« 2011年10月23日 - 2011年10月29日 | トップページ | 2011年11月6日 - 2011年11月12日 »

2011年10月30日 - 2011年11月5日

2011年11月 5日 (土)

流経大が接する三つの坂

いろいろな話の中で「人生には三つの坂がある」という例え話をする方と合うことがあります。ちなみに、三つの坂とは「上り坂、下り坂、まさか」を指すのですが、今回はこの「三つの坂」と流経大サッカー部を照らし合わせて話を進めていきたいと思いますが、まずは「坂」の前に前置き(前史)からスタートしたいと思います。

■前史
1997年まで、プリマハム土浦/水戸ホーリーホックを率いていた中野雄二氏。96年に地域リーグ決勝大会を勝ち抜きチームをJFLに昇格さたが、翌年にクラブはJリーグを目指すために別の監督(三浦俊也氏)を招聘。しかし、中野は指導者としての意欲は失せておらず、後に流通経済大学のオファーを受け8年ぶりに学生(以前は高校生→水戸短大付属高)を指導することとなる。

当時の流経大は今のような立派な施設もなく、茨城県リーグに籍を置くチームであり、とてもではないが強豪と呼べるチームではかった。だが、熱意のこもった指導が選手の心に響き、県リーグ優勝を果たし、参入決定戦にも勝利して就任一年目でチームを初の関東大学リーグ(2部)へ導いた。だが、やはり関東の壁は非常に高く、初参戦となった99年は2部最下位(8位)で終了し、再び茨城県大学リーグへ逆戻り。しかし、ここで厚い壁に跳ね返されたことが、後に「強豪」と呼ばれるチームの下地を作る大事な期間に繋がっていく。

-----------------------------------

■上り坂
1999年に阿部吉朗、2000年に塩田仁史といった後にJリーグで活躍する選手が入学するなど、将来性の高い選手が集まるようになり、徐々にチームは力を蓄えていく。この当時、流経大に入ってきた選手も確かに将来性のある選手も少なくはなかったが、実際のところはプロに入れず、関東や関西の強豪大学にも入れなかった(推薦漏れも含む)選手の方が多かった。そんな選手たちは揃って「他校を見返したい」「なんとかプロになりたい」という想いが何よりも強かった。当時はまだ土のグラウンドだった。カテゴリーも茨城県大学リーグだった。しかし、選手は関東の舞台で再び強豪と戦いたいという想いを実現するために努力を続け、2001年秋、再び関東2部昇格を決めた。

関東リーグ復帰した2002年、この年には大学からの「ご褒美」として人工芝のグラウンドが与えられ練習環境が向上。さらには、サテライトチームであるクラブドラゴンズを立ち上げて県リーグからスタートさせた(現在は関東リーグ2部)だけではなく、2004年にはJFL昇格を賭けて地域リーグ決勝大会に挑み、見事に決勝リーグで2位に入り大学勢として静岡産業大学、国士舘大学に続く3校目のJFL入りを果たした。

2005年からトップチームが関東大学1部、2軍がJFL、3軍が関東リーグという図式を確立させ、部内競争はさらに激化。トップに入れなかった上級生や、将来性のある1年生がJFLというプロ・アマ混合リーグで試合を経験することにより飛躍的に能力を高めていき、2008、2009シーズンで関東大学リーグを連覇する原動力をここで培っていく。

Img_2082

確かに、他校どころかJクラブですら羨む練習環境を持ち、大学リーグだけではなくJFLや関東リーグといった実戦の場を与えられたことが流経大の全盛期を作り出したことは否定しない。しかし、環境だけが流経大を全盛期へ導いた訳ではなく、やはり選手それぞれの努力を見逃してはならない。阿部吉朗にしても、武井択也も三門雄大なども、高校時代には特に目立つ存在ではなかった。また、一度はプロで挫折した難波宏明も、流経大での4年間が彼に輝きを取り戻させ、再びプロの世界へ活動の舞台を移していくこととなる。

エリートよりも「雑草」と呼ばれる無名の選手が多かった流経大。高校時代、大きな栄冠を勝ち取ることは無かったが、どうしても夢である「プロ」になりたいという想いだけは誰よりも強かった。このように、雑草であるからこその「ガムシャラさ」が、常勝・流経大の礎を築いたと言っても過言ではないだろう。

-----------------------------------

■下り坂
2008、2009年と関東大学リーグで連覇を飾り、一気に大学サッカー界きっての強豪校に登り詰めた流経大。3連覇のかかった2010年は現ベガルタ仙台の武藤雄樹、水戸ホーリーホックのロメロ・フランク(大学時代はベロカル・フランク)が主力(最上級生)となってリーグ戦に挑んだが、チームは周囲の予想とは反して苦しいシーズンを迎えてしまう。

