« 2011年12月18日 - 2011年12月24日 | トップページ | 2012年1月1日 - 2012年1月7日 »

2011年12月25日 - 2011年12月31日

2011年12月31日 (土)

下克上の嵐が吹き荒れた2011年

アジアカップ制覇で始まった2011年の日本サッカー界だが、もうまもなくで新しい年を迎えようとしている。

さて、今年は震災の影響もあり、Jリーグを筆頭にいろいろなカテゴリーにおいて日程変更が余儀なくされた。そして、シーズン開幕が遅れたことにより、後半戦に入って厳しい日程が組まれたカテゴリーも少なくはなかった。その中で、今年のサッカー界を考えてみると、やはり「下克上」というキーワードが浮かんでくる。

Img_0075

そう、今年のJリーグはJ2から昇格してきた柏レイソルが優勝を果たし、JFLでも今季昇格組の長野パルセイロが2位に入る大健闘を見せ、大学界(関東だが)も2部から昇格してきた専修大学が最後まで勢いを切らすことなくリーグを制覇し、そして今年度の大学日本一を決めるインカレでも決勝進出を決めている。

さらに極めつけは、今季最後のタイトルとなる天皇杯決勝のカードが史上初となる「2部カテゴリー」同士の一戦となったことであろう。

29日に行われた天皇杯準決勝でFC東京はC大阪を、そして京都サンガは横浜Fマリノスをそれぞれ下し、J2勢同士の決勝戦が実現。どちらが勝っても来季のACL出場権も初めて得ることとなるのだが、京都は東京ヴェルディ以来、2チーム目のJ2からACL参加となるのだろうか?

それにしても、やはりリーグ戦にしてもカップ戦にしても、強いチームが順当に勝つよりも、下から上がってきた、もしくは下のカテゴリーのチームに勢いがあるとおもしろみが出るものだ。また、下からのチームが活躍することにより、リーグや大会自体が活性化されるし、これまで強豪と言われてきたチームには危機感が生まれだし、本当にいい意味での競争も激化してくる。

サッカーに限らず、どんなスポーツでも新顔や下から上がってきたチーム(や個人)に勢いがあると、本当にその戦いが面白くなってくるものである。決まった強豪が毎年(毎回)のように優勝争いをしていては、リーグや大会自体のおもしろみが欠けだしてしまうし、コアではない一般層の注目を引きづらくなってしまうもの。しかし、新顔や予想外のチームが優勝争いに名乗りを挙げてくれば、自然と一般層からの注目も上がってくるものである。

さて、J1優勝を果たした柏、そしてJFLで健闘した長野パルセイロ、さらには大学日本一を狙う専修大学らはそれぞれカラーの違うサッカーを展開しているが共通している部分もある。

Img_0494

それは「自分たちのサッカーで挑戦する」という姿勢を最後まで変えなかったことであろう。

下部カテゴリーで優勝、もしくはそれに相当する成績で上のカテゴリーに登り詰めた柏、長野、専大は、揃って上のカテゴリーに戦いの場を移しても、自分たちのスタイルを安易に変えることは無かった。下のカテゴリー時代から自分たちで主導権を握り、常にアクションを起こしていくサッカーを上でも貫いた長野と専大。そして柏はJ2で築いてきた攻撃的サッカーを踏襲しつつ、J1ではさらなる運動量を身につけて自分たちのサッカーにプラスアルファを加えていった。

多くのチームがカテゴリーが上がるに連れて、まずは守備的に入って無難に勝ち点を積み重ねる手段に出るものだが、あえてそのやり方をせずに「らしさ」を貫いて結果を勝ち取ったそれぞれのチーム。上のカテゴリーに到達して、それでおしまいではなく、それぞれのチームが「さらなる高み」を目指したが結果、躍進に直結していったのだが、来年J1、J2、そしてJFLなどに参戦していくチームたちが、どこまでポジティブな思考を持って戦えるのかにも注目したいところだ。

そう考えると、今季J2優勝を果たし、天皇杯決勝に進出したFC東京、そしてJFLからJ2へと戦いのカテゴリーを変える町田ゼルビア。さらに関東大学1部リーグに昇格する日体大の3チームの「来季」には期待がかかる。それぞれのチームは攻撃的コンセプトを全面に出し、今季のリーグ戦で好成績を残して上に上がってくるチームであり、カテゴリーが変わる来季にも、その戦い方を是非とも継続して欲しいところ。

