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2013年11月21日 (木)

1番 vs 41番の真剣勝負

JFLでの1シーズン連続無敗記録は、前節・SC相模原戦でまさかの逆転負けを喫したことにより、記録は24試合で途絶えた長野パルセイロ。しかし、天皇杯で「J1首位」と戦う前に、記録によるプレッシャーを感じる必要性も無くなったし、決戦を前にしたチームにとっての「いい引き締め」となる敗戦でもあった。

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そして中2日で迎えた天皇杯4回戦、横浜Fマリノス戦だが、結果はすでにご存知の通り1-2で敗れ、惜しくもベスト8進出を逃す結果となった。

普段、長野パルセイロの試合を見ない、見たことがない人からすれば、昨日の試合は驚きというか、「JFLでもこんなサッカーをやれるんだ」というインパクトを与えたはず。そして最後まで諦めない姿勢を見せ、「あわや」というシーンを連発して見せたことにより、多くの人にパルセイロの可能性を見せたし、誰もが「惜しかった…」と思ってくれたはず。

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だが敢えて言おう。

惜しかった!、よく頑張った!は、正直この試合にはいらない。相手がJ1首位であろうとどこであろうと、勝つつもりで準備して来た美濃部監督や選手にとって、負けという結果では「悔しい」という気持ちしか残らないのだから。

このクラブはバドゥが指揮を取った時代から、常に高いレベルのサッカーをやろうと意欲的にチャレンジしてきた歴史がある。その思いは当然、前監督であり今はFC琉球で指揮を取っている薩川監督も同じであり、昨シーズンの時点で今の「強さ」の礎の半分以上は築かれていた。だが、クラブは「今以上の完成度」を求めて美濃部監督を招聘し、そしてその賭けが見事に成功し、今ではJFLのレベルを超越したクラブとなった。

そんな中で迎えた横浜Fマリノスとの「真剣勝負」。美濃部監督は直近の相模原戦では、出場停止となった西口、佐藤は別として、中盤の大橋、CBの川邊を温存するなど、この試合を大いに意識して来たのである。日頃から、選手たちに「今のレベルで満足するな、慢心するな。我々はここ(現状)で勝つためにやっているのではなく、Jに行っても堂々と戦えるチームになるためにやっているんだ」と、繰り返し言い聞かせて来た美濃部監督。

そしてこのクラブだが、すでに来季からのJ3入りは正式決定しているものの、実際にはプロ契約している選手よりもアマチュア契約の方が多いクラブなのだが、現場を預かる美濃部監督は、選手全員に対して契約の形がどうあれ「常にプロフェッショナルなサッカー選手であれ」という教えを説いて来た。

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ここで美濃部監督が言って来たのは「プロ選手になれ」ではなく、「プロフェッショナルな選手になりなさい」ということである。単純に「プロになる」ということは、クラブとプロ契約すればそれで終わりである。しかし美濃部監督は、サッカーに向き合う態度、謙虚に自分を見つめられる心、そしてピッチ外での行動を含めて選手に「プロフェッショナル」になりなさいと言い続けて来た。だからこそこのチームは、勝っても負けても毎試合反省点をチェックして、JFLというカテゴリーを超越するクラブを作り上げて来た。

そして迎えたこの試合だが、2回戦の名古屋グランパス戦とは全く違うシチュエーションがそこにあった。あの試合では、特に相手が長野を分析してくることもなく、リーグ戦の合間ということもあり、モチベーション、コンディションを維持するのが難しい時期でもあり、そんなことが重なって名古屋は敗れた。

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だが今回は違う。マリノスはしっかりと相手を研究してきた。そして中澤や中村こそスタメンには名前は無かったが、この試合のために調整してきたこともあり、コンディションは悪くはなかった。

