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2011年5月22日 - 2011年5月28日

2011年5月27日 (金)

鈴木政一の新たなる挑戦

ジュビロ磐田というチームに関しては正直詳しくない。しかし、昨年9月から12月という短い期間であったが、AC長野パルセイロというチームを通して「鈴木政一」という人物と接する機会を持ち、そこで卓越した指導力、そして勝負師としての「確かな眼」を間近で見ることとなり、「こんな人が指揮官にいたからこそ、ジュビロというチームは強かったのだ」と感じたものだった…

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パルセイロでは「強化本部長」という肩書きで、チームを縁の下から支えた鈴木政一氏。そんな彼の下には、長野からの契約延長要請と母校でもある日体大から監督就任要請が舞い込んできていたが、4月9日に行われたアルテ高崎との復興支援試合を最後に長野を去り、そこからは日体大サッカー部の監督として指導する毎日が続いていた。

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さて、今の日体大サッカー部の立ち位置だが、関東大学サッカーリーグの「2部リーグ」に所属しており、昨年は2部6位という順位(総理大臣杯は関東地区予選2回戦で敗退)。しかし、ここ数年は良くも悪くも2部に定着しており「降格はしないが昇格もしない」という中位に甘んじている現状が続いている。

そんなチーム状況を変えるべく、大学側が指揮官として白羽の矢を立てたのが、OBであり、現役時代は主将(ポジションはDF)であった鈴木氏。しかし、チームに完全合流したのは4月11日からであり、いくら関東大学サッカーリーグの開幕戦が5月(日体大は5月4日)になったからとは言え、チームを掌握する&劇的に変えるには短すぎると思われた。

だが、今季はここまでの4戦を3勝1分で乗り切り、勝ち点10で2位に着けて好調を維持し続けている。そんな好調を維持したままの日体大は、26日、総理大臣杯予選2回戦で1部の強豪・筑波大学と対戦した。

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試合の詳細については、別の機会で細かく記そうと思っているので、ここではざっくりとだけにしておきますが、序盤から鋭い出足を見せる日体大が筑波大を圧倒し、前半11分に相手ボールをカットした新井がそのまま持ち込んで先制点を奪う。しかし、16分にFKを直接決められて同点に追いつかれるのだが、前半は終始主導権を握ったままゲームは進んでいく。

そして後半だが、さすがに1部の筑波が立て直してきたこともあり、前半より厳しい時間が増え出し、55分には逆転弾を許してしまう。1点リードした筑波大は、慌てず時間を使う策に出たこともあり、日体大はボールをなかなか奪えない。

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そして90分が過ぎ、時間はロスタイムの3分だけとなったのだが、最後まで諦めなかった日体大が90+2分で同点に追いつき、気持ちの切り替えが出来ない筑波大に対してリスタート直後から再び襲いかかり、最後は田中の劇的な逆転弾が決まり、格上に対して見事な勝利を掴み取った(筑波大 2-3 日体大)

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それにしても、見事な逆転勝利であった。

日体大には、過去にU-19代表に選ばれた田中優毅という逸材や、Jユース組もそれなりにはいるものの、お世辞でも名のある選手、名のある学校出の選手は決して多くはない。いわば雑草軍団でもあるのだが、そんな選手たちをいかにして、この短い期間で鈴木監督は変えたのであろうか?

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試合後の鈴木監督は「今日は相手が格上ということもあり、選手たちは本当に最後まで良くやってくれましたよ…」と口を開き、このように続けてくれた。

「まず、今日の試合ですが、選手たちには『4月からやってきた日体のサッカーがどこまで(格上)できるからとにかくトライしよう』と言って送り出しました。リーグ戦ではここまで3勝1分ですが、格上に対してどこまで出来るか楽しみであり、不安でもありましたが、選手たちは『ガチの戦い』を本当に良く諦めず戦ってくれました。やっぱり、モチベーションも非常に高かったですね。

4月11日からチームを見だしたので、まだチームや選手それぞれの細かい部分の特徴を掴みきっていないところもあります。だからこそ、今は難しい戦術を教え込むよりも選手それぞれに、まずは『頭でしっかりサッカーを考えなさい』と伝えています。

