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2012年1月1日 - 2012年1月7日

2012年1月 7日 (土)

改革が望まれる大学選手権

早いもので、新しい年となって今日で7日目。元旦に行われた女子選手権ではINACレオネッサ神戸が新潟レディースを破り連覇&年間2冠を達成。そしてそのあとに行われた「史上初」の2部勢同士の天皇杯決勝はFC東京の優勝で幕を閉じた。しかし、正月のサッカー界と言え高校サッカーを忘れることが出来ないだろう。そして大会だが、5日に準々決勝が行われ、大分、市立船橋、尚志、四日市中央工業がベスト4に進出。いよいよ、本日12:05から準決勝が始まる。

年末から年始にかけて、サッカー界では大会がいくつも続いていたのだが、その中で今回で60回目と伝統がありながらイマイチメジャーになれない全日本大学サッカー選手権の決勝戦が、高校サッカー準々決勝の同日(5日)に国立競技場で行われた。

決勝は奇しくも関東大学サッカーリーグの優勝(専修大学)、準優勝(明治大学)チームの対決となったが、今大会ベスト4の顔ぶれ(専大、明大、慶大で残る一校のみ東海の中京大)、そしてユニバーシアード代表選手に輩出した数(20人中19人)、さらには現時点でJリーグ入りが内定している大学生43名のうち、7割以上にあたる31名が関東大学リーグ所属校から出ているなど、今年は例年以上に関東の力が突出している年であったと言えるだろう。

決勝戦の内容については、やや時間が過ぎてしまったこともあり、あっさりとだけ紹介していきます。

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関東リーグ前期での対戦は0-4と明大に完敗を喫した専大だが、チーム力をアップさせた夏合宿、そして自信を深めることとなった夏の天皇杯予選を経て、チームは大きく化けることとなる。そして後期の対戦では、自慢の攻撃力が冴え渡り明大から大量5得点を奪い圧勝。前期の上位校だった早稲田、流経、筑波が勝ち点をなかなか伸ばせない中で、専大は最後まで勢いが衰えることなく、ついには優勝を勝ちとった。

その勢いをそのままに大学選手権に乗り込んできた専大は1回戦、準々決勝で自慢の攻撃力を爆発させ、準決勝の中京大戦でもスコアは2-0であったが、中京大に手も足も出させない完勝劇でついに決勝へコマを進めた。

それに対して、リーグ戦序盤は噛み合わないチーム状況に苦しんだ明大だが、中盤での守備が整備された総理大臣杯以降は安定した力を発揮し、最終的にリーグ戦は2位でフィニッシュ。専大ほどの勢いはないが、選手個々の確かな実力と安定した試合運びを武器に、2年ぶり3度目の大学王座を狙った。

ゲーム内容に移りますが、前半は明大の素速いプレスの前に専大攻撃陣が思うようにボールをキープすることが出来ない展開が続く。明大のプレスだが、ボランチの宮阪がキーマンとなるのではなく、実はFWの阪野なのである。素晴らしい運動量で相手がボールを持った瞬間にプレスを掛けに行くのだが、阪野が動けばその位置に近い選手もサンドしにいく。そしてプレスを掛けにいった2列目の穴を三田、宮阪が埋めるという実にスムーズな連動が明大サッカーを支えているのである。

この連動した動きに手を焼き、前半はあまりいいところを出せなかった専大だが、後半に入ると1トップ+2シャドーの3人、そしてゲームをコントロールする町田、庄司の動きが冴え渡りだしていく。まず試合を動かしたのは、専大躍進の立役者でもある2年生の長澤和輝である。ペナルティエリアやや外で町田からボールを受けると迷わず右足一閃。これが見事に決まると、その後は専大が目指す「速く、激しく、美しく」という攻撃サッカーが爆発。

正直に言えば、リーグ後半戦の戦いを見ていれば明大が勝つということはあまり予想出来なかった。いや、今の専大はどの大学にも負けないだけの強さが備わっていたと見るべきであろう。大学選手権史上で、これほど1回戦から決勝まで圧倒的な強さを見せつけて優勝したチームがあったであろうか…

2部から昇格し、当初は1部残留が目標であったチームが、いつしか優勝に変わり、そして最後には大学日本一の座まで獲得。さて、今年の専大のキーワードだが、「初志貫徹」といったとっころではないだろうか? なかなか勝ちきれなかった前半戦。元々攻撃力はあったのだが、守備面で不安のあった専大。そんな時にこそ、チームを立て直すためにも「守備的戦術」を取りたくなるものだが、源平監督は「関塚さんが作った攻撃的サッカーをここでもやり抜きたい」と、攻撃的姿勢を変えずにチーム力をアップさせてきたのであった。

