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2014年4月30日 (水)

もっと知って欲しい自衛隊大会

毎年4月下旬に行われる自衛隊サッカー大会。今年で48回目となったこの大会だが、先日の27日に決勝が行われ、単独クラブとして関東リーグ2部にも所属している(海自)厚木マーカスが2年ぶりに王座奪回を果たし、これで最多優勝記録を17回に伸ばして今年の大会は幕を閉じた。



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それにしても、毎年この大会を見ていて驚かされるのが、年々大会のレベルが上がって来ていることだ。カテゴリー的に考えれば、参加チームの頂点が関東リーグに所属している厚木マーカスを筆頭に、それ以外のチームは県リーグの1部~3部という感じであり、昨年優勝を果たした空自第三補給処サッカー部(以下FC.3DEP)は埼玉県リーグの2部所属クラブといったところ。あくまでもカテゴリーだけで見てしまえば、地域リーグよりも「下」の大会と見られてしまうかもしれない。



だが、実際に試合を見ていると、そこに「県リーグ相当」と思われる試合は意外に少なく、逆に「おおっ!」と感じるような試合もある。さらにどの参加チームも優勝を狙うとともに、自衛隊でサッカーをやる人間であれば「マーカスに勝ちたい」と誰もが思うもの。そのため、大会の常連チームである下総・館山、海自大村、陸自滝ヶ原、厚木なかよし(マーカスとは姉妹クラブのような関係である)、さらには前回王者であるものの「マーカス相手に圧倒して優勝したい」と、チャレンジャー精神を持ち続けるFC.3DEPといった出場チームは、普通の仕事とは違う大変な任務の中で、限られた時間を有効に使って、より質の高いサッカーを目指してトレーニングに励んで来たのである。



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いや、高いレベルを目指すのは、ここにあげたチームだけではなかった。4大会ぶりの出場となった陸自習志野も、ひそかに上位進出を目指していたのだが、準決勝では連覇を狙っていたFC.3DEP相手に、しっかりとした戦略を練り、まさにしてやったりの「粘りの戦い」を見せ、本大会における「番狂わせ」を達成。そして初の決勝進出となったが、ここでは準決勝のような戦略を練るのではなく、真っ向勝負で挑んだのだが、残念ながら力の差は如実であり、王者マーカスに完敗を喫してしまったが、この敗戦が必ず来年以降の躍進に繋がることを予感させてくれた。



このように、目標となる高いレベルのチームの存在があり、そこに勝利することを目指したことにより、大会のレベルが上がって来たことは間違いなのだが、それとは別の角度で、なぜこの大会がおもしろいのか? を考えてみたい。



そしてその答えについてだが、この大会には今のサッカー界だけではなく、現代社会が失いつつある光景がそこにあるからこそ、「おもしろい」「魅力的」と感じるのではないだろうか? 



ではそのおもしろや魅力とはなんなのか?



端的に言えば、強い意志と強い肉体を持ったものにしか出来ない、強靭でフェアなサッカーがそこにあるからであろう。この大会とかではなく、普通に子供であろうと大人であろうとサッカーではファールはつきものであり、倒す、倒されるというのはどこの試合にだってある。当然、倒された中には本当に大ケガに直結する場合もある。だがその反面で、本当はたいしたことがないのに、時間稼ぎやカードを期待して大げさに倒れる場合もある。しかしこの大会では、みんな大げさなそぶりはしないし、早く次のプレーに入ろうとなんとかすぐに立とうとする。また、倒されたからと言って、怒りを露にして食って掛かるような仕草をしたりする選手もいない。



そう、鍛え上げらた肉体だからこそ、多少の痛みにも我慢できるし、鍛えられた精神があるからこそ、次への切り替えがすぐに出来るのである。確かにこの大会では、FC.3DEPやマーカスのように、フィジカルだけに頼らないで繋ぎで圧倒しようとするチームもある反面で、自衛隊らしいフィジカルサッカーを続けているチームある。だがそういうチーム同士の試合だからと言っても荒れる訳ではなく、とてもクリーンでフェアな試合がほとんどなのである。



