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2012年1月8日 - 2012年1月14日

2012年1月14日 (土)

アルテ高崎、JFLから退会

知人からの情報で正月の時点で話は聞いていましたが、ついに「リミット」というか、発表の時が来てしまった…

で、なんの話かといえば、JFL所属のアルテ高崎がリーグから退会したという話だ。

詳細についてはJFL公式HPに掲載されているので、ここでは触れません。ただ、この短い時間(12月20〜1月9日)しかない中で、運営担当をこなしてきた新井さんと後藤監督はチームをNPO法人として、なんとか残そうと出来る限りの努力を続けてきたことだけは、多くの人に知っておいてもらいたい。

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そして10日に、キャプテンである増田清一や山田裕也、松尾昇吾、小島直希、石沢泰羅といった中心選手を含めた10人の選手の退団が発表されたが、彼らは最初からチームを去るつもりではなかったことも付け加えておきたい。退団するどころか、後藤監督からチームの状況を説明されたあと、率先してチームに残ることを表明していたのだ。

だが、あまりにも時間が短すぎたのである…

本来なら、来季の参加伺いについては9月末日までと言われており、その時点で創造学園側が「ギブアップ」をほのめかしていれば、チームを移管する時間はまだあったであろうし、選手たちも「次の活躍の場所」を見つけることは容易だったはず。だが、なぜ学園側(というか小池大哲氏)は12月という時間のない時期に話を出したのであろうか? まあ、今年度の「JFL加盟料」も、その理事会直前で支払ったし、毎年のように滞納や延滞を続けていたのだから、JFL側から「最後通達」を突きつけられても仕方がない。

結局のところ、オーナーであった大哲氏がアルテ高崎、いや、サッカーというスポーツを「お金のなる木」、もしくは学園の知名度を上げるための「広告塔」としてか考えていなかったことが悲劇を招いてしまった原因と言えるだろう。

ザスパ草津と同時にJFLに昇格したまでは良かった。だが、チームを将来的にどうするのか? という展望がほとんどないままであり、とりあえず「Jリーグを目指す」とだけ宣言。しかし、ビジョンもない、群馬県サッカー協会からの支援も取り付けられない、おまけに学園のマイナスイメージから、スポンサーにつく企業がほとんどない… そんな状況ではJリーグ準会員申請も通るはずがなかった。

そして2006年シーズンの途中、大量に選手が解雇となる「事件」が勃発。その後のアルテは転がり落ちるように転落を続け、翌年は開幕戦に勝利しただけで残り試合はまったく勝つことが出来ず、年間勝ち点がわずかに「7」という、逆の意味で記録的な数字を残してしまう。

改めて当時を振り返ってみると、2006年7月30日の佐川東京戦を前にして、大量退団(解雇)が発表されたのだが、思うような結果が出なければシーズン途中であろうと容赦なくクビという、およそ普通のクラブとは思えない仕打ちが当然のように行われ、結果がでない、周囲からクラブに対しての価値を見いだしてもらえないとわかると、最低限の支援(加盟料、移動費)だけとなり、あとはもう放置という状況が続いた。

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プロである以上、結果を出せなければ「後がない」状況となるのは仕方がないところでもある。だが、アルテの場合はやや異質(異常)なものであり、通常の契約ではありえない誓約書を書かせたり、現状で問題となっている創造学園大学の講師陣への給与未払い問題とそう変わりのない状況がそこにはあったのだ。

こうなってしまったから書くことにするが、オーナーである小池大哲氏は、アルテ高崎がJFLにいることを、自身が所有している財産の中で「価値の高いもの」と考えていた。そう、JFLというリーグはJリーグに限りなく近い場所におり、これからJリーグを目指そうとするチームに合併(もしくは譲渡)という名で高く買ってもらえるのではと考え始めていたのである。