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ということで、簡単に決勝戦などを振り返りましたが、内容的にはおもしろい決勝戦であったのですが、観客動員という点では非常に不満の残る結果でもあり、これこそが大学サッカー界で改善して行かなければいけない点でもあると感じた。

決勝戦の観衆は14,134人と大学選手権の決勝としては過去最高の動員となった今大会。しかし、当初は「3万人動員」を目指し、学連スタッフもあの手この手を考えてこの大会をアピールしてきた。これまで、1万人すら夢であった決勝戦だが、今回はあともう少しで15,000人というところまで来たことは、素晴らしいと思うし、スタッフの努力の結晶であることも認める。

しかし、同じ正月に行われている大学ラグビーや箱根駅伝に比べて極めて注目度が低いことはどうしても気になるところ。また、同日に行われた高校サッカーは翌日の新聞紙上でも大きく取り扱われていたのに対して、大学の決勝は本当に小さなスペースのみだった。

そんな現状を打破するために、学連スタッフはいろいろな形で招待券を配布したり、JUFA GIRL企画などを打ち立てて大会を盛り上げようと頑張ってきた。しかし、今のやり方だけでは、あくまでもサッカー界や学生界の「内側」だけでの活動に過ぎない。インカレという大会を盛り上げ、そしてメジャーな「ソフト」としていくためには、もっとメディアを活用したり企業などとタイアップして露出を増やしていく必要性があるだろう。

高校サッカーや箱根駅伝は日テレが長い年数を掛けてブランド力のあるソフトに育ててきた。また大学ラグビーは大きなバックがある訳ではないが、伝統的に根強い人気を保っている。それに対して、サッカー大学選手権(インカレ)は目立ったメディアのサポートはない(※一応、テレ朝系列で1/8の24:45に放送される「Get Sport」内で放送されるが、決勝や大会単体での生中継はない)。媒体での紹介や取り扱いも少ない、さらには正月の大きなスポーツ大会に挟まれて注目度が低くなっている現実もある。

また、ラグビー側は一大ブランドである「早慶明」が揃って準決勝を前に敗退してしまったが、それでも準決勝は16,377人の動員を記録。スタッフの努力は認めるが、集客が見込める早慶明不在のラグビー準決勝の動員に届かなかった事実をしっかりと受け止める必要があるはずだ。→1月7日19時追記:本日行われた高校サッカー準決勝の観客動員は22,201人(第二試合)でした。

ここ数年、1月5日、国立決勝が定着化している大学選手権決勝だが、5日とは一般の方でいえばすでに仕事が始まっている日であり、なかなか観戦しにくいところでもある。正月の国立競技場のスケジュールから考えて5日ということなのであろうが、やはり平日の昼間開催というものはどうしても集客に苦戦するものである。そして大学選手権のスケジュール的なものだが、毎年準決勝から決勝までが10日以上空くのである。もし、大学選手権をもっと集客を伸ばしたいのであれば、平日の昼間開催は改めるべきであり、日程的なものも改める必要性があるだろう。やはり、日程が空いてしまうと選手の調整も難しくなるし、さらには観客側の関心度も薄まってしまうもの。

例えば、今年の準決勝が25日であったこと、そして国立競技場のスケジュールから考えて、31日決勝というプランで開催されていればもっと集客できたと考える。年末の国立だが、女子選手権準決勝、天皇杯準決勝、高校サッカー開幕戦などが続き、年明けは天皇杯決勝、大学ラグビー準決勝・決勝、高校サッカー準決勝・決勝が続き、土日にサッカーの大学選手権が入り込むスキがなかなかない。であるならば、大晦日である12月31日開催はどうだろうか?

