式の存在にも言葉を付け加えたい。



高校サッカーを例に出してしまって申し訳ないが、この大会のレベルはどんどん向上しており、とても素晴らしい大会の一つだと思っているのだが、一つだけどうにかならないのかな? と感じるのが開会式や表彰式でのだら~んとした態度や、はしゃぎすぎる場面。これについては、別に高校サッカーだけに限った話ではないのだが、特にメディアの多さ、注目度の高さから選手側もそうなってしまいがちなのかな? と感じるが、それに比べてこの自衛隊大会の表彰式は、日本のサッカー界の中で間違いなくNo.1の規律と美しさのある式だと感じるのだ。



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まあ、防衛省の幹部がという「上司筋」が来賓として来ていることもあるし、常に整列や敬礼など厳しくトレーニングしている自衛隊員だからこそ、「あたりまえだろ?」という部分はある。だが、普段の自衛隊を知らない人にとって、あの式は「なんて規律があり、美しい式なんだろう」と必ず感じるはず。すべてを真似しろという訳ではないけれども、いろいろな大会を主催する関係者は、この大会の式を参考にしてもいいのでは? と思うぐらい。



スポーツというものは、どうしても結果だけや、そこのレベルだけで語られがちだが、スポーツをやる上でとても大事となる、礼儀、人を思いやる心などを含めたフェアプレー精神、そして日本人ならではの団結力が、目に見えるということもとても大事だと思うのだ。確かにこの大会は自衛隊隊員だけのローカル大会かも知れない。よって、見に来る人のほとんが家族やOB、そして職場の人間だけに限定されしまいがちだが、会場自体は誰でも見に来ることは可能だし、入場料も無料。来年こそ、強靭な肉体を持つ男たちの、フェアでクリーンなこの大会を、ぜひとも多くの人に見てもらい、もう一度フェアプレー精神とは何か? そして団結力の素晴らしさというものを実感してもらえれば幸いだと感じるところです。

2013年12月 3日 (火)

白井豪という生き方

突然だが、どれだけの人が「白井豪」という選手の名前をご存知であるだろうか? 彼の名がわかる人はきっと、高校サッカーを追い続けている人か、大学サッカーを良く知っている人であろう。

経歴として都立三鷹高校→早稲田大学というコースで、高校では選手権ベスト8、そして大学ではインカレ(大学選手権)制覇など、輝かしい実績を持っている。経歴だけ見ればエリート街道に見えるかも知れない。だが実際のところは、山あり谷ありの連続であったのである…

高校3年のとき、都立三鷹は選手権初出場を勝ち取り、いきなりオープニングゲームにて国立競技場で戦うという「大役」を担うこととなる。そしてこのゲームでは、雹が降り出すなど予想外の天候となり、さらには先制点を奪われるなど非常に難しい中での試合となった。だがこの試合で、後半16分、28分に立て続けにゴールを奪い、チームを逆転勝利に導いたのが白井であり、この試合で無名のサッカー選手から、一躍全国区の選手となっていった。

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このあと、2回戦では後に早稲田で共に活躍することとなる、当時2年生だった富山がいた矢板中央と戦い、さらには3回戦も勝ち抜き、予想外の健闘を見せ、チームはベスト8まで進出。さらに自身も大会優秀選手に選ばれた。

そして敗れた藤枝東戦のあと、「最初は(サッカーは)高校までと思っていたのですが、ちょっと考えちゃいますね…」と語ってくれていた白井。だが、その後の彼に待ち受けていたのは、華々しいサッカー人生ではなく「浪人」という厳しい現実だった。

彼と同級生に当たる河井(藤枝東→慶応大→現清水)、比嘉(流経柏→流経大→Fマリノス)、中里(流経柏→流経大→横浜FC)、増田(広島皆実→流経大→広島)といった逸材たちは、1年時から試合に出るなど順調な成長を見せていた。そんな中で、どこにも所属していない白井の中から、選手権直後に出た「ちょっと考えちゃいますね」という気持ちが、やや消えかけていた。

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そして選手権から1年という時間が経過してから、1年遅れで早稲田大学に入学したのだが、「ア式蹴球部」に入るのは意外な形であったのだった。本人は自分から進んで「体育会系」に入る気はなかったのだが、古賀聡監督直々の「入部要請」があり、彼は再びサッカーの第一線に戻って来たのである。

だがそこでも、彼にとって辛い時期があった。高校時代まではFWだったが、大学に入ってからは「同期」となった富山の存在などもあり、慣れない2列目にコンバートされた。また、168cmという小柄な体型故に、ケガとの戦いが必ずついて回って来たことにより、なかなかシーズンを通して納得するプレーが出来なかった。だが3年生となった2011シーズンは、年間を通じてコンスタンスに出場し、背番号もいい番号である「14」を与えられるなど、早稲田になくてはならない存在になってきた。

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しかし、4年生となった年のシーズン突入前、今度は前十字靱帯断裂という大ケガを負ってしまい、シーズン絶望かと思われた。そんな苦しすぎる現実の中で、普通に就職することも考えた。だが、「このままでは終われない」という気持ちが、彼を突き動かした。そしてシーズン後半に入って、驚異的な回復を見せた白井はついに復活を果たし、背番号「28」を背負ってピッチに帰って来た。

そして大学生活最後の大会となったインカレでは、1回戦から決勝まで、全試合において先制点をたたき出すという驚異的な決定力を見せつけ、最後の最後で最高の結果を出して学生生活に別れを告げた。

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だが、同期の富山が大宮、島田が岡山に決定する中で、大ケガのため出遅れてしまった白井は、夏場から秋にかけてJクラブでの練習にも参加できず、Jリーガーへの道は閉ざされてしまった状態にあった。しかしそんな彼のもとには、いくつかのJFLクラブからの誘いもあったのも事実。そこでやってもいいかな? という気持ちもあったのだが、せっかくの人生なのだから、チャレンジしてみたいという気持ちが勝り、彼は再び「浪人」という道を歩むこととなる。

そんな時に、栃木SCからの練習参加の話が舞い込み、願ってもないチャンスに白井は飛びついた。そして練習に参加すると、スタッフから高い評価を得て、入団間近かと思われた。だがクラブからの答えは「編成の都合上、夏まで待って欲しい」とのことだった…

非常に微妙の返答である。果たして、これを「入団内定」ととるのか? それともどうなのか… しかし、今はこのチャンスに賭けるしかない白井は、夏まで待つことに決め、そしてそれまでの間の所属先として、慣れ親しんだ「東伏見」を本拠地とする早稲田ユナイテッド(東京都1部)に籍を置くこととなった。

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そしてこの決定の裏には、かつて海外でプレーした経験だけではなく、Jリーガーを目指した経験もある今矢直城監督の存在が大きかったのである。本当なら、「夏まで」というつもりで入ったクラブ。しかし、ここで出会った今矢監督の多彩な経験、そしてサッカーを通じた人生観というものに触れた彼は、選手としてだけではなく、社会人としても大きく成長していくのであった。

だが、時間が立ってもJクラブの方からは何も連絡がない…

それもそのはずだった。クラブは夏場に入って11試合勝利なしという状態であり、そんなところ(彼の入団)まで気を掛ける余裕がなかった。そして彼を評価してくれた松田監督の退任が決定すると、その話自体も自然消滅してしまったのである。

またも不運に襲われてしまったのだが、彼には「早稲田ユナイテッド」というクラブがすでにあったため、大きなダメージとならなかった。いや、ダメージよりも、「だったら、自分も今矢さんのように海外でやってみたい」という気持ちが高まって来たのである。