Img_0027

また、それぞれのチーム(FC東京は前町田監督のポポヴィッチ氏、町田は清水や東京Vを率いたアルディレス氏、そして日体大はジュビロで完全優勝を果たした鈴木政一氏)は「名」がつく監督ばかりであり、どのチームにも大きな期待が懸かってくる。今年吹き荒れた「下克上」の嵐が、いい意味で来年も続くことを願いたい。

2011年12月30日 (金)

本日開幕、高校サッカー選手権

今日からいよいよ始まる第90回全国高等学校サッカー選手権大会。

Img_0197

今年から、昨年の各地域のプリンスリーグ上位チームのみで構成された「高円宮杯U-18プレミアリーグ(イースト/ウエスト)が発足され、これまで以上に高いレベルで実戦が行われることとなったユース年代。また、例年どおり行われた各地域プリンスリーグ、そして県協会レベルのリーグ戦などでも、トーナメント形式から、多くの選手に実戦の機会を与えることが出来るグループリーグ戦形式がさらに拡大してきたのだが、高体連所属チームにとっての有終の美となる選手権で、培ってきた「実力」がしっかり発揮されるか注目したいところだ。

さて、取り急ぎ代表校を一覧にしてみました。

[北海道・東北ブロック]
北海道:旭川実(2年ぶり3回目/プリンス北海道1位)
青 森:青森山田(15年連続17回目/プレミアイースト4位)
岩 手:盛岡商(5年ぶり16回目/プリンス東北1部2位※)
秋 田:西目(6年ぶり12回目/県1部)
山 形:羽黒(2年連続5回目/プリンス東北2部5位)
宮 城:聖和学園(初出場/プリンス東北1部1位)
福 島:尚志(3年連続5回目/プレミアイースト8位)

[関東ブロック]
茨 城:鹿島学園(2年連続6回目/プリンス関東2部Bブロック3位)
群 馬:桐生第一(初出場/プリンス関東2部Bブロック7位)
栃 木:矢板中央(2年ぶり4回目/プリンス関東2部Bブロック5位)
埼 玉:浦和東(6年ぶり5回目/プリンス関東2部Aブロック5位)
千 葉:市立船橋(3年ぶり18回目/プリンス関東1部/6位※)
東京A :東久留米総合(2年ぶり2回目/T2リーグBブロック)
東京B :國學院久我山(3年ぶり4回目/T2リーグAブロック)
神奈川:桐光学園(3年ぶり6回目/プリンス関東1部7位)
山 梨:山梨学院(3連続3回目/プリンス関東2部Aブロック1位※)

[北信越ブロック]
新 潟:新潟西(2年連続4回目/プリンス北信越2部3位)
富 山:富山南(初出場/県1部)
長 野:都市大塩尻(3年ぶり2回目/県1部)
石 川:星稜(13年連続22回目/プリンス北信越1部1位)
福 井:北陸(20年ぶり3回目/県1部)

[東海ブロック]
静 岡:清水商(11年ぶり12回目/プリンス東海1部2位※)
愛 知:中京大中京(3年連続13回目/プリンス東海1部8位)
岐 阜:帝京大可児(2年連続3回目/プリンス東海1部7位)
三 重:四日市中央工(4年連続29回目/プリンス東海1部6位※)

[関西ブロック]
滋 賀:守山北(8年ぶり5回目/県1部)
京 都:立命館宇治(2年ぶり2回目/県2部Bブロック)
奈 良:奈良育英(4年ぶり13回目/プリンス関西2部4位)
和歌山:初芝橋本(2年連続11回目/プリンス関西1部5位)
大 阪:近大附(4年ぶり5回目/プリンス関西2部1位)
兵 庫:市立西宮(初出場/県1部)

[中国ブロック]
鳥 取:米子北(2年連続7回目/プリンス中国1部3位)
島 根:大社(14年ぶり8回目/プリンス中国2部6位)
広 島:山陽(12年ぶり8回目/プリンス中国1部10位)
山 口:高川学園(4年ぶり21回目/プリンス中国1部8位)
岡 山:作陽(7年連続20回目//プリンス中国1部1位)

[四国ブロック]
香 川:香川西(6年連続7回目/プリンス四国4位)
愛 媛:済美(4年ぶり4回目/プリンス四国1位)
徳 島:徳島市立(10年ぶり12回目/プリンス四国6位)
高 知:土佐(12年ぶり2回目/県1部)