これであれば、準決勝から中5日と短すぎず、空きすぎずで程よい日程。さらには、正月から始まる各種スポーツの大きな大会の中で埋没することもない。もし、12月31日開催にして、困るのは天皇杯決勝の設営準備をする某S社ぐらいなものではないだろうか?(笑)

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今年も多くのJリーガーを輩出し、日本独自の育成機関として重要性を高めている大学サッカー界。もっと日本サッカー協会やメディアが主導して、この大会の知名度を上げていかなければならないと感じるのだが、果たして来年度の大会がどうなるのか…

5日開催にこだわるならそれはそれでいいのだが、それであればあくまでも、まだ冬休みの「学生のためのイベント」から抜け出すことは難しいと考える。日程改革を含めて、大学選手権が今後、どう変わっていくか見守っていきたい。そして自分自身も大学サッカーが注目を浴びるように微力ながら協力していきたい。

2012年1月 4日 (水)

高校サッカー、ベスト8決定

1月3日に高校サッカー選手権3回戦が駒沢、埼スタ、市原、三ツ沢で行われ、下記のような結果となり、ベスト8進出チームが決定した。

【駒沢】
○中京大中京 3-2 済美●
得点者:39・42分宮市、66分熊谷(中京)、47分青木、79分藤本(済美)

○市立西宮 1-1/PK8-7 近大附●
得点者:57分後藤(西宮)、54分荒金(近大)

【埼スタ】
○矢板中央 1-1/PK5-3 國學院久我山●
得点者:1分福澤(矢板)、14分大畑(久我山)

○大分 1-0 青森山田●
得点者:57分梶谷(大分)

【市原】
○四日市中央工 1-1/PK4-2 立命館宇治●
得点者:80+1分浅野(四中工)、45分谷口(立命館)

●清水商 0-3 市立船橋○
得点者:13分米塚、54分小出、77分菅野(市船)

【三ツ沢】
●桐光学園 3-3/PK2-4 尚志○
得点者:48分高橋将、55分橋本、64分高橋孝(桐光)、22分高、53分皿良、73分後藤(尚志)

○桐生第一 4-1 奈良育英●
得点者:37分吉森、55分遠藤、66分鈴木、79分金田(桐生)、42分山田真(奈良)

そして3回戦の結果を受けて、明日(5日)に行われるベスト8の対戦カードはこのようになった。

【埼玉スタジアム】
12:05:市立西宮 vs 大分
14:10:桐生第一 vs 尚志

【駒沢陸上競技場】
12:05:中京大中京 vs 四日市中央工
14:10:矢板中央 vs 市立船橋

ということで、あてになるかどうか不明ですが、簡単に展望を。

●市立西宮 vs 大分
大会前から予想しづらい大会と言われたが、有力校と目された山梨学院、青森山田が揃って敗退。その中で、ノーマークだった市立西宮が堂々とベスト8進出を決めたことは賞賛に値するであろう。

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また、初戦で10得点を奪った大分高校も勢いを持続して浦和東、そして青森山田も撃破。この勢いに乗る2チームがベスト8で対戦するが、どちらが勝っても初の国立となるのだが、抜群のチームワークと堅い守備で快進撃を続ける西宮、速い展開から自慢の攻撃力を活かす大分と、それぞれのチームカラーが違う同士の対戦は非常におもしろいものになるだろう。

●桐生第一 vs 尚志
今大会において山梨学院の白崎凌兵、清水商の風間宏矢と並んで注目の選手に挙げられていた桐生第一の鈴木武蔵だが、今大会に入って抜群の決定力を見せ、チームの勝利に大きく貢献。昨年に比べて「小粒」と言われたが、やはり能力の高いタレント軍団であった前橋育英を下したことはダテではないことを証明した桐生第一。鈴木が相手マークを引きつけたところで、2列目の3人が虎視眈々とゴールを狙うサッカーで、一気に国立を目指したいところだ。

それに対して、震災の影響がいまだに残る福島に元気を与えたいと願う尚志は、2戦連続して苦戦しながらも粘って勝ち抜いてきたのだが、準々決勝でもその「粘り」が発揮出来るだろうか? 尚志としては接戦に持ち込みたい。

●中京大中京 vs 四日市中央工
さて、初戦の作陽戦で大苦戦しながらも、辛くもPK戦で勝ち上がった中京大中京は3回戦で宮市亮の弟である剛が2得点を挙げ勝利に貢献。

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そして中京と激突するのは、プリンスリーグ東海などでも対戦している四日市中央工であるのだが、四中工の樋口監督は3回戦を終えた直後に「中京さんはテクニックがあるから、今日のような試合をしてしまった絶対ダメですね」と語った。