この年の4年生は首脳陣だけではなく、選手自身にも「谷間の世代」という認識があった。上級生は流経大を強豪校とする原動力となり、常に強烈な向上心と闘争心を持って後輩やチームを牽引。また後輩にあたる3年生(現4年生)は、高校時代に2冠を達成した流経柏の主力の多数が入学し、その他にも山村和也、増田卓也といった逸材が揃い、先輩を追い抜いて2、3年の時点でトップチームのレギュラーに抜擢されるなど、早い段階から将来が嘱望されていた。

強烈すぎる先輩に、高い能力と経験を持つ下級生に挟まれた昨年の4年生。開幕当初は武藤、フランクの他に何人かの4年生がいたが、次第にスタメンから人数が減っていき、最終的には上記の2人と平田達朗(現バンディオンセ加古川)の3人ぐらいしかコンスタンスにスタメン入りしなかった。上級生の少ないチームは、予想したとおり、苦しい場面で踏ん張りが効かず、一度狂ってしまったチームの歯車は最後まで完全に修正されることは無かった。

さらには、この年から流経大を強豪校に押し上げる要因の一つになっていた大学リーグとJFLの自由な入れ替えが出来なくなり、これまでのように調子のいい選手をいつでもトップに上げる、調子が下がり気味の選手を下に落とすということが、定められた登録期間でしか出来なくなったことがチームの混乱に拍車を掛けてしまう。

Img_0704

そんな時、これまでのチームであれば、強烈なリーダーシップを発揮する上級生(4年生)がチームをグイグイ引っ張ってきたのだが、この年はそこで先頭に立つ選手が少なすぎたのである。エース武藤は、どちらかといえば声を出して引っ張っていくタイプではなく、黙々と練習に励み「オレの背中(姿)を見ろ」というタイプ。また、フランクは陽気な南米人(ペルー)気質のため、リーダーとして牽引するタイプではない。その他の4年生はベンチに入れたり、入れなかったりが続くなど、下級生を引っ張っていくどころか、自分のプレーで精一杯といったところで、とてもではないがチームを立て直すどころではなかったのが実情であった。

苦しい状況を最後まで脱することができず、流経大は3連覇を目指すどころか、1部昇格以来最低となってしまう9位でリーグ戦を終了。さらには、中野雄二総監督は「流経をここまで強くしてくれたのはJFLで戦えたから」とコメントし「大学リーグで4位以内を確保するよりもJFLで残留する方が大事」と明言していたが、願いは叶わずあえなく最下位で終了し、無念の関東リーグ降格となってしまった。(※3軍であるクラブドラゴンズも1部の座を守れず、関東リーグ2部に降格)

-----------------------------------

■まさか
ここまで、流通経済大学サッカー部は順調に進化を続け、知名度のない地方大学から一気にサッカー界で知らない者がいないほどの知名度を誇るようになり、さらには「プロ養成所」とまで言われるようになった。

流経大が2度目の2部昇格を目指していた当時は、中野総監督や大平ヘッドコーチが各地の高校にスカウティングに出向いても、選手や指導者(監督)から色よい返事をもらえないこともあった。しかし、今は系列校でもある流経柏が全国的な強豪校となり、そこから毎年のように将来性の高い選手が入学(入部)し、さらには高校選手権やプリンスリーグ、全日本ユースで活躍した知名度のある選手も数多くやってくるようになり、高校時代に優勝や各年代別代表を経験している選手も部内に一気に増えてきた。

そして今年は、流経柏で全日本ユース優勝、高校選手権優勝と2冠を達成したメンバーが最上級生となり、それらのメンバーをベースに上記にもあるとおり、増田、山村といったすでに大学レベルを超越した選手を擁し、今年は「復権の年」と位置づけてチームは1月から始動し、2月に入ってからは積極的にJクラブと練習試合をこなし、調整を続けてきた流経大。

Img_0261

リーグが始まっても前評判どおり勝ち点を重ね、6試合を終わったところで4勝2分と上々のスタートを切ったかに見えたのだが、6月11日、雨の駒沢で行われた専修大学戦から徐々に歯車が狂いだしてしまう。この試合、不用意な試合の入り方をしてしまい、20分を経たない時点で3点のリードを奪われ、大ピンチを迎える。結局は試合終盤、相手の足が止まったところを畳み掛けてなんとか同点に追いついてドロー(4-4)に持ち込んだが、守備の不安定さが中盤戦に入って来て見え隠れし始めてしまった。

チームの歯車が狂い始めだしたときに、ちょうどU-22代表の試合が組まれており、主力でもある3人が翌週からチームを離れることになると状況はさらに悪化。続く8節の順大戦では0-3、9節の早大戦はなんとか持ち直して1-1のドローに持ち込んだが、どうも調子を取り戻せない。その後の総理大臣杯予選は格下が相手であったこともあり無難に勝ち抜いたが、本大会では準々決勝でそれまで同じように不振に喘いでいた中大に完封負けを喫して痛い敗戦となってしまう。