現在、J1リーグで首位に立つ横浜Fマリノス。そしてJFL優勝の長野パルセイロ。単純に両者を比較すれば、日本で今「1番」にいるクラブと、J1リーグ18クラブ、J2リーグ22クラブの下に位置するJFLチャンピオンの長野は「41番目」という位置づけとなる。

そんな両者の対戦だからこそ、常識的に考えれば1番に対して真っ向勝負を挑むのは得策ではない。それに、天皇杯という大会はリーグ戦ではなく1発勝負のカップ戦であるのだから、それはなおさらのことである。しかし長野は、敢えて真っ向勝負を挑んだ。自分たちが積み重ねて来たサッカーで、堂々とJ1首位と渡り合いたいという気持ちがあった故にだ。

しかし現実は、理想通りにはならなかった。相手のプレッシャーの速さ、そして当たりの強さ、パススピード、全てがJFLとは段違いだった。JFLでは倒されればファールがもらえるが、このクラスのジャッジでは、そう易々ともらえる物ではない。そして選手たちは、ファーストアタックの部分で、やや気持ちの部分で負けてしまい、速い時間帯から押し込まれるシーンが続いてしまった。

今季のJFLでは負けた試合が3試合あったが、それを含めても主導権を握れない試合は無かった。いや、天皇杯の名古屋戦、北九州戦とて主導権を握れていたはず。しかしこの試合では、思うようにゲームをコントロール出来なかった。大橋、有永のボランチコンビは、危険なゾーンでボールロストしてしまうシーンもあった。そして最終ラインからの押し上げも、なかなか出来なかった。

そうなると、宇野沢のポジショニングがどうしても下がらざるを得なくなってくる。しかしそんな時にこそ、サイドからカウンターでチャンスが生まれるのだが、肝心のエースが中にいない…

普段なら出来るはずの落ち着いた連携が、なかなかできないもどかしさ。美濃部監督も会見ではこれと同じ感想を述べていた。相手がJ1首位なんだから、出来なくて当然だろう? と思う人もいるだろう。しかし、今季積み重ねて来た長野のサッカーとは、相手がどこであろうと落ち着いてやれば通用するはずだった。その証拠として、長野らしいパス回し、そしてサイドの西口、高野を経由した速い展開からチャンスを生み出すことは出来た。さらに延長後半に入って、マリノスサイドの足が止まってしまい、たて続けてチャンスを迎えたシーンなどは、長野の実力を見せた場面でもあった。しかしラストに迎えた岡田や宇野沢のチャンスに関しては、やはり決めないと…という後悔も残る。

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監督も選手も、誰一人「満足」などとは思ってはいない。逆に、勝てなくて悔しくて仕方がないというのが、試合後のホンネであった。そして事実として、この日のマリノスは決して「いい出来」とは言い切れなかった。本来であれば、90分間のうちで決着をつけられたはずのゲームであったが、決定力という部分で正確性を欠いたことが試合を長引かせた原因となったし、延長後半の電池切れは褒められたものではない。このように、勝てるチャンスがあったからこそ、後悔が残った長野パルセイロ。

しかしこの日の敗戦は、相模原戦で敗れたこととは大きく違う意味を持っている。

相模原との試合は、「なんとか一矢報いたい」という、同カテゴリーのライバルの意地が上回っただけであり、内容的には悪いことは無かった。だが、この日の敗戦は「上には上がいる」こと、そして今のレベルでは、目指す目標点で戦うには、まだまだ実力が足りないということを、身を以て知ることとなった大切なレッスンだったということ。

何が出来て、何ができなかったのか? そしてこのチームがさらに上を目指して行く中で、何が足りないのか? という点に関しては、すでに美濃部監督は分析を始めている。JFLを卒業し、来季からは「Jクラブ」の一員として、J3というリーグを戦う美濃部パルセイロ。この日の敗戦が、「更なる進化」への第一歩となり、今以上にプロフェッショナルなチームに成長して行くことを願いたいと思う。

そして来年こそ、天皇杯において「ベスト8」の壁を突破してもらいたい…

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