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2013年9月1日 - 2013年9月7日

2013年9月 5日 (木)

成長をもたらした「141日間」の天皇杯

8月31日から始まった今年の天皇杯だが、柏レイソルのみ、ACLとの日程の兼ね合いもあり、9月4日開催となったが、それ以外のJリーグ勢は今週末に行われる2回戦からの登場となる。

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そして2014年の元旦に行われる決勝戦まで、124日間かけて「カップウィナー」を決めるこの大会だが、今大会の1回戦で姿を消してしまったものの、実に141日間も「今年の天皇杯」に関わってきたチームがある。それは今年度の群馬県代表となった、ザスパ草津チャレンジャーズだ。

以前にも書いたが、このチームは群馬県協会が管轄する社会人リーグの最下層である三部所属。いくら2年連続で決勝に進んでいるとは言え、予選トーナメントでは「所属カテゴリー」が絶対であり、特例は認められてはいない。だからこそ、今年も4月から始まる一次予選から「天皇杯への道」がスタートした。

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一次予選の会場は、どこにでもある普通の土のグラウンドだった。しかし、会場は群馬特有の強風が吹き荒れるグラウンドであり、なかなか落ち着いてボールをコントロールできない試合もあった。さらには季節外れの悪天候により、サッカー会場というより「田んぼですか?」と言いたくなるような会場での試合もあった。

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さて今年のチームだが、こちらも何度も書いてきたが、新チームとなったばかりの2、3月に行われた練習試合では「本当に大丈夫か?」と思うほど、クオリティが低かった。いくら昨年からの選手が多数残っていたとは言え、「核」と呼べる選手がトップチームに昇格して行ったあと、残された選手たちだけで今シーズンをどう戦っていくのかが見えてこなかった。また、当初は入団が発表されていた選手が、結局はチームへの合流をキャンセルしてしまうなど、決していいスタートとは言えないまま、新シーズンが始まっていった。

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だが、どうあがいても、今ここにいる(当時)16人という人数の中で、なんとかやっていくしかなかったチャレンジャーズ。しかし、新加入組の久富、小林誠、深澤の3人がチームにフィットしだすと、シーズン当初に感じた不安が一気に解消され、チームの状態がどんどん良くなっていく中で、「一つも負けられない戦い」が4月から早くもスタートした。

4月14日、高崎経済大学グラウンドからスタートした「天皇杯への道」。1次予選3試合、そして6月に行われた2次予選2試合を順調に勝ち抜き、7月から行われる決勝トーナメントにコマを進めたチャレンジャーズ。ここまでの5試合の結果を見ると8-0、11-0、2-0、7-0、4-1と、どの試合でも危なげなく勝ってきたが、それぞれの試合の中で木村監督、そして選手が「高い目標」を持って試合に取り組んできたことが、決勝トーナメントに入って実を結ぶ事となる。

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選手は意識していたかどうかはわからない。だが、今年のチームには過去のチームになかった「守備の安定度」が高くなっていたのである。今年で3年目となるキャプテンの安田、2年目の小西、そして新加入の2人が形成する大卒組4バックは、木村直樹が作ってきたチームの中で、もっとも完成されたディフェンスラインを形成。そして中盤の藤井も、深澤の動きをフォローしながら全体のバランスを考えた献身的な動きでチームをサポート。

別に木村は守備的なチームを作ろうとした訳ではないし、選手も守りを重視した訳ではない。しかし、守備ラインにいい人材を得た事がこのチームに成長を呼び込み、そして決勝戦を睨んだ時期に入ってからは、格上との練習試合の中で県リーグでは感じられない「速さ」「強さ」「組織力」を体感し、上への「免疫力」も身につけていく。結果的に、決勝戦を前にして在籍しているメンバーは15人だけだった。だが、「今年はだめか…」と思ったチームが、決戦を前にして過去最高のチームへと生まれ変わったのである。

そして決勝戦を2-1で勝利して、念願だった天皇杯に出場を決め、さらに1回戦ではJFL勢の一角である横河武蔵野FCという、素晴らしい相手と戦うことになった。

群馬予選決勝で戦ったtonan前橋は地域リーグ1部で、横河武蔵野はその1カテゴリー上のJFL。しかし、その1カテゴリーの差は県リーグの1部と2部や、地域1部と2部レベルの差と比較なんて出来ないほど、大きな差がある相手。地域ではなく、普段から「全国」で戦う相手。そしてチャレンジャーズと武蔵野のカテゴリー差はなんと5カテゴリー差であった。

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初出場の舞台で、いきなり強敵との対戦となったチャレンジャーズ。試合は序盤から予想通り相手に圧倒され、自陣に釘付けにされてしまう。相手は長いボールを多様して押し込んでくるのはわかっていたものの、予想以上に一つ一つのプレーの正確さ、そして球際の強さが格段だった。しかしそれでも、必死に相手に食らいついていくチャレンジャーズは、前半終盤に意地を見せてカウンターやセットプレーからチャンスを奪い、なんかシュートまで持ち込む形を作り出した。

前半のスタッツはチャレンジャーズのシュート3に対して武蔵野は7。圧倒的にボールはキープされたものの、決定的な部分はなんとか作らせず、スコアレスで前半を折り返すことに成功した。