シーズン当初から、総理大臣杯、リーグ、インカレの3冠を目指すと、比嘉をはじめとした多くの選手が語っていたし、中野総監督も「この年代(4年生)には(タイトルを)取らせてあげたい」と語るなど、選手にも首脳陣にも「やれる」という想いと手応えはあった。確かに、リーグ戦前期の中盤戦以降は流れが悪かった。だが、一発勝負のカップ戦ということで、気持ちをリセットして挑んだはずなのだが、準々決勝での中大戦は、これまでの中大とはまったく違うカウンター中心の戦法に後手を踏んでしまい「まさか」の敗戦。

早くも3冠の夢が消えてしまった流経大。しかし、主力数名の選手はユニバーシアード代表候補に選ばれていることもあり、休む間もなく調整が続き、最終的には増田、山村、比嘉、椎名、中里、河本の6名が代表に選出。そして代表スタッフに中野総監督、大平ヘッドコーチが選ばれていることもあり、流経大は今年の夏合宿をユニバ代表と同行する形で中国で行うことを決定。

かくして、トップチーム(大学リーグ)と流経大FC(関東リーグ1部)のメンバーもユニバ応援&合宿の旅となったのだが、結果的にこの遠征こそが今の流経大の不振を作ってしまったと言えるだろう。

どのチームにとっても、夏合宿というものはチームにとって重要な物となっている。前半戦でどんなにいい成績を残そうが、夏にしっかりとした積み重ねが出来なければ後半戦は失速してしまう。そして流経大の合宿メンバーだが、慣れない中国という地に悪戦苦闘が続く。体に合わない水に食事、用意した練習グラウンドの環境もお世辞でも良い環境とは言えず、練習試合に組んだ相手の実力がかなり適当だったりと、チーム力がアップ出来たとは言えない合宿(遠征)になってしまった。

Img_0513

さらには、ユニバで優勝は勝ち取ったものの、代表選手たちには休む間もない状態が続き、帰国直後には天皇杯予選も待っているという超ハードスケジュールで疲労も極限に達してしまい、それぞれの選手がいいコンディションを維持できなくなってしまう。そんな中で9月2週目から大学リーグの後半戦がスタートするが、ここで素晴らしいスタートダッシュを飾ったのは専修大だった。前期は素晴らしい攻撃力を見せたものの、守備に難があり、まだまだ発展途上のチームという感だった。しかし、内容の濃い夏合宿を経て、天皇杯東京都予選準決勝の横河武蔵野戦で6-0と圧勝したところからチームは一気に急上昇。

それに対して流経大は、優勝を争う上でライバルとなる明大と後半戦の最初で対戦したが、完膚無きまでに叩きつぶされて大敗(0-5)。その後もまさかまさかの内容が続き、10節から16節までの成績が2勝5敗と大ブレーキ。さらには14〜16節までの3試合合計の失点数が10と守備陣が崩壊。確かに、12節の中大戦以降、山村は負傷箇所の手術を行ったため、リーグ戦を欠場しているが、それ以外のメンバーはほぼベスト。U-22代表以外でも、チームの中心選手である中里崇宏もJ2横浜FCに入団内定するなど、高いレベルの選手が揃っている。しかし、それでもチームは勝てないのである…

結局のところ、夏合宿で思うようにチーム力の底上げを図ることが出来なかったツケがここに出てきてしまっているのだ。また、負けた試合の中でも、ポゼッションでは相手を上回っていた試合もあり、選手の中では「負けた気がしていない」という気持ちも少なからずあった。このように、チーム全体の底上げ失敗と、レギュラーの中でのちょっとした気のゆるみが不振に繋がり、優勝どころか、このままでは残留争いに加わってしまうかも知れないところまで落ちてきてしまった。

-----------------------------------

これだけのメンバーが揃いながら、今の成績は誰が予想しただろうか?

昨年のメンバーは「自分たちの代は強くはない」というやや消極的な気持ちがあり、これが最後まで抜けなかった。それに対して今年のメンバーは「絶対にやらなければいけない」という気持ちが強すぎること、そして高校時代から含めて「負け続ける」ということに不慣れでもあることが気になってしまう。

確かに合宿でのチーム底上げに失敗したが、それでも揃えている選手層は関東随一であることは間違いない。また、山村がいないから勝てないというのではなく、私は中里のコンディションが戻らないことが不振を極めている原因だと思っている。

