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2011年1月9日 - 2011年1月15日

2011年1月12日 (水)

壁を乗り越えた末の栄冠

第89回高校サッカー選手権
決勝戦 @国立競技場
久御山 3-5 滝川第二
[得点者]
57分林、84分安川、86分坂本(久御山)
24・59分浜口、40・90+5分樋口、54分本城

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前半を終わってスコアは0-2で滝二がリード。

しかし、試合の内容が良かったのは負けている久御山であり、前半戦のメモを読み返しているうちに、9月4日に行われた全日本ユース、グループリーグ初戦の流経大柏 vs 滝川第二戦終了後の本田裕一郎監督の言葉を思い出してしまった…

「ワールドカップ効果なのかわからないけれど、あの大会以降、日本代表のようにガッチリ守るチームが増えましたよね。内容が悪くても、とりあえず後ろがゼロに抑えていればまずはよし。さらには得点能力の高い子がいれば、その子を活かすサッカーを徹底する。前に優秀な子がいるチームなんかは、『ウラに1本』だけで点をどんどん取って行ってしまいますからね…」

勝っているものの、決して「ベスト」と呼べる内容ではなかった前半の滝二。だが、途中から修正してくるところはさすがであり、その修正能力の高さがあるからこそ、ここまで勝ち切れてきたんだと実感させられた決勝戦。

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ということで、決勝戦を振り返っていきたいと思います。

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[滝川第二スタメン]
ーーー浜口ー樋口ーーー
ー白岩ーーーーー本城ー
ーーー谷口ー香川ーーー
平田ー亀岡ー土師ー濱田
ーーーー中尾ーーーーー

[久御山スタメン]
坂本ーー安川ーーー鍋野
ーーーーー林ーーーーー
ーー足立ーーー二上ーー
山田ー松下ー山本ー東松
ーーーー絹傘ーーーーー

キャプテン山本は決勝の舞台に立つことが出来たが、彼とCBを組む塚本が今度は出場停止となり、またもベストな形の最終ラインを組めなかった久御山。しかし、序盤は持ち味であるドリブル突破とショートパスの組み立てからペースを掴んでいく。

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開始直後、ボランチ足立がボールを奪い、自慢のパスサッカーで滝二陣内に進入。いきなりCKのチャンスを掴むと、続く4分には鍋野が素晴らしい飛び出しを見せ、5分にも安川がシュートを放ち、立て続けに滝二ゴールに迫っていく。さらには8分、CKのチャンスから山本、足立が連続してシュートを放つもGKとDFが体を張ってブロック。最後はこぼれ球を再び鍋野がシュートするも、枠を外してしまう。

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注意していたはずの「久御山の崩し」。流経柏のようにハイプレススタイルではない滝二にとって、序盤のラッシュをどう「いなす」か注目していたのだが、ピッチ上ではどうしていいのか迷ったままであり、その結果として受け身になり相手の猛攻に晒されてしまう。これまでの決勝戦の結果でもはっきり出ているが、先制点を奪ったチームの勝率は激しく高い。決勝という舞台ゆえに、普段以上のプレッシャーがかかるため、先制点は何よりも重要になってくるのだが、久御山としてはこの序盤のラッシュで点を奪えなかったのは痛かったし、滝二としては抑えられたことが今後の展開を大きく分けていくこととなる。

22分、久御山は足立ー鍋野の連携でチャンスを掴むのだが、途中でカットされてしまいカウンターからピンチを招いてしまう。奪ったら素速くサイドに展開するのが滝二の持ち味であり、この場面では樋口が左サイドに開き、ここでボールを受けると中へクロス。中央で待っていた本城がポストとなり、最後は浜口がDFを背負いながらもシュートを放ち、ワンチャンスを見事に活かして先制点を奪ってみせる。

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ここまで、攻勢にでていたのは久御山であったが、「決定力」の違いを見せつけた滝二が先制。しかし、久御山には残された時間は十分残っていることもあり、焦ることなく足立、二上のボランチコンビのボールキープからゲームを作ってゴールを目指していく。だが、前半30分を過ぎると徐々に試合の流れは変わりだす。前半の序盤から中盤にかけては、後ろからのパスが通っていた久御山だが、滝二のボランチ、香川、谷口が久御山のテンポに慣れだしたことから、パスカットする機会が増え出していく。