その『考える』ということも、難しいことを考えるのではなく、常に『シンプルに動くことを考えろ』と伝えています。

準備期間が短かったこともあり、細かいところまで詰めきれてはいないので、手探りのままチーム作りを進めていますが、『自分で考えられる選手』になるために、意識改革というか、頭のトレーニングを重要課題としていますね。

今日は相手が格上ということもあり、選手のモチベーションがとにかく高かったこともあって、あんな劇的なゲームが出来ましたが、今日のような試合、そしてモチベーションを常に保てるようになり、そしてどんなチームでも全員がタイトに動く日体大らしいサッカーが出来るように仕上げていきます」

以上のように試合後に語ってくれた鈴木監督だが、この日の勝利は間違いなく、監督が求める「意識改革」が選手の中で進んでいることが証明された試合でもあり、新しい日体大のサッカーの輪郭が見えたゲームでもあった。

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さて、昨年のパルセイロでは、鈴木政一が求められた部分は「負けないチーム」を作り上げることであったが、この日体大ではもう少し違ってくる。

当然、1部復帰ということが最大目標となるのだが、それとは別に「その先」を見据えた選手育成にも期待が込められている。そんな中で、この先「鈴木政一の申し子」となりそうなのが、2年生の稲垣祥(帝京卒)や、1年生の広瀬健太(浦和ユース)、中田充樹、阿部潤(ともに矢板中央卒)と言った若い選手たちであり、彼らの台頭があれば鈴木監督を招聘したことは大成功と言えるはずだ。

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かつてのジュビロでは福西や服部、そしてパルセイロでは大橋と、常に中盤の選手が鈴木サッカーのキーマンとなっていたが、この日体大で稲垣がその役割を担えるのだろうか? そして、今年の秋に「1部昇格」が現実のもになっているだろうか?

鈴木政一の新しい挑戦に、期待を込めながら今後も見守っていきたい。

2011年5月25日 (水)

トンネルを抜けた明大

第3節を終えた時点で、駒大と明大がともに勝ち点1で11位、12位(最下位)という順位に沈んでいるが、正直に言えば誰が開幕前にこの順位を予想できたであろうか? 駒大は昨年の総理大臣杯覇者、明大は関東王者で、それぞれタイトルを獲得した両者だが、新チームとなってもがき苦しむ中で迎えた対戦で、明るい兆しを掴み取れたのはどちらであったのだろうか…

[明大スタメン]
ーーー阪野ー三田ーーー
ー矢田ーーーーー梅内ー
ーーー宮阪ー楠木ーーー
小川ー丸山ー松岡ー奥田
ーーーー高木ーーーーー

[駒大スタメン]
ーーー山本ー渡邉ーーー
ー湯澤ーーーーー奥村ー
ーーー碓井ー板倉ーーー
濱田ー水野ー山崎ー砂川
ーーーー松浦ーーーーー

前節から3人のメンバーを入れ替え、さらには楠木、三田のポジションを替えて挑んできた明治大学。しかし、替えたからと言っても、CBは昨シーズンレギュラーを守り通した丸山ー松岡のコンビであり、楠木に関してはシーズン前から「できればボランチで使いたい」と神川監督は明言していたこともあり、この日のメンバー(セット)は「ベスト」に近い布陣(もしくは理想)と呼べるものであった。

それに対して駒澤大学だが、こちらはディフェンスリーダーであり、チームの大黒柱の林堂眞をケガで欠く苦しい布陣。そんな状況もあり、中盤の底に入ることの多い山崎をCBの代役に起用し、中盤をいつものダイヤモンド型から、碓井ー板倉のダブルボランチ型にして試合に挑んだ。

ともに1分2敗と出遅れてしまった両者だが、このメンバー構成を見ればどちらに勢いがあるか? そしてどちらに「分」があるかと言われれば、残念ながら答えは一目瞭然。結果こそついて来てはいないが、悪いなりにもゲームを支配することは出来ていた明大。そんな状況の中で主力が戻ってくれば、チームの士気は一気に上がっていくもの。それに対して駒大は、引き分けスタートの後に連敗し、さらにはキャプテンまで欠く状況。主力が戻ってきた明大に対し、主力を失ってしまった駒大という構図で始まった試合は、両者の明暗がそのままピッチ上に描かれることとなる…

