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2015年3月

2015年3月26日 (木)

ほろ苦となった新スタジアム初戦

2015年 明治安田生命J3リーグ 第2節
長野パルセイロ 1-2 SC相模原


長野パルセイロにとって、この日の試合はただのホーム開幕戦ではなく、待ちに待った『特別な日』であったのだが、結果はなんともほろ苦いものとなってしまった…


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試合を振り返る前に、少しクラブの歴史に触れたいが、JFLに昇格した2011年から2位、2位、優勝と、常に優勝争いを演じて来た長野パルセイロ。そして2012年までのJFLでは、J準加盟クラブになり、その上で原則4位以内に入ればJ2昇格が可能であった。


そう、長野パルセイロは成績面では2011年から毎年ノルマをクリアしていたのだが、ホームスタジアムである南長野総合運動公園球技場 が、Jリーグが定める『J2基準』を満たしていないため、J2参戦にこぎつけることが出来なかった。そしてスタジアム建設がスタートした2014年シーズンは、優勝でも2位でもいいから、昇格することだけが目標だった。そしてJ2に上がったと同時に、新スタジアムのお披露目と行きたかったのだが、その悲願を達成することが出来ないままシーズンを終えてしまった。


J2に上がれなかったことは残念であったが、クラブ、選手だけではなく、サポーターにとっても待望の『我が家』が完成したことは、やはり嬉しいことであり、期待感もより高まるものだった。そしてスタジアムの各所には、これまでチームの歴史を作って来た選手たちの幕が貼られるなど、レジェンドたちへのリスペクトを忘れない、サポーターの粋な演出が新スタジアムに華を添えてくれた。


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そして迎えた試合だが、いきなりチャンスをつかんだのはパルセイロだった。試合開始直後、右サイドの金久保から中にクロスが入る。一旦は流れるかと思われたボールだが、佐藤悠希は躊躇なくオーバーヘッドでこのボールに反応すると、シュートは見事にゴールに吸い込まれて行った。新スタジアムでの初戦という記念すべきこの試合で、開始わずか1分(公式記録上は2分)で生まれたファーストゴールは、この日を待ち望んでいた全ての人が興奮するような、スーパーゴールという劇的すぎる形で飛び出した。これ以上ない『南長野劇場』の幕開けだった。そしていきなり先制点を奪った長野は開幕戦のフラストレーションを吹き飛ばすかのような動きを見せ、序盤は試合を優位に進めて行く。


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たが、新監督に経験豊かな辛島啓珠氏を招き、さらには町田と並んでJ3リーグとしては充実度の高い補強を成功させ、チーム力を昨年終盤とは比べようもないほどアップさせた相模原はそんな展開でも慌てることはなかった。今季から完全移籍で晴れて相模原の一員になった高原に、清水からレンタルでやって来た樋口、そして経験値の高い森など、J3としては別格な選手も揃えたこのチームだが、シーズン前のトレーニングマッチで最も目立っていたのは、岐阜から新天地を求めてやってきた須藤右介だった。


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これまでの相模原と言えば、高原ばかりに注目が集まっていたが、サッカーの本質的には地域〜JFL時代に培われた曽我部や菅野(現長野パルセイロ)がサイドで起点となる攻撃的サッカーが持ち味とも言えた。しかし今シーズンから就任した辛島新監督は『バランスの取れたサッカー』を掲げ、これまでのサッカーからさらに上を目指そうとする中で、須藤という新戦力は戦術的にも高原や樋口以上に存在感を増して来ている。後ろから蹴って素早く前に押し上げるのではなく、中盤でタメを作ってから、押し上げのタイミングをしっかり作り、そこからアクションに移行するコンセプトが、トレーニングマッチから浸透していた。そしてCBもこなせる彼が前で体を張ってくれるからこそ、相模原の最終ラインは落ち着いて対応することが出来たのだ。


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劇的すぎるオープニングゴールだったが、『前の試合でチャンスでも消極的過ぎだった。だからこそ、無理やりでも打っておこうという』という、佐藤の積極性が生み出したゴールであり、GKの佐藤健は『まさか打って来るとは…』と思い返しくれたあのゴールは、崩した上での必然ではなく、佐藤悠希の積極性が生み出した偶然でもあった。だからこそ、最初は押し込まれた相模原だったが、時間の経過とともにじっくりボールをキープして、前に出やすい状況を作る自分たちがやるべきサッカーを取り戻し始めた。それに対しての長野だが、須藤、トロがボールを持った時に2トップのどちらかはプレスに行くが、3ボランチの中で『誰が行くのか?』の判断が常に曖昧であった。そして前線にボールが収まったとしても、やはりその場面で『誰が行くのか?』が曖昧であり、この部分(中盤の完成度ではなく)でのコンセプトが相模原より劣っていたことにより、同点ゴール、そして仙石の退場にも繋がっていってしまう。