[九州ブロック]
福 岡:東海大五(11年ぶり13回目/プリンス九州1部5位)
佐 賀:佐賀東(2年ぶり6回目/プリンス九州2部1位)
大 分:大分(7年ぶり7回目/プリンス九州2部8位)
宮 崎:日章学園(5年連続9回目/プリンス九州1部7位)
熊 本:ルーテル学院(2年ぶり3回目/プリンス九州2部5位)
長 崎:長崎日大(3年ぶり2回目/プリンス九州1部10位)
鹿児島:鹿児島城西(3年ぶり3回目/プリンス九州1部8位)
沖 縄:那覇西(2年連続12回目/プリンス九州2部11位)

※は優勝経験のある学校

さて、出場校の顔ぶれを見ると、ほとんどの出場校が各地域のプリンスリーグに所属している学校であり、今年だけ強いというのではなく、継続的に強豪校で有り続けていることがよくわかる。そして今年も地区大会で注目を集めたのは千葉予選。決勝は毎年恒例になった青の市船、赤の流経柏であったが、今年は青が赤を撃破。

また、もう一つの注目対決であった静岡予選の清水商 vs 静岡学園の対戦は、清水商が勝利。来年から庵原高校と統合となるため、名門「清水商業」の名前で大会に出場するのは今年が最後。さらには全国の舞台でチームを強豪に押し上げた大瀧雅良監督は来年3月で定年を迎えるなど、いろいろな面で今大会が「ラスト」となる清商(キヨショー)。

全国の舞台でも有力校となるこの2校だけではなく、山梨学院、青森山田といった常連校が優勝候補として名前が挙がってくるだろうが、その他にも初出場ながらもプリンスリーグ東北で優勝しており、評価の高い聖和学園(宮城)、プリンス中国1部を制した作陽(山口)も上位進出が期待される。ただ、出場校の顔ぶれをみると、前回優勝の滝川第二(兵庫)や、評価の高かった東福岡(福岡)、大津(熊本)と言った有力校が予選で姿を消しており、やや寂しい感もある大会とも言えるだろう。

そしてこれも今更ですが、組み合わせは以下のとおりになっております。

12月30日(日)-1回戦/開幕戦
●国立競技場
Match01:国学院久我山(東京B)vs 東海大五(福岡)
※開会式12:10〜、開幕戦13:10〜

------------------------------------

12月31日(土)-1回戦
●柏の葉競技場
Match02:盛岡商vs 近大附
Match03:聖和学園 vs 香川西
●NACK5スタジアム
Match08:西目 vs 山陽
Match04:北陸 vs 大分
●埼玉スタジアム2002
Match05:浦和東 vs 那覇西
Match07:清水商 vs ルーテル学院
●西が丘サッカー場
Match06:鹿島学園 vs 日章学園
●等々力競技場
Match10:富山南 vs 佐賀東
Match09:帝京大可児 vs 奈良育英
●ニッパツ三ツ沢球技場
Match12:桐光学園 vs 初芝橋本
Match11:星稜 vs 米子北
●駒沢陸上競技場
Match13:東久留米総合 vs 済美
Match14:新潟西 vs 鹿児島城西
●市原臨海競技場
Match15:羽黒 vs 四日市中央工
Match16:旭川実 vs 徳島市立

------------------------------------

1月2日(月)-2回戦
●西が丘サッカー場
Match29:中京大中京 vs 作陽
Match17:山梨学院大付 vs 市立西宮
●NACK5スタジアム
Match21:矢板中央 vs 高川学園
Match18:02の勝者 vs 03の勝者
●埼玉スタジアム2002
Match19:04の勝者 vs 05の勝者
Match20:青森山田 vs 土佐
●柏の葉競技場
Match22:06の勝者 vs 01の勝者
Match32:都市大塩尻 vs 立命館宇治
●駒沢陸上競技場
Match30:13の勝者 vs 14の勝者
Match23:07の勝者 vs 08の勝者
●市原臨海競技場
Match24:長崎日大 vs 市立船橋
Match31:15の勝者 vs 16の勝者
●ニッパツ三ツ沢球技場
Match28:尚志 vs 守山北
Match25:大社 vs 桐生第一
●等々力競技場
Match27:11の勝者 vs 12の勝者
Match26:09の勝者 vs 10の勝者