さて、前節の試合でも触れたのですが、やはり明大の試合に「この男」が帰ってくるとガラリと雰囲気が変わってくる。その男とは、当然松岡祐介を指しているのだが、とにかくよく「声」を出せるのだ。試合後の神川監督は「アイツ(松岡)が言っていること(コーチング)が正しいのか、外れているのかはわからないけど、ああいう感じで声を出せる選手がいるとピッチの雰囲気が変わってくる。みんなが『戦うぞ!』という気持ちになれますね」と語ってくれたとおり、序盤から「戦う気持ち」「前に行こう」という気迫を出した明大が駒大ゴールに迫っていく。

そして8分、右SBの小川が縦にフィードすると、三田がこれを受けてドリブルで持ち込んで中に折り返すと、梅内がDFと競り合いながらもシュート。一度はブロックされたがこぼれ球を頭で押し込んで早々と明大が先制する。

ここまでの3試合、圧倒的なポゼッションを誇りながらも奪えなかった得点を、この試合ではいとも簡単に奪った明大。得点を奪った裏には「自分たちらしく繋ぐサッカーを徹底しよう」とメンバー全員が同じ方向性を向かっていたこと、そして何よりも「前に行こう」という意識が高く、これまでの試合では横に繋いでいく場面が多かったが、この日は縦に抜ける動きも冴え渡っていたことを見逃してはならない。

その「縦」の動きは先制点のシーンだけではなく、15分にも楠木からのスルーパスに梅内が抜けだして決定的場面を迎える。しかしここはGK松浦の好セーブに遇うのだが、こぼれ球を拾った宮阪が冷静に左に展開し、矢田が上げたクロスに阪野が頭で合わして早くも追加点を奪う。

さて、なぜこの日の明大は「縦」への動きが冴えたのか?

当然ながら、この試合の為にいろいろな準備をしてきたことがあるのは当然なのだが、それ以上に「守備の安定」があったからこそ、速い「縦への展開」が出来る状況になったと言えよう。これまで、最終ラインには常に楠木が入っていたが、それは丸山ー松岡というセットが使えない状況であるが故の「苦肉の策」でもあった。しかし、今季初めて丸山ー松岡のセットが揃い、楠木がボランチに入ったことで守備が格段に安定。さらには、高い守備力と速い出足が自慢の楠木を前で使うことにより、セカンドボールのほとんどを支配することに成功。また、守備に長けた楠木が入ることにより宮阪の守備への負担が減り、攻撃への比重を高めることに繋がり「幅」が広まったのである。

このように「良さ」が次々と出たことにより、ゲームは明大ペースで進んでいくのだが、その反面で駒大の守備の甘さが激しく目に付いてしまった。確かにキャプテン林堂不在が大きかったことは否定しないが、それにしても明大攻撃陣を簡単にバイタルに入れすぎてしまったのである。マークが甘いことで、すぐに裏を取られて走られてしまう。さらには球際での粘りが少なく、簡単に相手ボールにしてしまう場面が多すぎた。山梨学院大高時代はボランチであった碓井だが、大学に入ってから公式戦でこのポジションに入ったのはたぶん初。さらにパートナーを務めるのが1年生板倉であり、あまりにも荷が重すぎたか…

攻守のバランスが取れず、なすがままにやられてしまった駒大。

しかし、天(天候)が駒大に味方したのか、前半30分以降から激しい雨がピッチを襲い、ボールを細かく繋いで展開する明大のサッカーが徐々にトーンダウン。こういう悪天候には、駒大の「キック&ラッシュ」のサッカーの方が影響を受けないこともあり、雨が強くなるにつれて駒大が流れを掴み返していく。また、明大としても、FWに入った三田の動きにキレがないこともあり、三田をボランチに下げ、宮阪をトップ下にする4-2-3-1システムに変更して駒大に対抗していく。

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それにしても「土砂降り」という表現が当てはまるこの日の天候では、明大の「良さ」が生まれてこない。それは明大の動きが良くないというのではなく、あのピッチコンディションではパスサッカーはやはり難しい。であるならば、駒大のパワーサッカーの方が有利なのか? と言われればそれも決定打にはならない。

