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2013年8月24日 (土)

リアル「温泉街からの挑戦」

今日、明日で各都道府県の天皇杯出場チームがすべて決定することとなるが、そんな中で毎年「初出場」を願ってやまないザスパ草津チャレンジャーズチームの話を取り上げたい。

2008年シーズンをもってJサテライトリーグが事実上の廃止となり、2009年から群馬県サッカー協会所属のチームとなり、トップチームとは別に天皇杯参加への道が開けたチャレンジャーズチーム(2012年までザスパ草津U-23)。予選初参加となった2009年こそ、トーナメント3回戦で上武大学を相手にまさかの敗戦を喫したものの、2011年、2012年は連続して決勝まで勝ち進んだ。

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しかし、初の決勝進出となった2011年は、当時JFLだったアルテ高崎の前に力の差を見せつけられ0-6と大敗。そして大きな壁だったアルテ高崎の活動休止を受けて、今度こそ初出場のチャンスかと思われた昨年は、決勝で関東リーグ1部所属のtonan前橋に1-2と敗れてしまい、チャンスを活かせなかった。

それにしても、昨年の決勝戦はもったいなさすぎであった。先制点を奪われたあと、後半に入ると枝本雄一郎(現在はトップチーム所属)が果敢に攻め上がり、次々とチャンス生み出し、次第に流れを掴んでいく。そしてクイックスタートからのリスタートで同点に追いつき、試合のペースはU-23の方へ傾いていくのだった。

しかし、そんなイケイケの状態の時こそ、「まさか」は起こってしまう。

いい流れを掴んでいるからこそ、隙を作ってはいけないし、相手のキーマンを注意しなければいけい。だが、まだ経験値の少ないチームには、余裕や老かいさが足りなかった。案の定、相手チームでもっとも注意しなければいけなかった選手、そう、大ベテランである氏家英行の一撃でやられてしまったのである。

相手がイケイケになっているときは、ピンチでもあるがそういう時にこそ、守備に隙は生まれるもの。長い選手経験を持つ氏家は、そういう「隙」を生まれるのを待っていたのである。

結果的には、若さ故、そして勝負どころを知らなすぎたU-23は、勝てるゲームを落としてしまったのであった。

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あれから1年となるが、今年も群馬県予選を戦うチャレンジャーズ。
あの試合後、GKの後藤は悔しさを必死に抑えながらこう語ってくれている。

「僕らは天皇杯に出るためにサッカーをやっているんではありません。僕らはザスパ草津のトップチームで通用する選手、必要とされるプロ選手になることが目標なので、(今日)チームは負けてしまい天皇杯には出られませんが、個人個人はここが終わりではありません。まだ、今年もこの先にリーグ戦(県リーグ)があるので、しっかり試合への準備を続け、プロ選手になれるように努力し続けます」

天皇杯に出られなかったことが悔しくない訳がない。

また普段のリーグ戦では、レベルのかけ離れた相手ばかりということもあり、メンバーは高いレベルの中で真剣勝負ができる天皇杯にどうしても出たかった。そしてトップチームだけではなく、多くの人の目に触れる本大会で「輝き」を見せられれば、ザスパではなくとも、別のチームでのプレーする機会も開けてくるかもしれない…

全員が同じ寮に住み、個人としては「プロになる」を目標とし、チームとしては「天皇杯に出る」を目標にしてきた選手たち。だからこそ、「勝てる試合」を落としてしまったこの試合は、初めて決勝に進んだ2011年以上に、つらい現実と向き合うこととなってしまった。

だが、後藤をはじめ、11人の選手が今年もこのチームに残った…

当然、個人としてプロになるための選択であるのだが、心の片隅にある「成し遂げたい」という思いがあった事も否定できない。

そして今、今年から加入した4人の選手を含めた15人と、実は選手登録されている監督の木村直樹の16人で挑む事となる今年の決勝戦。

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ここまでの道のりだが、決勝トーナメントに入ってからの学生相手3連戦は、決してラクな試合ではなかった。桐生第一、前橋育英との試合ではリードしながらも、ゲーム中盤以降は相手の豊富な運動量の前に、引き気味となってしまい、自分たちで苦しい試合にしてしまった。そして準決勝の上武大学とのゲームは、短く繋ぐチャレンジャーズと、キック&ラッシュを仕掛け続ける相手との「我慢比べ」のようなゲームとなっていく。

さらに試合は10時開始であり、真夏の炎天下が選手の体力を早い段階から奪い取っていったこともあり、両者ともミスが序盤から重なってしまうし、フィニッシュの部分で精度を欠き続けてしまう。だがそんな中で、相手よりも決定機を多く迎えたのはチャレンジャーズの方であったが、上武大GKの好セーブもあり、どうしても勝負を決める1点が奪えないまま90分が経過し、試合は10分ハーフの延長戦へもつれ込んでいく。

