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2013年9月27日 (金)

シティ、今季最高のゲームで残留確定

昨シーズン、関東リーグ昇格を賭けた関東社会人サッカー大会において準優勝を飾り、4度目のチャレンジでついに「関東への扉」をこじ開けた坂戸シティ。そして今年は、地元企業の支援を受け「大成シティフットボールクラブ坂戸」(以下シティと称す)とチーム名称を変更し、戦いの舞台を埼玉県から「関東」へとステップアップさせて新シーズンを迎えた。

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選手兼監督の熊谷哲平をはじめ、何人かの選手は地域リーグクラスでのプレー経験はあったものの、シティというクラブ自体は地域リーグ初参戦であり、チームは初戦から苦しい戦いと向き合うこととなってしまう。個の力ではなんとかやれても、チームとなったときに他のチームとの「スピードの差」「正確性の差」「勝負勘の差」が如実に現れてしまい、県リーグと地域リーグとの「差」を見せつけらてしまうのであった。

さて連敗スタートという中で迎えた第3節、この試合がシティにとってひとつのターニングポイントとなっていく。

相手はシティと深い繋がりを持つ、アルマレッザ飯能。監督の熊谷をはじめ、水沢など数名の主力選手がかつて在籍していたクラブであり、当時一緒にプレーした中野や鶴田といった選手もまだ健在であり、この両チームに関わる人にとっては「夢のオールスターゲーム」と呼べる対戦でもあった。

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また、監督の熊谷にとっても「アルマとリーグで戦うことは目標の一つだった」と語ってくれているように、自分を成長させてくれたクラブに対して、自分が作り上げたチームと対戦することは感慨深いものでもあった。そしてこの対戦において4-1と快勝したシティは、「自分たちでもやれる」という手応えを掴むこととなる。

さらに次節の日本工学院F・マリノス戦でも勝利したチームは、手応えを「リーグへの順応」に変えていき、県リーグレベルのチームから、ワンランク上でも戦えるチームへと成長を遂げていく。そんな状態の中でチームは、全国社会人サッカー大会・関東予選のための中断期間を迎えたが、後期2節終了時点で昇格組としては大健闘とも言える5勝6敗という数字を残したのであった。

ここまで、数字的に負け越してはいるものの、関東リーグ初参戦組としては「上々の滑り出し」であったシティだが、リーグ戦再開となる夏本番を迎えた時期から、本当の意味で「リーグ戦の厳しさ・難しさ」を実感することとなる…

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県リーグと地域リーグの違いは、簡単に言えばチームの「修正能力」と「総合力」があるかないに分かれると考える。県リーグレベルであれば、特に相手の分析をしなくても自分たちのポテンシャルだけで押し切れるし、「個」の力が抜けていれば勝ちきれてしまう。しかし、地域リーグになれば2度目の対戦ではしっかり注意すべき点をチェックしてくるもの。さらに県リーグ以上に負担のかかる試合移動に、過密日程となってくる試合スケジュールをしっかりこなせるか? ということが問われてくる。

しかしシティは、天皇杯埼玉県予選と並行して行われることとなったリーグ戦の中で精彩を欠いてしまい、前半戦以上に厳しい戦いを強いられてしまう。さらに悪いことに、ホーム会場として使用しているグラウンド状態のコンディションがお世辞でも良い状態ではなく、練習を重ねて来たはずのパスを繋いだ自分たちらしいサッカーが影を潜めてしまう。

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終盤を迎えて、リーグの洗礼を浴びることとなってしまったシティ。リーグ戦中断前は残留は固いのでは? と思われたが、最終節を前にして順位は残留争いの主役でもある8位にとどまっていた。さらに残留を争う9位、東京海上日動火災保険株式会社サッカー部とは勝ち点(16pt)で並ばれ、かろうじて得失点差「2」で、なんとか残留ラインを保つ状態であった。

そんな中で迎えたリーグ最終戦。試合はホームゲームのメーン会場となっている坂戸市民総合運動公園だったが、実はこの会場での今季成績は1勝1分5敗と大きく負け越している。さらにリーグ残留のためにはただ勝つだけではなく、得失点差も考えて大量得点での勝利が必要不可欠となっていた。

順位こそ残留圏の8位にいるものの、やりにくさもある会場での最終戦に一抹の不安もあったシティ。そしてその「不安」はある意味で的中してしまい、ゲームは序盤から支配するものの、どうしても得点が奪えないもどかしい展開が続いてしまう。早く得点を奪いたいという焦りからか、気持ちだけが前に行ってしまい、丁寧にパスを繋いでゲームを組み立てる上で要となる「適度な距離感」が保てず、不用意なボールロストを連発。20分過ぎたころからは、奪われてカウンターという一番やってはいけないシーンも顔を出してしまう。そんな重苦しい試合だったが、38分にワンツーで崩して最後は矢内が決めて、ついにシティが先制!