昨年は常にターゲットとして君臨した棗(現川崎)がいたこともあり、前線のエアバトルで優位を誇っていたが、今年の渡邉、肝付は残念ながら昨年ほどの怖さがない。また、司令塔の碓井を一列下げてしまったことも、攻撃の迫力を無くしてしまう要因に繋がってしまった。また、碓井と並んで攻撃の「核」となるはずのサイドの湯澤も、明大2年生小川大貴の確実な守備の前に持ち味を出せないままの時間が続く。

結局、後半はどちらも決定打を打ち出せないまま試合は続き、残り時間が15分となったところから、駒大は肝付、磯本を投入して勝負に出る。しかし、この日の明大守備陣は最後まで冷静だった。松岡は最後まで声を切らさずチームを鼓舞し続け、丸山はクールに相手攻撃に対応。過去2試合で精細を欠いた奥田も、この日は安定した守りを見せチームに貢献。

このまま2-0で試合は終了かと思われたが、ロスタイムに前がかりになった駒大のスキを途中交代で入った矢島が逃さず、前でフリーになっていた阪野に絶妙過ぎるスルーパスを送り、楽々3点目を奪って今季初勝利に花を添えた…

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それにしても、雨がなければ明大はもっといいサッカーが出来たのでは… と思うほど序盤はいいサッカーを展開。やはり役者が揃えば「強さ」を見せる明大。試合後の神川監督は「やっぱり12位(最下位)は精神衛生上、よくないですよね」と笑顔を交えながら試合を振り返ってくれた。

「とにかく今日は勝てて良かったです。丸山も進路で悩んでいたけれど、やっと答えを出してスッキリしたようですし、松岡も戻ってきた。これでやっと楠木を前(ボランチ)で使えました。マサキと楠木で、とにかく(セカンドを)拾って欲しいと思っていましたが、狙い通りでしたね。ここまで、松岡の調子が上がらなかったこともあり、楠木を後ろで使わざるを得ない状況でしたから… 今日の楠木はとにかく良かったですね。あと、やっぱり(後ろは)丸山と松岡がいいですね。ほぼ完封でしたし。

それに小川大貴は、湯澤を完封ですね。彼は本当にいい選手に成長してきているので、この先代表に選ばれてもおかしくない選手だし、イタリア(6月に行われるドッセーナ国際ユース大会)に連れていってほしい選手の一人です。

勝てたこと、それも3得点を奪い、取るべき人(阪野)が取ってくれ、無失点で抑えられたことは素直に嬉しい。ただ、まだチームは発展途上だし、この日も細かいミスはあったので、修正してもっと良くしていきたい。あと、今日は三田の動きは誤算でしたね…(笑)

新チームとなったとき、守備には自信はあったのですが、『得点がとれるかな?』という不安があり、その不安がやっぱりシーズンに入って出てしまいましたが、これでやっと吹っ切れたと思います」

1勝できれば… いや、1点さえ取れれば一気に変わると思っていた明大が、ついにこの日目覚めたと言えよう。後ろがしっかりすれば、豊富なタレントを擁する明大はやはり強いということを、改めて証明したこの試合。神川監督が「発展途上ですよ」とコメントしたとおり、得点力という部分では昨年より下回っていることは事実だが、攻撃陣に光が差したことだけは間違いない。あとは、この日得た自信を「確信」に替えられるかどうかである。そのためにも、次の青学大戦は真価が問われるところだ。

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さて、敗れて3連敗となり、これで単独最下位となってしまった駒大。
試合後の秋田監督は「22試合のうちで、まだ4試合を戦っただけですが、ここまで勝てないのは初めてです…」といつになく落ち込んだ表情で語り始めてくれた。

「これが今のウチの実力ですね… 開幕からこんな結果で試行錯誤を続けているのですが、連携も悪くてマークの受け渡しもちゃんと出来ていない。今はとにかく粘って戦うしかないのですが、我慢すべきところが我慢しきれていない。明大も流れが決して良くないので、粘って接戦に持ち込もうとしてたのですが、ウチが粘っこくやれなかったら意味がない。メンタルの部分からやり直して、もう一度自分たちのサッカーを作り直します」

それにしても、この日の駒大は「らしさ」がほとんど見られなかった。
特に、駒大らしいパワーサッカーといえば、このような悪天候であればあるほど、強く出せるときなのだが、それが出てこないのであればかなり重傷である。

