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2011年5月1日 - 2011年5月7日

2011年5月 6日 (金)

激闘再び、大学界の茨城ダービー

2011関東大学サッカーリーグ
前期第1節 @西が丘
筑波大学 2-3 流通経済大学
[得点者]
60分赤崎、62分瀬沼(筑波大)
21分堀河、65分征矢、66分中美(流経大)

開幕が延期されていた関東大学サッカーリーグだが、今週から2011シーズンがスタート。そして開幕から、いきなり筑波vs流経という大学サッカー界の「茨城ダービー」が実現し、今回の対戦も多分に洩れず、激しい撃ち合いとなった。

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[筑波大スタメン]
ーーー赤崎ー瀬沼ーーー
ー曽我ーーーーー上村ー
ーーー谷口ー八反田ーー
山越ー石神ー松田ー不老
ーーーー三浦ーーーーー

[流経大スタメン]
堀河ーー征矢ーーー椎名
ーーー河本ー関戸ーーー
ーーーー中里ーーーーー
比嘉ーー乾ー山村ー天野
ーーーー増田ーーーーー

小澤(現水戸)、森谷(現横浜Fマリノス)、原田(現仙台)、須藤(現Honda FC)といった主力選手が卒業した筑波大だが、中心選手として期待される八反田、3年生になった瀬沼、そして2年後に間違いなく「争奪戦」の対象になるであろう赤崎秀平と谷口彰吾や、成長著しい上村、曽我といった有力な2年生がチームに残っており、メンバー構成的に大きな変化を特に感じなかったし、大方予想通りのメンバーだった筑波大。

対する流経大だが、昨シーズンが結果的に3年生主体となったこともあり、ほとんどメンバーは変わっていないが、システムを中盤がボックス型の4-4-2から、攻撃的姿勢を強めた1ボランチ(アンカー)の4-3-3システムに変更して開幕戦に挑んできた。まあ「ほとんど変わらない」とは書いたものの、乾、堀河の両名は4年生でありながらも大学リーグは初出場であり、どこまでやれるのかという点や、昨年導入を模索したが、噛み合わなかったこのシステムが実践で通用する(噛み合う)のか? という部分では未知数だった。

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試合は序盤から攻め合う展開となったのだが、ペースを握ったのは流経大。

今年の流経大は前線に人数を増やしたことで、自分たちから積極的に仕掛け、守備においても前からどんどん行こう!という姿勢を全面に押し出している。しかしだ、常に「イケイケドンドン」のサッカーをするのではなく、落ち着くところ、我慢するところでは山村や中里の位置でじっくり時間を使いながらボールを回し、相手の動きを伺いながら隙を見つけ、「行ける」と判断した時から一気にスピードを上げていく。

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昨年の試合ではほとんど見られなかった「緩急」を、上手く使い分けるようになってきた流経大。前から行くときは行く、じっくり構えるときはしっかり見る。そんなの当たり前だろ? と思われる方は多いはずだが、プレスが速くなり、どのカテゴリーにおいてもスペースの潰し合いが厳しくなった現代サッカーにおいて、そんな「当たり前」を実践することは見ている側が感じるほど簡単ではないのだが、開幕戦での流経大はそれをスムーズにやってのける。

当然ながら、ボールをキープすることに長け、長短のパスも正確であり、視野の広さが自慢の中里、山村といったタレントが後ろに控えているからできることでもあるのだが、前線で速い攻守の切り替えを繰り返す堀河、椎名の動きがあるからこそ、4-3-3というシステムが活きてくるもの。

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そしてゲームは、新しいシステムに挑戦した流経大にどんどん傾いていき、21分、関戸から前線の征矢を経由して、ゴール前やや左に位置していた堀河にボールが渡ると、少し中に切れ込んでからシュート! これが決まって流経大が先制。これまでの3年間は、ドラゴンズ、JFLチームでプレーしていた堀河だが、抜擢となったこの試合で見事に期待に応え、貴重な先制点をたたき出す。

この1点で流れをさらに引き寄せた流経大は、試合を優位に進めていく。3トップは攻撃だけではなく、守備面でも大きな働きを見せ、高い位置からプレスを掛けていくことで筑波大はラインを下げざるを得ない形となる。さらには、押し込まれた状況の中で守備ラインの混乱が続いたこともあり、風間監督は25分過ぎからやむを得ず谷口と石神のポジションを入れ替えを行い守備の修正を図っていく。