Jリーグ入りを目指していた2006年当時、群馬県内でのJ入りが難しい状況となると、J基準を満たすスタジアムをホームとしている松本山雅に非公式ながらも合併を打診。この時だが、当然ながら山雅側から色よい返事があるわけもなく話は自然消滅。そしてシーズン途中に結果が出せなくなると、チームへの支援は大きく減少。それと比例して成績もどん底まで落ち込み、本来なら関東リーグに降格となるはずだったのだが、Jリーグに昇格していくチームが毎年のように出たため、その「空き枠」でJFLに残留。

当初はいつチームを解散させてもいい状況でもあった。しかし、毎年のようにJリーグに昇格をしていくチームが出る。そしてJリーグを目指すと明言するチームもいくつも生まれてくる。そんな状況の中で、「クラブを売り渡す」というプランを浮上させたオーナー。だが、結果的にクラブを「譲渡」するプランは最後までまとまることはなかった…

経営母体である創造学園や小池オーナーが迷走を続けるなか、成績はどん底でも奇跡的にJFL残留を続けていたアルテ高崎。選手のへの待遇面や環境はリーグで最悪と言っても間違いない状況であり、かつて所属した選手もその環境や待遇、そして連絡伝達の悪さを嘆いたものだが、それでもこのチームに多くの選手が集まったのである。

その多くの選手だが、一つでも高いカテゴリーでサッカーをしたい。このチームで活躍すれば、他のチームの監督から認められてチャンスを掴めるかも知れないという想いを秘めてアルテに集まってきた。しかし、相変わらず環境は最悪であり、現在長崎に在籍する杉山も「練習メニューとかは、無茶苦茶だしいい加減だったりで、結局は自分たちで考えたりしてやったこともありましたね」と当時を振り返る。

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だが、2009年に後藤義一氏を監督に迎えるとチームは激変。横浜FCユースで「選手育成」をこなしてきた後藤監督は、無名でもやる気のある選手たち、そして野心を持つ選手たちをうまく育て上げ、アルテは大きな変革期を迎える。昨年、今年は成績的に満足できるもではなかったが、やろうしているサッカー、そして目指す方向性は非常に志の高いものであり、このまま後藤体制が続いていけば間違いなくいいチームに化けていくはずだった。しかし、チームは最悪の形で終わりを迎えてしまったのだ。

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もう少し、早い時点でギブアップをしていればこんな事態にはならなかったであろう…

今は残された選手たち、そして後藤監督の「次」が早く見つかることを切に願いたいと思うのだが、チームの「今後」も非常に気になるところでもある。

今回の発表はあくまでもJFLから退会するというリリースだけであり、アルテ高崎が今年は関東リーグに降格して戦うのか、はたまた新体制を作って群馬県リーグに参加するのか、解散となるのは何も知らされてはいない。

1/14 18:30追記
※JFLから退会や脱退を表明した場合、当該チームが存続する時はホームタウンのある地域リーグへの降格ではなく、都道府県リーグへの降格となります。

関東リーグに関しては、今年から1部・2部、それぞれ10チーム体制となることもあり、今日・明日に市原臨海で行われる2部参入決定戦を持って参加する20チームが決定するのだが、このタイミングでアルテの退会が発表されて、はい、今年は関東リーグで戦いますという流れになることは考えにくい。(→実際には、上記にあるとおり関東リーグで戦うことはない) また、所属選手のブログ等で「解散が現実的」とも書かれていることから、下のリーグに降格してチームが存続していくことも不透明な状況である。

選手たちがほのめかしているように、解散なのか? それとも新体制を作って県リーグから再スタートを切るのか? 選手たちの動向同様に、チームがどうなっていくのかも見守っていきたい。

※本文中に出てくる「小池大哲氏」とは、創造学園大学・元理事長である、堀越哲二氏を指しております

2012年1月10日 (火)

スパイクに込められた想いと新しい出発点

決勝戦開始1時間30分前、この日、出場停止で試合に出られない四日市中央工キャプテン・國吉祐介の姿がベンチ前にあった…

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彼自身が準決勝まで使用していたスパイクを、そっとベンチの横に置いたのだが、そのスパイクにはメンバー全員の「想い」が込められていたのである。試合に出られないキャプテン國吉への想い、そしてチームをこれまで牽引してくれたことに対しての「感謝の念」が込められたスパイクだ。

