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2014年3月27日 (木)

ライバルとの神経戦を制した長野

J3リーグが開幕して3週目。そして長野パルセイロは3節目にして初めて「県内ホーム初開催」の日を迎えた。



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ここまでの成績は1勝1分とまずまずの滑り出し。昨シーズン、天皇杯でJクラブを連続撃破し、さらに横浜Fマリノスとも接戦を演じたことで、完全に全国区のチームとなった感もある長野。そんなこともあり、成績もそうだが内容という面でも周囲の目は良い意味でも厳しくなった今シーズン。そして今季はついにJ2への挑戦となるシーズンだが、昨年と同じようなサッカーを求めるだけではいけないことをクラブはよく理解していた。



いや、これまでと同じではダメなことは、どのチームも感じていることでもあった。昨年は同じ相手と2回しかやらないレギュレーションだったが、今年は3度の対戦があるため、相手も対策をしっかり練ってくるし一筋縄ではいかないリーグ戦となってくることが予想される。だからこそ、シーズン最初の「1巡目」は手の内を全部見せたくないし、相手がどう出てくるかを伺いながらの「手探り状態」ともいえる試合が展開されていると言えるだろう。そしてこの長野vs金沢という、北信越時代から続くライバル対決は、まさに「探り合い」と呼ぶにふさわしい、じりじり感の強い試合となったのだ。



実は両者の対戦は今季2度目となる。開幕前のトレーニングマッチですでに対戦しているのだが、金沢の堅守&カウンターの前にいいようにやられてしまい1-4で敗戦。その時の印象の強かった美濃部監督は、このゲームでは相手2トップのケアをポイントに置いていた。そしてゲームの方だが、やはり序盤に主導権を握ったのは金沢だった。昨シーズンは「これでもか!」と繋ぐサッカーを目指して来た金沢だが、今季はかつてJFL昇格を決めたシーズンのような堅守速攻型に姿を変えて来た。



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J2リーグの経験もあり、正確なロングフィードもできる太田を町田から獲得するだけではなく、群馬から保崎、鳥取から辻などの即戦力を補強し、チーム力を上げ、こちらも同じく1勝1分と上々の滑り出しを見せた金沢。そしてこの試合でも、これまで積み重ねて来た繋ぐサッカーと、前線を走らせた速攻型をうまく使い分けて長野ゴールに迫っていく。3分に辻がファーストシュートを放つと、続く5分には保崎のオーバーラップからチャンスを掴み、CK、FKを挟んで厚い攻撃を仕掛けて行く。



確かに相手のやり方はある程度予想していた。だが、金沢の試合の入り方が想像以上に良かった事もあり、長野は前節同様後手を踏んだような立ち上がりとなってしまう。しかし、さすがに昨年からの積み重ねのある守備は落ち着きのある対応を見せ、なんとか凌いで行くとじわりじわりとゲームの流れを押し戻して行く。



試合前のミーティングで攻撃におけるポイントとしていた上がっていた相手の4バックと、4枚の中盤が作り出す2列のブロックへのアプローチ。それに対して、高橋が狙いどおりの動きを見せたことにより、徐々に相手ブロックにスペースが生まれ始めた。試合後の美濃部監督は「高橋が何度かオフサイドに引っかかりましたが、あれこそが彼の持ち味だし、彼がスペースを狙って走ってくれることにより、相手のブロックに揺さぶりをかけ、縦やヨコに隙が生まれてくるのです」と語ってくれたとおり、決定機とまでは行かなかったものの、高橋の動きが突破口を切り開くこととなる。そして31分、左サイドから抜け出した宇野沢が技ありのループシュートを狙うなど、試合の展開は完全に五分と五分のがっぷり四つの展開へと変わって行く。



見る人にとっては「退屈な展開」だったかも知れない。しかしピッチレベルでは、「ミスをした瞬間にやられる」ということを意識する選手たちの緊張感がビシビシ伝わるゲームが繰り広げられていた。さすがにお互いをよく知る両チームだからこそ、しっかりスカウティングをしてきたこともあり、前半は神経戦ともいえる緊迫した探り合いの応酬が続いた。そして後半に入っても、どちらがペースを握ったとは甲乙つけがたい展開が続く中で、「エースの意地」が拮抗した試合に終止符を打つ。



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64分、大橋のビルドアップから左サイドの高野を経由して、前線に走っていた宇野沢に浮き球が入る。相手DFの太田との競り合いとなったのだが、宇野沢は非常に難しい体勢だったにも関わらず右足を伸ばしてアウトにひっかけるとボールは見事なループを描いて金沢ゴールに吸い込まれて行った。3戦目にして今季初ゴールとなった宇野沢。やはり今シーズンになってから結果(ゴール)が出ていなかったことを本人は気にかけていた。そして今季初となる「長野」でのゲームということもあり、ここで決めたいという思いを強く望んでピッチに立っていたのである。