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すると、谷口が最終ラインに入ったことで落ち着きを取り戻した筑波大は、やっと司令塔の八反田、そしてサイドで起点となる上村、曽我にボールが入るようになり反撃の機会が生まれる。そして32分に瀬沼、35分は赤崎と連続して惜しいチャンスを作りだし、やはり強力2トップにボールが入れば筑波大の攻撃は危険であるということを改めて証明する。

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後半戦だが、前半終盤から筑波大がペースを盛り返したこともあり、一進一退の攻防が再び続き、両チームとも序盤からいい形でシュートまで持ち込む場面を作っていく。そんな攻防の中で、ハーフタイム時に「CBとボランチの前のスペースをしっかりケアしないと…」ともらしていた川澄コーチの懸念が案の定表面化していく。

前からのプレスがはまっているうちは問題なかったが、2トップにボールが入ればやはり破壊力満点の攻撃を繰り出してくる筑波大。1ボランチの4-3-3とは、主導権を握っている時間帯であれば非常に効果的だが、守勢に回ったときには守備の枚数が少ないために危険も伴う。さらに相手2トップは、昨シーズン21得点を叩きだしたリーグ屈指のコンビでもあり、流経大としては「いかに2人とボールが入らないようにするか?」が守備のポイントであったが、渡ってしまうとやはりピンチを招いてしまう。

そして、トータルタイム60分を迎えようとした頃から、この試合のクライマックスといえる「白熱の6分間」が始まる。

前半はほとんど攻撃に絡むことのなかった筑波両サイドバックが攻撃に絡みだし、60分には石神ー山越という守備の人がチャンスを作り、最後は中に入ってきた赤崎が蹴り込んでついに同点。川澄コーチが「注意すべき」と言っていたエリアに危険人物を入れてしまえば、この同点ゴールはある意味、生まれて当然の結果でもあった…

ここまでの60分間は、まさに「思い描いたとおり」の展開を続けていた流経大だが、この失点により完全に浮き足立ってしまい守備が混乱。キックオフのリスタートをミスから赤崎に簡単に奪われ、そのままシュートまで持って行かれてしまう。決定的場面を迎えたが、ここは増田のファインセーブで難を逃れる流経大。しかしCKのピンチが続き、一旦はクリアするもののセカンドボールを谷口に奪われ右に展開される。そしてボールを受けた右の不老はそのまま縦にドリブル突破を図り中へクロス。そして中で「フリー」で待っていた瀬沼にドンピシャのタイミングでボールが入り、これを難なく決めてあっという間に筑波大が逆転に成功。

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それにしても、この場面、クロスを上げられたことは致し方がないとしても、中の瀬沼がフリーだったのは激しくいただけない… 

さて、たった2分間で逆転を許してしまった流経大だが、試合はこれで終わらない。そう、いつも「二転三転」が当たり前となっているのが両者の対戦だ。さらには、ここからの流経大は昨年と大きく変わっており、脅威の底力というか勝利への執念をギラギラと見せつけることとなる。

1点ビハインドとなった流経大ベンチでは、いくつかの交替プランを用意していた。一つは単純に攻撃のテコ入れを図るための選手交代を模索し、もう一つは山村を最終ラインから前(ボランチ、もしくは前線のターゲット)に置き換えるパターンの2つを考えていた。そしてベンチは、最初のカードとしてサイドアタックから中に切れ込んで勝負ができる中美を投入。

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すると、交替出場で入った中美がファーストタッチで左の比嘉に絶妙のボールを入れて展開。すると、ボールを受けた比嘉は不老を抜き去って中へ鋭いクロスを入れる。これにゴール正面に走り込んだ征矢が体をなげうって渾身のダイビングヘッド一閃! あまりにも見事であり鮮烈な同点ゴールが決まって、試合は再び振り出しに戻る。

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だが、クライマックスはまだまだ続く…

鮮烈過ぎるダイビングヘッドの余韻がさめやらぬ場内だが、最終ラインの天野は落ち着いて前線の征矢に向けてフィードし、2列目の河本が征矢にボールが入るのと同時に動き出して、タイミング良く追い越して縦でボールを受ける。そしてこれをテンポ良く左斜め前にいた中美に繋ぐと、躊躇無く中美はゴールに向かって突進し、DF2人を背負いながらも強引に右足でシュート!