今大会の優勝候補筆頭である、市立船橋を相手に戦う四中工。さらにはキャプテン不在という非常に難しい状況の中で試合を迎えたが、チームの雰囲気は最高潮を迎えていた。

「試合に出られないキャプテンと、自分たちをここまで指導してくれた士郎さん(樋口監督)に優勝を捧げたい」

この想いを胸に秘めてピッチに立った四中工イレブンは、幸先良く先制点を奪うことに成功する。市船のキックオフで始まった直後、ボールを奪った四中工が相手陣内奥深くへボールを蹴り込む。そこで市船DFが処理を誤ってCKにしてしまう。このいきなり巡ってきたチャンスに西脇が頭で競り勝ち、こぼれたところを田村翔太がシュート! これはDFのブロックに遇ったが、そのこぼれ球が浅野の足下に転がり込み、豪快に蹴り込んで四中工が先制。

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手元の時計で確か57秒ほど。過去の記録までは不明なのだが、決勝戦の先制点としてはたぶん最速タイムではないのだろうか?

この1点が追い風となり、四中工がサイドに速く展開するサッカーを見せつけ、試合の流れを完全に自分たちのものとしていく。市船は、この日も守備的なリスクを回避するために3ボランチシステムで来たのだが、予想以上に速く繋いで展開する四中工のサッカーに押し込まれ、狙いであった「中盤での押し上げ」が機能していかない。

「してやったり」の立ち上がりを見せた四中工だが、前半25分を過ぎた辺りから徐々に押し込まれる時間が増え出し、流れは一進一退の攻防に変わっていくのだが、この日、キャプテン國吉の代役として送り込まれた生川雄大が「國吉不在」ということをまったく感じさせないプレーを見せ、相手に傾きそうになる流れを必死に食い止めていく。

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前半は結果的に1-0で折り返したのだが、後半に入るとプレッシャーを強めてくる市船に対して、防戦一方となってしまう四中工。特に65分以降は、いつ点が入ってもおかしくなほどのピンチが連続していく。そしてラスト10分を切ったところから、一段と攻撃の分厚さは増していき、81分のFKを皮切りに、ロングスロー、CK、FK、CKと多彩なパターンでゴール前にボールを運ばれてしまう。だが、國吉の代わりにキャプテンマークを巻いた西脇、そして1年生GKの中村が必死の対応を見せ、虎の子の1点をなんとか死守。

ピンチの連続であったが、相手のシュートミスにも助けられ、残されたアディショナルタイム2分を凌ぎきれば念願の優勝というところまで来た。しかし、勝負の女神は四中工に微笑んでくれなかった…

怒濤の攻撃を見せる市船は、あと1分というところでキャプテンであり、エースでもある和泉竜司がCKのこぼれ球を蹴り込んで土壇場で同点に追いつく。さらに勢いを加速させた市船は、延長後半にも再び和泉がゴールを挙げついに逆転。残された短い時間では、残念ながら追いつく余力が無く、20年の時を経て「単独優勝」にチャレンジしたものの、あとわずか… というところで優勝を逃してしまった。

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結果的に「勝ちに徹する」サッカーを終始貫いた市船に屈してしまった四中工。しかし、Jユースとは違い、ハードワーク、フィジカル勝負、縦1本がまだまだ幅を効かす高体連サッカーの中で、身体能力的に劣っていても魅力的なパスサッカーをやり通せば十分に通用することを、今大会で改めて証明できたと言えるだろう。そして20年ぶりに決勝の舞台へ導いてくれた選手たちに、心からの感謝を述べ「出せるものを全て出しくれた」と清々しいコメントを残した樋口士郎監督。

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20年の時を経て、半分だけから完全な優勝を目指したのだが、またも「あと一歩」で夢を砕かれてしまった四中工。しかし、この敗戦は新しいチームにとってスタートラインでもあるのだ。