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確かに、3回戦の立命館宇治戦は、序盤から主導権を握り、何度も決定機を迎えたのだがことごとく外してしまい、徐々に相手のペースに引き込まれてしまい、敗戦も覚悟しなければいけない試合であった。しかし、攻撃陣の勢いは決して下り坂ではなく、その勢いは持続していると見た方がいいだろう。あとは、四中工のゴールを守る1年生守護神・中村研吾のスーパーセーブに期待したい。

●矢板中央 vs 市立船橋
清水商との「超名門対決」を3-0という完全勝利で終えた市立船橋は、同じく関東の矢板中央と激突。初戦こそ苦戦した市船だが、清水商との一戦では実に素晴らしい試合巧者ぶりを発揮。相手のキーマンである風間には、エースキラーに指名された1年生の磐瀬剛が見事な活躍を見せ、風間にまったくといっていいほどボールに触らせない。

さらには磐瀬だけではなく、どの場面でも守備においては数的有利を作って清水商からボールを奪い取っていく。攻撃においては1年を掛けて精度を高めてきたセットプレーから見事に2得点を奪うなど、ソツのないところも見せつけ、優勝候補筆頭であることを強烈にアピール。

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そして今年度から石渡氏(現在は船橋市教員センター職員)からバトンを受け継いで指揮を執る、朝岡隆蔵氏にとっても、監督として初の国立、そして優勝という目標がハッキリと見えてきた。

そんな優勝候補に立ち向かうのは栃木の矢板中央だが、高橋監督は2年前の選手権ベスト4のチームに比べると力は劣りますとコメントしているが、突出した力がない分、全体でカバーしあうサッカーでベスト8までたどり着いてきた。市船戦では相手の速く厳しいプレスに苦戦するであろうが、少ないチャンスに突破口を見いだしたい。

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ベスト8に残った顔ぶれを見ると、過去に国立を経験している学校は四中工、矢板中央、市船の3校のみで、さらに優勝経験のあるのは四中工、市船だけに限られてくる。そして埼スタ会場で予定されている2試合だが、どこが勝っても初の国立切符となるのだが、福島県代表の尚志は「県勢初のベスト4」ということも懸かってくる。

3回戦の試合を見る限りでは、市立船橋が優勝の最右翼であると感じるところだが、どこが市船を止めるかにも注目したいところ。そして快進撃を続ける普通の高校生・市立西宮が夢の舞台である国立にたどりつけるかにも注目したい。

2012年1月 3日 (火)

努力が奇跡を生む瞬間

大会3日目となった昨日は、今大会最初の「ジャイアントキリング」が飛び出した。当然、その試合は西が丘で行われた市立西宮 vs 山梨学院大学附属高の試合である。

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試合前、市立西宮の勝利を予想する人は少なかったのではないだろうか? それは一般の方だけではなく、報道する側も同じであり、カメラマンの大半が西宮ゴールの裏にいたことがそれを物語っていた。まあ、山梨学院が優位であることに疑いはないし、今大会注目の一人である白崎凌兵がいることもあり、どうしても山梨学院中心に見てしまうものである。

そして試合後、市立西宮の大路監督も「一発目から山梨学院だよ…」と組み合わせ抽選が決まってから、選手がナーバスになっていたことを語ってくれた…

そんな状況の中で、兵庫県予選準決勝で昨年の覇者・滝川第二を破った市西宮は、本会初戦で2年前の覇者・山梨学院と激突。

[山梨学院スタメン]
ーーー名嘉真ー白崎ーーー
ー柳沢ーーーーーー木下ー
ーーー荒木ーー萱沼ーーー
金井ー藤原ー新潟谷ー山口  
ーーーーー山田ーーーーー

[市立西宮スタメン]
ーーー指田ーー大道ーーー
ー後藤ーーーーーー新井ー
ーーー難波ーー前野ーーー
山口ーー池上ーー帷ーー柳  
ーーーーー中野ーーーーー

試合の立ち上がりは、予想外にも西宮が相手陣内に攻め込む形でスタート。2分に前野がファーストシュートを放ち、直後の3分にはCKのチャンスを奪い、山梨学院ゴールに迫る。

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しかし、立ち上がりのラッシュを受けきった山梨学院は徐々にペースを握り出す。FWの白崎だが、この日は相手のマークが厳しかったこともあり、あえてやや下がり目のポジションを取って行くのだが、このプランが見事にはまり、相手守備陣をおびき出すことに成功し、空いたスペースに次々とスルーパスを通してチャンスを広げていく。

