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2013年6月 9日 (日)

J3の未来予想図を示したJFL首位攻防戦

2010年の全国社会人サッカー大会以来、ライバルとして互いを刺激し合ってきた長野パルセイロとカマタマーレ讃岐。そんな両者の対戦が、「首位攻防戦」という高いプライオリティとなって南長野に帰ってきた。そして何より、首位攻防戦、天皇杯シード獲得ということ以上に、来季からついに始まる「JリーグDivision3」に向けて、両者がどんな試合を見せられるのか? という点においても注目していたこの試合は、想像を上回る好ゲームとなった。

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さて、今季ホームでまだ無敗の長野。システムはシーズン当初から取り入れていた4-3-3ではなく、宇野沢が前線で自由に動く4-2-3-1という昨年に近いスタイル。それに対して讃岐はメンバー表上では4-3-3であったが、こちらも前線のキーマン木島良輔が自由に動く2トップ1シャドーに近い形でのスタートとなった。

ゲームはコイントスでエンドを取った讃岐が、追い風に乗って立ち上がりから相手陣内に攻め込んでいく。1分に大沢が右奥まで攻め込み、2分には木島のうまい選択でCKを獲得するなど、長野に先制パンチを浴びせていく。また、風をうまく利用したロングボール戦術も有効活用し、西野が確実にこれをさばき、木島や大沢、さらに2列目の関原、アンドレアもうまく攻撃に絡み、10分以降は完全な讃岐ペースに移り変わっていく。

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それにしてもベテラン攻撃陣の動きが実に素晴らしい讃岐。京都時代はFWという役割に限界を感じ、DFとして再生の道も選択した苦労人だが、このチームで前線の大黒柱として復活。この日は競り合いの際、頭部に裂傷を負いながらも気迫のプレーでチームを牽引。そしてもう一人というか、チーム最年長ながらも絶対的エースとして君臨し続けている木島良輔。そのプレーは衰えを見せず、対戦相手にとっては「最も危険な存在」であることには変わりはない。

そんな2人の気迫あふれるプレーに触発され、讃岐の攻撃が実に冴え渡っていくのだが、木島という「個」の力が前面に出ているにも関わらず、見事に「北野カラー」が出ているところは、さすが首位チームと思えるところ。木島の個、そして西野の良さを活かしながら、さらにはチーム全体がうまく回るにはどんなスタイルがいいのか? そう考えた時に「素早い攻守の切り替え」をこのチームの柱とした北野讃岐。

全体のラインをコンパクトにして、最終ラインも高い位置をキープ。そして早いチェックからボールを奪うと、西野めがけてボールを入れていくのだが、その時点で木島も大沢も連動して動き出す。彼ら2人にボールが入れば、しっかり2列目も連動し、アンカーの山本は流れを読みながら的確なポジションを取っていく。

パスをしっかり繋いでじっくり組み立てて崩す長野のサッカーに対し、守備と攻撃のバランスと速さを重視した「効率の良いサッカー」で流れをガッチリ掴んでいく讃岐。見事にそれぞれの「スタイルの違い」が浮き彫りとなったこの試合だが、前半の中盤を超えると、徐々に長野も相手の攻撃に対応できるようになり、試合前に監督が指示していた「サイドに散らしてギャップを突いていく」という狙いが出来るようになっていく。

前半は讃岐が主導権を握ったものの、結局はスコアレスで折り返し、後半追い風に乗って攻撃を仕掛けることが出来る長野が、どう反撃に出るかがポイントであったが、一つのミスが讃岐に大きなアドバンテージを与えることとなる。

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53分、長野守備陣の不用意なプレーを木島は見逃さず、プレッシャーを掛けると、難なくボールを奪いゴールに向けて独走。GK諏訪が前に出てきて1対1の場面となったが、ここは冷静に判断して中へ流すと、詰めていた山本が押し込んで讃岐が先制!

確かに長野守備陣の判断ミスであったが、それ以上に木島良輔の「球際の執念」を褒めるべきであろう。前半でも彼のチェイスからチャンスを作っていたし、DF2人に囲まれても絶対に「抜いてやる」「取ってやる」という凄まじい「執念」を見せていたが、この気持ちがあったからこそ生まれたゴールであった。

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アウェーの地で先制点を奪った讃岐。元々守備力の高いチームであり、これで完全にゲームは讃岐のものになったかと思われたが、ここからホーム長野の「意地」が爆発。

大事な首位攻防戦で負けられない長野は、やや動きに精彩を欠いていた大橋に代え、運動量豊富な野澤を投入(同時に保戸田も投入)。するとチームに躍動感が生まれ、2列目以降からの飛び出しがどんどん増えていく。野澤の良さといえば運動量と、攻撃力だが、地域リーグ時代にサイドバックをやっていた経験から「どうやれば後ろが活きるのか?」を熟知しており、そんな彼ならではの動きが、チームの潤滑油として絶大な効果を発揮。そしてこれまで以上にボールが回り、人も動くようになった長野は、64分についに讃岐のゴールをこじ開ける事に成功する。

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左サイドの高野が中に入れたボールを讃岐守備陣がクリアするも、これが右奥に流れていくと野澤が懸命に走り、追いつくと中へ絶妙すぎるクロスを入れる。これに中にフリーで入ってきた宇野沢が見事にヘッドで合わしてついに同点に追いつく!

