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2013年10月25日 (金)

誇るべきサッカーで長野を変えろ

先週末の日曜日、町田ゼルビアをホーム・佐久に迎えた試合において、優勝を争うライバルに対して力の違い見せつけて勝利し、5月1日の第9節・武蔵野戦から始まったJFL公式戦無敗記録を「21」にのばし、ついに1シーズンでの最多無敗記録()タイに到達。さらに天皇杯の予選、本戦を含めた公式戦も加えれば、実に25戦無敗が続く長野パルセイロ。

JFLでの無敗記録自体は2001-2003年、2003-2004シーズンにおいて、それぞれ33試合という数字を残した大塚製薬(現徳島ヴォルティス)。しかし、1シーズンだけでの無敗記録だけに絞った場合は、2004シーズン前期第1節~後期第6節までの21試合ということになっている。

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このように、盤石の強さを見せるようになったこのクラブ。さらに今年の天皇杯においては、J1名古屋グランパス、J2ギラヴァンツ北九州とJクラブを連続撃破し、11月20日に行われる4回戦では、唯一ここまで勝ち残った「都道府県代表」として、現在J1首位の横浜Fマリノスに挑むことが決まっている。

これまでは、JFLカテゴリーという「小さな枠の中」では注目されていたクラブだったが、普段Jクラブの試合しか見ていない層からすれば、まだまだ未知のクラブであったかも知れない。しかし、名古屋戦の勝利が決して「フロック」ではないことをアピール出来たことにより、間違いなく知名度はアップしたはず。そして来年から始まる「J3」というリーグでイニシアチブを握るクラブの一つとして、一般世間にもアピールできたことであろう。

これだけ見れば、クラブは順風満帆と思えるかも知れない。

バルディエール・バドゥ・ヴィエイラ、薩川了洋という名のある指導者が監督して采配を振るい、若い選手たちを育成してきた。さらに鈴木政一や安達勇輔といった「勝ち方を知る人」「育成に長けた人物」をスタッフとして招聘し、チームやクラブの弱点をしっかり補ってきた。確かに北信越のライバルたちに比べると、JFL昇格、そしてJ2参入は先を越されて来た。だがこのクラブには、「J規格に見合うスタジアム」がないため、どんなに急いでもJ参入が出来ないという高い「壁」があった。だが、それを逆手にとったという訳ではないが、クラブはじっくり時間をかけ、来るべき「J元年」に向けて、誰に見せても恥ずかしくない堂々としたサッカーを披露出来るクラブを作り上げようと力を注いで来た。

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誰もが「薩川続投でいいじゃないか?」と思ったのは昨年の11月のこと。しかし、彼は惜しまれつつ長野を去ることとなり、美濃部直彦氏が新監督になることが発表された。そんな状況であったため、新しいチームはどうなっていくのか、不安と期待が入り交じっていた。そして迎えた新シーズン初戦は、まだまだ新監督が目指す「緻密なサッカー」が選手に浸透してはおらず、試行錯誤中であることを色濃く見せていた。

だが、これまでの「豪快なアニキ」の薩川から、おちゃめではあるが、サッカーにおいて時には「マニアック」ではないか? と思うほどほど細かい点にこだわり、さらには選手たちに「プロ選手はどうあるべきなのか?」を厳しく問う美濃部流がチームに浸透しだすと、恐ろしいほどにチームはいい方向に向かいだした。

現在、JFLに所属する長野だが、やっているサッカーの質は、限りなくJ2でも通用するレベルに達しているし、天皇杯という一発勝負だけではなく、今のままJ2のシーズンを戦っても残留できる力を十分備えている。そしてこのクラブにはチャレンジリーグ所属の女子チームもある。さらにU-15だけではなくU-18チームの整備も進みだし、地域に根ざしたスポーツクラブとして活躍の輪を広げようとしている。

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やっぱり順風満帆じゃないか? と思われるかも知れないが、一つだけそうではないこともあるのだが、それは今季における観客動員数についてだ。

以前も取り上げたが、今年の観客動員は昨年度の1試合平均2810人よりも500人近くも少ない2341人(※第29節時点での数字、ホームゲーム14試合が対象)となっており、チームが最高の結果を出している反面で、集客という面では苦戦が続いている。

確かに、ホームゲーム14試合のうち、6試合で雨天(※開幕戦はゲーム中は曇であったが、キックオフ直前まで雹が降るなど大荒れの天候だった)に見舞われるなど、天候面で運に見放されてしまった部分もあった。しかし、雨が降っているから集客が悪かったということは、言い換えれば「パルセイロというクラブが『ながの』という街に根付いていない」ということの裏返しなのではないだろうか?

