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2014年4月 3日 (木)

挑戦し続けるNEXTチームという存在

ファジアーノ岡山NEXT、鹿児島ユナイテッド、レノファ山口、アスルクラロ沼津、マルヤス岡崎、ヴァンラーレ八戸という6つの新顔を加え、全14チームで優勝が争われる第16回日本フットボールリーグ。さらに今季は前半をファーストステージ、後半をセカンドステージとし、それぞれのステージチャンピオンが年間チャンピオンを争うレギュレーションに変更された。さらに優勝争いと同時に毎年注目となる残留争いだが、来期から16チーム制でのリーグ運営となることにより、今季所属しているチームの地域リーグ降格はナシがすでに決定している。

さて、開幕から先日の試合で3節が終了したが、首位に立っているのは現時点でHonda FCであり、そこは別に驚くべきことでもないのだが、2位に鹿児島、そして4位に山口がつけていることは驚きでもある。昨シーズンからの積み重ねのある佐川印刷やソニー仙台といった「企業サッカー部の雄」が、Honda FCとともに上位を独占するかと思われたが、そこに新加入の鹿児島や山口が入って来ているのは大健闘と言ってもいいだろう。

そしてもう一つ、今シーズンの注目になると思われていたのが横河武蔵野だった。昨シーズン、地味に長野パルセイロと並んでリーグ無敗記録を作り続け、吉田監督が植え付けた「堅守速攻」のスタイルが完全にチームのものとなり、2014シーズンはついに優勝を狙えるチームになるのでは? と思われていたが、シーズン終了直後から激震に次ぐ激震がチームを襲うこととなる。

チームの絶対的柱であった瀬田達弘が引退。さらにベテランとしてチームを裏で支え続けた熊谷、常盤も引退。小林陽介も退団(引退→松本山雅スクールスタッフに就任)、そして2014シーズンに急成長した藤吉、上田らはJ3クラブへの移籍を決断し、レギュラークラスとして活躍した矢部、冨岡、関野をも移籍。昨シーズン32人登録されていたメンバーのうち、半分の16人がチームを去るという異例のシーズンオフを迎えた吉田武蔵野。

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さすがに吉田監督も新チームの構成には頭を痛めたのだが、監督はブレることなく昨シーズンのやり方を踏襲しながら、同じように「戦いながら成長していく」という方向性のもとで、2シーズン目をスタートさせていた。

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さて、第3節はホームにファジアーノ岡山NEXT(以下岡山)を迎えてのゲームとなったのだが、試合序盤に観衆の視線を釘付けにしたのは見事なムービングサッカーを披露する岡山の方だった。32人の登録選手抱える武蔵野に対して、岡山は16人しかいない。さらにこれまでの試合を含めて控えは最低限の3人だけで戦っている岡山。だが、立ち上がりから人もボールも良く動く岡山ペースで試合が始まり、4分にこのチームでは「大ベテラン」とも呼べる新中がファーストシュートを放って、勢いを確かなものにして行く。さらにCKと同等の距離と正確性を持つ、新中のロングスローが大きな武器となり、序盤の武蔵野は完全に自陣に釘付けとなってしまう。また、トップ下に入る19歳コンビの幡野、藤岡が実にいい動きを見せ、多彩な攻撃パターンを強敵相手に次々と披露していく。

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さらに19分、新中が中で落とし、入って来た幡野がシュート! ここはDFがなんとか足を伸ばしてカットしたものの、こぼれ球が詰めていた呉の足下に転がり、両チームにとって最初の決定期をここで迎えたのだが、シュートは枠の外に外してしまい、チャンスを惜しくも活かせなかった。

このピンチを相手のシュートミスという形で乗り切った武蔵野は、20分以降から瀬田がいなくても変わらない! ということを印象づける強いフィジカルを活かしたハイプレス、そして後ろからのロングボールを多用し、徐々に岡山の高いラインを押し下げて行く。そして30分を過ぎた頃から武蔵野の速い潰しのペースがさらに加速して行くと、今度は岡山が沈黙の時間を迎えてしまう。これが昨年1シーズン積み重ねて来たチームの強みだった。レギュラークラスの大半が退団という形を選択したものの、吉田武蔵野は揺らぐこと無く、残った選手と新加入の選手たちでこれまでどおりのサッカーを見せつけることに成功する。