Img_0669

世間的には中里の知名度は山村に比べて全然低い。しかし、流経大にとって中里は山村以上に大きな存在でもあるのだ。何度か山村がボランチに入る試合もあったが、決していい流れを作り出せず、お世辞でも機能しているとは言い難かった。その答えとしては、今年の流経大のサッカーとは中里の動きをベースに作られているからである。だからこそ「中里の出来次第」そして「中里の存在の有無」がチームの勝敗に大きく左右しているのだ…

さて、そうは言っても今の流経大は中里も山村もいない。そんなチーム状況の中で、その代役を次世代を背負って立つ椎名伸志が担わなければいけないのだが、17節の駒大戦はやっと流経らしい形を作り出し、苦しみながらも13節以来の勝利を飾り復調の足がかりを掴んだと言えよう。

Img_0236

本来は今年のチームは間違いなく優勝できる実力を持っているのだが、「まさか」が続き過ぎてしまい、なかなか泥沼から抜け切れてはいない。しかし、負けた試合において「まさか」と感じ続ける(言い続ける)ようでは目標である優勝は遠のいてしまうと言えるだろう。まさかとは気のゆるみや、そんなはずじゃない…という想いから来るものだが、結局のところは「慢心」があるからこそ出てくる言葉でもある。

やっとこれで勝ち星先行(7勝4分6敗)となり、インカレ出場権を再び射程距離に捉えたが、この日のような積極性、そして攻守にわたる集中力を持続しなければ再び泥沼に戻ってしまう可能性もある。明日リアルホーム(流経大グラウンド)で行われる慶応大学戦は非常に重要な試合となるだろう。

「まさか」という言葉を、封印出来るようになれば、間違いなく評価通りの実力を発揮できるはず。下り坂、まさかと続いてきた流経大だが、再び上り坂となっていくことを期待したい。

2011年10月31日 (月)

圧巻のマナドーナ

先週の熊谷のほぼ10倍となる、2,139人の観衆を集めた西が丘で行われた日テレベレーザの試合。現代表、元代表を多数擁するベレーザに、女版俊輔の異名もある宮間あやが所属する湯郷belleの対戦ということもあり、さすがに注目度が高かった。

Img_0178

そしてこの試合でもっとも輝きを放ったのは、ケガから復帰してから好調を維持する「マナドーナ」こと、岩渕真奈だった。

[ベレーザスタメン]
ーーー岩渕ーー永里ーーー
ー有吉ーーーーーー木龍ー
ーーー伊藤ーーー原ーーー
須藤ー村松ー岩清水ー長船
ーーーーー松林ーーーーー

[湯郷スタメン]
ーーー松岡ーー有町ーーー
ー中野ーーーーーー中川ー
ーーー宮間ーー高橋ーーー
加戸ー秋葉ーー安田ー壷井
ーーーーー福元ーーーーー

試合は開始16秒にいきなり岩渕がシュートを放ってスタート。その直後の1分にも岩渕ー永里の連携からCKを奪い、2分にはこの試合を通して湯郷守備陣を苦しめ続けた縦への速い展開から岩渕が裏を狙っていく(ここはオフサイド)。そして5分にもCKを奪うと今度は須藤が頭で合わせてゴールを狙っていく。

立ち上がりはベレーザの2トップの速さに完全に翻弄されてしまう湯郷。ボランチ伊藤の位置で左右に展開して、そこから縦に速いボールが入る。湯郷守備陣は2トップに速さに完全に遅れを取りキープを許してしまうと、そのすきに2列目が次々とゴール前に進入してくる。いや、この日はボランチだけではなく、代表CBである岩清水のロングフィードも実に正確であり、試合のペースは完全にベレーザのものとなっていく。

この試合では宮間 vs 伊藤、原というボランチ対決が期待されていたが、この日はベレーザの速い潰しの前にまったくといっていいほどボールが宮間に繋がらず、前半はほとんどボールを触る機会が訪れない。それに対してベテランの伊藤は速さこそないものの、実に緩急をつけたボールさばきでゲームを組み立て、原も積極的に前に出て厚みのある攻撃を生み出していく。

ゲームの流れは完全にベレーザのものであり、あとはどのタイミングで先制点が入るかであったが、32分についに均衡を破るゴールが生まれる。

Img_0093

原からボールを受けた伊藤は、前にスペースがあることを確認すると見事なコントロールで縦パスを通していく。そこに岩渕が絶妙のタイミングで走り込んでシュート! これが決まってベレーザが先制。

ここから先は、スピードで上回るベレーザのやりたい放題。得点を奪った直後の33分、今度は左サイドに展開した岩渕がまたもドリブルがDFを抜き去り中へボールを流すが、ここは右アウトで絶妙なボールを送るという高度な技術を見せつけていく。さらに35分には、永里妹が細かいスペースを突いて2列目から入ってきた有吉にスルーパス(ここもオフサイド)。さらには38分には、またも岩渕ー永里の連携から守備を崩してゴールを狙う。