それにしても前半の攻撃だが、碓井(現駒澤大学)を擁して優勝を果たした2年前のチームよりも素晴らしいアタックを見せていた山梨学院。圧倒的なボールポゼッションに流れるような展開。これはゴールを奪うのも時間の問題かと思われた。そして18分、自らのシュートでCKのチャンスを掴んだ萱沼が頭で合わし、山梨学院がついに先制点を奪う。

圧倒的な攻撃力で相手陣内に攻め込む山梨学院。この1点が大量得点の呼び水となるかと思われた。事実、その後も白崎が繰り広げる「異次元のパス」が市立西宮守備陣に何度も脅威を与えていく。

だが、試合前に「白崎君とのガチンコのマッチアップをしてみたい」と語っていた西宮のキャプテン帷は、粘り強いディフェンスで対応。帷個人だけではなく、チームとして白崎対策を練ってきた西宮は「チャレンジ&カバーの徹底」とボランチを絡めた「サンド」で対応。

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その粘り強い守備に手を焼いた山梨学院は、前半で11本のシュートを放ちながらも結局はセットプレーでの1点だけにとどまってしまう。さらに西宮の粘り強い戦い方は前半終了間際に最初の奇跡を生み出すこととなる。

カウンターから活路を見いだしていた西宮だが、前半ロスタイムに入った直後に相手陣内に素早く進入。そしてこのチャンスでPKのチャンスを得る。絶好の同点機にスポットに立ったのは西宮はキャプテンの帷であった。

しかし試合後、帷本人が「バレバレでしたね」とコメントしてくれたとおり、PKはGK山田がドンピシャのタイミングでセーブ。しかし、弾いたボールが幸運にも帷のもとに転がり、これを押し込んで西宮が実にいい時間帯で追いついて後半戦に繋げていく。

結局は1-1のイーブンとなったが、山梨学院が繰り広げた前半戦の出来は吉永監督としては「今季最高」と評するぐらい素晴らしい出来であり、決して悲観するものではなかったのだが、白崎をはじめとした山梨学院の選手たちにとっては追いつかれたことが精神的に大きなショックとなってしまう。

ショックを隠しきれずロッカールームに戻る山梨学院の選手たちとは対照的に、西宮の選手たちの表情は自信に満ちあふれていた。元々、前半は相手の動きに食らいついて「0-1ぐらいでもいい」という感じでもあり、粘って後半勝負というプランを描き、相手が前がかりに来るので、その裏のスペースを狙っていこうという攻撃のプランもしっかり出来ていた。そんな中で最高の時間帯に同点に追いつき、当初は「どうやって強敵と戦うか?」とナイーブになっていた選手たちの表情が「自分たちはやれる」という自信に満ちあふれた表情に変わっていく。

そして後半の立ち上がりだが、山梨学院はいきなりのラッシュを仕掛けていくのだが、その姿は「1点のビハインドを背負った状況で残り5分」というような悲壮感を漂わせながら攻め込んでいく。

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試合は1-1のイーブンであり、まだまだ焦る時間ではないのに、とにかく「前に行こう」という意識だけが空回りしてしまい、前半のようにスペースを有効に使うのではなく、強引に中央をこじ開けようとする「力攻め」に終始してしまう山梨学院。

それに対して西宮の選手たちは非常に冷静だった。いや、冷静というよりは、まさに監督の頭に描いたゲームプランそのままの状況がピッチ上で繰り広げられていたのである。

前半は敢えて下がり目の位置をとり、相手DFやボランチを引き出してスペースを作り出していた白崎だが、後半に入ると「得点しなければ…」という焦りから前に張り付いてしまい、DF網の餌食となり「らしさ」が完全に埋没していまう。

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慌てる時間ではないのに、焦りから「らしさ」を失ってしまった相手に対して、西宮の選手たちは最後までゲームプランを忘れることはなかった。そしてこの冷静さが50分に実を結ぶこととなる。

選手権が始まる直前から、セレッソ大阪の練習に参加しているFWの後藤寛太が新井とのパス交換から見事に抜け出してど真ん中を突破。最後はGKの動きを冷静に見てからシュートを放ち、ついに西宮が逆転。

その後も鋭いカウンターで何度も山梨学院ゴールを襲い、77分にも再び後藤がスペースに抜け出し、2点目とほぼ同じ形から試合を決定づける3点目をゲット。

もう、見事としてか言いようのないゴールであった…
山梨学院は「これでもか!」と何度も連続攻撃で相手ゴールに迫るが、前半のような戦術やアイディアを欠いてしまい、真ん中を固める西宮ディフェンス網にひっかかり、フィニッシュにすらたどり着けない。それに対して、冷静かつ華麗に相手の裏を狙い、針の穴を通すかのような正確な1本のパスで相手DF網を破った西宮。