史上3人目となる「6試合連続ゴール」を達成し、大会得点王となった浅野拓磨は「悔しさもあるけれど、今はこのチームでやりきれた喜びの方が大きい。この経験を活かしてまた来年チャレンジしたい」と、胸を張って国立競技場を後にした。また樋口監督も、すでに新しい年度に向けて視点を移しており、今のパスサッカーだけではなく、ハードワークもしっかりできる選手になって欲しいと1、2年生に注文。

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表彰式では悔しさをひた隠し、気丈に振る舞ってメンバーを統率したが、ロッカールームに戻ると泣き崩れてしまったキャプテンの國吉。その悔しさをはらせるのは、来年もある1、2年生だけなのだが、ある下級生はスパイクの寄せ書きに「任せといてください」と書き込んでいだが、今回はその言葉どおりにはならなかった。

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だからこそ、國吉だけではなく無念の想いを持ちながら卒業していく3年生のためにも、その言葉を来年の大会で実現してほしいもの。そのためにも。下級生たちが次の大会までにどれだけ精神的に成長できるか楽しみである。

その成長度如何によっては、今度こそ「優勝」という目標にたどりつけるはずだから…

2012年1月 9日 (月)

本日決勝、名門対決の行方は?

いよいよ今年度の高校サッカー選手権は決勝戦を残すのみとなったが、本命不在と言われた大会も、結果的には市立船橋と四日市中央工業と過去に優勝経験のある伝統校が勝ち残った。

さて、これから国立競技場に向かいますので、決勝展望は手短に行きたいと思います。

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まずは両校の過去の決勝戦成績と今大会成績をおさらい。

市立船橋、選手権決勝成績
67回大会  ●0-1 清水商
73回大会  ○5-0 帝京
75回大会  ○2-1 桐光学園
78回大会  ○2-0 鹿児島実
81回大会  ○1-0 国見
83回大会  ▲0-0(PK2-4) 鹿児島実

今大会成績

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2回戦:2-1長崎日大
得点者:75・80分和泉
3回戦:3-0清水商
得点者:12分米塚、55分小出、77分菅野
準々決勝:2-0矢板中央
得点者:20分小出、75分岩渕
準決勝:2-1大分
得点者:23分渡辺、56分和泉
今大会通算:9得点2失点

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四日市中央工、選手権決勝成績
56回大会 ●0-5 帝京
64回大会  ●0-1 清水商
70回大会  △2-2 帝京(※両校優勝)

今大会成績

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1回戦:3-0羽黒
得点者:21分浅野、65分田村、72分國吉
2回戦:6-1 徳島市立
得点者:53・59・66分田村、55分國吉、73分浅野、80+1分田村大
3回戦:1-1/PK4-2 立命館宇治
得点者:80分浅野
準々決勝:2-2/PK4-1 中京大中京
得点者:35分田村、80+1分浅野
準決勝:6-1 尚志
得点者:35分:國吉、41分田村、65分松尾、77・89分浅野、90分オウンゴール
今大会通算:18得点5失点

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それぞれ今大会で3試合ずつ見ているが、攻撃力を活かして勝ち抜いてきた四中工、そして守備力、総合力で安定した試合運びで勝ち抜いてきた市船と、カラー分けすることができる。ただ、メンバーをうまく入れ替えてここまで勝ち上がってきた市船に対して、四中工は絶対的存在であるキャプテンの國吉が決勝は出場停止となってしまい、非常に頭の痛い悩みが残ってしまった。

また、スタメンの平均身長というのも決勝戦のポイントとなってくる。準決勝の試合後会見で「ベストを探しているうちに今のメンバー構成にたどり着いた」と語った四中工・樋口監督だが、スタメン平均身長は169.9cmと、たぶん今大会出場チームで一番低いかも知れない。それに対して市船は188cmのワントップ岩渕を筆頭に大半の選手が175cmを超えており、平均身長は四中工より10cm近く高い178.3cmである。

