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2014年12月10日 (水)

讃岐が再び教えてくれた大事なこと

悲願のJ2入りを目指し、カマタマーレ讃岐との入替戦に挑んだ長野パルセイロだったが、2試合合計0-1で敗戦を喫し、昇格のチャンスを逃してしまい、讃岐はJ2の座を守る事に成功した。そしてその入替戦から3日が経過したが、改めて試合を振り返りながら、今後の長野がどうあるべきか考えて行きたい。

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ホームである長野で行われた1戦目は、アディショナルタイムに2度の決定機を迎えながら、それを両方とも外してしまったものの、アウェーゴールを与えなかったこともあり、悲観するほどでもない状況で第2戦の地である丸亀に乗り込んだ長野。しかし結果は0-1で敗れてしまったが、試合後の美濃部監督は、この試合を見た人すべてが感じたはずである感想と同様に、差があったとことを認めた。そして「球際での競り合い」は全く違っていたとコメントしてくれていたが、それ以外の部分でも大きな差があったと思われる2つのポイントにフォーカスを当てて触れておきたい。

一つ目は「したたかさ」だ。

2試合を通じて、スコア以上に差を感じたこの試合だが、(前に)行くところ、引くところをJ2での戦いの中で身を以て知った讃岐にとり、長野の攻撃は十分凌ぎ切れるものであったのだ。また、仕掛けてくるアタックのバリエーション、そして隙が生まれてくるスペースに関する情報も、全てスタッフのスカウティングどおりであり、一見すると長野も奮闘を見せたと思われた部分ですら、実は讃岐にとっては想定内であったのだ。だからこそ、試合後の北野監督は2試合を通じてミスからピンチを招いた1試合目のアディショナルタイム以外、特に慌てる必要はなかったとも語ってくれている。

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そして 2戦目の前半は、カウンターを有効に使った「以前の讃岐」とは違う、縦だけではなく、サイドにも効果的にボールを動かしながら迫力のある攻撃を見せ、4-4-2でスタートした長野の2ラインをズルズル後退させ、宇野沢と勝又を孤立させて行く。しかし後半に入って長野がペースを取り戻すと、今度は一転して守りからカウンターと、これまで築き上げてきたサッカーに切り替え、見事なまでの試合巧者ぶりを発揮し、長野の攻撃を次々とかわして行くのであった。そんな流れの中で、一発でウラを狙っていた木島にボールが入った瞬間、勝負ありだった…

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試合後の美濃部監督も「J3リーグだって、非常に難しいリーグです」と前置きはしたものの、全体的なリージ自体の力関係としてJ2とJ3では大きな差があることも認めていたが、2010年の全国社会人サッカー大会から続くライバルとの差は、この1年で大きく開いてしまったことも認めざるを得ない瞬間でもあった。今シーズンの讃岐は、結果的に終始残留争いすることになってしまったが、そんな戦いのなかでJ1昇格を決めた、湘南、松本、山形に、かつてJ1でタイトルも獲得した磐田、千葉、大分などのチームと当たることで、壁にぶつかりながらも成長し、後半はしっかりJ2でも戦えるチームに生まれ変わっていた。それは長野がどうJ3リーグの中で頑張ったとしても、得られる経験値ではなかった。だからこそ、長野の攻撃に対して慌てることもなく、状況を見ながら戦い方を変更する余裕を見せるなど、したたかに勝利を手繰り寄せたのであった。

そして2つ目は絆という点であろう。

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試合後「決勝ゴールを決めた木島選手への評価は?」といいう質問に対して北野監督は苦笑いしながら「あれが木島の仕事だから(笑) ホント、木島の動きに対してはさ、目を瞑っている部分はたくさんあるよ。でもね、それを差し引いても木島はチームのために何かをやってくれる」と話してくれた北野監督だが、これはお互いの信頼関係がしっかり構築されているからのコメントでもあった。

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以前北野監督は「木島もさ、いろんなチームで、いろんなことがあったじゃない? で、一度、俺んとこに連絡してきて『入れてくださいよ』って言って来たけど、その時はシーズンの途中だし、俺の一存では決められないと断ったけど、行き場を無くしてしまってまた、『北野さんお願いしますよ』って感じで来られたから、じゃあ仕方が無い!って感じになったんだけど、俺としても奴は(帝京の)後輩じゃない? だからさ、アイツの最後ぐらい、綺麗に終わらせてあげたいからさ…」と話してくれた。そう、北野監督と木島には普通の「選手と監督」という関係だけではなく、先輩後輩と言う間柄であり、共に偉大なる恩師、古沼貞雄さんにサッカーとは何か? を教わった仲間なのである。だからこそ、北野監督は木島という選手を誰以上に目を掛けた。それに木島も不器用ながも応えようと奮闘し、それがあの決勝ゴールに結びついて行った。

また、北野監督と木島の関係だけではなく、いろいろなチームを渡り歩いたベテランたちの「見えない活躍」が、チームをどん底から救い出し、バラバラだったチームを一つにし、それがJ2残留へと結びついていたことを見逃せない。開幕から7連敗スタートと、J2の洗礼を浴びた讃岐。その後も勝ちきれない試合が続き、チームの中では「やっぱりだめなのか…」という空気が流れ始め、チーム自体がバラバラになる寸前の時期もあった。

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J1のようにインターバルのないJ2で、チームをリセットする時間はほとんどなかった。そんな過密スケジュールの中で、チームを立て直そうと活躍してくれたのは、木島、西野、高橋、山本といった、いろいろなチームを渡り歩いて、このチームに拾われたベテランたちであった。彼らが率先して若手選手たちと話し合う機会を作り、チームの方向性とやり方についての意見をまとめ、その上で監督やスタッフたちと再調整を行い、チームの意思統一を改めて行い、時にはチームの雰囲気を良くするために、やはり彼らが率先していろいろな行動を起こしてくれることによって、バラバラになりそうだったチームが、一つの絆で結ばれたのであった。

