« 改革が望まれる大学選手権 | トップページ | 本日決勝、名門対決の行方は? »

2012年1月 8日 (日)

市船、9年ぶりの王座奪還へ王手

これは決して悪意ではなく、ホメ言葉として受け取って欲しい…

やはり伝統の「イチフナ」は憎らしいほど強かった…
そして国立で戦う「イチフナ」とは、大会初戦の市立船橋とは「別物」のチームであることをまざまざと見せつけられたのである。

スコアは2-1という僅差の試合となったが、内容的には「イチフナ強し」を改めて印象づけるゲームとなり、7年ぶりの決勝進出を決め、そして9年ぶりの優勝に王手を掛けた。

---------------------------------------

さて試合を振り返りたいと思うのだが、まずは驚いたのがこの日敷いてきた両チームのシステムであった。

[市立船橋スタメン]
ーーーーー岩渕ーーーーー
ー池辺ーーーーーー和泉ー
ーー磐瀬ー松丸ー渡辺ーー
鈴木ー小出ーー種岡ー米塚
ーーーーー積田ーーーーー

[大分スタメン]
ーーーーー牧ーーーーー
小松ーーーーーーー岡部
ーーー佐保ー梶谷ーーー
ーーーー武生ーーーーー
馬場ー若林ー清家ー藤田
ーーーー平畠ーーーーー

両者とも、これまでの試合のシステムとはやや違う形で入ってきた準決勝。市船は4-2-3-1(もしくは4-1-4-1)システムから、磐瀬、松丸、渡辺の3人をボランチに並べるプランを採用し、大分の「フリーマンサッカー」に警戒してきた。そして大分も、司令塔である10番上野が靱帯損傷のため出場を断念。そのため、これまでの3トップから1トップシステムに変更し、中盤の構成を厚くするシステムで市船に対応してきた。

大分側のシステムは、やや「アクシデント」的でもあるのだが、結果的に両者とも「ここまで来たら負けられない」という意識もあり、攻撃よりも守りに重点を置いたシステムを採用したこともあり、立ち上がりは「じっくり」というよりも「ジリジリ」とした神経戦が続いていく。また、大分のシステムとゲームプランについてなのだが、上野不在という理由から結果的にこのような形となったが、そこはアイディアマンでもある朴監督。「中盤の枚数を増やして相手にいいパンチを出せないようにした」と語ったとおり、3トップが積極的に仕掛けて前から奪いに来るのではなく、やや引いた位置から構えて守る策に出たのだが、これが見事にはまり、市船はなかなか思い描いた展開を繰り出せない時間を費やすこととなる。

Img_7944

しかし、試合巧者の市船はジリジリとする展開にも焦ることなく、じっくりと後ろで回しながらチャンスを伺う。そして前半23分、和泉の突破からFKのチャンスを得ると、ここでスポットに立ったのはボランチの渡辺だった。試合後に「公式戦では初めて蹴りました」と語ってくれたが、右足から放たれたシュートは見事にゴール右上隅に突き刺さり、大一番で貴重な先制点を叩き出すことに成功。

だが、1点のビハインドを追う大分も負けてはいない。30分、大分はゴール正面でFKのチャンスを得ると、ここで小松が直接狙っていく。最初のキックは壁に阻まれたが、このこぼれ球が小松の足下に転がり込み、再び絶好の決定機を迎える。完全にGKと1対1の状況となり、これで同点か? と思われたのだが、ここは市船GK積田の好セーブが飛び出し、大分は絶好のチャンスを活かせない。

結局、前半は互いに4本ずつしかシュートを打てないで前半を折り返したが、後半に入ると市船の底力が徐々に発揮されていく。47分、右サイドバックの米塚のクロスに、磐瀬がダイビングヘッドでゴールを狙うのを皮切りに、49分には和泉がやや遠い位置からシュートを狙い、大分守備陣のラインを少しずつ後ろに下げることに成功。そして55分、左サイドの池辺から中の岩渕にボールが渡り、ワンタッチで右前に走り込んできた和泉にパス。これを受けた和泉はDFを見事にかわしてシュート! これが決まってリードを2点差とする。

Img_8013

それにしても、市船の勝負強さ、いや「憎たらしいほどの強さ」は、この2点のリードを奪ってからであった…

ハーフタイムで「私が指示を出したら普段の3トップシステムに変えなさい」と選手にプラン変更を示唆していたのだが、2点のビハインドを追う大分は、65分すぎからシステムを4-3-3の形に変え、これまでどおりのシンプルな裏を狙うサッカーで市船ゴールに迫っていく。だが、この日の市船3ボランチを含めた守備陣は最後まで安定していた。縦にボールを入れ、その裏から2列目が狙う「フリーマンサッカー」だが、3ボランチがしっかり2列目のケアをしているため、思うような攻撃を繰り出すことが出来ない。