ガツガツ当たってくる守備に、ガンガン肉弾戦を仕掛けてくる攻撃というのが、良くも悪くも駒大の「カラー」であったのに、この日の試合では、カラーは何一つ出てこない。序盤の早い段階では、明大にいいようにやられてしまい、チームは混乱したままとなってしまい、最後までしっかり立て直すことが出来なかった。

岡(現甲府)、酒井(現京都)、金(現ガンバ)、棗(現川崎)、金久保(現水戸)など、逸材が揃った昨年に比べ、スケールダウンしてしまったことは否定出来ない今年の駒大。しかし、今の順位が妥当であるとは到底思えないのだ。チーム浮上のきっかけが掴めないまま不振が続く駒大だが、秋田監督がコメントしたとおり、今は「粘って戦うだけ」なのかもしれないが、碓井、湯澤、奥村といった中盤の選手の奮起にとにかく期待したいところだ。

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2011関東大学サッカーリーグ
前期第4節 @西が丘
明治大学 3-0 駒澤大学
[得点者]
8分梅内、16・90+3分阪野(明大)

※この試合は写真はありませんので記事のみで失礼します。

2011年5月24日 (火)

最強世代の流経大、本領発揮

第2節の慶応大学戦こそ大苦戦した流通経済大学。しかし、前節の中央大学戦を2-0と無難に乗り切って首位に立ち、第4節は昇格組ながらも堅実な試合運びで勝ち点を重ねている青山学院大学と江戸川陸上競技場で対戦した。

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[流経大スタメン]
ーーーー征矢ーーーーー
中美ーーーーーーー椎名
ーーー村瀬ー大貫ーーー
ーーーー中里ーーーーー
比嘉ーー乾ー山村ー天野
ーーーー増田ーーーーー

[青学大スタメン]
ーーー忰山ー奈良林ーー
ー横内ーーーー地頭園ー
ーーー山崎ー高久ーーー
飯田ー阿部ー樋口ー御牧
ーーーー田端ーーーーー

先週の土曜日、夢の島で行われた第3節の会場には流経大・大平コーチの姿があったが、試合後に「青学の守備は堅いですね…」という会話を交わしたが、その試合(慶応大学戦)で青学が披露した試合はまさしく流経大がもっとも苦手とするタイプのものだった。

昨年の話になるが、流経大は神大のサッカーに手を焼いてきたが、それと同系統(ガッチリ引いた上でカウンター)のサッカーである今季の青学大。流経大にとってやっかいな相手になるかも? と思われたのだが、前半はその予想どおりの展開となってしまう。

大平コーチだけではなく、首脳陣それぞれが「相手は引いてくるはず」と予想していたが、青学大の「まずは守備から」という姿勢が予想以上だったこともあり、流経大は相手の出方を伺いながらゆったりしたペースで試合に入っていく。そして両者とも、シュートがないまま10分を迎えようとした時に、中里から縦にいいボールが入り、これが征矢に渡ってやっとこの日最初のシュートが生まれる。

しかしこの直後の12分、流経大のディフェンスラインでのパスミスを忰山に奪われてピンチを招いてしまうが、ここはGK増田のファインセーブがチームを救う。すると、ここから流経大は一気に流れを掴んでいくこととなり、青学大はシュートを放つどころから、相手陣内に入ることすら出来ない時間が前半終了まで続いていく。

そして14分にも、中里からいいボールが中美に入ってチャンスを作り出すのだが、やはりアンカー中里の出来については、流経大全体の「出来」すら左右すると言っても過言ではない。第2節の慶応大学戦のように、精細を欠いたプレーになってしまうと、チーム全体の歯車まで狂ってしまうが、中里がいろいろな場面でボールに触る、もしくはボールに関与できる時は流れがいい時の証拠であり、この日はほとんどの場面で中里はボールに関わり、そこからゲームをしっかり組み立てていく。

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司令塔・中里の出来が素晴らしい流経大は、10分以降、完全にボールを支配し続けて連続して青学陣内に攻め込んで行くのだが、相手の守備は予想以上に堅く、ファーストアタッカーこそ前に進めても、2人目、3人目の選手がバイタルエリアに進入していけない。開幕の順大戦だけではなく、前節慶大戦でも勝利したことで守備に自信を深めた青学大は、セットプレーでもないのにFW忰山がゴール前まで戻ってピンチを防ぐなど、11人全員が高い守備意識と集中を保ち続け、必死の守りを見せて応戦する。