そして海外のテストを受ける前に、お世話になったクラブを都リーグから「関東リーグ(2部)」に上げたい! という強い気持ちを持って、関東社会人サッカー大会に挑むこととなった。

早稲田ユナイテッドは都リーグ3位という結果を出して出場となったが、他の代表チームを破り、関東リーグ昇格(※決勝に残った2チームのみ昇格というルール)が目の前に迫った準決勝までコマを進めた。

相手は群馬県1部優勝のtonan前橋サテライト。トップチームであるtonan前橋は、関東リーグ1部に所属しており、今年は「J3」参入にも手を挙げて、いまではJ準加盟クラブの一つでもある。そしてこのサテライトチームも当然ながら、スケジュールに沿って全体練習をこなしているだけあり、出場チームの中でも高い完成度を見せていた。

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だがそんな相手に対しても、しっかり最終ラインからビルドアップして、繋いで行く姿勢を見せる早稲田ユナイテッド。また、前線の核となる白井も、時にはターゲットマンとしてボールをさばき、時にはアタッカーとしてスペースを突く鋭い動きを見せて行く。そして試合は序盤からユナイテッドペースで進み、山のようにチャンスを作り続けて行くのだが、フィニッシュの部分で正確性を欠いてしまうユナイテッドは、どうしても先制点が奪えない…

結果的に、相手のシュート数よりも3倍(15対5)の本数を放ちながらも、決定力不足が最後まで響いてしまい、内容では相手を上回ったものの、終わってみれば0-3という結果で敗れてしまい、早稲田ユナイテッドは関東リーグ昇格を逃してしまうのだった。

そして試合後、ガッカリうなだれる白井の姿がそこにあった。自分を拾ってくれ、そして成長させてくれたクラブのために、恩返しをしたいという思いが強かった。だが、自分の力だけではどうにも出来なかった事実だけが残ってしまった…

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だが翌日、勝っても何もない「3位決定戦」において、最後まで意地を見せた早稲田ユナイテッドは勝利し、3位という結果を勝ち取って、今年のラストゲームを迎えたのである。いや、何もないことはない。今年のメンバーで試合をやるラストゲーム。たとえ消化試合であろうと、ここまで一緒に戦って来た仲間のため、そしてチームのためにも負けられないという思いは強かった。

これにて、白井豪の2013シーズンは終了し、これからはオーストラリアに渡って、プロ選手へのチャレンジをつづけるとのこと。

決して恵まれた体を持つ選手ではない。そして運に恵まれているかどうかもわからない。だが、度重なるケガとの戦い、そして2度の「浪人」という苦しい思いを味わったからこそ、彼には強いメンタルが備わったのである。

これから先のチャレンジも、スムーズに行くとは限らない。また山あり谷ありかも知れないが、これまでの苦しみを考えれば、そんなことも乗り切れるのではないだろうか? 選手権で一躍知名度を上昇させた「シンデレラボーイ」の挑戦は、まだこれからも続いて行く。そしてその挑戦を今後も追い続けたいところである。

2013年10月17日 (木)

第49回全国社会人サッカー大会

今週末の19日から始まる第49回全国社会人サッカー大会。今大会は長崎県を舞台にしておこなわれるが、今回も実に興味深いカードが1回戦から並んでいる。

では、1回戦の対戦カードと簡単な展望をブロックごとに紹介していこう。

<Aブロック>
Match01:@島原陸上 10:00KO
◎ファジアーノ岡山ネクスト vs レイジェンド滋賀FC

Match02:@島原陸上 12:30KO
トヨタ自動車北海道サッカー部 vs ◎グルージャ盛岡

Match03:@平成A 10:00KO
VONDS市原FC vs ◎FC今治

Match04:@平成A 12:30KO
◎サウルコス福井 vs 札幌蹴球団

まさに「プレ地域決勝」と呼べるカード(チーム)が揃ったAブロック。東北1位グルージャ盛岡、北信越1位サウルコス福井、中国1位ファジアーノ岡山ネクスト、四国1位FC今治と、9地域のうちの4地域のチャンピオンが揃い、さらには旧佐川系選手も名を連ね、関東1部でもおかしくない実力を持つVONDS市原も入っており、特に2回戦以降のカードが注目となってくることは必至。

そしてこのブロックの注目となるのは、J3入りを目指しているグルージャ盛岡であろう。東北リーグでは序盤戦こそ不安定であったが、徐々に実力を発揮しだし、先日行われた東京国体では単独チーム(岩手県)として出場して見事3位に入り、さらにその翌週に行われたリーグ最終節で勝利して逆転優勝するなど、チームの勢いは上昇中。

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1ヶ月後に迫った地域決勝を見据えて「本気モード」で来る盛岡にとって、このブロックに入ったことは、本当に良かったことかもしれない。そしてもう1チーム注目を挙げるとすればサウルコス福井だろう。

今年から佐野達GM兼監督を迎え、チーム戦略という面で大きく躍進し北信越リーグは無敗のまま優勝。さらにチームは実戦機会を求め、ほぼ単独チーム(福井県)で国体に挑んだが、1回戦の茨城県選抜の粘り強い守りを最後まで崩せず、最後はミスからのカウンター1発に沈んでしまい、まさかの1回戦負けに終わってしまった。

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だからこそ、今大会を「リベンジ」と位置づけるサウルコス。佐野監督も「北信越リーグの日程消化が早かったこともあり、実戦から遠ざかってしまい(実戦の)感覚が鈍って調整しづらかった」と語ってくれているが、地域決勝を睨んだこの大会ではしっかり勝ち抜いて最低でも3連戦までは行きたいところであり、地域上位との連戦で感覚を掴んで欲しい。

本命:グルージャ盛岡 対抗:サウルコス福井

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<Bブロック>
Match05:@平成B 10:00KO 
ジョイフル本田つくばFC vs 三菱重工長崎SC

Match06:@平成B 12:30KO 
矢崎バレンテFC vs 関大FC2008

Match07:@平成C 10:00KO 
△ヴェルフェたかはら那須 vs ◎FC大阪

Match08:@平成C 12:30KO 
△FC KAGOSHIMA vs 藤枝市役所サッカー部

今大会の中では、やや注目度が低いブロックとなってしまうが、関西優勝のFC大阪と、関東2位でリーグ戦を終了してしまったヴェルフェたかはら那須との対戦は楽しみであり、この大会で「復活」を果たしたいヴェルフェにとって初戦が大一番となってくる。

本命:ヴェルフェたかはら那須 対抗:FC大阪

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<Cブロック>   
Match09:@平成人芝 10:00KO 
時津サッカークラブ vs 浦安サッカークラブ

Match10:@平成人芝 12:30KO 
トヨタ蹴球団 vs △アミティエ・スポーツクラブ

Match11:@国見総合 10:00KO 
FC北陸 vs 新日鐵住金大分サッカー部

Match12:@国見総合 12:30KO 
レノファ山口FC vs tonan前橋

Aブロックと並んで注目となるこのCブロック。Aブロックが「プレ地域決勝」という感じに対して、こちらは地域決勝出場権を賭けた「敗者復活戦」というイメージが強い。その中でも注目なのは浦安SC、レノファ山口、 tonan前橋の3チームであろう。関東2部所属の浦安にとっては、最初からこの大会で上位に入るのが目標の一つでもあったのだが、正直なところ実力的には関東一部優勝のFC KOREAと同等レベルの実力を備えており、今大会の優勝候補と言っても過言ではない存在と言えるだろう。

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さらにおもしろいカードが並ぶ1回戦の中で、最も注目を集めるカードとなるのがレノファ山口 vs tonan前橋の対戦ではないだろうか?