征矢のゴールも素晴らしかったが、この中美のゴールはまさに圧巻だった…

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たった6分間の攻防だったが、6分間にこの試合のおもしろさの全てが詰まっていたと言っても過言ではない。「守備がザルなんだろ?」と言われるかも知れないが、それを否定する気はない。だが、両者が繰り出した攻撃のクオリティは非常に高いものであり、守備にケチをつけるよりも攻撃の素晴らしさを素直に賞賛したい。

筑波の2得点は「強力2トップ」ならではの決定力が炸裂し、流経大の2得点はシュートもさることながら、フィニッシュまでの実に素晴らしい流れは、カテゴリーを超え、サッカーを愛する人ならだれでも唸るものであった。

また、再びリードを奪ってからの流経大の戦い方は憎らしいほど冷静であり、そしてしたたかで、チームとして「まとまり」を強く感じさせる。

ベンチは当初、天野をCBに回して右サイドに誰かを入れるか、中里と山村の位置をそのまま入れ替えるというプランを考えていた。しかし、あっという間の逆転劇でプランを変更し、しばらくはピッチ上の様子を見ることにしたのだが、ピッチの上の選手たちは中野総監督が想像する以上に「大人」であり、監督やコーチに指示されるのではなく、自分たちでどう試合を乗り切るかを考えていたのだ。

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そして彼らの出した答えは、アンカーシステムの4-3-3ではなく、中盤の底を2枚にする4-2-3-1システムに自主的に変更し、筑波大の動きにしっかりと対応していく。また、ラスト2枚で投入された4年生の保戸田、村瀬も自分たちの役割を理解した上で落ち着いたプレーを見せ、試合をそのままクローズさせることに貢献。

[流経大最終形]
ーーーー征矢ーーーーー
保戸田ー椎名ーーー中美
ーーー中里ー村瀬ーーー
比嘉ーー乾ー山村ー天野
ーーーー増田ーーーーー

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上記のとおり、クライマックスは60〜66分の6分間であったが、試合全体を通して高いクオリティが維持されの、濃密な90分間となったこの試合。昨年同様開幕戦に勝利した流経大だが、昨年と比べて内容の違いは明らかであった。悪い流れながらも、相手とのレベル差が明確に存在していることで、時間が経つにつれてなんとなく点が取れてしまった昨年の開幕戦。

それに対して、試合中盤で集中が途切れる瞬間はあったものの、スキルの高い攻撃、高い戦術眼、そして何よりも「絶対に負けない」という強いメンタルがチームに備わって、ライバルを相手に激戦を制したことは今後に勢いを付ける結果となった。

キャプテンに就任した増田は「昨年の不甲斐ない結果をシーズンオフに見つめ直し、自分たち4年生がしっかりリーダーシップを発揮して、一丸となって戦えるチームを作ろうと思い準備してきました」と語り、比嘉は「もう1回このメンバー(流経柏で優勝した仲間)と日本一になろうと誓い、必死になってやってきた。昨年は悔しい思いをしたので今年は三冠は狙うつもりで頑張ります」と語ってくれた。

また、中里は「今日はホリ(堀河)や大知(乾)が初めてだったので、みんなで彼らをしっかりサポートし、盛り上げながらプレーしてきた」と語るなど、チームの雰囲気も非常にいいものとなっている。やはりチームというものは、頼るれるリーダーやしっかりした先輩がいれば大きく崩れることはないのだ。

そして中野総監督も「彼らにはもう一度『結果(日本一)』を出せるようにしてあげたいし、結果が出せるとも思っています」と語りながら、にこやかな表情でこう続けてくれた。

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「今日の試合はね、結果もそうなんだけど指導者として本当に最高の試合だったと思います。勝ったことには大いに褒めますよ。筑波さんが今季最強だと思っていたから、その相手に3点とって逆転勝ち出来たこと、そしていい攻撃の形が出来たことは大いに褒めます。ただね、守備面に関して2失点したことは反省です。勝って手放しに褒めるだけではなく、ちゃんと修正しなければいけない課題が誰にでもわかる形で出たので、締めるべき点をしっかりミーティングで詰めていきたいと思ってます」