Img_8039

これまでの対戦相手には通用していたシンプルなサッカーも、市船が繰り出す「相手の良さを消し去る守備」の前に沈黙。このまま、光を遮断するかのような守備の前に完封されてしまうかと思われたが、79分に思わぬミスからチャンスが転がり込み、点差を1点差とすることに成功する。

79分、DFの小出のミスパスを小松がカット。これを奪った小松はゴール正面に切れ込んで行き、決定的な場面を迎える。だがここもGK積田がファインセーブを見せ、枠に飛んだシュートをなんとか外にはじき出す。しかし、直後のCKにおいて、ファーで合わせた清家のヘディングシュートが決まって、大分が1点差として反撃ののろしを挙げる。

Img_8070

普通のチームであれば、国立という舞台、準決勝、決勝が懸かっている大事な一戦、さらには相手は1点差に追いついてイケイケという状況となってしまえばあれば焦って仕方がないところなのだが、今年の市船というチームには焦りはまったく無かった。それどころか、80分を過ぎてからは徹底して相手コーナー付近での「キープ」を選択。育成年代であるユース世代の大会で、残り10分の段階でキープに徹することに善し悪しについては、見る人の価値観もあるので、その是非は問わない。だが、「何をしてでも自分たちは勝つ」「ゲームをしっかりこのまま2-1でクローズさせる」という強い意志が伝わってくる瞬間でもあった。

これこそ、初めて国立に進出してくるチームと、伝統的に強いチームの差が出たところではないだろうか? 伝統とは、何年もの積み重ねによって生まれるものであり、「俺たちの時にはこうだったから、次の世代はこうしたほうがいい」という先輩から後輩への「教え」の積み重ねが勝負強いチームを作る血となってくるのである。また、今年のインターハイで初戦敗退したことも、チームが大きく成長する糧となっていたことを忘れてはならない。

Img_8079

キャプテンの和泉は当時のチームを「全然バラバラでした」と振り返ってくれたが、選手権を前にしてスタメンで出られる選手、ベンチに入れる選手、そしてベンチに入れない選手を含めて、部全体が一つにまとまりを見せ、その結果として千葉予選決勝で永遠のライバルである流経柏を延長で下し、全国切符を得ることに成功。しかし初戦では選手権独特の「難しさ」が出てしまい、自分たちの良さを出せなかった。初戦敗退すら覚悟した試合であったが、伝統の力、そして自分たちは「イチフナである」というプライドが粘りに繋がり逆転勝利を呼び込んだ。

流経柏を破り、一番鬼門でもある初戦を通過した市船にとって、国立で勝つことは決して難しいことではなかったのだ…

---------------------------------------

事実上の「選手権決勝戦」と言われた、流経柏との一戦を制して千葉県代表となった市立船橋高校。今度は事実上ではなく、真の決勝の舞台に立つわけだが、対する相手も伝統校である四日市中央工業であり、伝統校同士の対決となった決勝戦。そして両校の監督(市船は朝岡隆蔵氏、四中工は樋口士郎氏)だが、現役時代に揃って国立のピッチに立っているのだが、それぞれ決勝での勝利経験はない(朝岡監督はベンチ外だった)。果たして、どちらの監督が初めて頂点に立てるかにも注目したいところ。

P1072362

そして、6大会続いて「初優勝校」が生まれてきた選手権だが、7年ぶりに優勝経験のあるチーム同士の対戦となった決勝戦だが、相手である四中工の2トップは今大会屈指のストライカーを擁しているが、決勝の舞台でも堅守が発揮されれば市船優位は動かないと見る。そして、勝利への執念を見せつけるような試合運びをやりきれれば、9年ぶりの「王座奪還」も夢ではないはずだ。

---------------------------------------

第90回全国高校サッカー選手権
準決勝/第一試合 @国立競技場
大分 1-2 市立船橋
[得点者]
81分清家(大分)
24分渡辺、58分和泉(市船)
[警告]
34分小松、85分梶谷(大分)
30分和泉、49分磐瀬、68分池辺(市船)

[ゲームスタッツ]
シュート数:大分9、市船12
ゴールキック:大分12、市船9
コーナーキック:大分3、市船4
直接FK:大分17、市船21
オフサイド:大分0、市船0
PK:大分0、市船0

« 改革が望まれる大学選手権 | トップページ | 本日決勝、名門対決の行方は? »

高校サッカー」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/176307/53683177

この記事へのトラックバック一覧です: 市船、9年ぶりの王座奪還へ王手:

« 改革が望まれる大学選手権 | トップページ | 本日決勝、名門対決の行方は? »