この日の前橋市の最高気温は35℃だったが、ピッチ上の気温は一時期59℃を指すなど、「こんな中でやらすなよ…」というコンディションであったが、両者とも「絶対に勝ちたい」という意地がぶつかり合い、決して高いレベルとは言えないものの、見るものの心を打つ白熱したゲームとなっていく。そして勝負の方だが延長戦でも決着がつかず、PK戦にまでもつれこむことに。

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ここで「男」になったのは、去年、同じ会場で悔し涙を見せながらも「プロ選手になれるよう努力し続けます」と語ってくれた後藤だった。彼の身長はたぶん私と同じか、ちょっと背が低いぐらいであり、171cmあるかないかぐらいである。だが、そんな身体的ハンデがありながらも、夢を諦めず自分のスキルを高め続けてきた男が、ここ一番で大仕事をやってのけてくれた。

チャレンジャーズ先攻で始まったPK戦は、3人目まで両者とも成功で4本目を迎えた。チャレンジャーズの4人目・小林雄は決め、上武大学の4人目を迎えた。ここで後藤は左に飛んだが、相手のシュートに対してなんとか残った足で反応し、見事にこれをストップ! そして最後は成長著しい藤井惇が落ち着いて決め、3年連続で決勝戦へコマを進めた。

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本当にギリギリの戦いであった。

いいコンディションのメンバーを選びたくとも、監督の木村(DF登録)を入れても16人しかいないため、ケガ人などが出れば大きな痛手となる。また、交代の「コマ」が少なく、劇的な変化を与える事が出来る「カンフル剤」が少ないところもチームの痛いところでもあった。そんな中での準決勝では、試合終盤にキャプテンの安田が足をつってしまい途中交代となるアクシデントが発生した。

それでもチームは必死に戦い抜き、また一つ成長を果たしたのだが、この試合後に、桐蔭横浜大学卒業後にチームに加わった小林誠の何気ない言葉がとても心に残ったのである…

「いやぁ、マジで公式戦って楽しいわ」

普段の県リーグでは味わえない「ガチンコ勝負」「負けたらおしまい」「極度のプレッシャー」を感じる事の出来るこの大会に、心の底から喜びを感じて出た言葉であった。

確かに厳しい試合であったが、そんな厳しい試合を「楽しかった」と振り返られることは、なんとも喜ばしいことではないだろうか? どんないい選手でも、チームに恵まれなければ、カテゴリーに関わらず「大一番」を迎える事が出来ないのだ。また、普段から衣食住をともにする仲間と挑む大事な大会を、楽しまないでどうするよ? ということだ。これに関しては、かつて木村直樹とともに、草津でプレーをした現大成シティFC坂戸の監督である、熊谷哲平も同じことを選手に説いていた。

だからこそ、マコだけではなく、決勝戦の舞台は選手みんなが「プレッシャー」を喜んで感じて欲しいし、決勝という舞台で戦えることに感謝して、楽しんでプレーしてもらいたい。

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過去2大会は、ある意味「決勝」という舞台に飲まれたというか、プレッシャーの前に気負いすぎてしまい、「らしさ」を出せなかった。しかし、準決勝のあとに出たマコの「楽しいわ」というコメントが、チームを変えてくれるような気がするのだ。

今年のチームには、エダのように自由自在にゲームを組み立て、さらには攻撃の軸として動ける選手はいない。だが2年目となるFWの中川、ボランチの藤井、そして最前線から2列目まで攻撃的ポジションをこなす城田の3人は、日々成長を続けており、決勝でも十分キーマンになれる存在になってきた。

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また、大卒新人組の久富、小林誠は、ディフェンスラインになくてはならない存在として君臨しており、決勝戦を睨んで組まれたアルティスタ東御、朝鮮大学校との試合でも落ち着いた対応を見せてくれた。

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選手は15人しかいない。でも、選手同士の「絆」と「想い」はどんなチームよりも強いはず。また、志半ばでチームを去っていたこれまでの「仲間たち」の願いもある。

今年こそ、チャレンジャーズチームに新しい歴史を作って欲しいと願いたい。そして、トップチームが「ザスパクサツ群馬」と名を変えた今こそ、「ザスパ草津」の名を継ぐ彼らに、リアル「温泉街からの挑戦」を成し遂げてもらいたいのである。

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準備は万端。
あとは明日の試合をしっかり楽しもう。
また、プレッシャーの中で戦える事に感謝しよう。
歴史を今年こそ変えよう。

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第18回群馬県サッカー協会長杯(兼第93回天皇杯予選)サッカー大会決勝戦

対戦カード:tonan前橋 vs ザスパ草津チャレンジャーズ
試合時間:13時キックオフ
試合会場:敷島公園サッカーラクビー場
入場料:大人700円、小中高300円(当日券価格)

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