40分には今度は有吉が左サイドを突破してゴール近くまで進入。中へボールを送ると木龍がシュート! 決定的場面だったが、代表GKでもある福元が気迫のセーブでゴールを死守。しかし、こぼれ球に永里が反応してまたも決定機を迎えるが、ここは枠を外してしまう。

そして42分、相手ボールをカットした岩清水が前線にフィード。これが見事にスペースに流れ、走り込んだ永里があさっり決めて2点目。さらに45分、CKのチャンスからまたも須藤が頭で狙い今度はドンピシャで3点目をゲット。

もっと僅差の試合になるかと思われたゲームだが、すべての面でベレーザが上回り、湯郷を圧倒。注目された宮間の展開、ゲームメークだが、相手の速い出だしの前に完全に沈黙してしまい、宮間だけではなくチーム全体がいいところを出せないまま前半を終えてしまった。

後半に入ると、有吉、岩渕にいいようにサイドを破られてしまい、自陣に釘付けとなってしまった右MFのポジションに有町を配置して、FWに中川理恵を投入してゲームの流れを変えようと策を打ってきた湯郷。しかし、後半に入ってもベレーザの鋭い出足は衰えず、47分に木龍が後半最初のシュートを放ち、48分には岩渕がシュートを放つなど、前半同様に相手を圧倒していく。

しかし、後半20分を過ぎた辺りから徐々にベレーザの運動量もダウン。そしてその流れの中で68分、CKのチャンスを得ると宮間からのボールに松岡がヘッド。これはバーに阻まれたが、中川(理恵)が詰めて1点を返す。ベレーザの運動量も下がり始め、これで追い上げムードが上がっていくかと思われた。だが、実際には湯郷もなかなかペースが上がっていかない。

代表では2列目の攻撃的MFに位置する宮間だが、チームではボランチの位置に入っているのだが、この一列後ろにいることがフィットしていないのか、宮間からのパスがことごとく繋がらない。いや、同点に追いつきたいという気持ちが強すぎ、焦りからか無理なダイレクトパスを連発してしまい、これが無情にもミスに繋がり反撃の糸口を結果的に無くしてしまうこととなる。

ベレーザも前半のような動きが出来なくなり、湯郷もその隙を狙えず、やや膠着した試合となってしまう中、73分に今度は守備で岩渕が魅せてくれる。左サイドで中野にボールが入ったとき、猛然とチャージに入ったのがFWの岩渕。攻撃だけではなく、守備面でも積極性を見せた岩渕。試合後には「好調を維持しているので、絶対に自分たちがINACの無敗を阻止したいですし、優勝も諦めていません」と力強くアピール。

ワールドカップで思うようなプレーが出来ず、その後もケガで戦列を離れるなど、苦悩の時間を過ごしたが、これが逆に気持ちを強くする結果に繋がり、復帰後はこれで5戦連発と一気に波に乗った感もある。この勢いを持続していけば、次のオリンピックこそ、チームのエースになれるかも知れない。

さて、試合だが、結果的に湯郷の「攻めあぐね」もあり、試合は3-1のまま終了したが、全体的にみて、やはり新旧代表選手を揃えるベレーザのサッカーの「質の高さ」を改めて実感することとなった。最終ラインからの正確なロングフィードだけではなく、高い位置からのプレスや、攻め方のバリエーションの豊富さ。今日の出来を持続していれば、首位を走るINACにストップをかけることは十分可能と感じた。

また、次世代のなでしこジャパンを担う存在として、センターバックに入っている村松智子、そして左MFとして出場した有吉佐織は実に面白い存在になると感じた。村松も岩渕同様、U-17ワールドカップで活躍した選手であり、将来性が高いの当然。また有吉も神村学園→日体大とエリートコースを歩んできた選手。ちょうど明日で24歳の誕生日を迎えるが、なでしこリーグだけではなく、代表での経験を積んでいけば大化けするタイプ。スピードで勝負するサイドアタッカーの今後にも大いに期待したいところ。

ということで、先週と今週、2つの試合会場に足を運んだが、やはり下位と上位には大きな差があることを実感した。だが、この日鴻巣で行われた狭山 vs 新潟の試合は1-1のドローで終わるなど、確実に下位チームも経験値を上げて中位グループになんとか食いついていこうとする姿を見せてくれている。

上位チームには「世界と戦うこと」を意識してほしいし、下位グループには「上位への挑戦」を常に頭に入れた成長をしていけば、リーグ全体がいい方向に成長していくはず。この日も各会場で多くの観衆を集めたが、正直にいえば「なでしこブーム」に乗ってきたライト層なファンが多いことは否定出来ないだろう。