ほとんどの時間でシティがボールを支配したものの、前半の得点はわずかに1。当然ながら選手それぞれが「うまくいかない」という思いを持ちながらベンチに戻ったのだが、ハーフタイム中に「日動が前半、5-0でリードしている」という情報がもたらされた…

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シティ、日動ともどもリードしており、このまま行けばそれぞれ勝ち点3を積み重ねることとなるが、得失点差で2点リードしていたはずのシティが、この時点で逆に2点のビハインドとなってしまったのだ。この日はベンチスタートだった監督の熊谷は「もっと点を取りに行こう」と選手に指示を与えると、選手それぞれも、より闘争心を高めてピッチへ戻って行った。

後半に入ると、開始直後から前半以上に攻勢を強めるシティ。3分にPKを獲得すると坂戸のドラゴンこと、鈴木竜基がまずこれを決めて2-0。さらに監督の熊谷哲平が「交代オレ!」で、ついにピッチに登場。

熊谷自身、これまでのホームゲームでなかなか結果を出せず、魅力あるサッカーも披露することができず、さらには自分に付いて来てくれている選手たちの「力」を発揮させてあげられなかったことに対して、誰よりも責任を感じていた。そんなこともあり、この日のリーグ最終戦は勝って残留を決めることと同時に、このクラブに関わってくれる人、すべてが満足できるゲームにしたいと強く感じながら試合を迎えていた。

だからこそ最後まで手を抜かず、選手全員にも全力プレーを求め続けた結果が、今季最高となる7ゴールを生み出し、自身にとっても2007年6月17日の与野蹴魂会戦以来となる、6年97日ぶりの「関東リーグ公式戦」でのゴールも決めた記念すべき試合となった。

熊谷だけではなく、選手、そしてサポーターも含め、関わる人すべての「勝ちたい」という気持ちが最後の最後で爆発し、今季最高ともいえる内容で「残留」という結果を勝ち取ったシティ。

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企業のサッカー部でもなく、Jを目指している訳でもない、ごく普通の「街のサッカー好き」が集まった社会人チームであるシティ。しかし熊谷は「大人になっても高いレベルでサッカーをやれるクラブを地元に作りたい、さらに地元の子供たちが『大人になったらここでプレーしてみたい』と思ってもらえるようなクラブにしたい。そしてスポーツを通じて地元が活性化されるためのツールとしていきたい」という意思のもと、ブルーダーを離れ2008年から坂戸で地道に活動してきた。

向上心の高い熊谷にとって、残留争いとなってしまったことは悔いが残るそうだが、クラブが力をつけて行くということは、1年1年の積み重ねの上で出来て行くものだから、今年の成績を悔やむことはない。いや、逆に言えば厳しい戦いの中で残留できたことは、この先クラブが「一部」を目指す上で大きな経験となってくるはず。

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この日のように、「絶対に勝たなければいけない試合」において、監督は選手のメンタルをどのようにコントロールし、どんなゲームプランを描くのか? そして選手側はどんなプレーすべきなのか? ということを、実体験で知ることが出来た。そんな貴重な経験を来シーズン、いや、来月に予定されているKSL市原カップでぜひとも発揮して欲しいものである。

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さて、今回は地域リーグの残留争いをピックアップしたが、地域リーグやJFLで下のリーグに落ちてしまうことは、J1/J2リーグ以上に「戻る」ことは、本当に難しいことなのである。

J1クラブがJ2に落ちてしまった場合、「2位以内」を確定すれば昇格確定となる。しかし、JFLクラブが地域リーグへ降格、さらに地域から県リーグに降格した場合、それぞれのカテゴリーで優勝(もしくはそれに準じる成績)しても「はい、昇格です」とはならない。JFLに戻る場合はご存知の通り、「全国地域サッカーリーグ決勝大会」を勝ち抜かなければならないし(※今シーズンだけは例外になりそうですが)、地域リーグの場合は、まず各地域の都道府県リーグで優勝(もしくは成績上位)したのちに、所属地域優勝(もしくは成績上位)チームによる、地域リーグ参入決定戦(関東で言えば関東社会人サッカー大会)を、勝ち抜かなければ(もしくは成績上位)昇格出来ないのだ。

地域決勝も難しい大会だが、こちらはグループリーグのため、一つ負けてもまだチャンスはあるが、関東社会人の場合は一発勝負のトーナメントのため、有力チームといえども簡単に勝ち抜けない大会となっている。

余談になってしまうが、JFLが現行レギュレーションになってから、一度降格して、再びリーグに戻って来た(地域決勝を勝ち抜けた)例は、ホンダロック以外(※アルエットとロアッソは別物と考えます)に現れてはいない。

またJクラブに関しては、メディア露出もあるし知名度もあることから、降格してもある程度のスポンサーはつくし、リーグからの分配金も多少なりともあるので、予算規模を縮小すればダメージを最小限に抑えることは出来る。しかし、JFLや地域クラブがそのカテゴリーから降格してしまった場合は、Jクラブ以上のダメージとなってしまうことも少なくはない。アマチュアリーグのため当然ながらリーグからなんの保証も分配金もない。また、ついてくれたスポンサーが継続してくれるかどうかも本当にわからない(※長野パルセイロは2008年にJFL昇格できず、AOKIとの契約が終了している)。

さらに上記にもあるとおり、戻るには2つの難関を勝ち抜かないと、元の場所には戻れない。また、JFLでやるには最低でもリーグに支払う年会費(1000万円)に、全国を回るだけの移動費を捻出できないとやっていけない。いや、地域リーグにだって、それぞれの加盟金があるので、じゃあみんなで1万円出しましょう! なんてレベルでは当然やっていけるリーグではない。

当然ながら、降格となってしまえば選手の流出も考えておかなければいけない。しかしだ、そんな状況の中でも高いレベルを維持するだけではなく、さらにチーム力を向上させて行く必要もあるし、しっかりとしたクラブ運営をしていくことも大事となってくる。簡単そうというか、淡々とやっているように見えるが、実は難しいことを、なんとかやりくりしながら日々成長を続けているアマチュアサッカーの現場。このことを多くの人に知ってもらい、興味を持ってもらえることを願いたいところでもあります…

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