どちらもJ準加盟&J3参加を表明したクラブであり、さらに両者とも所属地域リーグにおいては優勝できなかった(両者とも3位)。すでにtonanの方はJ3での審査は落ちてしまったが、レノファは「最終選考」に残っているクラブであり、この大会は結果を出して地域決勝出場権を獲得するための、大切な「追試」となってくる。

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しかし相手のtonanとて、来季のJ3入りはなくなってしまったものの、JFL参入という「別ルート」の可能性は残したいところであり、こちらも負けられない戦いとなる。両者にとって、初戦から「決勝戦」のような戦いとなってくるが、その結果はどうなるだろうか…

本命:浦安SC 対抗:レノファ山口

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<Dブロック>
Match13:@百花台 10:00KO 
千葉教員サッカークラブ vs 六花亭マルセイズFC

Match14:@百花台 12:30KO 
△FC岐阜SECOND vs 高知UトラスターFC

Match15:@愛野 10:00KO 
△ヴァンラーレ八戸 FC vs △ディツォーラ島根

Match16:@愛野 12:30KO 
◎ヴォルカ鹿児島 vs バンディオンセ加古川

すでに地域決勝の出場権を獲得しているのは九州のヴォルカ鹿児島だけとなっているこのブロックだが、東北2位ヴァンラーレ八戸、東海2位FC岐阜SECOND、中国2位ディツォーラ島根、さらに全国大会の常連バンディオンセ加古川など実力派クラブが揃っており、好カード続出の予感がしている。

そんな中で注目なのはJ3参入にも名乗りを挙げたヴァンラーレ八戸。リーグでは序盤から安定した戦いぶりを見せ終盤まで首位をキープしてきたが、ラストでグルージャに抜かれてしまい2位で終了。tonan同様、来季のJ3入りはないため、この大会をJFL入りの足がかりとしたい。

さらに先日行われた東京国体において、準優勝を果たした岐阜SECONDにも期待がかかる。本体であるFC岐阜の経営が不安定であるため、SECONDチームがJFLで戦う可能性は低いが、Jクラブのセカンドチームとして、出る大会において結果を出すことは選手個人のトップチーム昇格に繋がってくる可能性もあるので、選手たちのモチベーションは決して低くはない。

また、地味な注目だが、千葉県リーグ所属の市川教員SCが、大会で全国も強豪相手にどこまでやれるかは楽しみなところであり、11月に行われる関東リーグ昇格を賭けた関東社会人サッカー大会に向けて、本大会をいい経験の場にして欲しいところだ。

本命:ヴァンラーレ八戸 対抗:ヴォルカ鹿児島

※◎→地域決勝出場決定クラブ
※△→所属地域リーグ2位クラブ
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という感じになっている1回戦の組み合わせ。
過去には「罰ゲーム」とまで言われたこの大会。以前は月曜日からのベスト8を避けたいがために「負け抜け?」なんていうことも囁かれたものの、現在は「本気モード」で来るチームがほとんどとなり、実力伯仲のおもしろい大会になりつつある。

また、全国9地区のうち7地域の優勝チーム(※北海道のノルブリッツ北海道、関東のFC KOREAは本大会においては予選敗退)が顔を揃えており、地域決勝を睨んだ「プレ大会」という見方もできるこの大会の評価は年々高まっている。

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今大会は長崎開催ということで、九州地区以外の方からすれば行きにくい場所でもありますが、注目カードが連日登場するこの大会をぜひ、多くの人に観戦してほしいと思います。

2013年9月27日 (金)

シティ、今季最高のゲームで残留確定

昨シーズン、関東リーグ昇格を賭けた関東社会人サッカー大会において準優勝を飾り、4度目のチャレンジでついに「関東への扉」をこじ開けた坂戸シティ。そして今年は、地元企業の支援を受け「大成シティフットボールクラブ坂戸」(以下シティと称す)とチーム名称を変更し、戦いの舞台を埼玉県から「関東」へとステップアップさせて新シーズンを迎えた。

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選手兼監督の熊谷哲平をはじめ、何人かの選手は地域リーグクラスでのプレー経験はあったものの、シティというクラブ自体は地域リーグ初参戦であり、チームは初戦から苦しい戦いと向き合うこととなってしまう。個の力ではなんとかやれても、チームとなったときに他のチームとの「スピードの差」「正確性の差」「勝負勘の差」が如実に現れてしまい、県リーグと地域リーグとの「差」を見せつけらてしまうのであった。

さて連敗スタートという中で迎えた第3節、この試合がシティにとってひとつのターニングポイントとなっていく。

相手はシティと深い繋がりを持つ、アルマレッザ飯能。監督の熊谷をはじめ、水沢など数名の主力選手がかつて在籍していたクラブであり、当時一緒にプレーした中野や鶴田といった選手もまだ健在であり、この両チームに関わる人にとっては「夢のオールスターゲーム」と呼べる対戦でもあった。

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また、監督の熊谷にとっても「アルマとリーグで戦うことは目標の一つだった」と語ってくれているように、自分を成長させてくれたクラブに対して、自分が作り上げたチームと対戦することは感慨深いものでもあった。そしてこの対戦において4-1と快勝したシティは、「自分たちでもやれる」という手応えを掴むこととなる。

さらに次節の日本工学院F・マリノス戦でも勝利したチームは、手応えを「リーグへの順応」に変えていき、県リーグレベルのチームから、ワンランク上でも戦えるチームへと成長を遂げていく。そんな状態の中でチームは、全国社会人サッカー大会・関東予選のための中断期間を迎えたが、後期2節終了時点で昇格組としては大健闘とも言える5勝6敗という数字を残したのであった。

ここまで、数字的に負け越してはいるものの、関東リーグ初参戦組としては「上々の滑り出し」であったシティだが、リーグ戦再開となる夏本番を迎えた時期から、本当の意味で「リーグ戦の厳しさ・難しさ」を実感することとなる…

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県リーグと地域リーグの違いは、簡単に言えばチームの「修正能力」と「総合力」があるかないに分かれると考える。県リーグレベルであれば、特に相手の分析をしなくても自分たちのポテンシャルだけで押し切れるし、「個」の力が抜けていれば勝ちきれてしまう。しかし、地域リーグになれば2度目の対戦ではしっかり注意すべき点をチェックしてくるもの。さらに県リーグ以上に負担のかかる試合移動に、過密日程となってくる試合スケジュールをしっかりこなせるか? ということが問われてくる。

しかしシティは、天皇杯埼玉県予選と並行して行われることとなったリーグ戦の中で精彩を欠いてしまい、前半戦以上に厳しい戦いを強いられてしまう。さらに悪いことに、ホーム会場として使用しているグラウンド状態のコンディションがお世辞でも良い状態ではなく、練習を重ねて来たはずのパスを繋いだ自分たちらしいサッカーが影を潜めてしまう。

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終盤を迎えて、リーグの洗礼を浴びることとなってしまったシティ。リーグ戦中断前は残留は固いのでは? と思われたが、最終節を前にして順位は残留争いの主役でもある8位にとどまっていた。さらに残留を争う9位、東京海上日動火災保険株式会社サッカー部とは勝ち点(16pt)で並ばれ、かろうじて得失点差「2」で、なんとか残留ラインを保つ状態であった。

そんな中で迎えたリーグ最終戦。試合はホームゲームのメーン会場となっている坂戸市民総合運動公園だったが、実はこの会場での今季成績は1勝1分5敗と大きく負け越している。さらにリーグ残留のためにはただ勝つだけではなく、得失点差も考えて大量得点での勝利が必要不可欠となっていた。

順位こそ残留圏の8位にいるものの、やりにくさもある会場での最終戦に一抹の不安もあったシティ。そしてその「不安」はある意味で的中してしまい、ゲームは序盤から支配するものの、どうしても得点が奪えないもどかしい展開が続いてしまう。早く得点を奪いたいという焦りからか、気持ちだけが前に行ってしまい、丁寧にパスを繋いでゲームを組み立てる上で要となる「適度な距離感」が保てず、不用意なボールロストを連発。20分過ぎたころからは、奪われてカウンターという一番やってはいけないシーンも顔を出してしまう。そんな重苦しい試合だったが、38分にワンツーで崩して最後は矢内が決めて、ついにシティが先制!

