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2013年7月12日 (金)

美濃部監督が望むJ3の理想像

薩川体制から替わった今季も、優勝争いの中核として安定した力をみせつけている長野パルセイロ。

後半戦に入って2戦目の7日、前日に首位讃岐が敗れた事もあり、この武蔵野戦で勝てば首位浮上の可能性がある中で試合を迎えた。しかし、そんな大事な試合は日中でもっとも厳しい暑さとなる時間帯の13時からと、難しいコンディションの中で試合は始まっていった。

ゲームの方だが、予想どおり厳しい暑さが選手たちから「本来の動き」を奪い取っていく。そんな状況の中で、立ち上がりは効率よく長いボールを前線に入れて全体をプッシュアップさせていく武蔵野がペースを握る。それにしてもここ最近の武蔵野の戦い方は、シーズン当初に比べて格段に良くなってきている。

3バック、フラット気味に並ぶ中盤の4枚、そして1トップ2シャドーの形。

2月に見た練習試合では、正直今年もダメなのか? と思ったほどひどい出来だった。しかし、粘り強く戦い方を続けていく中でチームはどんどん成長し、先日のブラウブリッツ秋田戦では今季最高ともいえるパフォーマンスを見せ1-0で勝利し、戦えるチームに成長していることをアピール。

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高いレベルのサッカーを見ている人からすれば、武蔵野のサッカーは面白くないかもしれない。だが、限られた予算、限られた練習時間、そしてこれしかいない選手の中で、どうやればしっかり戦えるのか? どうやれば完全アマチュアクラブでも、Jを目指すチームと対等にやり合えるのか? そしてどんなサッカーをやれば人の心をつかめるのか? という難問に対して吉田監督と選手は必死に向き合い、一つの答えにやっとたどり着こうとしているのだ。

そのキーワードに「ひたむきさ」がある。

まあ、ごく当たり前のことなのだが、結果がなかなか出ない状況の中では、どうしても「別の方法論」を求めがちになってしまうこともあるが、監督も選手も「しっかりスタイルを作ろう」と、一つのサッカーに粘り強く取り組んできた。そして必死に、ひたむきにボールを追う姿勢が、今の組織的な守備と速い展開に繋がりつつあるのだ。

そんな相手に対して、やや受け身になってしまった長野は、なかなかセカンドボールを拾えず、連続した攻撃には繋がっては行かない。だが、そんな硬直した状態の中で輝きを見せたのが、セレッソ大阪からレンタルでやってきた岡田武瑠(たける)だった。

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木曜日に行われたザスパ草津チャレンジャーズとの練習試合でスタメン組に抜擢され、週末の試合でスタメンデビューか? と期待されていたが、ついにその時はやってきた。タイプ的には昨年まで在籍した向慎一(現町田ゼルビア)に近い選手だが、ドリブルのキレは彼以上であり、将来的にはセレッソの先輩にあたる、香川や乾、清武や柿谷といった選手に続く逸材になる可能性もあるだろう。そして彼のドリブル突破からチャンスを作り出し、試合の流れを少しずつ長野がたぐり寄せていく。

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さらにセットプレーから川邊裕紀の決定的なシュートが生まれるが、ここは武蔵野のキャプテン金守がギリギリのところでクリア。後半に入っても長野が押し込む展開が続いていくが、武蔵野において今季一番の成長株である上田陵弥がいいカバーを見せ、なんとか凌いでいく。

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後半の立ち上がりで先制点が欲しかった長野だが、ここで点が奪えないと苦しい展開になってくる。粘り強く守る武蔵野だが、ただドン引いているだけではない。数少ないチャンスであったが、途中交代で入った若狭が必死に走ってゴール前まで駆け上がりチャンスをお膳立てしていく。

終盤に入り、体力的にも厳しくなってきた両者だが、どうしても勝って首位に立ちたい長野は、普段とは違う攻撃で応戦。80分に奮闘していた岡田に代え、DFの松原を投入。当然ながら、3バックにしたわけではない。彼が最前線に立ち、ターゲットマンとして攻撃のキーマンとなっていく。

試合後の美濃部監督は起用について、このように語ってくれている。

「選手たちにね、これから先にあるだろう『絶対に勝たなくてはいけない試合』をどうやってものにするかを考えてもらうメッセージとして松原をピッチに送り出しました。

今年、我々はJ2に上がれないが、来年は上がれる状況になる。となれば、何としても勝たなければいけない場面は必ず出てくると思います。J2昇格を賭けて戦っていれば、戦術を変えてでも勝ち星をつかまなければいけない時は出てくる。そういう重要性を示すために、松原を入れてパワープレーに出ました。

本当はね、高さのあるFWを入れられれば一番いいんだけれども、今はケガ人も多いのでああいう形になってしまいましたがね。でもね、普段と同じようなサッカーだけではなく、時としてこういう形でやらなければいけないということを覚えてほしかった。

昇格を争う中でね、絶対に勝たなければ(落としては)いけない試合が生まれてくると思うんですよ。だから来年の(厳しい)戦いを想定して、自分たちのサッカーではない形をやってでも勝つんだ!ということを示したかったし、我々は勝ちにこだわるメンタリティをもっと持って欲しいと思っています。

選手はみんなね、頑張ってプレーしていると思います。でも、頑張っただけで満足していたらその先はありませんし、(ステージの上がった)この先の厳しい戦いでは勝ち抜いていけません。こういう拮抗した試合で、どんな形でもやりきって勝利していくことが上に行くことに繋がっていく。そういうことを選手は理解してほしいです」

