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2013年5月 9日 (木)

グルージャ、辛くもガンジュを下す

2005年シーズン末に起こった「お家騒動」が原因で、グルージャ盛岡から分裂する形で結成されたガンジュ岩手。だからこそ、今でもガンジュ岩手をよく思わない関係者もいるだろう。しかしだ、あの時からもう8年という月日が流れている。

ピッチレベルで戦う選手やスタッフにとって、そんな因縁は関係のないものどころか、過去にそんなことがあったんですか… というレベルであり、特に気にするものでもなく引きずるものでも無かった。そして今、ここにある両者の関係は、それぞれのチームをリスペクトしながらも、東北の覇権を争うだけではなく、J3への道を勝ち取るために負けられない「ライバルのひとつ」であるということだけだった。

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過去に天皇杯岩手県予選で対戦はしたことはあるものの、同じカテゴリーで公式戦で戦うのは初めてとなった両者。しかし、この対戦を迎えるにあたって、大きなプレッシャーを感じていたのはグルージャの方だった。

ガンジュは岩手県4部からスタートし、毎年コツコツカテゴリーを上げ、昨シーズン途中から就任した申在範(シン・チェボン/元ジェフ市原)監督のもと、メキメキ力をつけてきたが、申監督は「今年は勝てれば(優勝できれば)もうけもの」というぐらいであり、まだまだチームは発展途上と考えていた。そんな中で、開幕から4連勝という、いい状態の中でこの日の対戦を迎えていた。

それに対してグルージャには、開幕前から大きなプレッシャーがあった。「J昇格」を目標に掲げ、1部リーグ昇格イヤーとなった2005年から数えて5度、東北社会人一部リーグを制しながらも、地域リーグ決勝大会では敗れ続けてJFL昇格を逃し続け、その間にTDK(現ブラウブリッツ秋田)と福島ユナイテッドといったライバルチームに先を越されてしまい、クラブとして非常に厳しい状態の中で今シーズンを迎えていた。

開幕戦であるCobaltore女川戦では、ゲームを終止優位に進めながらもスコアレスドロー、さらに4節のヴァンラーレ八戸戦では痛恨の敗戦。ライバルと目されたガンジュ、ヴァンラーレは揃って4連勝スタート。それに対してグルージャは2勝1分1敗で、4節を終えた時点で「勝ち点差5」をつけられ、早くもピンチに陥っていたのであった。

内容とか目指すサッカーはどうでもいい。とにかく勝つしかないグルージャ。それに対して「勝てればもうけもの」というガンジュ。そんな対照的な両者だったが、さすがに上位を争うチーム同士の対戦らしく、激しい戦いとなっていく。

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それにしても、大一番を迎えるにあたり、この日のピッチはかなり残念なものであった。

芝の育成状況はお世辞でもいいとは言えず、天候も雨が降ったりやんだりで、この試合の前に行われてた第一試合でも足を取られて正確なパスが出せない、または変なバウンドとなり思うようにボールコントロールできないシーンが続出。だからこそ、細かく繋ぐというよりも、長いボールを交えながらのゲームとなったこの試合。

3-6-1のガンジュに対して、グルージャは4-3-3。ただし、ここまでの試合の反省か、征矢が守備時にはセンターMFの位置まで戻るなど、グルージャは守備での約束事を徹底させてきた。

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ゲームの立ち上がりは完全に五分。しかし、先に決定機を迎えたのはグルージャ。13分のCKでは小林亮太がフリーのタイミングでヘディング。だがここは枠を捉えきれず。それに対してガンジュは1トップの森川を起点に、2シャドーの仲谷、小寺がサイドをつき、開いたスペースにボランチの長谷部、櫛引が飛び込んで相手ゴールを脅かしていく。そして18分には仲谷の突破からチャンスを掴み、続く19分に森川のうまいポストプレーからサイドに展開と、徐々にいい形を作り出していく。

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ともにチャンスは作るものの、ピッチ状態の悪さも手伝って、なかなかいい状態でシュート体勢に入れず、ジリジリとした展開となっていったこの試合だが、40分にガンジュのビッグチャンスが訪れる。