「今日はサッカーがある日だね。でも雨だから止めようか…」

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これでは、まだまだサッカーがこの地に根付いていないと言われてしまっても仕方が無い。そして今回、町田戦の前日に開催されたイベントでも話をさせてもらったが、長野というクラブが最大のライバルと見なすクラブと「集客」を比べた場合、どうしても「劣っている」ということを認めざるを得ない状況なのである。

最大のライバルというのは、当然ながら松本山雅FCを指している。

やっているサッカーは素晴らしい。そしてクラブは迫り来るJ元年に向け、逆算しながら順調な成長を続けてい。また、サッカーを柱に、地域に根ざしたスポーツクラブとしての活動するなど、言葉のとおり「Athletic Club」として広がりを見せている長野パルセイロ。だが、集客だけはどうしてもまだまだ「J基準」を満たすには至らない。そしてそのライバルとは、カテゴリー差以上に観客動員数では大きく離されそうになっている。

では、最大のライバルである松本との違いはなんなのか? 「松本の応援はいろいろなバリエーションがあって楽しいからでは?」という意見がイベントで出ていたが、私個人としてはそれは大きな理由ではないと考える。

やはり大きな要因としては、「官(クラブ)」ではなく、「民(サポーター)」が主導となって、草の根運動的に広がりを見せたからということと、スタジムアムにおける雰囲気の「重さ」の違いであったように感じるのだ。

いくつかのJクラブでは、招待券を配ったことでリピーターが増加し、集客に結びついた例はあるものの、近年J2に上がって来た新興クラブでは、その策が上手く行っていない例の方が多くなりつつある。しかし、松本の場合は同じ招待券を配るにしても、会場を盛り上げよう、クラブをサポートしようという有志の人たちが力を出し合い工夫を重ねて来た。サッカーを見る、クラブを応援するということ以上に、「アルウィン」というスタジアムを「人と繋がり合う場所」として捉え、年齢・性別・職業を問わず、誰でも気軽に仲間になれる「地域コミュニティ」であることをアピールし、これが見事に集客に繋がったと考えるのだ。

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今のアルウィンには、当然ながらリピーター層は多いのだが、これがゴール裏だけに限らず、メイン、バックそれぞれにまんべんなく広がりを見せている。また、ファン、リピーター層の年齢バリエーションも豊かである。ゴール裏はやはり若い人が多く、女性層も決して少なくはない。また、バックスタンドの方では、言い方は悪いが「おばさん層」が、グループ単位で応援に駆けつける姿も見受けられる。

やはりこれらに共通して言えることとして、サッカー、そして松本山雅というクラブを応援するということも重要なポイントなのだが、それ以上にスタジアムで「仲間とのひとときを楽しむ」ということが、会場に足を運ぶ理由の一つになっていることだ。

人と人が繋がり合う場所だからこそ、初めての人に「入りやすく」してあげる空気がなければ上手くは行かない。そういった点では、松本山雅は「官」主導ではなく「民」が自主的に動いた結果が、とてもいい状況を生み出している。

それに対して長野はどうだろうか? 確かにサポーター有志はここ数年、松本サポーターに負けないぐらい、地域慈善活動、草の根運動を広げているし、暫定ホームとしてしばらくお世話になる佐久にも出向いて、いろいろな活動をしている。だが、これらの活動が目に見えるほどの集客には結びついていない現状がそこにはあるのだ。では、それはなぜなのか? あくまでも個人的主観となってしまうが、マジメさ故の『入りにくさ』があるのではないか? と考えている。

長野サポーターは本当に一生懸命やっているし、彼の気持ちも知っている。だがいかんせん、いい意味でも悪い意味でも「マジメ」な部分があり、ちょっとそれが「取っ付きにくい」に繋がっているのかな? とも感じてしまうのだ。全てを「松本に見習え」という訳ではないのだが、もっと軽くというか、いい意味で「バカになれ!」があったら、もう少し変わって行くのかな? という気もする。

そしてもう一つ、サッカーの魅力が上昇している今だからこそ、長野の人たちに「Jにも負けない素晴らしいサッカーが地元にある」ということを、もっともっと広めて、メインやバックの客層を広げて行くのも一つの手段ではないだろうか?

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今、長野がやろうとしているサッカー、そして目指す到達点は、本当に誇りとしていいものである。だからこそ、それをもっと自慢に思ってもらいたいし、誇りとして認識して欲しいのだ。そしてそれを「キラーコンテンツ」としないでどうする? という感じでもある。まだまだ長野の人に「パルセイロ」という存在がメジャーなものではない現状があるのだが、新しく生まれ変わる南長野の球技場(そして佐久の競技場)が、素晴らしいサッカーを「肴」に、老若男女問わず、サッカー談義、スポーツ談義に花を咲かせる「場」として成長して行って欲しいと願いたいところでもある。

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