そして比嘉の口から飛び出した「三冠宣言」について中野総監督は、勝負は時の運なのでそう簡単に言えませんと口を濁したが、1年間の集大成となる「インカレ」はどうしても取りたいとコメント。ここ数年、大学サッカー界の強豪校として名を上げ、40人以上のJリーガーを産んでいるが、インカレ(大学選手権)制覇がまだない流経大にとって、どうしても欲しいタイトルなのだ。

しかし、今年のチームには山村、増田、比嘉、中里といった、Jクラブが熱視線を送る金の卵だけではなく、村瀬、保戸田、天野、小島、上條、名雪などと言った高校二冠経験者が多数揃い、チームワークも抜群である。経験という面でも、ほとんどのメンバーが1年からトップ、もしくはJFLチームでもまれてきているメンバーばかりであり、彼らの世代に掛かる期待は例年になく大きいものになっている。

昨年、大きく期待を裏切ってしまった流経大だが、「リベンジ」はここからスタートする。

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さて、試合に敗れた筑波大風間監督は試合後、予想はしていたのだが、やっぱり…と思っていたコメントが帰ってきた。

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「つまんない試合だったね。相手のシステムがとか、ウチがどういう形とかじゃなくてさあ、自分たちのミスが多すぎ。あんなミスばっかりしてたら試合になんないよ。相手にビビッているというかさあ、ミスすることにビビっているからプレーも中途半端になる。おもしろかった(思い通りに出来た)のは(得点が入った)5分間だけだよ。それ以外はダメ」とバッサリ。

こういう試合になったことで、上記のようなコメントが出てくるだろうなあ…とは思っていたのだが(笑) しかし、そうは言っても筑波大が繰り出した攻撃のクオリティは、時として流経大よりも素晴らしい場面もあり、赤崎、瀬沼の2トップはバイタルエリアでボールを受ければ、今年も脅威になることを大いに印象づけた。また、中心選手となった八反田は試合後「全然ダメでした…」と語ったが、小澤、森谷の抜けた穴を感じさせないゲームメークを披露。

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さらには注目の新入生、車屋紳太郎(大津高卒)を早くも使ってくるなど、攻撃陣のクオリティの高さは十分示した筑波大。しかし守備面に関しては、統率が取れるようになるまではもう少し時間が掛かりそうだ。この日は石神ー松田というコンビでスタートしたが、すぐに石神と谷口を入れ替えるなど、現状の最終ラインに関してはまだまだ不満の風間監督。選手それぞれのポジションに関して断言しなかったが谷口の能力は高く評価しており、本心はボランチ選任で使いたいところ。

今季の筑波大が安定した戦いをするためにも、一日も早く核となるCBが出てくることを願いたい。

2011年5月 4日 (水)

町田、2試合連続の爆勝

JFL前期第9節 @町田市陸
町田ゼルビア 5-1 FC琉球
[得点者]
4・26分勝又、54分鈴木、76分ディミッチ、82分北井(町田)
22分大澤(琉球)

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長崎、Honda FCに連勝し、最高の形と言って良い開幕スタートを切ったFC琉球。実はトルシエが深く絡んでいた2008年以降、このチームを見てはいないので、どう変わったのかまったくわからない。そんなこともあり、このチームがどう変わり、なぜ連勝スタートが出来たのかを知りたくて町田に足を運んだが、激しく肩すかしを食らう内容となってしまった。

[町田スタメン]
ーーディミッチー勝又ーー
ー酒井ーーーーー鈴木ー
ーーー柳崎ー小川ーーー
藤田ー津田ー田代ーユン
ーーーー吉田ーーーーー

[琉球スタメン]
ーーー田中ー高橋ーーー
杉山ー初田ー寺川ー三澤
佐藤ー伊藤ー大澤ー國仲
ーーーー森本ーーーーー

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これまでの2試合、琉球がどのようなシステムで戦っていたのは不明だが、この日は中盤がフラットに並ぶ4-4-2でスタート。

琉球はどんなサッカーをするのか? と期待を高めていたのだが、試合は町田の先制パンチから始まっていく。開始早々の3分(記録上は4分)、ロングボールが勝又に入ると、ディミッチを経由して、再び勝又に渡り、1回切り返してシュートを放つといきなり決まって町田が幸先良く先制。

それにしてもこの場面、琉球のディフェンスはあまりにも「人」について行けなすぎであり、よくこれで長崎やHondaに勝てたなあ…と思ったのだが、まあ、開始直後の失点ということもあり、すぐに気持ちを切り替えた琉球は、MF三澤とFW高橋が左サイドを中心に、縦に抜ける攻撃からチャンスを作り町田ゴールに攻め掛かっていく。