短く繋いでポゼッションで相手を圧倒するサッカーをやってきた長野にとって、パワープレーというものは、あまりお目にかからなかった。そのサッカーは美濃部監督になっても変わらなかったが、ここにきて「その先」を見据えて戦術の幅を広げようとする美濃部パルセイロは、明らかにこれまでの「長野」から大きく生まれ変わろうとしている。

さて、結果的に両者とも得点を奪えずスコアレスドローで終わったこの試合。武蔵野は3戦連続、そして長野は2試合連続で無得点試合となったのだが、両者とも決して内容は悪くはなかったことを付け加えておきたい。

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また、松尾の負傷以降、宇野沢頼りが強かった長野の攻撃陣だが、ここ数試合では藤井がいい連携を取れるようになったし、新戦力として迎えた岡田も可能性を見せた。そんな若い新戦力に負けじと田中恵太も、なんとかスタメンに食い込もうといいプレーを見せている。あとは、この日武蔵野に押し込まれる要因にも繋がってしまった、中盤の底の部分。ここをどう底上げしていくが、さらなるステップアップのポイントとなっていく。

そしてこの試合のあと、美濃部監督からJFLに存在する問題点と、J3というリーグへの理想も合わせて語ってくれた。

「やっぱりね、こんな状況(炎天下)の中でやったら、普段練習でやっていることの半分も力を出せないですよ(笑)

まあ、こんな環境の中で試合をするのもJFLの一つだから、言い訳をしてはいけないですけれど。ただ、お客さんに本当にいい試合を見せたいと思うのなら、やはりこの時間に試合をすることはどうかとも思います。

来年からJ3というリーグが始まりますが、プロアマ混在のリーグから、プロになるのだから、こういうところ(試合開始時間)とか、もっと調整してほしいですね。ただ単にJFLからJ3というように、看板だけ付け替えて「プロ」ですよ! なんていうのは、リーグの発展にはなっていかないですから。

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やはりね、プロリーグになるんだから、実力もそうですが、会場とか運営とかもしっかりしていかなければいけないと思います。また、レフリーのジャッジについてあれこれいうのも何ですが、Jリーグではアクチュアルプレータイムを増やそうと努力しているのに、JFLではダラダラと流していることが多いんですよね。

そういったところでも、Jとは違いがあるので、そんな部分も含めてJFLとはしっかり違うんだ、というプロリーグになってほしいと思います」

このJFLの試合開始時間については、あのフィリップ・トルシエも、現在はFC東京の監督であるポポヴィッチ氏も、その他にも多くの監督が「こんな気候、こんな時間帯にサッカーをやらせるのはおかしい」と警鐘を鳴らし続けてきた。

しかし、JFLというプロアマ混在のリーグにおいて、予算の都合や会場を抑える都合上、夏場とて昼開催となってしまいがちのクラブも存在している。それはそれで仕方の無いことなのだが、プレーする選手にも試合を見に来る観客にとっても厳しい環境であることは間違いない。だが、今後はJFLからJ3に分かれてプロになっていくのであれば、その点も改善していかなければ「プロリーグ」にする意味はない。

J3であろうと、「プロ」の看板を出しているかぎり、プロフェッショナルなプレーを見せることと同時に、プロの「興行」としてふさわしい会場を作り出していく義務もある。チームの方が今以上の力をつけることは当然だが、それと同時にクラブも「体力」をつけつつ、いい興行とするための創意工夫していくことも大事。またクラブだけではなくリーグ側も、今まで以上にレフリーの育成を進め、どのカテゴリーでもいいジャッジできる人材を育成してほしいと願いたい。

さてJ3に関してだが、現在JFLに所属し、J2復帰を目指す町田を筆頭に、準加盟申請がすでに通過し、参加確実となっている5クラブ(讃岐、金沢、長野、秋田、相模原)に、以前からJ準加盟申請を続けている琉球、福島。そして藤枝MYFC、Mioびわこ滋賀、栃木ウーヴァ、Y.S.C.C.といったクラブもJ3への道を歩みだしている。さらに地域リーグに所属するヴァンラーレ八戸(青森県)、グルージャ盛岡(岩手県)、tonan前橋(群馬県)、アスルクラロ沼津(静岡県)、FC鈴鹿ランポーレ(三重県)、奈良クラブ(奈良県)、レノファ山口FC(山口県)の7チームも名乗りを上げ、J2復帰の可能性を持つ町田(もしくはJ2からの降格チーム)を含めた19チームの中から、J3の「オリジナル12(もしくは10)」が決まることとなる。

正直なところ、JFL所属クラブからJ3へ変わっていくのが、実力的に考えて理想かもしれないが、Mioびわこ滋賀、栃木ウーヴァ、Y.S.C.C.の3クラブに関しては、もっと運営規模を大きくしていかなければ、ちょっと厳しいかもしれない。また、地域から「飛び級」を狙うクラブは、最低でも実力、運営規模を合わせて「JFL相当である」ということをアピールできないと厳しいというか、認められないだろう。

美濃部監督が「J3になるのだから、それにふさわしい舞台を用意し、そのうえでお客さんが満足してもらえる試合をしたい」とも語ってくれているが、これをクリアできるかはJ3への大きな加入条件となってくるはずだが、そのためには実力+資金力に加え「政治力」も必要ではないだろうか?

まあ、参戦が確実視されているクラブ以外に、どこが「J3のオリジナル」になるかはまだわからないが、選手にも観客もハッピーになれる試合会場を作れるクラブが揃って欲しいと願うかぎりだ。

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