ほとんどの時間でシティがボールを支配したものの、前半の得点はわずかに1。当然ながら選手それぞれが「うまくいかない」という思いを持ちながらベンチに戻ったのだが、ハーフタイム中に「日動が前半、5-0でリードしている」という情報がもたらされた…

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シティ、日動ともどもリードしており、このまま行けばそれぞれ勝ち点3を積み重ねることとなるが、得失点差で2点リードしていたはずのシティが、この時点で逆に2点のビハインドとなってしまったのだ。この日はベンチスタートだった監督の熊谷は「もっと点を取りに行こう」と選手に指示を与えると、選手それぞれも、より闘争心を高めてピッチへ戻って行った。

後半に入ると、開始直後から前半以上に攻勢を強めるシティ。3分にPKを獲得すると坂戸のドラゴンこと、鈴木竜基がまずこれを決めて2-0。さらに監督の熊谷哲平が「交代オレ!」で、ついにピッチに登場。

熊谷自身、これまでのホームゲームでなかなか結果を出せず、魅力あるサッカーも披露することができず、さらには自分に付いて来てくれている選手たちの「力」を発揮させてあげられなかったことに対して、誰よりも責任を感じていた。そんなこともあり、この日のリーグ最終戦は勝って残留を決めることと同時に、このクラブに関わってくれる人、すべてが満足できるゲームにしたいと強く感じながら試合を迎えていた。

だからこそ最後まで手を抜かず、選手全員にも全力プレーを求め続けた結果が、今季最高となる7ゴールを生み出し、自身にとっても2007年6月17日の与野蹴魂会戦以来となる、6年97日ぶりの「関東リーグ公式戦」でのゴールも決めた記念すべき試合となった。

熊谷だけではなく、選手、そしてサポーターも含め、関わる人すべての「勝ちたい」という気持ちが最後の最後で爆発し、今季最高ともいえる内容で「残留」という結果を勝ち取ったシティ。

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企業のサッカー部でもなく、Jを目指している訳でもない、ごく普通の「街のサッカー好き」が集まった社会人チームであるシティ。しかし熊谷は「大人になっても高いレベルでサッカーをやれるクラブを地元に作りたい、さらに地元の子供たちが『大人になったらここでプレーしてみたい』と思ってもらえるようなクラブにしたい。そしてスポーツを通じて地元が活性化されるためのツールとしていきたい」という意思のもと、ブルーダーを離れ2008年から坂戸で地道に活動してきた。

向上心の高い熊谷にとって、残留争いとなってしまったことは悔いが残るそうだが、クラブが力をつけて行くということは、1年1年の積み重ねの上で出来て行くものだから、今年の成績を悔やむことはない。いや、逆に言えば厳しい戦いの中で残留できたことは、この先クラブが「一部」を目指す上で大きな経験となってくるはず。

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この日のように、「絶対に勝たなければいけない試合」において、監督は選手のメンタルをどのようにコントロールし、どんなゲームプランを描くのか? そして選手側はどんなプレーすべきなのか? ということを、実体験で知ることが出来た。そんな貴重な経験を来シーズン、いや、来月に予定されているKSL市原カップでぜひとも発揮して欲しいものである。

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さて、今回は地域リーグの残留争いをピックアップしたが、地域リーグやJFLで下のリーグに落ちてしまうことは、J1/J2リーグ以上に「戻る」ことは、本当に難しいことなのである。

J1クラブがJ2に落ちてしまった場合、「2位以内」を確定すれば昇格確定となる。しかし、JFLクラブが地域リーグへ降格、さらに地域から県リーグに降格した場合、それぞれのカテゴリーで優勝(もしくはそれに準じる成績)しても「はい、昇格です」とはならない。JFLに戻る場合はご存知の通り、「全国地域サッカーリーグ決勝大会」を勝ち抜かなければならないし(※今シーズンだけは例外になりそうですが)、地域リーグの場合は、まず各地域の都道府県リーグで優勝(もしくは成績上位)したのちに、所属地域優勝(もしくは成績上位)チームによる、地域リーグ参入決定戦(関東で言えば関東社会人サッカー大会)を、勝ち抜かなければ(もしくは成績上位)昇格出来ないのだ。

地域決勝も難しい大会だが、こちらはグループリーグのため、一つ負けてもまだチャンスはあるが、関東社会人の場合は一発勝負のトーナメントのため、有力チームといえども簡単に勝ち抜けない大会となっている。

余談になってしまうが、JFLが現行レギュレーションになってから、一度降格して、再びリーグに戻って来た(地域決勝を勝ち抜けた)例は、ホンダロック以外(※アルエットとロアッソは別物と考えます)に現れてはいない。

またJクラブに関しては、メディア露出もあるし知名度もあることから、降格してもある程度のスポンサーはつくし、リーグからの分配金も多少なりともあるので、予算規模を縮小すればダメージを最小限に抑えることは出来る。しかし、JFLや地域クラブがそのカテゴリーから降格してしまった場合は、Jクラブ以上のダメージとなってしまうことも少なくはない。アマチュアリーグのため当然ながらリーグからなんの保証も分配金もない。また、ついてくれたスポンサーが継続してくれるかどうかも本当にわからない(※長野パルセイロは2008年にJFL昇格できず、AOKIとの契約が終了している)。

さらに上記にもあるとおり、戻るには2つの難関を勝ち抜かないと、元の場所には戻れない。また、JFLでやるには最低でもリーグに支払う年会費(1000万円)に、全国を回るだけの移動費を捻出できないとやっていけない。いや、地域リーグにだって、それぞれの加盟金があるので、じゃあみんなで1万円出しましょう! なんてレベルでは当然やっていけるリーグではない。

当然ながら、降格となってしまえば選手の流出も考えておかなければいけない。しかしだ、そんな状況の中でも高いレベルを維持するだけではなく、さらにチーム力を向上させて行く必要もあるし、しっかりとしたクラブ運営をしていくことも大事となってくる。簡単そうというか、淡々とやっているように見えるが、実は難しいことを、なんとかやりくりしながら日々成長を続けているアマチュアサッカーの現場。このことを多くの人に知ってもらい、興味を持ってもらえることを願いたいところでもあります…

2013年5月17日 (金)

北信越で実現した師弟対決

かつて「無駄に熱い」と呼ばれた北信越リーグ。だが、当時4強と呼ばれたチームのうち、3チームが卒業していくと2011年シーズン以降は普通の地域リーグになったかと思われたのだが、再びこのリーグに熱い戦いが帰って来た。