最終ラインからの組み立てが出来る久御山に対して、滝二は後ろから組み立てていくことは、それほど上手くはない。よって、滝二の生命線とは、谷口、香川の位置でいかにボールを奪えるか、またはセカンドボールを拾えるかと言うことに掛かってくる。運動量と展開力に長けた2人から、いかにいい展開が生まれるかで、滝二の攻撃のリズムは変わってくるのだが、やっと「心臓部」が目を覚ますことで、ダブルブルドーザーだけではなく、両サイドの本城、白岩も「活きた」攻撃を繰り出せるようになる。

ボランチが高い位置でボールを奪って、すぐにサイドに展開。両サイドがボールを持った瞬間から、ボールが入ってくることを信じて2トップは動き出す。確かに、序盤はプレスを前から掛けていくのか、ブロックを固めて相手の動きを止めるのか中途半端となり、なかなかボールを奪えずに苦しい時間帯が多かったのだが、高い位置でボールを奪えるようになれば、決定力の高いFWがいる滝二の「思うような展開」が生まれてくる。

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そして39分、またも一瞬の隙から縦に速い展開が入ると、今度は樋口が貴重な追加点あげ、前半のうちに2点のリードを奪い、自身の得点記録としても、立正大淞南の加藤と並ぶ7得点目をマークする。

内容的には、お世辞でも「良かった」と言えなかった滝二。しかし、それでも2点を奪ってしまうところはさすがであり、おもわず「本田監督の言葉」を思い出してしまう瞬間でもあった。

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さて後半だが、中途半端となってしまった守備面を、しっかりブロックを作って対応することを確認してピッチ立つ。すると、前半のような迷いの消えた滝二は本来の姿を完全に取り戻す。47分に樋口がドリブル突破からシュートを放つと、続く48分にも濱田のクロスに樋口が頭で合わせて3点目を狙っていく。そして53分、右から入ったクロスによりゴール前で混戦となり、後ろから入ってきた本城が右足アウトで見事に流し込んで3点目を奪う。

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これで3-0となり、誰もが勝負ありかと思われた。しかし、久御山の松本監督も、選手も全く諦めていなかった。リスタート前に円陣を組み直し、キャプテンの山本は「まだ時間があるし、1点とれば流れが変わるからまだわからない。絶対諦めずに行こう」と檄を飛ばすと、選手は息を吹き返し56分に坂本の放ったシュートのこぼれ球を林が押し込んで反撃体勢に入る。

だが、夏のインターハイ決勝で、1点リードを保ったまま終盤に突入し、優勝を確信したあとから市立船橋に追いつかれて、延長戦で3点を奪われて試合をひっくり返された苦い経験を持つ滝二は、守りを固めるのではなく4点目を果敢に狙っていく。1点取り返して意気の上がる久御山だったが、前がかりになっていた最終ラインをのウラを狙われ続け、59分に香川から出た縦パス1本に浜口が反応し、これを見事に決め再び3点差となる。

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その後も、ポゼッション率でこそ久御山が上回るものの、奪ってから素速く背後のスペースを突く高速カウンターでチャンスの山を築き上げていく滝二。61分、68分、74分にも決定機を迎えるのだが、GK絹傘の必死のセーブもありスコアは動かない。

しかし、この日も準決勝同様に80分を過ぎた辺りから運動量が一気に低下していく滝二。80分にFKを与えたことを皮切りに、81分に坂本がシュートを放ち、一連の攻撃からCKを奪い攻勢を強める久御山。84分に坂本のドリブル突破から最後は安川が押し込んで2点差。さらに直後の84分、疲れの見える山田に替え中野を投入し、攻撃のギアをさらに加速させ、86分には安川ー坂本の連携から3点目を奪い、ついに1点差に詰め寄る。

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その後も攻め続ける久御山。電光掲示板の時間表示が90分となろうとしたときに、ゴール前に攻め込んだ久御山の選手と接触し、GK中尾をが負傷して一時試合は中断。それと同時に90分が過ぎ、AdditionalTimeが「5分」と表示されざわめきが起こる。中尾が治療していることもあり、実際には5分以上時間があることは確実であり、場内には「追いつくかも…」という雰囲気も流れ出す。