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内容的に言えば、これ以上ない形でスタートしたはずだったこの試合だが、終わって見れば1-2と逆転負け。それも相手との完成度の違いを見せられた上での完敗だった。仙石の退場がなければ…と思う人もいるかも知れない。だがそれは明らかに違うと言える内容でもあった。スタッツを見ると長野のシュート数は結果的に相模原を上回る8本を放った。しかしそのほとんどは、終盤のパワープレーが生んだものであり、相手もその流れを見極めた守備をしていたので、相手から見て驚異になるものではなかった。そして退場となった2枚目の警告シーンだが、これは妥当なジャッジであったと言えよう。そう考えれば、今季は『中盤の要』として期待されている仙石だからこそ、前半ですでに1枚貰っている状況を考えながら、もう少し冷静にプレーして欲しかったところでもあった。


そして試合後、地元メディアは美濃部監督に対して『待望の新スタジアムでの開幕戦で、先制点が取れたし、若い選手も出場するなど収穫もあったかと思いますが…』と言う質問を投げかけた。しかし監督は至って冷静にこのように答えてくれている。


『結果から考えたら、収穫は少ないと思うし、内容にしても収穫は少なかったです。今は自分がイメージしてるサッカーと、全然かけ離れた内容になっているので、なんとか立て直さないといけないと感じています。そう考えれば、今日の試合からの収穫というものは無かったと感じます』


まあ、予想していた通りの返答だった。何かいいコメントが欲しいのはわかるが、あの内容で「いい動きが出来ている」とか、「方向性は間違っていない」と返事が返って来たら心配になるが、そこはさすがに美濃部監督。正しく現状を分析しているのだ。


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補強により、戦力差があるのは仕方のない部分でもあり、『それを今すぐどうにかしろ』と言うのも無理な話。そしてその戦力差というものは、戦いながらチーム力を高めて行くしかないものでもある。だからこそ、その部分に対する批判は不要だと思うのだが、チームの方向性やコンセプトが見えないのは非常に難しい問題でもある。要はこの2試合で『2015年の方向性』が見えてこなかったのがもどかしいのだ。町田戦で見せた粘り強い守りは、今シーズンのベースになるのかと思われたが、この日は素早く展開しようとした町田とは違いを、緩急をつけながらしっかりボールを繋ごうとする相模原に対して、『やるべきこと』がまるで見えなかった。


別に勝てなかったから、チームを批判しているという訳では無い。今年は『最後までもつれるであろう』と見ているからこそ、チームにはイケイケとか『なんとなく』ではなく、地に足をつけた『方向性のあるサッカー』をやってほしいのだ。だからこそ、序盤に勝てない試合があっても仕方が無いと見ているのだが、その中で『何がやりたいのか見えない試合』というものをやられてしまったら、それはたまらない…


美濃部監督とは中盤のシステムや、プレスの位置などの話などをさせてもらったが、『次節は仙石が出場停止と言うこともあり、人の入れ替えをすることになるし、今のチームに一番いいと思われる形を模索することもいいかもしれない』と答えてくれている。


『焦ることはない』と言っても、方向性やコンセプト、そして選手それぞれの動きだしのタイミングがズレたままだと、時間だけが無駄に過ぎてしまうことになる。当然ながら、対戦相手からマークされる存在であることに変わりはないし、その上で相手も戦力を高めている。だからこそ難しい戦いが続くことになるのだが、その中で走る、動くという『基本』の部分で負けてしまったら勝てる試合も落とすことになってしまう。


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エースがいないから? 退場者がでたから? それを言い訳にしていてはいけない。華麗さや理想を求めるより、今は泥臭く走り抜いてしぶとく勝ち抜くしかないのである。そして華麗なパルセイロ、理想を追い求めるパルセイロは、昨年12月の讃岐で捨ててきたはず。そう、獅子は千尋の谷から駆け上がるしかないのである。12月、讃岐に現実を見せつけられ、そして今、自分たちがやるべきサッカーすら見失いかけている長野パルセイロ。だが、そこから這い上がるだけの力は間違いなくこのクラブにはある。もう一度、しっかり自分たちの現状を見つめなおした上で、藤枝のピッチでは華麗さではない『激しさ』もある『獅子の戦い』を期待したいところだ。

2015年3月20日 (金)

2015年の長野が目指す方向性とは?