かつての4強の一つであるJAPANサッカーカレッジ(JSC)に、昨シーズンリーグ初制覇を達成したサウルコス福井、そして1部昇格3年目にして初優勝を狙うアルティスタ東御の3チームによる戦いだ。その中でも、昨シーズン優勝を果たしたサウルコスは大物選手の補強こそなかったものの、昨シーズンのJFL最優秀監督である、前V・ファーレン長崎監督である佐野達氏をGM兼任監督として招聘。さらにアルティスタは、佐野が監督をしていた長崎のヘッドコーチだった堺陽二を監督に招き、今季は「まさか」の師弟対決が北信越の地で実現することとなったのである。

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さらに佐野と堺と言えば、長崎での関係だけではなくザスパ草津での関わりも忘れてはならない。2005~06年までは選手とコーチ、07年からは新米コーチとベテランコーチ、そして2009年は監督とコーチとして、5年間群馬の地で一緒に成長してきた仲間であった。また、何よりもザスパの前身であるリエゾン草津から唯一Jリーガーになった堺の存在を、実力だけではなく人柄的にも評価していた佐野は、常に自分のそばに置いてきた。

これまでは「先生と生徒」「部下と上司」と言ったような関係であった2人が、場所を変えて今度は「対等な立場」で激突することとなったのである。

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ここまでの両者の成績だが、サウルコスは4戦全勝で首位を走り、アルティスタは降雪の影響で1試合未消化だが、こちらも3戦全勝で暫定2位(もう一つのライバルであるJSCは3勝1敗)。

地元出身の元Jリーガー、梅井大輝をはじめ、10人の選手が新加入となったサウルコス。佐野体制一年目ということもあり、それなりにチームに変化はあったものの、予算の都合もあり他地域のライバルクラブのような大型補強とまでは行かなかった。しかし、それでもS級保持者であり、Jリーグ、JFLで指揮を執った佐野の手腕は注目であったし、「どう変わったのか?」がこの日のポイントであり、そんな変わったライバルに対して、「熟成」を選んだアルティスタがどう挑むのかも楽しみでもあった。

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さてゲームの方だが、ともに4-2-3-1とベースになる戦い方はまったく同じ形であった両者。だが、10番坂井のゲームメークと、梅井のロングフィードを軸に攻撃を展開するサウルコスが立ち上がりからペースを握っていく。それに対してアルティスタは、ボランチの三橋、土屋の「元パルセイロ組」が勢力的に動き回り、流れが悪い中でもしっかりと相手の攻撃に対応していく。また、トップ下に入った元松本山雅の斉藤も随所でベテランらしいしぶい動きを見せ、傾きそうな流れをうまく食い止める働きを見せる。

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そんなゲーム展開の中で、最初に決定機を迎えたのはアルティスタだった。37分にカウンターからチャンスを掴み、左サイドを抜け出した藤丸が絶妙のクロス。フリーで石戸が入ってきて頭で合わせるも、ここは惜しくも枠の外でチャンスを逃してしまう。

結果的に、前半はサウルコスが終始ペースを握ったものの、両サイドのスペースをワイドに使う「佐野好み」な攻撃を繰り出す事が出来ず、優位に試合を運びながらも決定機を作り出せないまま、スコアレスで後半戦に突入していく。

そして後半だが、いきなりサウルコスは危ない場面を迎えてしまう。49分にGKがバックパスの処理をもたつく間に、相手のプレスを受け「あわや」というシーンが生まれてしまう。そしてその直後の50分、今度はDFのパスを西井がカットすると、素早く中へ入れると藤丸が合わせて劣勢だったアルティスタが先制点を奪っていく。

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それにしても、なんともお粗末な失点シーンであった。失点の直前にバックパスの処理にもたついていたのだからこそ、GKもDFラインも集中した動きをしなければいけない場面であったのに、立て続けに緩慢なプレーを見せてしまってはどうにもならない。そして「もう一度あるかも」と感じ、プレッシャーを掛けにいった西井の動きは実に素晴らしいものであり、この1点が試合のペースを一気にひっくり返すこととなる。

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リードを奪ったアルティスタだが、三橋、土屋がセカンドを完全に制圧し、サウルコスに思うようなゲームをやらせない。そしてセカンドを奪っては素早い攻撃を仕掛けて、再三サウルコスゴールに迫っていく。しかし、ホームでは絶対に負けられないサウルコスも必死の反撃を見せ、70分に坂井の縦パスから、抜け出した亀山が起死回生の同点ゴールを奪う。

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こうなると、ホームであるサウルコスの方に流れが移って行くかと思われたが、この日のアルティスタはここから粘り強さを発揮。同点となってからはしっかりブロックを形成し、カウンター主体のサッカーに切り替え、うまく相手の攻撃に対応。そして何よりも、「佐野のサッカー」を知る堺だからこそ、「ワイド」を使わせないうまい守り方を見せていく。

そんな守備を見せる相手に対して佐野監督からは、驚きの言葉が出たのだった。

これまでの草津や長崎の時には、ワイドな攻撃を仕掛けろという意味を込めて「幅っ~~~~~~あ!」「オーガナイズ!」という言葉を連発していたが、この日は「狭く!」という予想外の指示を飛ばしていたのであった。

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佐野監督の予想外な言葉が出たこの状況の中で、残念ながらホームのサウルコスに決勝点を奪う力はなかった。アルティスタも「アウェーで勝ち点1は決して悪くはない」ということもあり、無理をせず終盤はリアクションの姿勢を崩さす、初の師弟対決となったこの試合は結局1-1の痛み分けで終了となった。

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さて、試合後に「狭く!」の意図を佐野監督に問うと、このような答えが返ってきた。

「本当はもっとワイドを有効に使った攻撃をしたいですよ。でもね、今のウチのチームに相手の状況を見ながら、それが出来る選手がいないんだよね。狭くと言っても、中央を狙えという訳ではなく、自分たちがしっかりやれるスペースで、やれることをしっかりやりなさいということなんだけど、セカンドもほとんど拾えずに苦しい試合になってしまったね。

前半のうちに2点は決められるチャンスがあったのに、そこで決めきれないから苦しい試合になってしまう、(失点時の)ミスが出てしまう。

今日の試合なんかさあ、今週ほとんど練習に出ていない選手が試合に出ているんだよ。信じられる? 仕事の関係もあってどうしても練習に出られないのは仕方が無い。でもね、練習に出ていない選手をスタメンで使わざるを得ないというのもちょっとねえ…

まあ、僕がチームを見だしてからまだ時間も短いですし、これからですよ。関心を持ってくれるお客さんももっと増やしてかなければいけないし、もっと地元に対して知名度を上げていかなければいけない。クラブの環境も良くしてかなければいけないし、やることは山ほどあります。だからこそ、チームもクラブも良くなるまで時間がかかるかもしれませんが、まずはもっとゴール前でのシーンが増えるような見ていて楽しいサッカーが出来るようにトレーニングしていきます」

正直、佐野監督らしいサッカーが出来なかったサウルコスだが、この日に限っては「相手」がやや悪かった気もする。佐野サッカーを最も知る男であり、現役時代は華のあるプレーヤーではなく、必死さ、泥臭さがウリだった堺陽二のチームである。そしてヨージは試合後「こうじゃないサッカーをやりたいんですけどね」と、苦笑いしながらこう続けてくれた。

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「本当はね、もっと違う形(攻撃的)でやりたかったのですが、今日はまあ相手のホームだし仕方が無いかなあとも思います、ただ、本当に選手は最後までファイトしてくれたし、特に後半はいい流れを作る事ができたので収穫だったと思います。