すると流経大は、30分を過ぎた辺りから征矢を中盤に下げ、中美をトップの位置にスライドさせ、中美の場所に村瀬を配置転換して打開を図ろうとする。そして35分以降は天野と比嘉のポジションも入れ替えるなど、あの手この手を繰り出して青学大の堅い守備網に揺さぶりをかけ続けるのだが、最後まではじき返され前半はスコアレスのまま終了。

前半の流経大だが、左右に展開して何度も揺さぶりを掛けたのだが、中央をガッチリ固める青学大のディフェンスの前に手を焼き続け、結局無得点。これが昨年の流経大であれば、攻め続ける→点が取れない→焦る→バランスを崩す→カウンターの餌食となる… というところなのだが今年は大きく違った。

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0-0という状況でも焦ることはないし、ハーフタイムで「もっとアグレッシブに動け」という指示を受けても、それをフル・スロットルでやらないところが心憎い。というか、今年のチームは「自分たちで考える」ということがしっかり出来るのだ。

行くところは行く
セーブするところ、様子を見るところをしっかり見極める…
その緩急が使い分けられるからこそ、今年のチームは強いのだ

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前半に比べ、ポゼッション率こそ下がったものの、連動やフリーランニングの質、そしてバイタルへどんどん入っていこうとする意欲が上がった後半の流経大。前半はパサーとして精力的に動いていた中里だが、後半に入った直後の51分に山村のクロスから、見事なバックヘッドでゴールを狙っていく。さらには、中里と高校時代から中盤でコンビを組む村瀬の動きも良く、二人がうまく入れ替わることで多彩な位置から攻撃の「形」が生まれていく。

また、後半に入ってから動きの「質」を上げてきた流経大に対して、青学大はファールで止める場面が増えだしてしまい、イエローを貰うシーンが増えだしてしまう。

そして67分、またも山村の攻撃参加からチャンスを掴んだ流経大は、村瀬が中で合わせるがここはDFがブロック。このこぼれ球を交代出場の関戸が拾い、再びに中へ入れると混戦から中美が奪ってシュート! GKがはじいたところを椎名が詰めてついに流経大が先制。

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山村のオーバーラップが生み出したマークのズレ。さらには畳み掛ける時の迫力に、しっかり詰めに行く2列目の選手。強いチームならではの迫力ある攻撃が生み出した得点であり、まだ1点リードしただけだが実質的にここで勝負ありだった…

その後も攻勢を強める流経大に対し、82分に阿部が手を使って止めてしまいまたもイエロー。そしてこのFKを途中交代の中山が早いリスタートで前に軽く蹴り出すと、縦に走った椎名に対して山崎がマークしに行くがPA内で倒してしまいPKを献上。さらには2枚目のイエロー→レッドとなり退場処分。

負けている展開。残り時間はロスタイムを入れたとしても10分あるかないかの状況。そんな中でPKを与えてしまい、残された時間を数的不利で戦わなければいけない青学大。あとはシュートが外れてくれるか、GK田端のセーブを期待するしかなかったが、キッカーの山村は冷静にゴールに流し込んで試合は2-0となる。

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こうなると、試合の結果はほぼ決まりという状況だが、流経大が3点目を奪えるか? はたまた、青学大が一矢報えるか? が、残り時間の焦点になっていくのだが、41分、44分に流経大はビッグチャンスを迎えるが惜しくもシュートは枠の外。逆にロスタイムに入ると、勝利を確信したのかやや守備が甘くなり、青学大に反撃を喰らうシーンもあったが、ポストにも助けられゲームはそのまま2-0で終了。

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両者の実力差から見れば、もう少し点差が開いてもおかしくはない試合であったが、青学大の粘り強いディフェンスは、対戦相手からすれば「やっかいな相手」と感じさせるものであり、この守備をしっかりやり続けることができれば、1部残留は可能であると大いに感じさせた。ただ、守備だけではチームの成長が乏しいのもまた事実。守りに関しては、かなり固まりつつある青学大だが、主導権を握っての攻撃ということに関してはまだまだ。だからこそ、後期に向けて「攻撃面での進化」を見せられれば、この先の青学大は非常におもしろい存在になると感じさせるゲームでもあった。