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さて岡山だが、どう見ても「若さ」が出てしまった。確かにメンバーには新中と西原という「年長選手」がいるものの、それ以外の選手は17〜20歳と、U22選抜以上の「若手集団」である岡山。いい流れで試合に入れたと思ったら、徐々に相手の力に押し込まれ、前半30分以降は完全に自分たちのサッカーを見失ってしまう。さらに悪い流れの状況が選手の判断すら惑わしてしまう。終了間際の43分、左サイドを守る寄特が簡単にサイドを抜かしてしまい、中でフリーの選手が2人いるという状況を与えてしまい、この時間で痛恨の失点を許してしまう。

しかしハーフタイムを挟んで岡山は「もう一度自分たちのサッカーを思い出そう。そして切り替えの速い攻撃を仕掛けようと」と選手に指示を与えると、そこから岡山も息を吹き返して、五分とまでは行かないものの、粘り強い守備から速攻で活路を見出して行く。さらに80分を過ぎた辺りから、武蔵野の運動量に陰りが見えだすと、左サイドからの展開から最後は前半に決定期を外していた呉が今度こそ蹴り込み、ついに同点。

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その後はさすがに両者とも消耗戦となり、決定打を打ち出せないまま1-1のドローで終わったが、前節4失点と惨敗を喫した武蔵野にとっても、まだ勝利こそ上げてない岡山にとっても、実りのあるドローと言える内容で試合の幕は閉じた。

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武蔵野のゲームプランについては、本当にブレがなく、誰が出ても変わらないんだ! ということを改めて強く印象づける試合であったし、試合を重ねて行けば間違いなく上位争いには絡んでくるだろうと予感させた。そして健闘した岡山だが、何よりも「序盤の輝き」はこの試合で一番の光るものだったと感じさせた。

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最年長の新中剛史は、前線で本当にいい活躍を見せたし、若い選手が多い中でも存在感を大いに発揮させてくれた。また、独特のドリブルリズムと多彩なパスでゲームにアクセントをつけた幡野貴紀、高校を卒業したばかりだが、早くも大人と対等に戦う加藤健人と田中雄輝など、ベテラン2人以外の若い選手は、どれも「ダイヤの原石」と言っても過言ではないだろう。そして加藤と田中は、チームに所属しながら岡山大学の学生としても活動するなど、地元岡山との関わりを持ちながら、選手としてだけではなく、人としても大きく成長しようとしている。

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かつてジェフ千葉、徳島、愛媛などのチームが、セカンドチームを持って活動を続けていたが、これらのチームは資金難という状況なども重なり、セカンドチームを手放す結果となっている。また岐阜や群馬も社会人カテゴリーのセカンドチームを持っているが、さすがに全国リーグへの参入に対しては「考えてはいない」とコメントしている。どのJクラブも、セカンドクラブを持つだけではなく、トップチームの運営ですら厳しい状況のチームが多い中で、東京や横浜、大阪、福岡とは違い、お世辞でも「都会」とは言えない岡山、さらにはトップチームはJ1ではなく、まだJ2のクラブなのだが、なぜJFLという、金のかかるリーグに挑戦していくのか?

今や、どのJクラブもユースカテゴリーチームを持つようになったが、高校を卒業した時点でトップに昇格するか、大学に行くか、それ以外の道でサッカーを続けるか? しか、選択肢は無かった。だが岡山は敢えて不況の世の中でありながらも、地元に根付いたクラブとして挑戦し、さらに地元人材の育成に貢献しようとしているのだ。メンバーの大半は、今年〜2年前にユースから卒業した選手達で構成されているNEXTチーム。そして岡山県出身の選手もそれ中に当然含まれている。彼らを「はいここまでです」と見切ること無くチャンスを与え、その中で自分たちで一つでも高いカテゴリーを勝ち取り、トップで通用する人間になろうと努力を続けている。

岡山よりも歴史も規模も大きい千葉が、最後は「投げる」こととなってしまったセカンドチーム(最後の名称はジェフリザーブス)。関東近県という場所ではなく、広島の隣に位置する岡山と言う場所で、J2の中でも精力的な営業活動を見せ、さらには地域貢献などを行い、急速にクラブ規模を大きくしつつあるファジアーノ岡山。正直、トップチームのサッカーというものは、それほど詳しくはない。だが、この日NEXTチームが見せたサッカーは、光るものがあったし、将来性を感じさせる選手が何人いたこともあり、個人的には一気に今シーズンの注目チームになった感もある。