まあ、戦術的な部分でも、もっと取り組みたいと思うのですが、それは次の対戦の時に出せればと思います。あとは前半のやや消極的な部分が消えれば最高なんですけど…」

まだ監督に就任して時間は短いものの、昨年とほぼ変わらないメンバー構成ながらも、昨年以上のチームに仕上げている感が強いアルティスタ。土屋や斉藤といったベテランに、関東大学リーグで戦ってきた若い選手がうまく融合し、かなりいい感じでチーム力をアップさせてきていることを強く実感させてくれた。どこでプレスをかけに行き、どこで奪うか? どう攻撃を仕掛けるか? という約束事が徹底されてきており、この日の戦い方を見る限る、実は今年の優勝候補はアルティスタなのでは? と感じてしまう部分もあったほどだ。

もし、今週末に行われるJSCとの試合で勝てば、一気に優勝候補に躍り出る可能性もあるアルティスタ。選手としてはJリーガーになれたものの、FWとして結局ゴールは奪えなかった。ある意味で悔いも残った現役生活だったかも知れないが、サッカー人としての「第二の人生」は実にいい滑り出しのように感じられたのであった。

さて、試合後の佐野監督に戻るが、ヨージとの再会の後にこんな言葉も残してくれた。

「ヨージがしっかりファイトするチームを作ってくれて、なんか原点を思い出したような気がしましたね。昔、自分が草津町でチャレンジャーズを指導していた頃を。

アルティスタのサッカーは、それに通じるものがあるし、やはり『必死さ、ひたむきさ』があったし、それの大切さを改めて感じた気がするし、懐かしさを感じたね…」

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佐野達が指導したチームの中で、最も厳しい環境の中にあると言えるサウルコス福井。GMという「全権」を持つ立場になった佐野だが、それは監督以上に難しい立場でもある。これまでのように現場を強くするだけではいいという立場ではない。時にはクラブのトップとして、時には営業マンとして、いろいろな顔を持って24時間クラブ運営に力を注がなければいけない。さらに、福井のサッカー熱はこれまでの群馬や長崎に比べて決して高くはなく、チームが置かれているカテゴリーも下(佐野がザスパ入団時はJ2)である。

長期的ビジョンを持ち、じっくりと行きたいところでもあるが、そう長い時間を掛けられるほど、クラブに「体力」がある訳でもない。難しい状況の中で、どう結果を出していくのか? どうクラブを変えていくのか? という、難しい問題に挑戦する佐野達。

決して平坦な道ではないと思うが、この日の相手が見せてくれた「必死さ、ひたむきさ」を、自分たちもしっかり持ち続ければ、夢で終わるのではなく、必ず現実のものとなるはず。

今は佐野達を信じ、彼の新しいチャレンジがどう進んでいくのかしっかりと見極めたいところでもある。

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2013 北信越サッカーリーグ 5月12日@テクノポート福井
サウルコス福井 1-1 アルティスタ東御
[得点者]
70分坂井(福井)
51分藤丸(東御)

2013年5月 9日 (木)

グルージャ、辛くもガンジュを下す

2005年シーズン末に起こった「お家騒動」が原因で、グルージャ盛岡から分裂する形で結成されたガンジュ岩手。だからこそ、今でもガンジュ岩手をよく思わない関係者もいるだろう。しかしだ、あの時からもう8年という月日が流れている。

ピッチレベルで戦う選手やスタッフにとって、そんな因縁は関係のないものどころか、過去にそんなことがあったんですか… というレベルであり、特に気にするものでもなく引きずるものでも無かった。そして今、ここにある両者の関係は、それぞれのチームをリスペクトしながらも、東北の覇権を争うだけではなく、J3への道を勝ち取るために負けられない「ライバルのひとつ」であるということだけだった。

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過去に天皇杯岩手県予選で対戦はしたことはあるものの、同じカテゴリーで公式戦で戦うのは初めてとなった両者。しかし、この対戦を迎えるにあたって、大きなプレッシャーを感じていたのはグルージャの方だった。

ガンジュは岩手県4部からスタートし、毎年コツコツカテゴリーを上げ、昨シーズン途中から就任した申在範(シン・チェボン/元ジェフ市原)監督のもと、メキメキ力をつけてきたが、申監督は「今年は勝てれば(優勝できれば)もうけもの」というぐらいであり、まだまだチームは発展途上と考えていた。そんな中で、開幕から4連勝という、いい状態の中でこの日の対戦を迎えていた。

それに対してグルージャには、開幕前から大きなプレッシャーがあった。「J昇格」を目標に掲げ、1部リーグ昇格イヤーとなった2005年から数えて5度、東北社会人一部リーグを制しながらも、地域リーグ決勝大会では敗れ続けてJFL昇格を逃し続け、その間にTDK(現ブラウブリッツ秋田)と福島ユナイテッドといったライバルチームに先を越されてしまい、クラブとして非常に厳しい状態の中で今シーズンを迎えていた。

開幕戦であるCobaltore女川戦では、ゲームを終止優位に進めながらもスコアレスドロー、さらに4節のヴァンラーレ八戸戦では痛恨の敗戦。ライバルと目されたガンジュ、ヴァンラーレは揃って4連勝スタート。それに対してグルージャは2勝1分1敗で、4節を終えた時点で「勝ち点差5」をつけられ、早くもピンチに陥っていたのであった。

内容とか目指すサッカーはどうでもいい。とにかく勝つしかないグルージャ。それに対して「勝てればもうけもの」というガンジュ。そんな対照的な両者だったが、さすがに上位を争うチーム同士の対戦らしく、激しい戦いとなっていく。

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それにしても、大一番を迎えるにあたり、この日のピッチはかなり残念なものであった。

芝の育成状況はお世辞でもいいとは言えず、天候も雨が降ったりやんだりで、この試合の前に行われてた第一試合でも足を取られて正確なパスが出せない、または変なバウンドとなり思うようにボールコントロールできないシーンが続出。だからこそ、細かく繋ぐというよりも、長いボールを交えながらのゲームとなったこの試合。

3-6-1のガンジュに対して、グルージャは4-3-3。ただし、ここまでの試合の反省か、征矢が守備時にはセンターMFの位置まで戻るなど、グルージャは守備での約束事を徹底させてきた。

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ゲームの立ち上がりは完全に五分。しかし、先に決定機を迎えたのはグルージャ。13分のCKでは小林亮太がフリーのタイミングでヘディング。だがここは枠を捉えきれず。それに対してガンジュは1トップの森川を起点に、2シャドーの仲谷、小寺がサイドをつき、開いたスペースにボランチの長谷部、櫛引が飛び込んで相手ゴールを脅かしていく。そして18分には仲谷の突破からチャンスを掴み、続く19分に森川のうまいポストプレーからサイドに展開と、徐々にいい形を作り出していく。

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ともにチャンスは作るものの、ピッチ状態の悪さも手伝って、なかなかいい状態でシュート体勢に入れず、ジリジリとした展開となっていったこの試合だが、40分にガンジュのビッグチャンスが訪れる。

DF小林と小寺が競り合いの中で接触。しかし、主審の判定はノーファール。だが小林が倒れたことにより、グルージャ側は一瞬集中が切れ、小寺の突破を許してしまう。すると抜け出した小寺はゴール正面でシュート! 完全に決まったかと思われたが、無情にもシュートはバーを叩き得点を奪えない。

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それぞれ決定機はあったものの、それ以外の場面ではシュートチャンスを作れずスコアレスで前半を折り返す。