だが、そんな思いを打ち破ったのは、またも「ダブルブルドーザー」であった。

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残り時間がどれだけあるかわかない時間帯に、樋口はゴール前で相手ボールをカット。そしてGKまで抜き去ってからシュート。ボールはゴールに吸い込まれていき、試合を決定づける5点目を奪い、チームに勝利、そして優勝をもたらし、さらには単独得点王となる、大会8得点目を記録して決勝戦の幕は閉じた。

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かつて、全日本ユース(2006年大会)で優勝した経験を持つ滝川第二だが、インターハイ、選手権と言った高体連の大会での優勝はなく、冬の選手権は今回を含めて16回出場し、そのうち3度準決勝まで進んでいるが、その先までは勝ち進めていなかった。そして今年は夏のインターハイで初めて決勝まで進出。だが、決勝では詰めの甘さと精神的な弱さから優勝を目前で逃してしまい、立て直しを誓った全日本ユース初戦では、流経柏に1-7と屈辱的大敗を喫するなど、その道のりは決して平坦ではなかった。

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兵庫県予選決勝の報徳学園戦では、谷口や浜口、本城が口を揃えて「みんなが勝手なプレーに走ってしまい、チームがばらばらとなり最悪なゲームをしてしまった」と振り返るほどの大苦戦を経験。PK戦の末、やっとのことで本大会に出場してきたが、その時はさすがに栫(かこい)監督も怒りを露わにし、渇を入れ直したがこれがチームの結束を固めることとなる。

新チーム結成時に、今年の一文字を「志」と決めたのだが、冬の選手権出場権を得るまでは「十一人の心」は一つになっていなかった。しかし浜口を中心に、県大会の内容を振り返ることでチームに本当の和が生まれ、やっとスローガンどおり「志」という一文字に変わっていった。大会前、「ダブルブルドーザー」ばかり注目されてきた滝二だが、2人の存在以上に、彼らを活かそうとする9人の力が想像以上に大きかったのである。

流経柏のような、ハイプレスサッカーをする訳でもない。アーセナルに入団できるほどの逸材がいる訳でもない(後に樋口は清水入団が決定するが…)。さらには柴崎岳のような、将来を嘱望される司令塔がいる訳でもない。今年の滝川第二とは、自分たちが出来るサッカーをしっかり理解し、それを表現したまでに過ぎないのだが、一発勝負の大舞台で「自分たちらしさ」を出し切ることは、実は非常に難しいことであり、それが出来たからこそ優勝という栄冠にたどり着くことが出来た。

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ピンチが続いても、なんとか耐えられる技術とメンタルを身につけた滝二。夏から冬にかけての一番の成長といえば、「守りきる」という意識から、「1点取られたら2点取り返す」という攻めの意識を全員が持てるようになったこと。さらには「個」の力で勝つのではなく「和を持って征す」という言葉のように、チーム一丸となって戦う重要性を改めて理解できたことは、非常に大きかったのである。

波戸康広、加地亮、岡崎慎司などの日本代表選手から、韓国代表経験のある朴康造など、名だたる選手を輩出しているの滝二だが、不思議なまでに選手権優勝とは縁がなかった。さらに2006年度をもって、長らく滝二を指導してきた黒田和生氏が退職し、これまでコーチとして指導を行っていた栫裕保氏が監督に就任。しかし、その翌年は選手権出場権を得ることが出来ず、「滝二は終わった」とまで言われた。それに対して栫監督は「そんなことないぞ」と思いながら闘志を燃やし、過去も今も、滝二のサッカーは「何も変わりはない」と信じてこれまでやってきた。

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偉大なる先輩たちや、名将とよばれた黒田氏でもなし得なかった、選手権優勝をついに果たした今年のチーム。選手たちは先輩たちが出来なかった優勝を実現し、歴史を塗り替えることに成功し、そして監督自身も「ないです」と否定するかも知れないが、「黒田監督」からの呪縛から解放されたのではないだろうか? しかし、「勝った(優勝した)からと言って、それでOKだと思ってはいない」と試合後に語ってくれた栫監督。