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木島の個人技が生み出した讃岐のゴールに対して、サイド攻撃から崩してゴールという、いかにも「らしい」攻撃で追いついた長野。

そして同点に追いついた直後には、相手ボールをインターセプトした佐藤がそのまま持ちこんでミドルを放つなど、流れは完全に長野に傾き、会場のヴォルテージもさらにヒートアップ。しかし、そんな状況を冷静に読み取る讃岐・北野監督は、83分に木島を下げDFの大杉を投入し、明確に「勝ち点1を取れ」という指示を選手に与えていく。さらにFW西野はピンチになると、自ら自陣深くまで戻る献身的な守備を見せ、長野の攻撃を跳ね返していく。

ゲームは結果的に、守備を固めた讃岐ゴールをこじ開けることが出来ず、1-1のドローで終わったが、両者が求める「カラー」が見事に絡み合った素晴らしいゲームとなった。互いに高いライン形成を行い、リアクションではなく、自分たちから仕掛けるサッカーを展開。そんな中で速さの讃岐、展開の長野と、両者の良さがしっかり打ち出され、最後まで目が離せない展開となったこの試合。

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試合後の北野監督は「途中までは本当にゲームプランどおりだったね。だからこそ(勝ちきれなかったことが)もったいないね…」と語ってくれたが、ドローの試合であっても、やはりなぜ讃岐が首位にいるのか? ということがハッキリわかるゲームでもあった。

讃岐のゲームプランは至ってシンプルだ。ポゼッションして主導権を握ろうではなく、とにかく守るときはしっかり守り、攻撃のときは全員で仕掛ける。ただ、両方とも素早く切り替えてやるだけの話。確かにシンプルだが、それを実践できる「柱」がいないと、なかなか出来ない。

だが、今年の讃岐にはそれが出来る選手が見事に揃った。

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西野が競ったボールを確実にゴール前まで運んでくれる木島。その木島をサポートするSAGAWAから来た大沢。そして熊本時代に北野監督に重用されてきた山本。そして地元出身で今季急成長したDFの野口と、それぞれのポジションに「核」となる選手がこのチームで完全にフィットした。だからこそ、今の順位にいるし、その力をしっかり発揮できているのだ。

そして長野だが、これまでの4-3-3からの「呪縛」がやっと解き放たれたのかもしれない。
この日はやや4-4-2とも言える4-2-3-1だったが、これまでの4-3-3から、トップの両サイドがほんの「数メートル」ポジションを下げただけの違いだが、これまでよりも格段にいいゲームを展開したと言えるだろう。この日は相手が讃岐だったということもあり、決勝ゴールを奪えずドローに終わったが、内容的にはホームで今季一番の内容だったかもしれない。

しかし、讃岐との「差」を縮めるには野澤の活躍ではなく、大橋の「復活」がなければなし得ない。薩川体制時には負傷や退場以外で試合途中にピッチを去る事などない、替えの効かない存在だったが、新しいサッカーになった今、彼はどうしても波に乗れず悩み続けている。

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当然ながら、彼には技術はある。そして経験もある。ではなぜ、今悩んでいるのか? それはひとえに「まじめ」過ぎるからであろう。木島良輔ほどの「奔放さ」を身につけろとは言わないが、もっと自由さを持ったプレーをしてもいいと思うのだ。役割を忠実にプレーする選手が今のサッカーに重要な「駒」になることは否定しないが、忠実になりすぎるあまりに、かつての輝きを失ってしまっている気がするのだ。

自由奔放にとは言わない。しかし、選手がわずか数メートルポジションを変えただけで良くなったように、大橋も「ほんのわずか」の自由さを持ってプレーして欲しいのだ。大橋良隆という選手が、このまま終わってしまうのは悲しすぎる。いや、ハシなら土橋なんて目じゃないボランチになれるはずだし、Jでも通用する選手であるはず。だからこそ、ほんのわずかの「変化」を求めたいところでもあり、彼の覚醒抜きで長野の急浮上は見込めない。そして大橋がかつての輝きを取り戻せた時に、美濃部体制の全貌がやっと見えてくるはずだ。

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さて冒頭でも記したが、この試合は来季から始まる「J3」を考えたときに、非常に重要な意味合いを持つ試合であった。JFLとJ3ではどう違うのか? 形だけはプロリーグになったが、中身がJFLのままではその違いを出せないし、分けて「プロリーグ」とした意味は無い。だからこそ、J3に行くクラブ、そしてJ2を目指すチームは見る人を喜ばし、感動させる試合をする義務があるはずであり、この試合で両者はその義務を果たしたと同時に、J3というリーグは「こんなにおもしろい試合をするリーグなんだ」ということを、見事に提示したと思うのだ。

そして同時に、J3加入を目指す同じカテゴリーのライバルや、地域リーグから入ってくるクラブに対して、「これぐらいやらないと(できないと)」という基準を作ったとも言える。

今年のJFLはJ2から落ちてきた町田と、J2を狙う長野、讃岐の3強が抜け出した存在だが、それ以下はややポテンシャルが下であるということは否めない。J3というリーグを、ただ単にJ1、J2から落ちてきたチームのための「受け皿」としてはいけないし、サッカーの輪を拡大しつつ、JFLとは違う「高いレベル」のリーグにしなければならない。だからこそ、J3を目指すチームは、この「3強」を超えるようなクラブにしていかないと、リーグの存在意義すら疑問視されてしまうのだ。

長野と讃岐が「こうだ!」という明確なスタイルを見せた今、J3の明るい未来予想図は見えてきた。しかし、それ以外も伸びて来なければ「共存共栄」はあり得ない。実にスリリングで、J2クラブと比較しても差を感じられなかったこの試合を手本に、J3を狙うクラブたちは、もっともっと成長してほしいと願いたい。

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2013日本フットボールリーグ(JFL) 第15節 @南長野
AC長野パルセイロ 1-1 カマタマーレ讃岐
[得点者]
54分山本(讃岐)
65分宇野沢(長野)

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あと余談になりますが、試合会場で一番人気を誇ったのは、この日TV中継で解説をしてくれた「六本木のエースストライカー」かな?(笑)

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