また、ここ最近の社会の流れとして、仲間や職場の団結よりも個性の方が尊重される時代に変わって来ていると感じるが、この大会を見ていると「団結力の素晴らしさ」というものも、実はいいものなんだなあ…感じるのである。近年の大会ではマーカスを筆頭にFC.3DEPや下総・館山と言った強豪チームが大会を引っ張って行く存在になっているが、それ以外のチームは申し訳ないが、実力がやや下であることは否定できない。そんな中で、どんな分野でも「チームワーク」という言葉をよく耳にするが、特にこの大会ではチームワークをさらに上回る「団結力」というものが、想像以上に大きな力を生み出す原動力になっていると強く感じるのだ。



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自衛隊という組織では、ほとんどの任務や演習が集団で行うことばかりであり、それをこなす上で年齢も出身地も階級も違う仲間が集い、意思疎通をはかってそれらを乗り越えて行く。だからこそ、常に一人はみんなのために、みんなは一人のための意識が強く、これが任務においてだけではなく、サッカーやスポーツの世界でも色濃く反映されている。さらにここに、OBたちの思いや期待、所属部隊の名誉のためにという意識が加わることで、実力以上の力が備わることもある。そして強い団結力が生まれるからこそ、準決勝で習志野はFC.3DEP相手に番狂わせを達成することが出来たし、決勝でもマーカス相手に最後まで1点を取ろうと諦めない姿勢を見せてくれた。



こういったフェアな姿勢や、一つにまとまった団結力を見られる大会というものは、実は近年においては少ないのでは? と思うのだ。そしてこういう大会こそ、子供たちが見本とすべきなのでは? と感じるのだ。レベル云々ではない。スポーツをやる選手として、フェアプレー精神を持ち、スポーツマンらしく正々堂々とした振る舞いを見せてくれるこの大会を、もっと多くの人に知ってもらいたいと思うのだ。そしてもう一つ。この大会のラストを飾る表彰式の存在にも言葉を付け加えたい。



高校サッカーを例に出してしまって申し訳ないが、この大会のレベルはどんどん向上しており、とても素晴らしい大会の一つだと思っているのだが、一つだけどうにかならないのかな? と感じるのが開会式や表彰式でのだら~んとした態度や、はしゃぎすぎる場面。これについては、別に高校サッカーだけに限った話ではないのだが、特にメディアの多さ、注目度の高さから選手側もそうなってしまいがちなのかな? と感じるが、それに比べてこの自衛隊大会の表彰式は、日本のサッカー界の中で間違いなくNo.1の規律と美しさのある式だと感じるのだ。



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まあ、防衛省の幹部がという「上司筋」が来賓として来ていることもあるし、常に整列や敬礼など厳しくトレーニングしている自衛隊員だからこそ、「あたりまえだろ?」という部分はある。だが、普段の自衛隊を知らない人にとって、あの式は「なんて規律があり、美しい式なんだろう」と必ず感じるはず。すべてを真似しろという訳ではないけれども、いろいろな大会を主催する関係者は、この大会の式を参考にしてもいいのでは? と思うぐらい。



スポーツというものは、どうしても結果だけや、そこのレベルだけで語られがちだが、スポーツをやる上でとても大事となる、礼儀、人を思いやる心などを含めたフェアプレー精神、そして日本人ならではの団結力が、目に見えるということもとても大事だと思うのだ。確かにこの大会は自衛隊隊員だけのローカル大会かも知れない。よって、見に来る人のほとんが家族やOB、そして職場の人間だけに限定されしまいがちだが、会場自体は誰でも見に来ることは可能だし、入場料も無料。来年こそ、強靭な肉体を持つ男たちの、フェアでクリーンなこの大会を、ぜひとも多くの人に見てもらい、もう一度フェアプレー精神とは何か? そして団結力の素晴らしさというものを実感してもらえれば幸いだと感じるところです。

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