すでに「次」を見据えており、「高校生として大切なことを(1、2年生に)もう一度しっかり指導していきたい」と語る。

偉大なる先輩を超え、黒田監督の影からも解放された滝二。しかしこれからは、ディフェンディングチャンピオンとして「追われる立場」となるのだが、新時代に突入した滝二であれば、そのプレッシャーをしっかり乗り越えることは出来るはず。また、84回以降、毎年初優勝校が生まれている冬の選手権だが、79、80回を制した国見以来、連覇を達成した学校は現れてはいないのだが、滝二は戦後の大会において、7番目の連覇達成高(過去の連覇達成高:浦和、浦和市立、藤枝東、浦和南、帝京、東福岡)となれるのかにも注目していきたい。

2011年1月 9日 (日)

頂点を目指す『志』

第89回全国高校サッカー選手権
準決勝第二試合 @国立競技場
滝川第二 0-0(PK7-6) 立正大淞南

第一試合に引き続き、こちらも90分間で決着が付かなかったこの試合。ただこの試合、前半戦は滝二がペースこそ握っていたものの、互いに緊張と疲労から動きが堅く、決しておもしろいゲームとは言えなかった。

[滝川第二スタメン]
ーーー浜口ー樋口ーーー
ー恵ーーーーーー本城ー
ーーー谷口ー香川ーーー
島ーー高原ー土師ー濱田
ーーーー下出ーーーーー

[立正大淞南スタメン]
ーーー池田ーー新里ーーー
ーーーーー徳永ーーーーー
ー小田ーーーーーー加藤ー
ーーーーー稲葉ーーーーー
中村ー竹内ー中村謙ー椎屋
ーーーーー三山ーーーーー

これまでの試合でも、樋口、浜口の2トップが揃って交代することは少なくはなかったが、それは「お役ご免」といったお気楽な状況ではなく、限界を超えてしまっては次に使えないというギリギリの選択の末の交代であり、「ダブルブルドーザー」と呼ばれる強力2トップは満身創痍の状態で最後の大会に挑んでいた。

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この日も2人は相手ディフェンスラインの裏を狙う動きを果敢に見せるのだが、なかなかゴールをこじ開けることは出来ない。さすがに相手2トップを警戒する淞南守備陣は、しっかり2人の動きに対応。こうなると、ゲームを組み立てる香川ー谷口というボランチコンビの動きが重要となってくるのだが、彼らも積極的に前線に顔を出し、果敢にゴールを狙っていくのだが、今度がゴールマウスを守る三山が立ちはだかり、前半はスコアレスで折り返す。

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前半はまったくと言っていいほどチャンスを作れなかった立正大淞南。後半は「早めに自分たちから仕掛けてもっとアグレッシブに行こう」と選手にアドバイスしてピッチに送り出した南監督だが、流れの変わらない展開を打破するために選手交代に着手する。前半、ほとんど存在感が消されてしまっていた新里に替わって11番福島を52分から投入。この福島を右サイドに入れ、今大会7得点の加藤をFWに入れて勝負に出る。

すると53分、57分に立て続けにチャンスを作り、58分にはトリッキーなCKで「あわや」の場面を作り出す。これで流れは淞南に傾いたかと思われたが、滝二もここから反撃。62分、FKからの流れで放った谷口のミドルはポスト直撃。70分を過ぎると「勝負どころ」とばかりに滝二は猛攻を仕掛ける。

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72分のFKからのチャンスを皮切りに、75分には樋口のヘディングシュートがゴールを襲い、77分にもまたも樋口がゴールを狙うがGK三山がファインセーブで得点を与えない。79分にもCKからゴール前に攻め込むも、またも三山が立ちはだかり滝二はどうしても得点を奪えない。

すると、80分を過ぎたあたりから、完全に「ガス欠」状態となってしまった滝二。そんな相手を尻目にここから淞南の時間帯が始まる。85分、小田が左に展開し中へクロス。これをゴール正面で池田が頭で合わすも枠を取らえられず。そして87分、この試合のハイライトが訪れる。