そして後半だが、3トップの一角である加藤に替え、裏に抜ける早さが自慢の高瀬を投入すると、流れは一気にグルージャに傾いていく。また、ガンジュの1トップである森川が、前半終盤での接触プレーから手を痛めてしまい、アグレッシブな動きにブレーキがかかってしまったところも、流れが変わる要因になってしまった。

前半以上に、両サイドバックがチャンスに絡みだしたグルージャ。そんな状況に対して、ガンジュ申監督は74分に石本を投入し、システムを4-4-2に変更して相手の攻撃に対応していく。だがグルージャも同時にメンバーチェンジを行い、前線でターゲットマンとして期待する土井良太を投入。

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攻勢に出るグルージャ、守備の意識を高めるガンジュ。流れは一方的になりつつあったものの、かなりスコアレスドロー臭が漂ってきたこの試合。なんとか相手の壁を破りたいグルージャは、82分に佐藤がドリブルでPA内に侵入。相手DFとの競り合いの中で倒れるも、ここは明らかなシミュレーションで警告となってしまう。

だが、「なんとかしなくちゃ」というギリギリの思いがガンジュの固い壁を打ち破ることとなる。

88分、征矢が強引なドリブル突破からFKのチャンスを得ると、ここで「自分がもらったチャンスなんで蹴らしてください」と申し出る。

征矢は流経大時代、その能力を中野監督や大平ヘッドコーチから高く評価され、早い段階からJFLチームやトップチームで出場する機会を掴み、成長を続けてきた。だが、同級生の山村(現鹿島)、比嘉(現横浜FM)、増田(現広島)、中里(現横浜FC)、関戸、上條(ともに岡山)、村瀬(松本→藤枝にレンタル中)がJリーガーとなる中で、彼はそこに入り込めなかった。しかし、夢はあきらめられない。そんな彼は大学卒業後、新潟シンガポールに入団し、今年はJ3を目指すこのクラブでやってきた。

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自分の手で「Jリーガー」という夢を勝ち取るためには、ここで「道」を断たれる訳にはいかなかった。そして彼の執念が決勝ゴールを呼び込み、辛くもガンジュを1-0で下し、J3への道をつないだのであった。

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だが、グルージャの鳴尾監督は勝ったものの、グルージャが直面する厳しい状況はまだまだ変わっていないこと、そしてやりたいサッカーが出来ていないことには不満ものぞかせた。

「守りながら戦う相手とは本当にやりにくいですね(笑)

サイドを崩してのビッグチャンスは何回か作れましたが、まだまだ単発。連続して攻撃を仕掛けられないと、カウンターを食らってしまい、なかなか波に乗り切れないので、その点はもっと改善していきたいです。また、2試合ぶりにゴールが生まれて勝ちましたが、これでいきなり劇的に変わるかどうかわかりませんし、本当に目指すサッカーが出来るようになるまでは、もう少し時間がかかると思います。

今日の勝利はあくまでも次に繋がっただけであり、『チャンスをもらった』ぐらいにしか思ってはおりません。

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今日の試合も気持ちよく選手がプレーしているとは思えませんでしたので…
やはり、(流れの)いい時間帯で点を取れるようにしたいし、先制することで波に乗れるはず。そのためにも、目指す連動するサッカーを継続してやっていきたいです。

あと、どうしてもどのチームからも比較対象とされ研究されてしまうし、(見ている側からは)勝ってあたりまえでしょ? と思われてしまうのが、やはりプレッシャーに繋がっており、どうしても今はチームが固くなってしまっていますので、うまくモチベーションを上げていき、この勝利を次のヴァンラーレ戦につなげていきたいです」

それに対して試合後の申監督は、にこやかな表情でこのように語ってくれた。

「なかなか自分たちのペースに持ち込めなかったですね。

今日の試合はリーグ戦18試合のうちの一つなので、特に気にする事はありません。自分たちがやってきたサッカーを、この後も続けるだけだし、精度をアップしていくだけです。

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今日は結果的に負けてしまい、(内容的にも)思うような攻撃の形は作れませんでしたが、守備面ではよく頑張っていた事は収穫だと思います。失点もセットプレーでしたからね。ただ、拮抗している中で、ちゃんと決められるかそうでないかがグルージャさんとの差だと思いますね。あの場面で直接決めた。それに対して、小寺のシュートはバーに阻まれたと。

まあ、今日の試合は最初から「ウチが勝ったらもうけもの」と思っていました。やはり、グルージャさんの方がチームとして上だったですしね。ただ、今は「戦術よりも個」を作っているい段階で、チームのベースを作っている最中でもあり、長い目で見てくれると幸いです。

でも、次にやるときには絶対に負けませんよ」

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確かに、全体的に見てグルージャが支配したゲームだったが、いいところまでは攻め込めても、堅い守りを完全に崩すまでには持ち込めず、結果的に自分たち(グルージャ自身)で難しい試合にしてしまった感もあるこの試合。また、昇格の切り札として加入した土井と林が最初から出て来れない現状も、停滞の要因の一つになっている。土井は途中交代で出場したが、もっと運動量を増やしていかないと、頭から使うのは難しい。さらに期待のかかる地元出身の林勇介だが、3月に入ってから合流したこともあり、まだまだチームにフィットしていないこともあり、スタメン出場はもう少し時間がかかりそうだ。

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だが、林も浦和、草津で戦力外となった現状に対して、もっと厳しい目で見つめ直さないといけないだろう。地域リーグだから、地元だから出来るだろ? では、絶対に通用しないだろうし、使ってもらえない。征矢のような必死さ、貪欲さをもっともっと出してほしいところ。さらには、この日のゲームのように、停滞してしまった中で林や土井が持つ「個の力」は絶対的なカードであるはずなのだから、そこでチョイスされる選手になってもらわないとダメなのだ。

グルージャ浮上の鍵は、間違いなくこの2人のデキにかかっていると言えるだろう。

さてガンジュだが、開幕からの4試合は格下ということもあり、危なげなく勝ち進んできたが、やはりグルージャとなると、これまでのようには行かなかった。今年からはSAGAWA SHIGAで活躍した櫛引を獲得するなど、実力の高い選手が揃い、十分に一部でも勝てる陣容を揃えてきた。だがいかんせん、下部リーグで格下と戦う機会ばかりであり、拮抗した試合というものがほとんどなく、その「経験の差」が勝敗を分けてしまったと言えるだろう。

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しかし、その点については申監督は焦ってはいない。周囲は「今年昇格を!」と期待するかも知れないが、監督は成長を認めつつも「まだまだ」と考えている。それはチームの成長だけではなく、フロントを含めた「クラブの体力」についてもだ。グルージャに比べれば、サポートしてくれる企業の数も多くはない。また、チームを熱烈に応援するサポーターの数は足下にも及ばない。

市内を歩いてみれば一目瞭然だ。盛岡市内にはグルージャを応援するポスターを見かけても、ガンジュを応援するポスターは残念ながら見つけることは出来なかった。グルージャは知っていても、ガンジュは知らないという市民、県民はまだまだ多い。だからこそ、チームを強くするだけではなく、「こんなクラブがあるんです」ということを、もっともっとアピールしていかないといけないガンジュ。

グルージャに勝つことも大事だが、それ以上に「知名度、関心度」をアップさせるという課題にも、選手、フロントが一丸となって取り組んでもらいたいかぎりである。

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5月5日 東北社会人サッカーリーグ一部 @岩手県営陸上競技場
グルージャ盛岡 1-0 ガンジュ岩手
[得点者]
89分征矢(グルージャ)

2013年5月 4日 (土)