DF小林と小寺が競り合いの中で接触。しかし、主審の判定はノーファール。だが小林が倒れたことにより、グルージャ側は一瞬集中が切れ、小寺の突破を許してしまう。すると抜け出した小寺はゴール正面でシュート! 完全に決まったかと思われたが、無情にもシュートはバーを叩き得点を奪えない。

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それぞれ決定機はあったものの、それ以外の場面ではシュートチャンスを作れずスコアレスで前半を折り返す。

そして後半だが、3トップの一角である加藤に替え、裏に抜ける早さが自慢の高瀬を投入すると、流れは一気にグルージャに傾いていく。また、ガンジュの1トップである森川が、前半終盤での接触プレーから手を痛めてしまい、アグレッシブな動きにブレーキがかかってしまったところも、流れが変わる要因になってしまった。

前半以上に、両サイドバックがチャンスに絡みだしたグルージャ。そんな状況に対して、ガンジュ申監督は74分に石本を投入し、システムを4-4-2に変更して相手の攻撃に対応していく。だがグルージャも同時にメンバーチェンジを行い、前線でターゲットマンとして期待する土井良太を投入。

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攻勢に出るグルージャ、守備の意識を高めるガンジュ。流れは一方的になりつつあったものの、かなりスコアレスドロー臭が漂ってきたこの試合。なんとか相手の壁を破りたいグルージャは、82分に佐藤がドリブルでPA内に侵入。相手DFとの競り合いの中で倒れるも、ここは明らかなシミュレーションで警告となってしまう。

だが、「なんとかしなくちゃ」というギリギリの思いがガンジュの固い壁を打ち破ることとなる。

88分、征矢が強引なドリブル突破からFKのチャンスを得ると、ここで「自分がもらったチャンスなんで蹴らしてください」と申し出る。

征矢は流経大時代、その能力を中野監督や大平ヘッドコーチから高く評価され、早い段階からJFLチームやトップチームで出場する機会を掴み、成長を続けてきた。だが、同級生の山村(現鹿島)、比嘉(現横浜FM)、増田(現広島)、中里(現横浜FC)、関戸、上條(ともに岡山)、村瀬(松本→藤枝にレンタル中)がJリーガーとなる中で、彼はそこに入り込めなかった。しかし、夢はあきらめられない。そんな彼は大学卒業後、新潟シンガポールに入団し、今年はJ3を目指すこのクラブでやってきた。

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自分の手で「Jリーガー」という夢を勝ち取るためには、ここで「道」を断たれる訳にはいかなかった。そして彼の執念が決勝ゴールを呼び込み、辛くもガンジュを1-0で下し、J3への道をつないだのであった。

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だが、グルージャの鳴尾監督は勝ったものの、グルージャが直面する厳しい状況はまだまだ変わっていないこと、そしてやりたいサッカーが出来ていないことには不満ものぞかせた。

「守りながら戦う相手とは本当にやりにくいですね(笑)

サイドを崩してのビッグチャンスは何回か作れましたが、まだまだ単発。連続して攻撃を仕掛けられないと、カウンターを食らってしまい、なかなか波に乗り切れないので、その点はもっと改善していきたいです。また、2試合ぶりにゴールが生まれて勝ちましたが、これでいきなり劇的に変わるかどうかわかりませんし、本当に目指すサッカーが出来るようになるまでは、もう少し時間がかかると思います。

今日の勝利はあくまでも次に繋がっただけであり、『チャンスをもらった』ぐらいにしか思ってはおりません。

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今日の試合も気持ちよく選手がプレーしているとは思えませんでしたので…
やはり、(流れの)いい時間帯で点を取れるようにしたいし、先制することで波に乗れるはず。そのためにも、目指す連動するサッカーを継続してやっていきたいです。

あと、どうしてもどのチームからも比較対象とされ研究されてしまうし、(見ている側からは)勝ってあたりまえでしょ? と思われてしまうのが、やはりプレッシャーに繋がっており、どうしても今はチームが固くなってしまっていますので、うまくモチベーションを上げていき、この勝利を次のヴァンラーレ戦につなげていきたいです」