------------------------------------

1月3日(火)-3回戦
●駒沢陸上競技場
Match39:29の勝者 vs 30の勝者
Match33:17の勝者 vs 18の勝者
●埼玉スタジアム2002
Match35:21の勝者 vs 22の勝者
Match34:19の勝者 vs 20の勝者
●市原臨海競技場
Match40:31の勝者 vs 32の勝者
Match36:23の勝者 vs 24の勝者
●ニッパツ三ツ沢球技場
Match38:27の勝者 vs 28の勝者
Match37:25の勝者 vs 16の勝者

------------------------------------

1月5日(木)-準々決勝
●埼玉スタジアム2002
Match41:33の勝者 vs 34の勝者
Match43:37の勝者 vs 38の勝者
●駒沢陸上競技場
Match44:39の勝者 vs 40の勝者
Match42:35の勝者 vs 36の勝者

※1回戦〜準々決勝までの試合開始時間
第一試合(カード上段)は12:05開始
第二試合(カード下段)は14:10開始

------------------------------------

1月7日(土)-準決勝
●国立競技場
Match45:41の勝者 vs 42の勝者(12:05)
Match46:43の勝者 vs 44の勝者(14:20)

------------------------------------

1月9日(月・祝)-決勝戦
●国立競技場 14:05

となっておりまして、カードのマッチナンバーと試合開催順で並べて見ましたが、今度は出場校を4つのブロックに分けて展望などを簡単に予想していきたいと思います。

[Aブロック]
市立西宮、山梨学院、盛岡商、近大附、聖和学園、香川西、北陸、大分、浦和東、那覇西、青森山田、土佐

上記でも名前を挙げたが、山梨学院、聖和学園、青森山田といった上位進出が期待される有力校が揃い、なかなか予想しずらいブロックとなっている。またそんな3校を追う存在として、ベスト8まで「完全ホーム」の埼玉スタジアムで戦える利点を持つ地元の浦和東、全国優勝優勝の経験のある盛岡商、全国大会の常連である香川西と、どれも力のあるチームが揃っており、有力3校とて楽に勝ち抜けないかもしれない。

Img_0203

インターハイでは武南に敗れた青森山田だが、その武南に対して「完勝」という内容で下した浦和東は侮れない存在。地区大会決勝で見せた「相手の良さを消し去る」サッカーが出来れば、埼玉県勢として久しぶりの国立も夢ではないかもしれない。

[Bブロック]
矢板中央、高川学園、鹿島学園、日章学園、國學院久我山、東海大五、清水商、ルーテル学院、西目、山陽、長崎日大、市立船橋

このブロックも実力校が揃い、激戦が予想されるところだが、その中でも市立船橋と清水商の存在感が抜け出ていると言えよう。また、その2強の存在に食らいついていくチームとして関東プリンスで戦う矢板中央、鹿島学園を押しておきたい。

[Cブロック]
大社、桐生第一、帝京大可児、奈良育英、富山南、佐賀東、星陵、米子北、桐光学園、初芝橋本、尚志、守山北

Img_0142

A、Bブロックとは違い、絶対的本命不在となるこのCブロック。どの出場校にも国立の舞台に進出する可能性を秘めているところだが、有力校を挙げるとすればプレミアイーストでもまれてきた尚志、関東プリンス1部で戦う桐光学園、北信越の雄・星陵であろうが、J1新潟に入団が決定している鈴木武蔵のいる桐生第一の存在も非常に楽しみである。

また、自分たちの活躍で「福島に元気を与えたい」と力のはいる尚志は、夢の国立にたどり着く大きなチャンスと言えよう。シーズン当初は震災の影響もあり練習もままならなかった。しかし、プレミアイーストという全国リーグを戦いながらチームは大きく成長。今年の尚志はひょっとするとひょっとするかも知れない…

Img_0394

[Dブロック]
中京大中京、作陽、東久留米総合、済美、新潟西、鹿児島城西、羽黒、四日市中央工、旭川実、徳島市立、都市大塩尻、立命館宇治

このブロックもC同様、ずば抜けた有力校不在で、どこが国立の舞台に進出してくるか予想しずらいところ。ただ、中京大中京、作陽、鹿児島城西、四中工といった常連校、実力校が勝ち上がっていく公算は高い。ただ、四中工は他校に比べて組み合わせに恵まれた感もあり、初戦の羽黒戦で波に乗れれば上位進出の可能性高くなってきそうだ。