終了間際に1点は奪われたものの、最後まで冷静さを崩さなかった西宮が、見事なゲームで、またも優勝経験校を打ち破ったのであった…

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試合後、西宮・大路監督は「何もない普通の公立高校ですよ…」と謙遜しながらコメントを続けてくれた。

「昨年優勝校(滝川第二)を出した兵庫県の代表校として恥ずかしい試合はしたくなかった。でも、選手権の直前になって他の代表校と練習試合を行う中で、自分たちの力がそれほど劣ってはいないことにも気がつけた。毎日自分たちは2時間の定められた練習しかしていませんが、その時間の中で選手たちはしっかりと自分の課題を見つけて取り組んでくれました。そして勝つための努力をしてくれました。チームのスローガンとして『努力は奇跡を生む」と掲げていますが、この舞台でそれを実践してくれるとは…

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同点に追いついてロッカールームに戻ってきた選手たちには『リラックスしてあと40分間楽しもう』と伝えて選手を送り出しました。その中で今日の狙いである裏のスペースを突く、そしてスピードのある後藤と、テクニックのある交代出場の渋谷がそれぞれ仕事をしてくれたのも大きかったですね。

表向きは「パスサッカー」なんて言っていますが、さすがに今日の相手(山梨学院)にはそれを出すことは出来ませんでしたが、次も兵庫県代表としてしっかりとした試合を出来ればと思っています。また、関西勢同士の対戦となりますが、どちらが勝ってもベスト8に関西勢が残るわけで、それはそれで近畿勢の活性化に繋がるので(どっちが勝とうと)それはいいことだと思っています」

そして貴重な同点弾、そして相手エースとの激闘を制したキャプテンの帷は「今はまだ勝った実感とかうれしさは出てきませんが、ホテルに帰ってテレビで見たら実感してくると思いますよ」と、いい表情で語ってくれた。

普通の公立高校でも、やる気と集中さえ切らさなければ奇跡は起こせる。市立西宮は、多くの「普通の高校生」に夢を与えてくれたと言えるだろう。さて、あと、約1時間後に彼らの「第二戦」が始まる訳だが、今日も「奇跡」を生み出せるか期待がかかるところでもある。

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第90回高校サッカー選手権・2回戦
市立西宮 3-2 山梨学院大学附属高
[得点者]
18分萱沼、80+3分藤原(山梨学院)
40+1分帷、50・77分後藤(西宮)

2012年1月 1日 (日)

浦東快勝、清商は辛勝で2回戦へ

30日に行われた国学院久我山 vs 東海大五の試合から始まった第90回全国高校サッカー選手権。昨日から本格的に大会もスタートし、残っていた1回戦の15試合が関東各地で行われ、大分、浦和東、四日市中央工が快勝スタートで発進。それに対して、前評判の高かった清水商、聖和学園、桐光学園は厳しい戦いとなり苦戦。しかし、ギリギリの戦いを制して2回戦進出。ということで、まずは1回戦の試合結果を一覧にまとめたいと思います。

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12月30日【国立】
○國學院久我山 2-1 東海大五●
得点者:8分富樫、69分右高(久我山) 、32分柴田(東海)

12月31日
【柏の葉】
●盛岡商 1-5 近大附○
得点者:55分横澤(盛岡)、18・75分黄、25分鈴木、30分刈谷、59分白井(近大附)

○聖和学園 1-1/PK4-3 香川西●
得点者:79分藤原(聖和)、45分箱崎(香川)

【埼玉】
○浦和東 5-0 那覇西●
得点者:41分鄒、61・68・72分菊池、66分菅原(浦和)

○清水商 1-0 ルーテル学院●
得点者:80+3分遠藤

【西が丘】
○鹿島学園 2-1 日章学園●
得点者:16分小菅、32分西谷和(鹿島)、12分菊池(日章)

【NACK5】
●西目 0-0/PK3-4 山陽○

●北陸 0-10 大分○
得点者:18・29武生、23分藤澤、35分清家、47・59・68分岡部、71・80分小松、75分佐保(大分)