2015年明治安田生命J3リーグ 開幕戦
町田ゼルビア 0-0 長野パルセイロ



正直なところ、結果にしても、内容にしても『予想どおり』とも言えたこの試合だが、この結果(内容)に対してポジティブに捉える人、危機感を抱く人、さらには『こんなもんなのか?』と捉える人など、感想は様々に分かれるところかも知れないが、一つだけハッキリ言えることは、現時点で長野パルセイロというクラブがJ3でナンバー1クラブではないと言うことだろう。



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当然ながら、長野エルザ時代から見続けて来ているからこそ、このクラブに対する思い入れは強いものがある。しかし長野以外のJ3クラブの補強状況、さらには仕上がり具合にトレーニングマッチの内容なども合わせて、各クラブの「現時点での力」というものを冷静に判断した場合、申し訳ないが今の長野をJ3ナンバー1と言うことは出来なかった。



サッカーを広く見ている人ならば、いかにいい選手をたくさん集めても、絶対的な強いチームにならない場合があることは知っているはず。確かに大型補強を行えば、期待値というものは高まるものだが、その反面で『単純な足し算だけで強くなる保証はない』と言う意見も必ず出て来るものだ。まあ確かに、やって見なければわからないという世界でもあるが、それを差し引いたとしても長野パルセイロの補強は不安を感じるさせるものでもあった。



離別を選択した戦力(選手)に対して、迎え入れた戦力により、更なるパワーアップを図るのが補強の大原則だが、今年に関しては『プラスα』の幅が少ないことは気になっていた。そんな状況の中でキャンプに突入したが、そこでエースの宇野沢が十字靭帯損傷という大怪我を負ってしまい、前半戦絶望という最悪のシナリオを迎えてしまった。さらに宇野沢以外でも故障者が数名出てしまったことにより、仕上がりと言う部分でも『万全』とは言い難い状態で開幕を迎えていた。



だからこそ現時点で『J3リーグナンバー1』とは言えない現実があった。しかし、勘違いしないで欲しいのは『長野が弱い』と言っている訳ではないことだ。JFL初年度となった2011年以降、リーグ戦での結果は常に2位以上の成績を残すなど、その安定した力は今シーズもしっかり維持しており、当然優勝を争うクラブの一つであることは間違いない。あくまでも、現時点で『1番ではない』と言っているだけの話である。



しかし、昨年の入替戦で讃岐にあって長野に無かった『圧倒的な個の力』というものを、シーズンオフに補うのか? という部分に注目していたのだが、J2リーグでの経験値も高い千石廉を獲得したものの、結果的に大きな目玉となる補強はないままでシーズンに突入した現実に対しては、不安が残るところでもあった。そして、理想通りの補強をやりきれなかった、クラブの厳しい現状にもだ…



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例えば今シーズンの新しいユニフォームを見て欲しい。ここ数年は胸、袖、背中と全て位置にスポンサー広告の入ったユニフォームであったが、今年は背中の部分には入っていない。こんなところにも、昇格を逃してしまった影響が及んでいるし、コスト削減のため選手人件費も限られた予算内で人選しなければいけなかったこともあり、思い切った補強に出られなかった。仮に今シーズンで昇格を決めたとしても、実は経営状態が、「真っ赤でした」なんてことなることだけはどうしても避けたかった。だからこそ、バクチに出るのではなく、『我慢しつつ、その中で結果を出す』という、堅実路線を選んだ長野パルセイロ。



そして開幕戦の相手だが、長野とは対象的に積極的な補強を行い、プラスαの部分では間違いなく今季のJ3ではナンバー1となった町田ゼルビアだった。例えば開幕戦のスタメンではなく、サブの選手を見て欲しいのだが、他のJ3チームであればスタメンでもおかしくない名前が並んでいる。確かに『足し算』だけで戦力を図ることが全てではないのはわかるが、J3というカテゴリーにおいては、選手個々の『ポテンシャルの違い』はJ2以上に物を言うからこそ、町田の『やる気』というものも、とても強く感じるのだった。