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池田が中央でボールを持つと、これと同時に加藤も抜群のタイミングで前へ走り出す。その動きを見た池田が縦のスペースへ絶妙のスルーパスを送ると、加藤はオフサイドギリギリのタイミングで抜け出し、GKまで見事にかわすと彼の目の前には無人のゴールしかなかった。

あとはシュートをゴールに流し込むだけだった…

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しかし、無情にもシュートはわずかに枠の外。この日、立正大淞南にとって最大の決定機だったがこれを決めきれられず、第一試合に引き続き、この試合もPK戦に突入する。

PK戦では、一度は5人目の段階で滝二が決めれば勝利という場面まで行くのだが、ここは三山がまたもゴールに立ちはだかりサドンデスへ。6人目はともに決め、勝負は7人目。滝二のキッカー白岩が外してしまい、これを決めれば立正大淞南、いや、島根県勢初の決勝進出という場面だったが、今度は下出がシュートをストップ。

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そして最後は、立正大淞南9人目のキッカー椎屋のシュートが無情にも右に外してしまい滝川第二が決勝戦への切符を掴んだ。

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試合終盤でこそ、相手ゴールに迫り「あわや」のシーンを作り出した立正大淞南だが、試合を通して主導権を握っていたのは、やはり勝利した滝川第二であったことは間違いない。

今年の滝川第二と言えば、自慢の強力2トップばかりクローズアップされるが、彼ら2人を際だたせるサイドプレーヤーに、中盤のコンダクターである香川、土師の存在を忘れてはならない。また、2トップが沈黙したこの日、勝利を引き寄せたのは最後まで我慢し続けた最終ラインであり、まさに全員で勝ち取った決勝戦切符とも言えた。

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さて試合後だが、キャプテンの浜口やエースの樋口は「自分たちが滝二の歴史を変えたかった」と声を揃えた。過去3回滝二は国立の舞台を経験しているが、すべて準決勝で悔しい思いをし続けてきた。だからこそ、歴史を変えたい、そして先輩を超えたいという思いは強かった。

そして、滝二は毎年チームのテーマとなる一文字を掲げているが、今年の一文字は「志」である。キャプテンの浜口は「サッカーは11人でやるから、『十一人の心』と書くこの文字しかないと思って決めました。この仲間とサッカーが出来るのは、次(決勝)が最後になりますが、この言葉のようにメンバーの心が一つになって最後は笑って追われるようにしたいです」とコメントしてくれた。

世間的には、ダブルブルドーザーばかりに注目が集まるかも知れない。しかし、今年の滝二の強さの秘訣とは「みんなの心」が一つになって、目標を目指しているからこそ強いのではないだろうか?

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さて、明日に迫った決勝戦だが、大会前から優勝候補の一つに挙げられていた滝川第二は順当に勝ち上がってきたが、その相手は誰もが思いもよらなかった京都府代表の久御山となり、予想外の「関西対決」となった。

当然ながら、どちらが勝っても初優勝となるが、久御山の「バルサスタイル」が勝つのか、滝二の前からプレッシングしていくサッカーが勝つのか興味深いところ。

栫監督は久御山のサッカーを、関西弁でいう「ややこしいチーム」と評したが、型にはまったプレッシングサッカーではなく、ドリブルやパスワークを多用した変幻自在な相手のサッカーに、滝二はうまく対応できるかがポイントとなってくる。

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序盤は相手3トップの動きに翻弄される時間もあるだろうが、チームが一つになって辛抱する時間帯を乗り切れれば、悲願の初優勝も夢ではないはず。「志」の言葉の下、みんなの心が一つになれるかにも注目したい。

久御山、PK戦を制して決勝へ

第89回全国高校サッカー選手権
準決勝第一試合 @国立競技場
流通経済大柏 2-2(PK2-3) 久御山
[得点者]
11分安川、74分坂本(久御山)
62分杉山、88分進藤(流経柏)

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大前(清水)、名雪、中里、村瀬、比嘉、小島、上條(流経大3年)や田口(名古屋)などを擁した高校2冠達成時よりも、今年のチームの方が強いと評する本田監督。しかし、ここまでの成績は関東プリンス1部2位、インターハイ3回戦敗退、全日本ユースベスト8と、今年度高体連最強チームと呼ばれる割りには、やや物足りない結果に終わっていた流経柏。だが、最後の大会である選手権ではしっかり勝ち残り、3年ぶりに国立のピッチへ帰ってきた。