【等々力】
○富山南 2-2/PK5-4 佐賀東●
得点者:19・74分大原(富山)、57分吉田慎、60分平(佐賀)

●帝京大可児 0-3 奈良育英○
得点者:18・74分三國、35分片山(奈良)

【三ツ沢】
○桐光学園 1-1/PK5-4 初芝橋本●
得点者:19分大田(桐光)、76分井筒(初芝)

●星稜 1-3 米子北○
得点者:40分井田(星稜)、7分真木、53・76分小笹(米子)

【駒沢】
●東久留米総合 1-1/PK4-5 済美○
得点者:73分多田(東久留米)、16分山脇(済美)

○新潟西 1-1/PK4-2 鹿児島城西●
得点者:56分山川(新潟)、67分松尾(鹿児島)

【市原】
●羽黒 0-3 四日市中央工○
得点者:21分浅野、65分田村、71分國吉(四中工)

●旭川実 2-3 徳島市立○
得点者:26分山本、80+1分秋林(旭川)、14分武田、24分山口、80分圓藤(徳島)

1回戦は以上のような結果となりまして、1月2日に行われる2回戦のカードはこのようになりました。

●西が丘サッカー場
Match29:中京大中京 vs 作陽
Match17:山梨学院大付 vs 市立西宮

●NACK5スタジアム
Match21:矢板中央 vs 高川学園
Match18:近大附 vs 聖和学園

●埼玉スタジアム2002
Match19:大分 vs 浦和東
Match20:青森山田 vs 土佐

●柏の葉競技場
Match22:鹿島学園 vs 國學院久我山
Match32:都市大塩尻 vs 立命館宇治

●駒沢陸上競技場
Match30:済美 vs 新潟西
Match23:清水商 vs 山陽

●市原臨海競技場
Match24:長崎日大 vs 市立船橋
Match31:四日市中央工 vs 徳島市立

●ニッパツ三ツ沢球技場
Match28:尚志 vs 守山北
Match25:大社 vs 桐生第一

● 等々力競技場
Match27:米子北 vs 桐光学園
Match26:奈良育英 vs 富山南

明日の対戦カードで非常に注目を集めそうなのが西が丘会場であろう。有力校同士が初戦でいきなり激突する中京大中京 vs 作陽、そしてJ1清水に内定している白崎凌兵を擁する山梨学院がこの日から登場。また、3年ぶりに冬の選手権に帰ってきた市立船橋だが、毎年初戦は厳しい戦いとなっているが、この試合でスッキリ勝って勢いに乗れるだろうか? そして市原会場の第二試合も地味に興味のそそるカードである四日市中央工 vs 徳島市立というカードが組まれている。

さらに1回戦でそれぞれ5得点、10得点と攻撃陣が爆発して快勝した浦和東と大分が激突。1回戦は「中立地」だった大分だが、2回戦は完全に「アウェー」となる埼玉スタジアムでの戦いとなるのだが、どちらが平常心で戦えるかに注目したい。

さて、ここで昨日足を運んだ埼玉スタジアムでの2試合を簡単に振り返りたい。

【浦和東 vs 那覇西】
県大会のメンバーそのままかと思われたが、左MFに11番鄒ではなく、18番の岸を起用してきた浦和東(以下浦東)。その岸が起用に答えて開始2分に左サイドを突破して絶妙のクロスを入れていく。これに抜け出した星子が合わせていきなり先制点か? と思われたが、この決定機は外れてしまう。さらに攻め続ける浦東は15分に今度はPKのチャンスを獲得。埼玉県予選決勝でもしっかり決めるなど、PKには絶対の自信を持っていたキッカーの菊池だが、那覇西のGK稲福にコースを読まれて絶好の先制点のチャンスを活かせない。

前半の早い時間で2度の決定機を迎えながらも点を奪えなかった浦東。しかし、ゲーム自体は完全に浦東のものであり、まったく危なげなく試合は進んでいく。その中でもボランチの有野、大澤は実に素晴らしい動きを見せ、那覇西がボールを持てば素速いチェックで相手のラインを下げさせていく。さらに豊富な運動量でセカンドボールのほとんどをこの2人が支配。あれだけ中盤でボールを拾えれば、浦東としてはあとは点を決めるだけだった。

だが、初戦という緊張感もあるのか、どうしても攻撃陣が先制点を奪えず、前半終了間際にも菊池のポストプレーから大澤が抜け出してまたも決定機を迎えるがここも決めきれない…