そして、この高さを活かしたセットプレーから今大会でも得点を重ねており、四中工としては市船の高さ、そしてセットプレーへの対応策が重要となってくる。これに関しては準決勝終了後に樋口監督は「空中戦で戦っても勝ち目はない。いかに自分たちらしく繋ぐサッカーがやりきれるかですね。空中戦ではなく、地上戦に持ち込めるかが鍵になります」と答えてくれていた。

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また、市船の高さ対策同様に、四中工は相手の「鬼プレス」をどうかいくぐっていくのかにも注目が集まるところ。市船の強さの秘訣とは、決して高さによるものでもなく、圧倒的な攻撃力によるものでもない。何よりもポイントとなっているのは、相手の光を消し去る「連動した守備と衰えない運動量」である。

そうしたところから、冒頭で「総合力」と評した訳だが、今大会12得点を挙げている四中工の浅野、田村翔太の2トップは、簡単に走り抜けるスペースを与えてくれない相手に対して、どのような動きを見せてくれるかにも注目したいところ。

昨日の前日練習の内容からすると、市船は準決勝同様3ボランチシステムを敷いてくることが予想されるが、相手の光を消し去るサッカーに対して、チビッコ軍団がどこまで自分たちの「速く繋ぐサッカー」をやりきれるか? そしてもう一つ、キャプテン國吉の代役として出場が濃厚な生川雄大は、この大一番で大きな仕事をやってのけることが出来るだろうか?

20年前、両校優勝という形で「半分だけの優勝」に終わった四中工。そんなこともあり、チームとしては「完全な形で優勝を勝ち取りたい」という気持ちは非常に強い。そして、恩師でもある城雄士氏を超える戦いにもなる樋口士郎監督。しかし、決勝の相手は間違いなく今大会で最も強く、最も堅固な守備を誇る市立船橋。そう簡単に勝てる相手ではないが、多くの人の思いを背負って決勝のピッチに立つ四中工の選手たちの士気は高い…

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ここまで、展望予想といいながらも、どちらかというと四中工寄りの内容になってしまったが、正直に言ってしまえば市立船橋の優位は動かないと思う。

だが、高校サッカーとは前評判や下馬評というものがあてにならないことはすでに周知の事実である。どんなに前評判が高くとも、高校生はたった一つのミス、そして失点で大きくメンタルを崩して思いどおりの展開が出来なくなってしまうもの。

決勝の舞台においては、実力、下馬評、前評判よりも、いかに90分間普段どおりに「平常心」を保てるかがポイントでもあるのだ。だからこそ、市船優位であっても優勝するとは言い切れない。決勝戦とは、サッカーというスポーツであるのだが、実は「メンタルの競い合い」でもある。大舞台において、いかに自分のプレーが出来るかが勝敗を分けることになってくるはずだが、果たして試合後に歓喜の輪をつくるのはどちらの学校であろうか?

注目の決勝戦は、本日14:05から国立競技場で行われる。

2012年1月 8日 (日)

市船、9年ぶりの王座奪還へ王手

これは決して悪意ではなく、ホメ言葉として受け取って欲しい…

やはり伝統の「イチフナ」は憎らしいほど強かった…
そして国立で戦う「イチフナ」とは、大会初戦の市立船橋とは「別物」のチームであることをまざまざと見せつけられたのである。

スコアは2-1という僅差の試合となったが、内容的には「イチフナ強し」を改めて印象づけるゲームとなり、7年ぶりの決勝進出を決め、そして9年ぶりの優勝に王手を掛けた。

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さて試合を振り返りたいと思うのだが、まずは驚いたのがこの日敷いてきた両チームのシステムであった。