第三補給処サッカー部、5回目の挑戦で初優勝

かなり今更……という話ではありますが、先週末に行われた第47回自衛隊サッカー大会・決勝戦について触れたいと思います。

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さて決勝のカードだが、5回目の決勝進出で初の優勝を狙う埼玉の空自FC 3DEP(第三補給処サッカー部)と、2回目の優勝を狙う海自厚木なかよしFCの間で行われた。

正直な話、3位決定戦が本当に手に汗握る好ゲームであったこともあり、決勝戦の前で選手関係者や家族はともかく、一般のお客さんからすれば「もう満足…」「もうお腹いっぱい…」となってしまった人もいたかも知れない。そんな状況の中で決勝戦は行われたが、前の試合の余韻を吹き飛ばすかのような素晴らしい幕開けで試合は進んでいく。

今大会開幕前から厚木マーカスと並んで優勝候補と目されていた3DEP。ここまで、苦しい試合はあったものの、順当に勝ち抜いて決勝にコマを進めてきたが、大事なこの試合の入り方は、大会で一番の入り方を見せるのであった。

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プレイングマネージャーの熊谷哲平が「ビルバオのサッカーが好きなので、あのチームのようなハイプレッシャーをガンガン仕掛けて主導権を握りたかった」と語ってくれたように、この日の3DEPは素晴らしいハイプレッシャーで相手を自陣に釘付けにすることに成功する。

2分に春本がファーストシュートを放つと、その後は真木、小木曽の2トップが立て続けにシュートを放ち、流れを自分たちの物にすると、10分に得たFKのチャンスにDFの山本が飛び込んで頭で合わせて、早くも3DEPが先制。

さらに圧巻だったのは15分に決まった2点目のシーンだった。

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バックパスの処理にGKが対応しに行ったが、FW小木曽は猛然とチャージ。GKはなんとかクリアしたものの、これが小木曽の足にあたりルーズボールとなり、すぐさま反応した小木曽は無人のゴールに見事に流し込み、あれよという間に2点のリードを奪っていく。

立ち上がりの3DEPは本当に素晴らしかった。この日の試合が最後まで出来れば、関東1部レベルで戦ってもまったく遜色ないレベルであった。しかしだ。見ている側とすると、ややオーバーペースではないか? という不安もあった。

そしてその不安は徐々に的中することとなり、3DEPの運動量が前半30分を過ぎた頃からダウンし始めていく。ここまで、チャンスらしいチャンスをつくれなかったなかよしも、40分に近づく頃にはカウンター主体で3DEPゴールを脅かすシーンも生まれだしていく。

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スタートから飛ばしてきた3DEPだが、やはり連戦の疲れからとしては徐々にハイプレスが弱まりだし、時間的にも前半はこのまま2点のリードを守ればいいという流れになりつつあった。だが、決勝にコマを進めてきたなかよしも決して甘いチームではなかった。相手のプレスが弱まりだしたころからチャンスを作れるようになり、さらに前半終了間際のCKから、ファーでフリーになっていたDFの松本が強烈なダイレクトボレーをたたき込み、差を1点差として前半を折り返す。

一次リーグはチームによっては1日のインターバルがあったが、決勝トーナメントに入ってからは連戦が続いており、コンディション的には非常にキツイ状態でもあった。そんな中でハイスパートで入った3DEPのペースが前半途中で失速してしまったことは、仕方が無い部分でもあった。

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そして後半だが、今度は完全になかよしがペースを握ってゲームは進んでいく。前半のような全体が高いラインを取り、ハイプレスを掛けていくことが出来ない3DEP。普段は関東リーグで戦う熊谷(大成シティ坂戸)や小木曽(アルマレッザ飯能)、そして高校選手権でも活躍した真木(米子北卒)といったタレントの力でたびたびチャンスは作るものの、前半のような連動や連続した攻撃があまり生まれてこない。

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それに対して、なかよしは2トップをターゲットにした攻撃を何度も繰り返し、ゴールに迫っていくが、最後のシュートまではなかなか持ち込めない。ペースは完全になかよしのものであったが、厳しい状態の中でも3DEP最終ラインが集中を切らさず、粘り強いディフェンスを見せていくと、逆に今度はセットプレーから効率良くゴールを脅かしていく。

77分、CKのチャンスでゴール正面が混戦となったが、途中出場の藤田が押し込んで、劣勢だった3DEPが値千金の追加点を奪う。

ここまで、ピンチの連続だった3DEPだが、この3点目が選手に大きな勇気と希望を与えることとなる。また熊谷は選手全員に「リアクション!」と大きな声で戦術の徹底を図り、残り時間をしっかり守りきって悲願の初優勝を飾ったのである。

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試合後の熊谷は、自分に付いてきてくれた選手や、バックアップしてくれた部隊・職場の仲間、そして家族に感謝を述べたが、それ以上に印象に残ったのが、この日キャプテンマークを巻いたDFの川口への想いだった。

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「彼はね、去年の大会とその前の決勝の2度、キャプテンマークを巻いたのですが、両方ともダメだったんですよ。サドンデスに入ったPK戦で外してしまったこともあるし、オウンゴールしてしまった事もありますしね… でもね、彼を今度こそ『男にしてやりたい』と思って彼をキャプテンに指名しましたが、チームのみんなも同じ思いで彼を盛り立ててくれました」

と嬉しそうに話してくれた。

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また、「このチームは決まった選手だけで戦って勝ち進むのではなく、チーム全員で優勝を勝ち取れたことは大きなことだと思っています」とも熊谷は語ってくれたが、大会に出場したチームの中で、登録選手全員が試合に出たチームは3DEPだけだったかも知れない。

メンバーには、元プロ選手の熊谷もいるし、レベルの高いところでプレーした経験を持つ選手もいる。だがその反面で、実は約半数近くの選手がこの部でサッカーを始めた選手ばかりなのである。しかし、「努力は無限の可能性を生み出す」という信念をもつ熊谷は、辛抱強く指導して選手の成長を促し、そして全員の団結力があれば絶対に『部の歴史』を塗り替えることが出来ると信じてプレーし続けたのである。

実は大会の2週間前、このチームの練習試合を見たが、その時はお世辞でもここまで勝ち進めるとは思わなかった。熊谷とともに、リエゾン草津でプレーした木村直樹が率いるザスパ草津チャレンジャーズチームの練習試合では、ほぼ一方的にやられてしまい0-4という完敗を喫していた。

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サイドをガンガン突かれて突破を許し、運動量に優る相手に走り負けてしまっていたが、あの試合での敗戦が成長するための経験となり、大会ではしっかり走れるチームになり、何よりも攻めるとき、守るときの「メリハリ」が出来るようになっていたのである。

練習だけでは積み上げられない「プラスα」を、大会中にさらに積み上げて、強いチームから「たくましいチーム」に成長したFC 3DEP。この大会が終わってしまうと、熊谷と佐々木はシティに戻り、小木曽はアルマレッザに戻ることとなるが、彼らがいなくとも、この大会で得た経験をしっかり活かせれば、所属する埼玉県リーグ2部でもしっかり力を発揮できるはず。

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また、これまでの「挑戦者」という立場ではなく「王者」として新しい歴史を踏み出していく3DEPには、ぜひとも連覇に挑戦してほしいところである。

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第47回全国自衛隊サッカー大会 決勝戦
4月28日 @西が丘サッカー場
海自・厚木なかよしFC 1-3 空自第三補給処サッカー部(FC 3DEP)
[得点者]
45分松本(なかよし)
10分山本、15分小木曽、77分藤田(3DEP)

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