そして勝利した流経大だが、当初から「引いた相手をどう崩すか?」が試合の焦点だったが、時間こそ掛かったものの、焦ることなくしっかり相手を崩して勝ちきったことは評価していいしだろう。また、スタメンだけではなく、途中交代で入ってきた選手(関戸、保戸田、中山)が、それぞれ仕事をしっかりこなしたことにも注目したい。

今年の流経大といえば、オリンピック予選代表候補に選ばれている、山村和也、比嘉祐介、増田卓也ばかりに注目が集まるが、4年生となった「流経柏・高校二冠達成メンバー」を中心に、クラブユース、他高校からも優秀な人材が集まっており、名前を挙げた3人だけではなく、誰が出てきても高いクオリティを維持することは十分可能なのである。

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例えば、山村がいなければ天野、小川、斎藤らが入ってもなんの遜色もない。さらには比嘉のポジションなら、保戸田でも増田智宏でも問題ない。また、GKでは今は控えに甘んじている高宮大輔だが、昨年はJFLで29試合ゴールを守った経験を持っており、他のチームでは正GKでもおかしくないぐらいの存在。この日途中交代で出場した中山雄登(広島ユース)にしても、昨年は1年生ながら前期はJFLチームで活躍し、後期にトップチーム入りして椎名伸志、中美慶哉と並んで「来年以降の流経大」で期待される一人となっている。

そんなタレントが揃っているからこそ、中野総監督は今年のチームに賭ける期待は例年以上であり、そして「求めるもの」のハードルを非常に高く設定しているのだ。

「せっかくね、ここまで素晴らしいタレントが揃っているんだから、ただ勝つだけとか、優勝回数を増やすだけでは意味がないですよ。やっぱりね、新しいことにチャレンジして、会場に見に来たお客さんに『おもしろいゲームだった…』と感じてもらえるような試合ができるチームになって欲しいんです。

大学リーグにしても、Jリーグの試合にしても、たまに『眠くなってしまうような試合』があるじゃないですか? それがダメだとは言いませんが、ウチは違うことやろうと選手に言い続けています。バルサの試合っていつも攻撃的でおもしろいですよね? それにハーフラインからほとんど下がらないじゃないですか? あれみたいに常に攻撃的に出て、相手陣内で試合するようなサッカーを目指したい。せっかく素晴らしいメンバーが揃っているんだからこそ、『大学生でもここまで出来るのか…』というサッカーにチャレンジしてみたいんです。

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あと、今年のチームからは多くのプロ選手が生まれるでしょうが、プロになるだけではなく、入ってすぐに『使える選手』になっていて欲しいんですよ。だから選手たちには、現状で満足して欲しくないし、自分で考えることが出来るかしこい選手になってほしいんです。

守備の選手であれば、しっかり守ることも当然なのですが、常に『攻めるための守備』を考えてほしいし、攻撃の選手であればスペースの使い方を上手くしたり、ボールを動かしながら『相手を観察できる』選手になってほしい。それと、どんな選手でも『味方との適切な距離感』を取れる選手であってほしいですね。

今の選手たちってね、『教えられること』に慣れてしまっているじゃないですか? いつも『指示待ち』っていう状態で。でもね、ワンランク上の選手になりたいなら、人に言われてやるのではなく自分で考えてプレーしなきゃだめだし、人のため(人を活かすため)にどんなプレーをすべきかを考えられないとダメなんです。

また、試合のなかで相手の出来やクセ、主審のタイプがどんな感じなのか? ということを即座に読み取れる『技術』も身につけて欲しい」

中野総監督はそう語りながら、「まだまだですよ」と付け加えたが、自信が無ければ「まだまだです」という言葉は出てこない。

第2節の慶大戦のあと、選手は自主的にミーティングを開いて『このままじゃいけない』という危機感を持ったそうだが、誰に言われるのではなく自主的に行動し、そして即座に問題解決に当たろうとしたチームは、明らかにこれまでとは違う。そしてこの試合でも、終始落ち着いた試合展開を見せた流経大。

これは冗談抜きで「三冠」も夢ではないかも知れない…
この強さ、間違いなく本物である

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2011関東大学サッカーリーグ
第4節 @江戸川陸上競技場
流通経済大学 2-0 青山学院大学
[得点者]
68分椎名、84分山村(流経大)

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