[市立船橋スタメン]
ーーーーー岩渕ーーーーー
ー池辺ーーーーーー和泉ー
ーー磐瀬ー松丸ー渡辺ーー
鈴木ー小出ーー種岡ー米塚
ーーーーー積田ーーーーー

[大分スタメン]
ーーーーー牧ーーーーー
小松ーーーーーーー岡部
ーーー佐保ー梶谷ーーー
ーーーー武生ーーーーー
馬場ー若林ー清家ー藤田
ーーーー平畠ーーーーー

両者とも、これまでの試合のシステムとはやや違う形で入ってきた準決勝。市船は4-2-3-1(もしくは4-1-4-1)システムから、磐瀬、松丸、渡辺の3人をボランチに並べるプランを採用し、大分の「フリーマンサッカー」に警戒してきた。そして大分も、司令塔である10番上野が靱帯損傷のため出場を断念。そのため、これまでの3トップから1トップシステムに変更し、中盤の構成を厚くするシステムで市船に対応してきた。

大分側のシステムは、やや「アクシデント」的でもあるのだが、結果的に両者とも「ここまで来たら負けられない」という意識もあり、攻撃よりも守りに重点を置いたシステムを採用したこともあり、立ち上がりは「じっくり」というよりも「ジリジリ」とした神経戦が続いていく。また、大分のシステムとゲームプランについてなのだが、上野不在という理由から結果的にこのような形となったが、そこはアイディアマンでもある朴監督。「中盤の枚数を増やして相手にいいパンチを出せないようにした」と語ったとおり、3トップが積極的に仕掛けて前から奪いに来るのではなく、やや引いた位置から構えて守る策に出たのだが、これが見事にはまり、市船はなかなか思い描いた展開を繰り出せない時間を費やすこととなる。

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しかし、試合巧者の市船はジリジリとする展開にも焦ることなく、じっくりと後ろで回しながらチャンスを伺う。そして前半23分、和泉の突破からFKのチャンスを得ると、ここでスポットに立ったのはボランチの渡辺だった。試合後に「公式戦では初めて蹴りました」と語ってくれたが、右足から放たれたシュートは見事にゴール右上隅に突き刺さり、大一番で貴重な先制点を叩き出すことに成功。

だが、1点のビハインドを追う大分も負けてはいない。30分、大分はゴール正面でFKのチャンスを得ると、ここで小松が直接狙っていく。最初のキックは壁に阻まれたが、このこぼれ球が小松の足下に転がり込み、再び絶好の決定機を迎える。完全にGKと1対1の状況となり、これで同点か? と思われたのだが、ここは市船GK積田の好セーブが飛び出し、大分は絶好のチャンスを活かせない。

結局、前半は互いに4本ずつしかシュートを打てないで前半を折り返したが、後半に入ると市船の底力が徐々に発揮されていく。47分、右サイドバックの米塚のクロスに、磐瀬がダイビングヘッドでゴールを狙うのを皮切りに、49分には和泉がやや遠い位置からシュートを狙い、大分守備陣のラインを少しずつ後ろに下げることに成功。そして55分、左サイドの池辺から中の岩渕にボールが渡り、ワンタッチで右前に走り込んできた和泉にパス。これを受けた和泉はDFを見事にかわしてシュート! これが決まってリードを2点差とする。

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それにしても、市船の勝負強さ、いや「憎たらしいほどの強さ」は、この2点のリードを奪ってからであった…

ハーフタイムで「私が指示を出したら普段の3トップシステムに変えなさい」と選手にプラン変更を示唆していたのだが、2点のビハインドを追う大分は、65分すぎからシステムを4-3-3の形に変え、これまでどおりのシンプルな裏を狙うサッカーで市船ゴールに迫っていく。だが、この日の市船3ボランチを含めた守備陣は最後まで安定していた。縦にボールを入れ、その裏から2列目が狙う「フリーマンサッカー」だが、3ボランチがしっかり2列目のケアをしているため、思うような攻撃を繰り出すことが出来ない。

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これまでの対戦相手には通用していたシンプルなサッカーも、市船が繰り出す「相手の良さを消し去る守備」の前に沈黙。このまま、光を遮断するかのような守備の前に完封されてしまうかと思われたが、79分に思わぬミスからチャンスが転がり込み、点差を1点差とすることに成功する。