それに対して試合後の申監督は、にこやかな表情でこのように語ってくれた。

「なかなか自分たちのペースに持ち込めなかったですね。

今日の試合はリーグ戦18試合のうちの一つなので、特に気にする事はありません。自分たちがやってきたサッカーを、この後も続けるだけだし、精度をアップしていくだけです。

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今日は結果的に負けてしまい、(内容的にも)思うような攻撃の形は作れませんでしたが、守備面ではよく頑張っていた事は収穫だと思います。失点もセットプレーでしたからね。ただ、拮抗している中で、ちゃんと決められるかそうでないかがグルージャさんとの差だと思いますね。あの場面で直接決めた。それに対して、小寺のシュートはバーに阻まれたと。

まあ、今日の試合は最初から「ウチが勝ったらもうけもの」と思っていました。やはり、グルージャさんの方がチームとして上だったですしね。ただ、今は「戦術よりも個」を作っているい段階で、チームのベースを作っている最中でもあり、長い目で見てくれると幸いです。

でも、次にやるときには絶対に負けませんよ」

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確かに、全体的に見てグルージャが支配したゲームだったが、いいところまでは攻め込めても、堅い守りを完全に崩すまでには持ち込めず、結果的に自分たち(グルージャ自身)で難しい試合にしてしまった感もあるこの試合。また、昇格の切り札として加入した土井と林が最初から出て来れない現状も、停滞の要因の一つになっている。土井は途中交代で出場したが、もっと運動量を増やしていかないと、頭から使うのは難しい。さらに期待のかかる地元出身の林勇介だが、3月に入ってから合流したこともあり、まだまだチームにフィットしていないこともあり、スタメン出場はもう少し時間がかかりそうだ。

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だが、林も浦和、草津で戦力外となった現状に対して、もっと厳しい目で見つめ直さないといけないだろう。地域リーグだから、地元だから出来るだろ? では、絶対に通用しないだろうし、使ってもらえない。征矢のような必死さ、貪欲さをもっともっと出してほしいところ。さらには、この日のゲームのように、停滞してしまった中で林や土井が持つ「個の力」は絶対的なカードであるはずなのだから、そこでチョイスされる選手になってもらわないとダメなのだ。

グルージャ浮上の鍵は、間違いなくこの2人のデキにかかっていると言えるだろう。

さてガンジュだが、開幕からの4試合は格下ということもあり、危なげなく勝ち進んできたが、やはりグルージャとなると、これまでのようには行かなかった。今年からはSAGAWA SHIGAで活躍した櫛引を獲得するなど、実力の高い選手が揃い、十分に一部でも勝てる陣容を揃えてきた。だがいかんせん、下部リーグで格下と戦う機会ばかりであり、拮抗した試合というものがほとんどなく、その「経験の差」が勝敗を分けてしまったと言えるだろう。

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しかし、その点については申監督は焦ってはいない。周囲は「今年昇格を!」と期待するかも知れないが、監督は成長を認めつつも「まだまだ」と考えている。それはチームの成長だけではなく、フロントを含めた「クラブの体力」についてもだ。グルージャに比べれば、サポートしてくれる企業の数も多くはない。また、チームを熱烈に応援するサポーターの数は足下にも及ばない。

市内を歩いてみれば一目瞭然だ。盛岡市内にはグルージャを応援するポスターを見かけても、ガンジュを応援するポスターは残念ながら見つけることは出来なかった。グルージャは知っていても、ガンジュは知らないという市民、県民はまだまだ多い。だからこそ、チームを強くするだけではなく、「こんなクラブがあるんです」ということを、もっともっとアピールしていかないといけないガンジュ。

グルージャに勝つことも大事だが、それ以上に「知名度、関心度」をアップさせるという課題にも、選手、フロントが一丸となって取り組んでもらいたいかぎりである。

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5月5日 東北社会人サッカーリーグ一部 @岩手県営陸上競技場
グルージャ盛岡 1-0 ガンジュ岩手
[得点者]
89分征矢(グルージャ)

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