そして後半だが、前半以上に鋭い出足を見せる武蔵野の前に、完全に防戦一方となってしまう。そんな中で、セットプレーからの小山のヘディングがバーに阻まれるなど、運までもがチャレンジャーズを味方してくれた。もうだめか… と思うシーンも何度もあった。前後半を合わせて19本のシュートを浴びせられた。しかし、諦めない心がゴールに鍵を掛け、90分を終えたところでゲームは大方の予想を裏切り、0-0のまま延長戦へと突入していく。

選手にもサポーターにも「もしかして」と思う気持ちが生まれていた。この日、ザスパのトップチームはニッパツ三ツ沢で公式戦があった。それにも関わらず、敷島に集まったサポーターは、奇跡の「ジャイアントキリング」を信じて声援を送り続けた。

しかし、ここまでチャレンジャーズを見守ってくれていた「天」はちょっとした悪戯を会場に仕掛けたのである…

試合後半の時点から会場を覆っていた雷雲が、ついに唸りを上げ、延長前半1:45の時点で主審は雷が止むまでゲームを中断。ここまで、防戦一方で足がつる選手が続出したチャレンジャーズにとって、このインターバルは恵みの「休憩」となるかと思われたが、実際には思わぬ方向に進んでしまうのだった。

15:15から再開されたゲームだが、ここで集中を切らしてしまったチャレンジャーズは、リスタート直後の93分に左サイドを破られ、あっさり中で矢部に合わされて痛すぎる失点を喫してしまう。そしてこの失点を契機に、一気に武蔵野の底力が加速していき、あっという間に2点を追加してゲーム自体はここで完全に決してしまった。

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だが、初の全国の舞台で「1点」を奪いたいチャレンジャーズは、最後まで諦めず、延長前半までの105分間で放ったシュート数と同じ4本を、延長後半で武蔵野ゴールに浴びせていく。そんな中で白井の放ったシュートは決定的であったものの、武蔵野GK藤吉のファインセーブに阻まれて、どうしても「1点」が手に届かない。

そして試合は0-3のまま終わりを告げ、チャレンジャーズたちの「夢舞台」はこの日のみで終わってしまった…

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試合後、選手たちは口を揃えて相手のレベルが高かったことをコメントしてくれたが、それと同時に「高いレベルと試合が出来て本当に楽しかった」とも語ってくれた。

だがはっきりいって、延長戦まで持ち込めたものの、チャレンジャーズに勝てる要素は無かった。ただ一つ、勝つ要素があったとすれば、試合の中断がなく、集中を持続したままスコアレスで試合を終わらせて、PK戦に賭けるのみだった。

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それぐらい、両者の間には力の差があった。やはりJFLというリーグで長年戦っていることはダテではないし、偉大なことでもあると感じた。しかしチャレンジャーズにとっては、この大舞台で格上を相手に90分間はしっかり集中して戦えた事は大きな経験となったはず。「第93回天皇杯全日本サッカー選手権大会」としては、たった1日で終わってしまったが、「2013年の天皇杯」と考えた場合、4月14日から9月1日までの141日間は、選手一人一人、そしてチームを本当に成長させた、とても有意義な時間でもあった…

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「たられば」の話をしてはいけないが、もし昨年、登録ペナルティがなかったとすれば、今年は県1部。そしてここで優勝していれば、秋に行われる関東リーグ昇格を賭けた「関東社会人サッカー大会」にも出場できたかも知れない。今ここで得た大きな経験を糧にもっと成長して、しびれるぐらいの「緊張感」の中で試合が出来る関東社会人で試合をやらせてあげたかったと心から思うのだ。

しかし、チャレンジャーズの立ち位置は県三部。どうやっても来年は二部にしかならない。飛び級を期待する声もあるようだが、県協会はそれを認める可能性は限りなく少ないし、チームも飛び級を要請することもないようだ。だが、カテゴリーがどこに位置してようと、選手それぞれが高い志をもって日々の練習に打ち込めば、この日の天皇杯のように格上に対しても十分やれるということは、身を以て知ったはず。

2013年の天皇杯はこの日で終わってしまった。しかし、ここが選手たちの終着点ではない。残された日々に、もっと努力を続けて秋葉忠宏に認めてもらえるようになるという課題は残されている。そして、その課題に向かってメンバー全員が成長を続けていけば、チームとしても大きな積み重ねとなっていく。

今の選手たちだって、秋葉体制においてレギュラーを勝ち取った、先輩にあたる有薗真吾と比べても大きく劣っている訳ではない。決して、彼のようなプレーヤーになれない訳ではない。横河武蔵野との試合で、最後まで諦めずに戦い、最後まで1点を求めた姿勢を、どんな時でも忘れずに練習に打ち込んでいけば、選手それぞれの「個」の目標にもたどり着けるはず。

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この141日間という濃密だった時間に負けないほど、この先どれだけ努力できるだろうか? ここでの経験を「思い出」にしてしまうか、「糧」とするかで大きく変わってくる訳だが、それをどう活かして行くかは選手それぞれの考え方次第。

さてこれから、個人、そしてチームがどう成長していくかも、まだまだ楽しみである。

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