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そしてこの試合のベンチには、ベンチ入りできない選手たちのユニフォームを全て並べ、「チーム一丸」となって戦うことを前面に出していた讃岐。そんなことがあったからこそ、北野監督は残留を決めたあとに、チームを立て直すことに尽力してくれたベテランたちへの感謝の言葉を忘れなかったのである。

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さて、話を長野の方に戻すが、長野にだって今シーズン、相手が研究してきた戦術に自分たちらしさをなかなか出せず、苦しい試合となったゲームがいくつもあった。だがそれでも「力の差」により、試合の中でそれをひっくり返すことが出来たが、讃岐にはそれすら出来ない「大きな壁」にブチ当たっていた。そしてチーム全体がバラバラになりそうになるまで、相手チームにボロボロにやられてしまった。そんな経験があるからこそ、今の「逞しい讃岐」が産まれたし、北野監督も選手も「今の力が本物なのか? ということは、来年またJ2の舞台でやらないと証明出来ない」という強い思いがあった。

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当然、長野にだって「絶対にJ2に上がりたい」という強い思いはあった。だが、かつてのライバルとの差は、想像以上に大きかったのである。また、伊東輝悦という日本サッカー界におけるレジェンドも在籍しているものの、残念ながら彼の姿は今ピッチにはなく、長野にとって「宇野沢」という存在がすべてだったことは否定出来ない事実である。確かに長野の選手を見渡せば、能力の高い選手は多いが、宇野沢以外でJ1などの大きな舞台で経験を積んで来た選手はほとんどいないし、相手からすれば、宇野沢以上に「怖い」と感じさせる選手はいなかった。

長野というチームはこれまで、ビッグネームに頼らず、選手の能力を最大限に伸ばしてチーム力を成長させて来た。いうなれば、現在の長野は美濃部体制ではあるものの「地域時代からの集大成」とも言える形でもあった。しかし、悲願のJ2昇格が目の前に迫った時に、ライバルであった讃岐に「これではまだ足りない」という厳しい現実を突きつけられたこの試合。

対戦相手に対してもっと厳しい当たりをしなければいけないし、もっと走ってハードワークして、相手の良さを消して行かなければ上ではやっていけないことを教えてくれた。そしてこれまで以上にポテンシャルの高い選手、そして経験値のあるキープレーヤーの存在が必要となってくることも。そうなると、クラブを運営していく上で選手人件費に関してはさらなる予算が必要となってくるが、それを補える「営業力」という部分も重要になってくる。美濃部監督が感じた「差」を埋めるための、最後のピースが手に入れられるように、クラブが今以上の「努力」ができるか? というのも大きな鍵となってくる。

讃岐は昨年、長野が昇格条件を得ていなかったこともあり、J2リーグ21位のFC岐阜との対戦ではなく、最下位のガイナーレ鳥取との入替戦となったが、近年のJ2リーグの成績を見る限りでは、最下位と21位はそれなりの差は出ている状況であり、だからこそ讃岐は鳥取に勝てた。しかし、今年はレギュレーションどおりにJ3の2位 vs J2の21位という形になったが、想像していた以上にJ2リーグ21位の壁は高かった。この状況を踏まえれば、今後もJ3の2位チームにとってはかなり難しい戦いになることが予想される入替戦。そして長野にとっても、来年は絶対に「優勝するしかない」という思いは、より強くなった。

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これまで、「誇れるサッカー」を作り上げて来たという自負があった長野。確かにJFLやJ3というカテゴリーとしては、非常に完成度も高く、それなりに評価を得た事も事実だった。しかし、2010年の全国社会人サッカー大会決勝戦以降、常にライバルとして争って来た讃岐に、手痛い敗戦を喫したことは、「このままでは足りない」と、目を覚まさせるいい機会になったと捉えるべきであろう。ちょうど2010年の対戦の時にも「自分たちのサッカーだけでは勝ちきれない」という現実を見せつけられ、地域決勝に向けて鈴木政一強化部長(前U19日本代表監督)の指導のもと「負けないチーム作り」を進めて、JFL昇格を勝ち取った過去がある。そして今、あの時と同じ北野監督率いる讃岐の前に、足りないものが、何であるかを教えられたのは、もう縁としかいいようが無いだろう…。

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そして奇しくも北信越リーグ時代のライバルでもあった松本山雅、ツエーゲン金沢がそれぞれJ1、J2へと昇格し、2009年同様に再びライバルたちに差を広げられてしまった長野。美濃部監督は「いつまでも下を向いているヒマはない」と語ってくれたが、これ以上の足踏みは許されない長野にとって、2015年という年は優勝以外許されない年となってくるのだが、金沢に勝ちきれなかった事実、そして讃岐に見せつけられた現実を、どのように分析し、どうやってこれを「糧」としていくのか? 答えは自ずと一つしか無いと感じる。これまでの長野が積み上げて来たスタイルに、さらなるハードワークを積み重ねて行くことしかない。そしてその答えを見つける鍵として、長野で2-0と勝利した町田戦の「ハイプレスサッカー」が、これから目指すサッカーの着地点となっていくはず。あの時の力強いサッカーを、コンスタンスにやれるようになれば、優勝という目標が必然になってくるはずだが、それをやりきるためにもこれから先に発表されてくる、補強情報にも注目して行きたいところだ

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