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そしてもう一つ、JFLと分裂して生まれたJ3リーグでは、U-22選抜というチームが戦っているが、年齢的には彼らとほぼ同世代に当たるNEXTチームが、交わることは無いが彼に対して、厳しいリーグを戦うこと、そして限られた人数の中で連携を高めることで、彼ら以上のパフォーマンスを見せる選手に成長していくかという点でも見比べて行きたいところである。

最後に、若い選手たちをまとめあげる、牧野監督にも話を伺ったので掲載しておきます。

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Q:試合を振り返っての感想をお聞かせください
前半というか、ゲームの入り方自体は決して悪くなかったというか、むしろ良かったと思いますね。ただ、それをいい状態のままで起承転結の結びの部分までしっかり「結ぶ」というところまでできるようにしたいと感じたゲームでした。

それができないままで時間が進んでしまうと、なんらかの自分たちのミスにより流れを相手に奪われてしまうし、そこからリズムを崩してしまう、そして失点しまうというように、さらに悪循環に陥ってしまうことがちょっと続いているので、いい流れの中から起承転結で結びの部分まで行けるようにクオリティをもっと上げて行きたいところですし、そんなようなことをハーフタイム中にも話をしました。

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チームのコンセプトである切り替えを早くしたり、走力で相手を上回ろうとか、そういうところを改善していこうと後半に向けて指示しましたが、合うところ、合わないところがありながらも、最終的にはまあなんとか同点に追いつけたので結果的には悪くはなかったのかな? とも感じますが、本人(選手)たちも結果にしても内容にしても満足はしていませんので、引き続きいいサッカーを目指しながらチームのベースとして考えている、走ること、切り替えを速くすることなど原則的なことをしっかり抑えながら少しづつクオリティを高められればと思っています。

Q:試合の入り方は本当に良かったと思いますが、30分以降相手に押し込まれてしまいましたが、今後どう修正していきたいとお考えですか?

試合の中には『流れ』というものがあるので、そういう時間になったときに押し込まれた状況をどう立て直して行くか? というやり方をもっと身につける必要があると思います。もっと走力を上げることだったりとか、いろいろな判断を自分たちでやれるようにしないといけないし、ゲームの中で流れが変わるということは、どんな試合にだってあるごく自然なことなのだから、もっと自分たちで修正できるようにしないといけません。

そういう状況に陥ったときに、選手たち自身がどういう状況が原因で悪くなっているかを判断できるようになってほしいのです。ラインの押し上げが悪いのか? 起点が前線で出来ていないのか? それともイージーミスからなのか? とか、プレーをしながら客観的に分析して対処して行けるようにすることが大事だと思っていますし、そういったことを含めて技術だけではなく、判断面においてもしっかりとした考え方ができる選手になってほしいところです。

まあ、ベンチからもリクエスト(指示)は出しますが、そういったことがある前に、選手たちがプレーしながら学んで行くことが大事だとも思っています。

Q:JFLの中で「選手育成」が目的となるこのチームですが、カテゴリーが地域リーグから上がった今の率直な感想と、これからのチーム育成についてお聞かせください

地域リーグですと、いい状態(流れ)のままで簡単に点が入りましたが、今(JFL)でしたらディフェンスは固いし、(相手の)連動性もあるので、そう簡単に点は取れません。では、そういう時間が続くのであれば、選手たちとともに「どうすればいい形を作れるか、どうすれば点を奪えるか」を、それぞれが考えてプレーする必要性が出て来ています。以前だったら、練習でやった形で崩せていましたが、カテゴリーが上がった今はそう簡単にはいきません。

だからこそ、選手たちそれぞれが(サッカーを)考えるきっかけになるし、そこで考えて実践(プレー)していくことにより、自分たちの質を上げることにも繋がって行くと考えています。そういうことを続けることにより、いいチームにもなるし、いい選手にもなる。そしてその上で、トップチームでも必要とされる選手になって行くと思いますが、JFLでプレーする機会を得たことは、選手たちの意識を見直すいい機会になったとも思っています。

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