試合のペースは完全に握りながらも点が取れないことで、やや焦りも出てしまった浦東。PKを外してしまった菊池はガッカリしてロッカールームに戻ってきたが、後半になると菊池もチームも一気に息を吹き返す。後半開始早々からケガの影響もあり、スタメン起用を見送った鄒を投入。野崎監督は「ノックアウト方式の大会で戦力を温存しても意味はないですから…」と、後半から勝負に出る。すると鄒が期待に応え、後半1分に右からのクロスにファーストタッチで合わせてついに浦東が先制。

正直、この1点で完全に勝負アリであった。

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前半からまったくボールを繋げられない那覇西。ロングボールを入れても浦東の最終ラインに跳ね返され、短く繋ごうとしてもボランチ2枚の速いプレスに引っかかり、ボールを前に満足に繋げない。前にボールが入ったとしても、出しどころが無く後ろに下げてしまい、まったくと言っていいほど「攻めの形」を作れない那覇西。そんなこともあり、ゴールキックのリスタートなどで短く後ろで繋いでビルドアップしていこうとしたのだが、今度は菊池や星子のプレスに遇いそれをカットされ、さらにピンチを招いてしまう。

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この高い位置からのプレスにより、パスミス、連携ミスが生まれてしまい、那覇西は立て続けに失点。終わってみれば、PKを外してしまった菊池もハットトリック達成し、チームも完封勝利と浦和東は最高のスタートを切った。

[浦和東スタメン]
ーーー菊池ーー星子ーーー
ー岸(鄒)ーーーー菅原ー
ーーー有野ーー大澤ーーー
木村ー小畠ーー清田ー宮寺
ーーーーー平野ーーーーー

【清水商 vs ルーテル学院】
11年ぶりに「選手権の顔」が帰ってきたのだが、初戦は相手の堅い守りの前に苦しい試合となってしまった。

開始早々からペースを掴んだのは清水商。風間、佐野、中田がいい連携を見せ、左サイドを度々攻略。4分には2列目から飛び込んできた川尻がファーストシュート。そして7分にはやはり左サイドからチャンスを広げて、最後は遠藤がシュート! 完全に決まったかと思われたがポストに嫌われ先制点を奪えない。それに対してルーテルは1トップの伊藤が少ないチャンスをしっかり活かし、なんか突破口を開いていこうと突進。

清水商は初戦の堅さとルーテルの徹底的な守備の前に「らしさ」を見失ってしまい、なかなか繋ぐサッカーが出来ず難しい試合となっていってしまう。風間にボールが入れば「散らそう」という意識が生まれるのだが、それ以外の場面では気持ちだけが先走りして前に蹴ってしまい自分たちのサッカーが出来ない時間帯が最後まで続いてしまう。

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前半はまだ、繋いでサイドを崩そうという意識が強かった清水商だが、後半に入ると相手の厳しい潰し、そして焦りからボールはポゼッションしていても、バイタルエリアでは効果的な動きを見せることができず、シュートを放つことがまったく出来ない。

試合の時間はどんどん進み、あとはロスタイムの3分だけとなり、PK決着か?と思われた。だが、キャプテン風間は最後までゲームを諦めてはいなかった。時間は目安の3分台に突入し、プレーが途切れたら終了という、文字通りラストワンプレー。そこで風間が左に開いた中田に展開。このボールをダイレクトで中に折り返すと、走り込んだ遠藤がシュート! このシュートにルーテルGKの市原は反応し、手で触れたのだが無情にもボールはインゴールに転がり込み、終了間際の劇的なゴールで清水商が2回戦にコマを進めた。

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内容的には「良さ」をほとんど出せなかった清水商だが、最後の最後まで勝負を諦めなかったところはさすが「名門の力」と言ったところであろうか? 今大会限りで学校を去る大瀧監督は「1-0で勝つ事が一番難しいですよね、まあ、いい勝ち方ですよ」と語ったが、その「いい勝ち方」の意味の中には「大勝してしまうと気のゆるみも生まれてしまう。しかし、1-0というスコアであれば、必ず課題もある訳で、次戦に向けていい引き締めにもなりますから」と名将らしく試合を振り返ってくれた。

[清水商スタメン]
ーーー風間ーー佐野ーーー
ー中田ーーーーーー遠藤ー
ーーー川尻ーー小山ーーー
兼岡ー新井ーー望月ー松永
ーーーーー志村ーーーーー

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