しかし、そのライト層を引きつけなければリピーターにはなってくれない。しいては、ファンがいなければリーグもクラブもやっていけないのである。だからこそ、なでしこリーグ全体として、その「ライト層」に「また見てみたい」と思わせるゲームをする必要があり、ライトをコアに変えて行かなければならない。そういう観点からすれば、この日、ベレーザが見せた試合は実にライト層を取り込みやすい試合であった。

スターが活躍し、それ以外の若手、ベテランも実力を発揮して「こんなにおもしろい試合をしているんですよ」ということを強烈にアピール。また、前日の大学リーグ終了後、赤羽駅東口で「明日、なでしこリーグの試合が西が丘であります」と一人で告知活動をしていたサポーターがいたが、このような素晴らしい活動をしてくれるサポーターがいたことをとても嬉しく感じた。

111029_1737141

なでしこが今、ブームなのは誰でもわかる。しかし、そのブームを一過性のものではなく、継続性のあるものにしなければならない。そのためにクラブやリーグもいろいろ策を考えるが、サポーターやファンにでも出来ることがあるはずだが、それを実践する「行動するサポーター」がどんどん増えていくことにも期待したいところである。

---------------------------------

プレナスなでしこリーグ2011第15節 @西が丘
日テレベレーザ 3-1 湯郷belle
[得点者]
32分岩渕、42分永里、45分須藤(ベレーザ)
69分中川理(湯郷)

[ゲームスタッツ]
シュート数:ベレーザ14、湯郷6
ゴールキック:ベレーザ6、湯郷15
コーナーキック:ベレーザ4、湯郷4
直接FK:ベレーザ11、湯郷9
オフサイド:ベレーザ3、湯郷2
PK:ベレーザ0、湯郷0

2011年10月30日 (日)

明大が示した今の力と妥当な順位

2009シーズンはインカレを制し、昨シーズンは3年ぶり3度目の関東大学王者となった明治大学。ジュビロ磐田に入団し、すでにレギュラーとして活躍している山田大記と小林裕紀、そしてジェフに入団した久保裕一など、実力を兼ね備えた4年生が揃い、現在、最上級生として活躍している高木、丸山、宮阪など多彩なタレントを擁し、まさに黄金期と呼べる強さを見せた明大。

ここ数年、大学側の手厚いバックアップ体制と神川明彦監督のマネジメント力が功を奏し、一気にリーグを代表する強豪チームに成長してきたが、山田を筆頭とした黄金期を支えたメンバーが卒業した今年がある意味で「真価」の問われる年でもあった。確かに、昨年の山田や小林のような飛び抜けた存在はいないものの、上記でも取り上げた3人以外にも豊富なタレントを擁しており、さらには松藤正伸(FC東京U18)、矢島倫太郞(浦和ユース)、石原幸治(市立船橋)といった将来性の高い1年生が揃っており、今年も優勝戦線に絡んでくるかと思われた。

だが、開幕から3試合連続無失点と攻撃陣が噛み合わず、苦しいスタートとなり予想もしなかった最下位スタートからシーズンが始まっていく。そんな「最悪スタートの象徴的な試合となってしまった3節の順天堂大学戦では、試合後の神川監督はこれまでの試合で見せたことの無いような怒りを見せ、試合に出た選手だけではなく部員全員を集めてカミナリを落とした。そして続く4節の駒大戦では、気持ちがしっかり入ったゲームを見せ初勝利(3-0)を挙げると、チームの調子も上向きとなり夏の総理大臣杯では2年連続でベスト4を果たす。

9月から再開されたリーグ戦でも連勝スタートとなり、完全に調子が戻ったかと思われた明大だが、12節の専大戦で2-5と大敗を喫すると、その後は勝ちきれない試合が続き4試合勝利から見放され一時はインカレ出場権を獲得できる4位以内に突入したものの、再び順位を7位に下げてしまった。

前置きが長くなってしまったが、イマイチ波に乗れない明大は降格圏に低迷する国士舘大学と西が丘で対戦。そして神川監督は不甲斐ない戦いを続けるチームに渇を入れるため、チームの柱でもある宮阪政樹を外すだけではなく、リザーブマッチで好調をアピールしている1年生の石原をスタメンに抜擢してきたのである。

[明大スタメン]
ーーーーー阪野ーーーーー
矢田ーーー岩渕ーーー石原
ーーー三田ーー楠木ーーー
小川ー丸山ーー吉田ー豊嶋
ーーーーー高木ーーーーー

[国士舘スタメン]
ーーー服部ーー田中ーーー
ー金子ーーーーーー上村ー
ーーー佐藤ーー清野ーーー
瀬川ー宮澤ー大久保ー岩城
ーーーーー本田ーーーーー

明大のキックオフで始まった試合は、2分に阪野の右展開からチャンスを広げ、3分には三田がミドル、7分には右の石原に左SBの小川が切れ込むなど左右の揺さぶりから国士舘ゴールに迫っていく。10分にもロングスローから吉田がヘディングでゴールを狙うなど、いい形で試合に入ったかに見えた明大。