流経柏が勝ち上がってきたブロックには、山梨学院、国見、大津、前橋育英、神村学園、室蘭大谷、四中工と全国的に強豪として知られるチームが揃い、最も勝ち抜くのが難しいと思われたブロックだが、優勝候補と呼ばれるだけあり見事に勝ち抜いてきた。

それに対して、1回戦で今大会注目のストライカー・宮市亮を擁する中京大中京に競り勝ってから一気に波に乗り、ノーマークから勝ち上がってきた久御山。そんな絶対本命とノーマークの戦いは、予想外の展開で幕を開ける。

両者とも、キャプテンであり守備の要を欠いた状態で始まった準決勝。流経柏は前日練習で増田繁人が競り合いの際の着地で足首を捻挫してしまい、志願してベンチ入りしたもののスタメンにはその名前は無かった。対する久御山の要である山本大地は、累積警告のため無念の出場停止であった。

[流経柏スタメン]
ーーーー田宮ーーーーー
進藤ーーーーーーー河本
ーー宮本ーーー富田ーー
ーーーー古波津ーーーー
熊田ー本橋ー鈴木ー八角
ーーーー緒方ーーーーー

[久御山スタメン]
坂本ーー安川ーーー鍋野
ーーーーー林ーーーーー
ーー足立ーーー二上ーー
山田ー松下ー塚本ー東松
ーーーー絹傘ーーーーー

さて試合だが、初戦で骨折してしまった中西、ケガのためベンチスタートなった増田という2人を欠く流経柏最終ラインがどうしてもピリッとしない。久御山3トップの動きを捉えられず、さらには足立ー二上のボランチコンビにもいいよういなされてから展開されてしまい、厳しい立ち上がりとなってしまう。

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また、この日は中盤での起用となった宮本だが、普段とは違うポジションのため、試合の流れから消えてしまう場面も多く見られ、これが相手の1年生アタッカーである林祥太に自由を与えてしまう要因に繋がっていく。

序盤から久御山は足立ー坂本の左サイドでの連携が冴え渡り、ここからチャンスを広げていくのだが、先制点は左からではなく真ん中から塚本の縦パス1本から生まれる。11分、最終ラインから縦パス1本が入ると、CF安川はうまく鈴木、熊田の間をすり抜けてそのままシュート! これが見事に決まって開始早々に先制点を奪う。

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流経サッカーの象徴である「鬼プレス」にエンジンが掛からず、球際の争いもこれまでの3試合に比べると力強さが見られない。「何かが違う」と感じてしまう流経柏にサッカーに対し、自分たちらしい繋ぐサッカーだけではなく、果敢なドリブル突破で相手を凌駕した久御山。

本田監督は21分、早くも最終ラインの修正をするために1枚目の交代カードを切らざるを得なくなり、鈴木に替わって竹原を投入。センターラインの引き締めを図ると同時に、守りのリズムからチーム全体の立て直しを着手していく。

最終ラインが落ち着きを取り戻すと、徐々に攻撃のリズムが生まれてくる流経柏。しかし、それでも普段のような連携や流れる展開は少なく、強引な突破ばかりで効果的な攻撃には結びついていかない。そんなもどかしい展開にベンチは吉田眞紀人の準備に入り、43分、川本に替わってついに投入。吉田がトップ下に入り、富田が1列下がって古波津とのダブルボランチとなる4-2-3-1システムに変更する。

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後半に入ると、より攻勢に出てくる流経柏。1点ビハインドの状況が、やっとチームを本気にさせたのか、普段のような鬼プレスも復活し、高い位置で奪って早い展開を仕掛けて久御山ゴールに迫っていく。

そして本田監督は53分に早くも3枚目のカードを切って勝負に出る。この日、精細を欠いていた宮本に替え、杉山を投入しシステムを一番「流経らしい」4-4-2に変えていく。