-------------------------------

非常に適当な展望でどうもすいません…

個人的には地元・埼玉の浦和東、そしていつも足を運んでいる群馬の代表(今年は桐生第一)に頑張って欲しいところですが、本当に今大会は例年になく予想しずらい大会でありまして、言うなれば、決勝のカードが盛岡商業 vs 作陽となった85回大会のような絶対本命不在の大会と言っていいかも知れない。

ということで、今大会も「初優勝校」が出る可能性も高いのだが、1月9日まで行われる大会をしっかり見ていきたいと思います。

2011年12月25日 (日)

長野の「確かな一歩」と次なる一歩

2011年シーズンは、JFL初挑戦にして十分すぎる結果を出した長野パルセイロ。

クラブは当初からスタジアムJ規格整備の問題もあり、JFL初年度から「準加盟登録(申請)→即Jリーグ昇格」という最短コースではなく、まず1年目はこのリーグでも十分にやれるという結果を出すことに専念。チームは結果を出し実力があることを証明し、なおかつファン層を拡大していく。そしてクラブは、Jに上がるために行政や企業とのパイプを太くしていくという、それぞれの役目を負った1年目であったのだ、両者ともそれぞれ答えを出し、チームは2位という成績で今季を終了し、クラブ本体は準加盟申請の準備を進み終え、11月30日に正式に申請書類をJリーグ側に提出し、それぞれが大きな一歩を踏み出したのである。

Img_0736

さて、今季はJリーグに昇格(新規加盟)した町田ゼルビア、松本山雅を抑えて2位に入った長野パルセイロだが、薩川監督は1年前の市原で行われた2010全国地域リーグ決勝大会・決勝ラウンドでもこのようなコメントを残していくれている。

「いまのメンバーでそのままJFLでやっても通用すると思ってる。アイツらはね、もっと高いレベルでも絶対に出来るから」

パルセイロを見続けてきた人間として、通用することは間違いないと思っていた。しかし、そこまで強気に言い切ってしまって大丈夫か? と少しだけ心配した(薩川流のリップサービスも含まれていた)が、結果的にこのコメントはビッグマウスでもウソでもなんでもなく事実となり、シーズンを通してパルセイロは地域時代をベースにしても十分に戦えることを証明するどころか、逆に他を圧倒する強さまで見せてくれたのである。

---------------------------------------

震災の影響もあり、前期7節のジェフリザーブス戦が開幕戦となったが、ホーム、南長野でパルセイロは抜群の破壊力を見せつけていく。4-0と最高のJFLデビューとなったこの試合だが、地域リーグ時代からの選手たちが大いに躍動。新加入の向慎一という「新しい血」がチームの攻撃力にプラスαを加えたことは間違いないが、諏訪、大島、高野、大橋、土橋、栗原、宇野沢、藤田といった地域リーグ時代を知るメンバーがJFL相手に実力を思う存分発揮。開幕戦でスタメンを勝ち取った地域リーグ時代から在籍する8人だが、高野、藤田を除けば全員がかつてJリーグでプレーした経験を持っており、そもそもの「個の力」は決して低くはないのである。また、スタメンから外れていたが、籾谷や佐藤(ともに草津)、加藤(甲府)といった選手も元Jリーガーであり、ベースの力はむしろ他のチームより高いと言えた。

あとはJFLというリーグにどのように慣れていくかということだった。北信越リーグのように、年間のリーグ戦が14試合しかないのとは違い、JFLは北は秋田から南は沖縄までの移動があり、1年をかけてホーム&アウェーを戦うリーグ戦。短距離走と言ってもよかった地域リーグ時代とは違い、持久力や総合力、そして勝負への駆け引きが要求される「マラソン」のようなリーグでもあるのだ。

そして開幕戦で大勝したパルセイロは、ライバルである松本山雅と2戦目で激突するのだが、ここで痛い逆転負けを喫してしまい「JFLの厳しさ」を叩き込まれる。その後は、苦しい試合や苦い思いをする試合を繰り返した結果、順位は上がったり下がったりが続いたのだが、6月4日のゲームがパルセイロにとって大きな転機となっていく。

Img_0237

この日、歴史と伝統、そして強さを併せ持つHonda FCと対戦したのだが、圧巻の内容(3-0)を見せ、「自分たちの(攻撃的)サッカーは間違ってはいない」と改めてチームは実感。しかし、最高の試合を披露した直後のホームゲーム(武蔵野戦)で、まさかの完封負けという失態を演じてしまい、期待を裏切ることとなってしまう。せっかく自分たちのサッカーに自信を深めたのに、直後の試合で気持ちの緩みが出てしまい、その結果として不甲斐ない試合となってしまったのだが、逆にこの不甲斐ない試合をやってしまったことにより、選手たちにとっていい薬となっていくのだった…