だが、11分に不用意なパスをカットされてピンチを招くなど、時として集中を欠くプレーやボールへのアプローチの遅さも目立ち、攻めてはいるものの厚みのある攻撃とまではいかない展開が続いていく。さらには、カウンターから活路を見いだそうとしていた国士舘の狙いにはまってしまい、16分には縦パス1本から田中の飛び出しを許してしまいピンチを迎える。

悪くはないのだが、良いとも言えないこの日の明大。そんな煮え切らない状況に、神川監督はテクニカルエリアの一番前まで出て「(ポジションの)距離感!」「アプローチ!」と檄を飛ばしていく。すると25分を過ぎた辺りから攻守においてスムーズさ、そして積極性が生まれ始め、29分には矢田がうまく相手DFの合間を抜け出し決定機を迎えるがシュートは枠を外してしまう。CBの丸山からもいいボールが入り出すと、序盤とは違う連動性のある動きからチャンスが生まれだし、35分にゴール前でFKのチャンスを獲得。

Img_0108

この場面、ボールをセットしたのは丸山だったが、彼はCBであるが正確かつ強烈なボールだけではなく、巻いてくるボールを蹴れる選手。それに対して国士舘GK本田の警戒はやや不用意であった。ベンチの石川コーチからは「直接あるから! もっと壁の位置を考えろ!」と指示が出たのだが時すでに遅し。丸山の放った鋭いシュートは見事にゴールマウスを捉え、ついに明大が均衡を破った。

-----------------------------------------

前半のポゼッション率は圧倒的に明大。チャンスの数も圧倒的に明大で、終始ペースを握っていたことは間違いない。しかし、ポゼッション率やチャンスの数に対して、シュート数はわずかに5本と決して多くはなく、上記にもある通りの「煮え切らない」前半であったことも否定出来ない事実。対する国士舘だが、明大以上に重傷であることが気になってしまう。守備の徹底を図って来たはずなのだが、マークが甘く何度も危ない場面を作られ、まったくと言っていいほど元気のない展開が続いた国士舘。はたして後半はどう修正してくるか注目したのだが、明大の方の修正が優って後半は前半以上に明大ペースで試合が進んでいく。

Img_0168

開始直後にボールを奪った石原が素晴らしい突破を見せ、最後は岩渕がシュートを放って後半戦がスタート。直後の2分には相手にCKを許してしまうが、ボールをカットした石原がまたも積極性を見せてチャンスを作り出しCKを獲得。4分にも岩渕の高い位置からのプレスでボールを奪いシュートまで持ち込み、続く5分には丸山のロングボールから阪野が見事な飛び出しを見せ、右サイドからシュート! 決まったか? と思われたがポストに阻まれる。しかし跳ね返りを詰めていた岩渕が押し込んでいい時間帯で明大が追加点を奪う。

リードを2点差に広げ、精神的にも余裕が出てきた明大は、全体のリズムが昨年の「いい時」のような形となり、矢田、石原が頻繁に左右のポジションを変えて相手守備陣に大きな混乱を与え、その隙にボランチの三田が自由自在にボールをコントロールして大きな展開を作り出して国士舘を圧倒していく。

だが、ここで目に付いてしまったことも一つある。ボールを左右に展開し、相手に揺さぶりを掛けてチャンスを作り出す展開は実に素晴らしい。しかし、次から次へとチャンスを作り出してもなかなか3点目が生まれないのである。そう、昨年と決定的に違う点としては、欲しいときに決められるストライカーが不足しているのだ。

Img_0150

昨年は4年生の山本、久保という2枚看板が揃い、さらには次世代を背負う選手として2年生(現3年生)の山村祐樹が後半戦は爆発してケガで欠場の多かった山本の穴を埋めた。このように、シーズンを通して2トップが機能してきたのだが、今年は軸となる阪野のパートナー候補が現れず、結果的に2トップではなく1トップの4-2-3-1システムにせざるを得ない現実があるのだ。

なでしこジャパンで期待される新生・岩渕真奈の兄である岩渕良太の成長は目を見張るものがあるが、強烈なストライカータイプではなくトップ下、もしくはシャドーと言った存在であり、1年生の矢島倫太郞も同様にそのタイプ。昨シーズンに期待を抱かせた山村は、ケガとコンディション不良が続いて今季はベンチ入りすらままならない状態であり、前期は2年生の野間亮太なども試されたが結果を出せず、結局は1トップシステムに落ち着いて今に至るが、阪野に続くストライカーが現れてこないことこそ、今の明大の乗り切れない原因に繋がってしまっている。