ーーー杉山ー田宮ーーー
ー進藤ーーーーー吉田ー
ーー古波津ー富田ーーー
熊田ー竹原ー本橋ー八角
ーーーー緒方ーーーーー

2トップに変更してからの流経柏は完全にペースを掴み、55分から怒濤の連続攻撃で久御山をゴール前に釘付けにする。そして62分、吉田眞紀人がキラリと輝く才能を見せつけて、同点ゴールを導き出していく。

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右サイドでボールを持った吉田がペナルティアーク付近までドリブルで持ち込むと、左前のスペースへスルーパス。ここに走り込んだ杉山が見事に流し込み、ついに同点に追いつく。

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同点に追いついたことで、精神的、体力的に優る流経柏の勝利が近づいたかと思われたが、久御山は粘り強かった。同点に追いつかれた後も、なんとか猛攻に耐えるディフェンス陣。時間が過ぎていくと同時に、最終ラインから繋ぐのではなく、ただクリアするだけになっていったが、その粘りがラッキーなゴールを呼び込んでいく。

55分以降、チャンスらしいチャンスのなかった久御山だが、73分に得たセットプレーからの2次展開から坂本がシュートを強引に放つと、これが流経柏DFの足に当たってコースが代わり、流経柏にとってはアンラッキー形でそのままゴールに吸い込まれていった。

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残り時間が15分という時間帯で、再びリードされた流経柏。これまで坂本、足立のアタックにより前に出られなかった八角が、80分以降どんどん前で勝負するようになり、攻撃に厚みを増していく。さらにケガを押しての出場となった吉田も懸命のプレーで攻撃陣を牽引。82分に杉山、85分に熊田、86分に田宮とたたみ掛けるようにシュートを浴びせていく流経柏。そして88分、左サイドでボールを持った進藤が、ドリブル突破から角度のない位置から強引にシュート! これが決まって土壇場で同点に追いつく。

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2-2のまま90分は過ぎ、残された時間はAdditionalTimeの3分間のみとなったが、この時間だけで両チームとも決めることは出来ず、決勝切符をかけたPK戦へ突入する。

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PK戦に関しては、実力よりも「運」の方が左右されるのだが、流経柏のGK緒方は関大第一戦のPKビデオを見ていたことで、その動きの印象が頭に残っていたことにより考えすぎとなってしまい、前橋育英戦のようなスーパーセーブを見せることは出来なかった。また、久御山の方は「PKでラッキー!」と思える余裕が心にあったことが、勝利をたぐり寄せた格好となった。

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試合後の本田監督は「増田不在」を理由にしてはいけないが…と語ったが、正直なところ、誰の目にも増田不在の大きさを感じさせる試合となってしまった。また、これまでの大会では吉田がいなくとも鋭いプレスから、速い攻撃で得点を奪ってきたが、今大会では吉田の個人技、センス頼るシーンが目に付いてしまった。

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さらには、中西のアクシデントなどからベストを組めない不運もあったが、春先から「レギュラーは30人です」と言った分厚いはずだった選手層だが、大一番でその力が発揮されなかったのはなんとも残念である…

それでも本田監督は「これからも指導法やスタイルは変えない」と明言。確かに、実力では間違いなく今年一番のチーム(もしくは一番を争うチーム)であったことは間違いない。しかし、それが大会で優勝するということには結びついていかないもの。勝負というのは「時の運」もあるのだから。

2年生の古波津、宮本、竹原などは「またここに戻って来れるように頑張ります」と表彰式のあとに語ったが、本田監督とともに、ハイプレス、ハイスピードサッカーをもっと追求した姿を4月からまた見せて欲しいところである。

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さて、決勝に駒を進めた久御山だが、京都代表としては1992年(71回大会)以来18年ぶりの決勝進出。当然、久御山としては初の決勝進出。さて、準決勝は出場停止だったキャプテン山本は、決勝のピッチに立つこととなるのだが、今度はコンビを組む塚本が出場停止と、またも頭の痛い悩みが残った久御山。

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しかし、攻撃陣は出場停止者がいないこともあり、準決勝と同じメンバーで戦える久御山。準決勝で流経柏を大いに苦しめた「ドリブル」が、また国立のピッチで躍動すれば栄冠を手にすることも不可能ではないはずだ。

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