そしてエースの初ゴールで、さらにエンジン全開となるかと思われた長野だが、思わぬ落とし穴が待っていた。両サイドからの攻撃に対してはしっかり対応していた長野でディフェンスだが、73分にボランチ山藤から中で短く繋ぎ、最後は佐藤がミドルレンジから思い切りよく狙うとこれがゴールに吸い込まれ、金沢が同点に追いつく。



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試合後の大橋は失点シーンに対して、「先制してから10分ぐらいの時間帯はもっと集中しないといけないし、中で素早く回されたときの対応とかも、チームとして対応を良くして行く必要がある」と語ってくれたが、あのシーンはどの選手も「ここでは打たないだろう」と判断したことにより隙が生まれ、そしてある意味フリーの状態でシュートを許してしまった。



確かに得点を決めた佐藤は、中京大時代から東海リーグのみならず、大臣杯、インカレなどの大舞台で活躍するなどポテンシャルが高いことはわかっていたのだが、やはりあの場面は大橋、有永のボランチコンビのどちらかが、もっと体を寄せに行かないとやられてしまう可能性がアップする。これから「さらなる上」を目指す長野にとって、この日の失点はある意味でいい教訓となったともいえるのではないだろうか?



さて振り出しに戻ったゲームだが、先制点を奪った長野もリードした直後に守備面での集中をやや切らしてしまった感もあったが、追いついた金沢もまた同様であった。1-1となった直後の78分、CKのチャンスにニアに入って来た宇野沢がフリーで合わせ、再び長野が勝ち越し。



セットプレー時において、金沢の守備はマンマークではなくゾーンの形を取っていたが、あの場面は宇野沢の見事な動きに翻弄されてしまい、フリーにしてしまった時点で勝負ありだった。また、この時のCKのキッカーが大橋であったことも忘れてはならない。本来のキッカーである向がベンチに下がった後であり、誰がキッカーになるのか? と思っていたのだが、練習で向についでキッカーをやっていた有永が行くのかと思っていたのだが、美濃部監督は「ハシ、(オマエが)行け」と指示を出したのであった。試合後の話の中で監督は「本来ならあの場面、有永に行かせるつもりだったのですが、なんか直感でハシだ!と言ったんですよね(笑)」語ってくれたが、これが見事に決勝ゴールに繋がるところも「持ってるなあ」と感じるところでもあった。



そして最後は、金沢に押し込まれる場面を迎えたが、伊東、野澤という守備的役割をこなせる中盤の選手を投入することで、ピッチ上の選手に「逃げ切るぞ」という明確な指示を送り、しっかりとゲームをクローズさせて2-1のままで長野が逃げ切り、県内ホーム初戦を勝利で飾る事に成功。



さてゲーム全体に関してだが、やはり目についたのが両チームとも、本当に相手をよく研究しているということであった。しっかりとしたスカウティングを行うことで、相手のストロングポイントを消した上で活路を見出すというやり方だが、この日のゲームは上記にもあるとおり「神経戦」とも言えるような探り合いが続いたのだが、これこそが「3回戦制」ゆえに生まれた攻防かもしれない。ホーム&アウェーの2回戦制であれば、また違った形になるかも知れないが、同じ相手と3度やるということは、周囲を考えている以上に現場レベルでは難しいことでもあるのだ。



そしてこのレギュレーションだが、当初は戦力差のあるチームとの対戦だとしても、3巡目に当たった時には「その差」をひっくり返せるかも知れないという「おもしろさ」もあると思うのだ。かつてJ2が3回戦制だった時代も、最後は相手を徹底的に研究し、対戦相手専用ともいえる形をやってきたチームも存在していた。そう、この3度当たるということは、たとえ実力差があってもひっくりかえせる可能性が非常に高まってくるのである。それと同時に「追われる立場」のチームにとっては、ある意味で非常にやっかいなレギュレーションでもあると言えるだろう。



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特に昨シーズンのJFLチャンピオンである長野は、まさに研究される立場にある。よって、2巡目以降は特に難しい戦いとなってくるかもしれない。当然ながら、エース宇野沢に対するマークは昨年以上に厳しくなっている。だからこそ、新加入の高橋にかかる期待は大きいし、またベンチスタートとなっている勝又、三根、田中恵太もそうだし、最近の練習試合で結果を出している松尾などがいつでもスタメンに出られるようでないと、「さらなる進化」には結びついて行かない。



J3で優勝することはもちろんだが、優勝することと同じレベルで「上でもしっかり戦えるチームにすること」を目標に掲げている長野。そんなクラブであるからこそ、マークがどんどんきつくなってくるのだが、その中でどう勝ちきれるチームに成長していくかも見続けたいポイントと言えよう。

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