Img_0199

そして山のようにチャンスを築きながらも決められない時間が続き、次第に選手の運動量が下がってしまい、後半30分以降は完全に国士舘のペースとなってしまう。70分ぐらいまでは実に素晴らしい動きを見せた石原も、次第に疲労の色が見え始めてしまい81分に交代。神川監督は途中までの出来については一定の評価を示したが、90分を通して戦えなかった点についてはもっと成長してほしいと厳しい指摘も忘れなかった。

さてゲームだが、後半35分以降からは国士舘の猛ラッシュが続き、何度も危ない場面を迎えてしまった明大。37分には途中交代の児玉が持ち込んで決定機を迎え、39分にも右からのクロスに飛び込んできた瀬川がフリーでヘディングを放つなど、あわや…というシーンが続出。結果的には国士舘の決定力不足に助けられて無失点で試合を終えることは出来たが、勝っても釈然としないゲームをやってしまった。

-----------------------------------------

試合後の神川監督は、こちらの予想通りやや厳しい表情のままでゲームを振り返ってくれた。

「4試合勝ちが無かったので、まずは勝ち点3を取れたことは良かったです。メンバーを入れ替えてテコ入れをしましたが、序盤はチームが寝ていたというか動き出しが悪かったと言えばいいのか、非常にテンポが悪くアプローチの遅さが目に付きすぎましたね。内容的には良くなかったですし、コーチに申し訳ありませんでしたが、私が前に出て指示を出させて貰いました。

Img_0002

今、私はS級ライセンス取得なども重なっており、なかなかチームの練習には顔を出せてはおらず、週1回ぐらいしか見られていません。普段は練習はコーチに任せており、試合当日に顔を合わせる状況が続いているのですが、だからこそ試合を見て客観的にチームの悪いところが見えるようなった気もします。

まあ、前半の途中からアプローチも早くなり流れが良くなったからこそ、丸山のゴールを呼び込むFKを得ることが出来たと思いますが、後半はあともう1点を取れるチャンスもありましたね。結局は、今のチーム状況はまさに順位(6、7位→実際には順大が敗れたため5位に浮上)相当なんだと思っています。

昨年は出来ていたことが今年は出来ない現実がありますが、もっと基本動作のトレーニングを積み重ねていかなければならないし、気持ちの面での充実をもっと高めるなど、今のメイジに必要なことはたくさんあります。コーチの目が行き届いていない面もあるでしょうが、これは部全体を見なければいけない私のマネジメント不足でもありますので、残された試合の中で改善していきたいです」

順位相当に関しては、私が投げかけた質問の中から出来てきた言葉なのだが、試合を優位に進めていても決めきれないところ、さらには足が止まってしまうと流れを引き戻す術がないところが今季の明大を象徴している感を受けたこの試合。現在は順大が敗れたために5位と順位を上げたが、内容的には6、7位と中位にいることが妥当であると感じてしまったのだが、選手それぞれが持っているポテンシャルを最大限に引き出せば、間違いなく首位を走る筑波大と対抗できる力があるのに、それが出来ていない現状がなんとももどかしいところである。

結果的には4試合ぶりの勝利となった明大だが、この先の試合では会心のゲームを期待したいところであり、神川監督がどこまで選手の能力を引き出すことが出来るかにも注目したい。さて、敗れた国士舘だが、ラスト15分では意地を見せたが90分間を通して見れば、あまりの元気のなさに「大丈夫か…」と感じてしまった。エースであり、大黒柱の吉野峻光を欠いている状況とはいえ、前半のシュートはわずか2本と攻撃に関する「手」のなさ過ぎは重傷と言える。また、相手に押し込まれてしまった際に対処する術があまりにもなさ過ぎた。この日、最下位の青山学院大学が流経大に勝利したことで、ついに勝ち点差では並ばれてしまった国士舘。

Img_0247

昨年は斎藤一行(現新潟育成部コーチ)を柱として、インカレ出場権を得た国士舘だが、今年はまさかの残留争いとなってしまい、「降格」という危機的状況から抜け出せないまま、もがき続けている名門。ただ、上位との勝ち点差もそれほど開いていないこともあり、降格圏から脱するチャンスはあるのだが、この日の元気のなさは非常に気がかりである。

--------------------------------------

2011関東大学サッカーリーグ 
第16節 @西が丘
明治大学 2-0 国士舘大学
[得点者]
36分丸山、51分岩渕(明大)
[警告]
56分豊嶋、88分田中恵(明大)

[ゲームスタッツ]
シュート数:明大12、国士舘10
ゴールキック:明大7、国士舘11
コーナーキック:明大4、国士舘9
直接FK:明大11、国士舘9
オフサイド:明大3、国士舘2
PK:明大0、国士舘0

« 2011年10月23日 - 2011年10月29日 | トップページ | 2011年11月6日 - 2011年11月12日 »