「自分たちのサッカーは間違ってはいない。しかし、現状のままでもいけない」ということを、選手それぞれが自覚したことがチームをいい方向に向かわせ、6月19日の町田戦(アウェー)から波に乗り、この試合から11戦無敗(6勝5分)と勝ち点を順調に積み重ねていき、一時は10位まで下がった順位も2位まで押し上げていく。

しかしだ、JFLというリーグの本当の怖さを知るのはこの後だった…

無敗街道を走り続け、ついに首位を走るSAGAWA SHIGAを完全に射程圏に捉え、優勝も夢ではなくなったパルセイロ。だが、優勝というものを意識しだした10月に入ってからは、金沢、讃岐、びわこ草津に立て続けに敗れてまさかの3連敗。優勝への望みが一気に高まってきたところでの連敗はまさに痛恨であり、これでSAGAWA SHIGAとの直接対決に勝たなければ… という状況となってしまったのだが、さすがに熟成されたサッカーというか、じっくりと相手の出方を見てから「さて、今日はどういうサッカーをしようか?」という流れを作ることが出来るSAGAWAはやはり強かった。直接対決で善戦はしたものの、ともに1点差ゲームで連敗を喫し、JFL1年目にして初優勝は果たせなかった。

結果的に、10月の3連敗が響いてしまい2位に終わったパルセイロ。しかし、上記にあるとおり「十分上でやれる」ということを証明し、来季から本格始動する「Jリーグ挑戦への道」は視界良好になってきたと言えるだろう。

シーズン序盤は「勝ち点60はいきたいね」と語っていた薩川監督。優勝こそ逃したものの当初設定していた目標数値はクリアして最終的には63という数字を残し、Jリーグ昇格を決めた町田ゼルビア、松本山雅より上の順位でフィニッシュしたパルセイロ。

前監督であるバドゥがチームに残した攻撃サッカーを薩川流にアレンジしてJFL昇格を目指したが、シーズン途中の時点でクラブは薩川流だけではなく「現実路線」の必要性を感じて鈴木政一氏(現日体大サッカー部監督、長野パルセイロアドバイザー)を強化部長として招聘し、試合の流れを見極める目を伸ばし、その上でグループワークの重要性をチームに説き、負けないサッカーのやり方を叩き込みチームは地域決勝の時点で完成度の高いチームに変貌。今年に入ってからは、鈴木氏が日体大監督に就任したこともあり、毎試合ベンチに入るということは無くなったが(アドバイザー契約は継続)、すでに鈴木氏の影響力に頼らずとも、選手、そしてチームはそれぞれ成長を遂げていたのである。

Img_0088

ワールドユースに出場し、J1での試合出場経験もある宇野沢に関しては「やれて当然」という思いはあるが、ボランチの大橋、CBの大島の2人は本当にシーズンを通して大きく成長。ともに元Jリーガー(大橋は仙台、大島は柏)であるが、所属先では思うように成長することが出来ず、出場機会にも恵まれずチームを去り長野の地にたどり着いたが、揃ってこの地で飛躍する機会を得た。

この2人だが、これまではそれぞれのポジションの隣に「先輩」がいた。大橋は土橋、大島には籾谷である。しかし、後半戦に入って土橋も籾谷もケガなどで戦列を離脱する機会が多くなり、彼ら2人が本当の意味でチームを牽引する柱となる必要に迫られていく。そんな状況に対して、大橋も大島も首脳陣だけではなく、サポーターの期待にも応えて試合のたびに安定度が増していき、完全にポジションリーダーの座を確保。

他のチームの昔話になってしまうが、ベルゲル監督が名古屋の監督時代、天皇杯を制覇して「強い名古屋」の先駆けを作ったのだが、あの時も「しっかりとした縦の強さ」があった。DFリーダーにトーレス、MFの要にデュリックス、そして前線にはストイコビッチと… まあ、全て外国人選手であったが、強いチームには真ん中の線に、それぞれいい選手(成長著しい選手)が揃っているものであり、カテゴリーの違いはあるものの、このパルセイロもDFの大島、MFの大橋、FWの宇野沢と核になれる選手がしっかり揃い、これらの選手が年間を通じて活躍できたことにより、チームは躍進出来たのである。