このように、補強に成功した町田と、そして公式には『不満がある』とは言わない(言えない)が、自分たちが感じている不安(不満)を『まだチームとしてのポテンシャルは完全ではない』という言い方で留めた長野という両者が開幕戦で対戦したが、冒頭にあるとおり町田ペースでゲームは進んだ。



シュート数だけではなく、バイタルエリアへの侵入回数、ビルドアップから展開が繋がって行く回数など、ほとんどの点で町田は長野を上回っていた。そして長野の攻撃という部分では、昨年の悪い時を再現するかのように、松原のロングスローと山田の突破以外、見るべきものが無かった。繋ぐサッカー、攻撃的サッカーと言われた、これまでの姿を開幕戦で見ることは全く出来なかった。しかし、このゲームだけを見て『今年の長野はこんなもんなんだ』と判断するのもまだ早い。



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このゲームでは、お世辞でも攻撃陣の出来はよくなかった。美濃部監督も『お客さんにとってはつまらなかったと思います。でも、今のウチの状態からすればこんなもんですよ。3トップで入ったけど、ボールが前で収まらないから形も作れなかったですからね。それに相手がもっとワイドに来るかと思ったら、予想以上に縦に入れてくる回数が多かったこともあり、ラインが中々上げられなかった。まあ今は我慢しながらの時期なんで、無失点で抑えて勝ち点を取れたから決して悪いとも思っていません』と話をしてくれたが、今の状態がよくないことを理解しているし、さらには宇野沢もいない状況だからこそ、大橋を入れて守備を安定させる3ボランチシステムも準備して来た。そして流れが悪い中でも、しぶとい守備で町田の攻撃を凌ぎきったことこそ、やはり長野には底力があるという証しにもなったと感じるところでもあったが、実はこの守備こそが今年の長野のポイントになるのでは? とも感じている。



昨年J3で優勝したツエーゲン金沢だが、攻撃力以上に鉄壁を誇った守備力が優勝の原動力になったことは誰もが認めるところ。そして思い起こせばツエーゲン金沢というチームも上野監督(現レノファ山口監督)が堅守速攻の形を植え付け、全社からの復活でJFL昇格を勝ち取った(※誤認した内容をそのまま掲載してしまい申し訳ありません。こちらの部分に関しましては、お詫びして訂正します)。そして現在の森下監督も一時はポゼッションサッカーを目指した時期もあったが、昨年は現実的なサッカーに切り替え、強固な守備力をベースに粘り強い戦いを見せて最終の3巡目に首位に立って、そのまま優勝をものにしたのだった。



長丁場であり、さらには同じ相手と3度対戦するJ3というリーグは、レベルはともかく、『やりにくい』リーグであることは間違いない。だからこそ昨シーズン、序盤から首位を走っていた町田は終盤に失速してしまった。優勝候補と見られていた長野も相手からの徹底した対策を練られて苦戦を余儀無くされた。



確かに戦力をアップさせ、最初から圧倒的に勝って、堂々とJ2に上がりたいという理想論はどのチームにだってある。しかし、その理想論を実践することが難しいことを知らしめた昨シーズン。さらに長野にとっては、昇格を逃したことで『予算』という部分で無理出来ない事情もあった。だからこそ、今年の長野は理想論だけではなく、勝ち点を積み重ねられる現実的なサッカーを求められるシーンが増えて来るはず。



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堅守をベースに、少ない手数で得点を奪い、リードを守りながら終盤を迎える。そして同点に追いつこうと相手が前に出てくれば、これまで積み重ねて来た攻撃的サッカーもやり易くなるはず。だからこそ、今は辛抱の時となる長野。



次節はついに南長野でのホームゲームとなるが、相手の相模原はベースになるチーム力は別として、プラスαの幅だけで見た場合には長野よりも上回るはずであり、またしても難敵と言える相手を迎える。正直、1週間で劇的によくなる可能性は低い。だが、長く、難しい戦いが続くリーグ戦なのだからこそ、焦る必要もない。開幕戦も「勝てなかった」と、捉えるより、悪い中で町田の勝ち点から2を奪い取ったと考える方が無難。



現状から考えた場合は、今からエンジン全開にする必要もないのだから、ひたすらしぶとく、泥臭く戦い、夏を過ぎたぐらいまでに良くなればいいのである。そのためにも、今年の長野には『繋ぐ』ということだけではなく、いかに効率良く勝つか? をとことん求めてもらいたところだ。

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