79分、DFの小出のミスパスを小松がカット。これを奪った小松はゴール正面に切れ込んで行き、決定的な場面を迎える。だがここもGK積田がファインセーブを見せ、枠に飛んだシュートをなんとか外にはじき出す。しかし、直後のCKにおいて、ファーで合わせた清家のヘディングシュートが決まって、大分が1点差として反撃ののろしを挙げる。

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普通のチームであれば、国立という舞台、準決勝、決勝が懸かっている大事な一戦、さらには相手は1点差に追いついてイケイケという状況となってしまえばあれば焦って仕方がないところなのだが、今年の市船というチームには焦りはまったく無かった。それどころか、80分を過ぎてからは徹底して相手コーナー付近での「キープ」を選択。育成年代であるユース世代の大会で、残り10分の段階でキープに徹することに善し悪しについては、見る人の価値観もあるので、その是非は問わない。だが、「何をしてでも自分たちは勝つ」「ゲームをしっかりこのまま2-1でクローズさせる」という強い意志が伝わってくる瞬間でもあった。

これこそ、初めて国立に進出してくるチームと、伝統的に強いチームの差が出たところではないだろうか? 伝統とは、何年もの積み重ねによって生まれるものであり、「俺たちの時にはこうだったから、次の世代はこうしたほうがいい」という先輩から後輩への「教え」の積み重ねが勝負強いチームを作る血となってくるのである。また、今年のインターハイで初戦敗退したことも、チームが大きく成長する糧となっていたことを忘れてはならない。

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キャプテンの和泉は当時のチームを「全然バラバラでした」と振り返ってくれたが、選手権を前にしてスタメンで出られる選手、ベンチに入れる選手、そしてベンチに入れない選手を含めて、部全体が一つにまとまりを見せ、その結果として千葉予選決勝で永遠のライバルである流経柏を延長で下し、全国切符を得ることに成功。しかし初戦では選手権独特の「難しさ」が出てしまい、自分たちの良さを出せなかった。初戦敗退すら覚悟した試合であったが、伝統の力、そして自分たちは「イチフナである」というプライドが粘りに繋がり逆転勝利を呼び込んだ。

流経柏を破り、一番鬼門でもある初戦を通過した市船にとって、国立で勝つことは決して難しいことではなかったのだ…

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事実上の「選手権決勝戦」と言われた、流経柏との一戦を制して千葉県代表となった市立船橋高校。今度は事実上ではなく、真の決勝の舞台に立つわけだが、対する相手も伝統校である四日市中央工業であり、伝統校同士の対決となった決勝戦。そして両校の監督(市船は朝岡隆蔵氏、四中工は樋口士郎氏)だが、現役時代に揃って国立のピッチに立っているのだが、それぞれ決勝での勝利経験はない(朝岡監督はベンチ外だった)。果たして、どちらの監督が初めて頂点に立てるかにも注目したいところ。

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そして、6大会続いて「初優勝校」が生まれてきた選手権だが、7年ぶりに優勝経験のあるチーム同士の対戦となった決勝戦だが、相手である四中工の2トップは今大会屈指のストライカーを擁しているが、決勝の舞台でも堅守が発揮されれば市船優位は動かないと見る。そして、勝利への執念を見せつけるような試合運びをやりきれれば、9年ぶりの「王座奪還」も夢ではないはずだ。

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第90回全国高校サッカー選手権
準決勝/第一試合 @国立競技場
大分 1-2 市立船橋
[得点者]
81分清家(大分)
24分渡辺、58分和泉(市船)
[警告]
34分小松、85分梶谷(大分)
30分和泉、49分磐瀬、68分池辺(市船)

[ゲームスタッツ]
シュート数:大分9、市船12
ゴールキック:大分12、市船9
コーナーキック:大分3、市船4
直接FK:大分17、市船21
オフサイド:大分0、市船0
PK:大分0、市船0

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