チームの軸となる「縦のライン」が年間を通じて安定したパフォーマンスを見せたことで、大きく崩れることが少なかったパルセイロ。この3人+新加入の向の活躍こそ、躍進の原動力であることは間違いないのだが、それ以外の選手たちの競争がこれまで以上に激しくなったことも見逃せない。

Img_0513

これまで不動のディフェンスリーダーだった籾谷も、新加入の小川、谷口の台頭によりシーズン当初は出番が減少。そして終盤に入ると小川、籾谷が離脱してしまったのだが、その穴をしっかりと谷口がカバー。また、移籍当初はなかなかJFLのレベルに追いつけていなかった寺田もシーズン途中から頭角を現しだし、同じく新加入の有永と実に素晴らしいポジション争いを展開。宇野沢という絶対的存在がいることで、残された枠は「1」しかないFWのポジションには、藤田、冨岡、平石の3人が争い、その中で藤田、冨岡がしっかり結果を出すなど、どのポジションでも「定位置争い」が激化したことがチーム力向上に繋がっていった。

これが地域リーグ時代であれば、短期決戦ばかりであるため、なかなか「実戦で伸ばす」ということが出来なかったが、年間を通じて戦うリーグ戦を体験出来たからこそ、選手やチームが成長。これこそ、昨年の天皇杯長野県予選決勝で山雅に敗れたときに、薩川監督が語ったことの実現でもあったのである。

「そんなに(選手個々の)力の差はないはずなんだがね… やっぱり年間を通じてやれるリーグ戦にいることの『違い』がでちゃったね。山雅はさ、毎試合ギリギリのところで戦っているし、毎試合が格上との対戦だから選手も成長するんだよね。コイツらさ、みんな上でやれるはずなんだよ。だからね、早く上に上げて上げたいんだよ。上に行けば絶対にやっていて楽しいだろうし、絶対にもっと成長できるはずだから」

このコメントのように、年間を通して戦えるリーグにたどり着いた瞬間から、飛躍的な成長を遂げたパルセイロ。バドゥが蒔いた種、それを育てた薩川監督、そこにアクセントを加えた鈴木氏の教えを選手がしっかり吸収し、実戦の中でそれを体現して成長した選手たち。

町田ゼルビア同様、常に自分たちでアクションを起こしてゲームを展開したパルセイロ。試合のおもしろさという点では、この2チームが今季のJFLを象徴するチームであったと言っても間違いないと感じている(優勝したSAGAWAに関しては、おもしろいと思うより、ソツが無く『勝負強い』チームという印象である)。

---------------------------------------

さて、来季の展望の話にも入って行きたいのだが、昇格争いと優勝争いの話から。

町田ゼルビア、松本山雅の2チームがJFLから卒業したことにより、現時点でJ準加盟チームはVファーレン長崎とカマタマーレ讃岐の2チームだけとなっている。しかし、長野パルセイロも11月末に正式に申請を行っており、来シーズン前にはJリーグ側から承認される可能性は高いと見られており、この3チームが昇格を争う対象となってくるだろう。ただし、準加盟は承認されたとしても、Jリーグに上がるための予備審査、そして本審査は別に存在しており、パルセイロに関してはホームである南長野がJ規格を満たすスタジアムではないこと、そして現時点でいつ改修を行うのか? という点が具体的に踏み込まれていない(決定していないため)点から考えると、来年度に本審査までたどり着ける公算は低いと言えるだろう…

また、スタジアム整備の面だけではなく、今季の観客動員も昇格条件の一つでもある平均3000人に届かない2280人となっており、集客という面でももっと積極的な活動を打ち出さなければならない。ただ、パルセイロが昇格するための条件を揃えられるかどうかは別として、来季の優勝争いに関しては門番筆頭のSAGAWA SHIGAを中心に、長野、長崎といった3強の間で争われる可能性が高いと言えるだろう。

観客動員に関してはクラブの努力だけではなく、選手の頑張りや勝つこと、そして魅せること、喜ばせることでどうにでも転がすことが出来るが、スタジアムの整備だけは選手が頑張ってもどうにもならない話であり、こちらの条件をクリアするためには、クラブ首脳がどこまで行政、地域、そして政治に働きかけができるかであり、選手の頑張り同様、クラブ首脳の「政治力」にも注目したいところである。

さてそんな中で、「現場」であるチームは来季に向けて新陳代謝を行おうとしている。

すでにどのクラブでも戦力外となった選手の退団をリリースしているが、パルセイロも同様に8人の選手が契約満了となりチームを離れることとなった。その内訳だがチームリーダーとしてこれまで4年間チームを牽引してきた土橋宏由樹、現在のチームでもっと在籍年数が長い(6年)佐藤大典と塚本翔平、北信越リーグ時代を知る麻生瞬、そして今季新加入としてチームに入ってきた谷口、浦島、富所、堀之内である。

正直、新加入で入ってきた4選手が退団となることは驚きであった。富所については間違いなくテクニックという面でチーム1であるはずなのだが、このチームはグループで連動してナンボのチームである。しかし、その連動に1年かかっても馴染めなかったことから考えれば、致し方のないところであろうか…

また、こちらも新加入の谷口、浦島だが、この2人に関してはややもったいないなあ… という気も。シーズン終盤に入って、守備ラインで籾谷・小川の穴をしっかり埋めた谷口、浦島は本来のボランチだけではなく攻撃的ポジションをこなすなど、チーム事情に合わせていろいろなポジションで活躍。そんな中での契約満了は寂しいところでもあるが、逆に考えれば、クラブはそれ以上の選手を連れてくるという決意の表れと考えていいかも知れない。

Img_0120

そしてこれまでチームを支え続けてきたベテランの土橋、佐藤についてだが、チームの歴史の中で常に主力として活躍してきた功労者であり、ここで契約満了となりチームから去るのは本当に残念である。ただ、土橋にしても大典にしても、ケガで満足にプレー出来なかった時期もあり、年齢的から考えても「やむを得ない」といったところであろうか…

土橋は松本山雅から2007シーズンをもって契約満了を通達され、クラブからは指導者としてのオファーを受けた。しかし、現役として続けたいという思いが「緑からオレンジ」という禁断の移籍を決断することとなる。そこからはベテランらしい読みとゲームメークでチームを牽引。正直、2008年の「悪夢の本城」や2009年の「市原決戦」など、大事な一戦で敗戦が続き、土橋はやめてしまうのでは… と思ったこともある。しかし、もう一度高いレベルでやりたいという思いが彼を突き動かしてきた。

佐藤大典についてだが、彼がこのチームに移籍したからこそ、長野エルザというチームを私は知ることが出来た。2005年、ザスパ草津の下部組織から昇格し、シーズン終盤にJリーガーとしてデビューした大典。当時の監督であった手塚氏は「若手を使って来年に種を残したい」という思いから、この大典や、現在も草津で主力として活躍する櫻田、後藤や、長崎で現役を続ける杉山などをレギュラーとして起用。そんなこともあり大典や杉山も来季の契約が結ばれるかと思われたが、次期監督の植木さんは彼らを戦力とは判断しなかった。

Dsc00007

チームを離れた大典は練習試合で対戦していた長野エルザへ活躍の場を移し、移籍後は即レギュラーを獲得。現在、長崎で指揮をとる佐野監督は「大典はいいFWだよ。本当はもっと伸ばして上げたかったし、オレが監督だったら絶対に使いたかった…」とコメントするほどその才能を買っていた。だからこそ、大典には1年でも早くJFLでプレーして欲しかったし、再びJリーグでプレーして欲しかった。しかし、上記にあるとおり、パルセイロは昇格のチャンスを逃し続けてしまい、せっかくJFLに昇格した時には残念ながらピークを過ぎてしまった感もある…

もっと早く上がっていれば… という思いは強い。しかし、すべての選手が思い通りに事が運ぶわけでもない。本当はもう一度Jの舞台に立つ大典を見たかったが、今はとにかく「お疲れ様」という言葉しか出てこない。また、大典同様、エルザ時代を知る塚本翔平も退団ということで、ついに今のチームから「長野エルザ」を知る選手がいなくなってしまった。

P7239921

これも時代の流れなのかも知れない。しかし、どのクラブも「象徴」が替わるものでもある。今年、土橋、大典、塚本といったベテランがチームを去ったが、宇野沢、大橋、大島といった選手たちが新しい象徴となり、これまで以上の「歴史」を作り上げて欲しいものである。そして1日でもはやく、「先」を走るライバルに追いついて欲しいと願うところだ。

« 2011年12月18日 - 2011年12月24日 | トップページ | 2012年1月1日 - 2012年1月7日 »