10分、18分といい形でシュートまで持ち込み、最初の失点での不安は徐々に払拭され(たようになり…)、21分にFKのチャンスを迎える。そして高橋が蹴り込んだボールに大澤が頭で合わせてついに同点! おおっ!これが好調を維持するチームの粘り強さ? と思ったのだが、ここからの琉球は激しくいただけなかった…

せっかく同点にした琉球だが、この失点で目の覚めた町田守備陣の高いライン取りに手を焼いていく。町田の統率された最終ラインコントロールにより、序盤は裏を取れていた琉球の攻撃が、そこから先はオフサイドの網に引っかかり、まったくと言っていいほど繋がっていかなくなる。さらには、柳崎、小川のボランチコンビの速いプレスが冴え渡り、ほとんどのセカンドボールを町田が支配する。こうなると、圧倒的な町田ペースとなり、26分にまたも勝又がゴールを決めて2-1と再びリードを奪う。

藤田が左サイドを駆け上がってチャンスを広げ、中にクロス→GK森本が前でキャッチしようとするがファンブル→鈴木がこれに反応し、GKより先に触る→勝又がこのボールにDFより先に反応してシュート!→シュート自体は弱いものだったが飛んだコースがよく、コロコロと転がりながらボールはゴールに吸い込まれていく。

GKがクロスをキャッチ出来なかったことはミスではあるものの、位置的な問題(PA外に近かった)、そして相手選手が近づいていたという理由があり、それは致し方がないという見方も出来る。しかし、この場面でも1点目同様、琉球守備陣はほとんどがボールウォッチャーとなっており反応が遅かった。さらには、ボールへの寄せ、人へのプレスも劇甘。

あれでは簡単に狭いスペースでもしっかりボールをキープされるし、シュートの体制に簡単に持ち込まれてしまう…

その後も、勝又、ディミッチ、鈴木、酒井の前4人に後ろからボールが入ると、前線で短いパスを小刻みに繋いでチャンスを作り、27、31、35、40分と立て続けに琉球ゴールに迫っていく。そんな町田の攻撃に対して、琉球は中盤をフラットにした4-4-2の形をとり、高い位置で2つのライン(ブロック)を作り、ゾーンで対応しようとしたが、結果的に「どこでボールを奪うのか?」という点が最後まで曖昧となってしまい、町田中盤に自由を与えてしまう結果に繋がっていく。

さて、前半は2-1のまま終えたのだが、前半戦の戦いを受けて琉球は後半開始から永井弟、我那覇の2人を投入し、高橋がトップ下の位置をとり、寺川、永井をボランチとする4-2-3-1システムに変更する。

[琉球後半]
ーーーー我那覇ーーーー
杉山ーー高橋ーーー三澤
ーー永井篤ー寺川ーーー
佐藤ー伊藤ー大澤ー國仲
ーーーー森本ーーーーー

寺川が中盤の底に入ったことで安定感を取り戻し、さらにはゲームを組み立てる永井弟、前で仕事が出来る我那覇が揃った琉球は、再び後半開始から主導権を握る。2分、3分と立て続けにセットプレーのチャンスを掴み、7分には我那覇がシュートを放つなど、攻撃面では明らかに「前半とは違う」という形、動きが見えだしていたのだが、守備面では前半以上にモロさを露呈してしまう…

54分、GKからのフィードにディミッチが頭で前に流すと、走り込んだ鈴木がボールを受け、そのまま持ち込んでシュート!

なんとも呆気なく、町田は3点目を奪っていく。

またかよ…と思わせる甘すぎる守備。ディミッチのポストプレーの場面もそうだし、鈴木に渡った際のマークもほとんどノープレッシャー。あれじゃやられるわな… そしてこの場面だが、鈴木に着いていったのは昨年までザスパでプレーしたマサヤ(佐藤)でしたが、ただ相手と一緒に走っているだけではマークとは言えないよ…

まあ、守備の悪すぎが3点目を産んだことは間違いないのですが、このシーンで記録には残らない「絶妙なアシスト」があったことを忘れてはならない。

右サイドで鈴木がボールを持ったときに、前を勝又がスッーと横切って右斜め前に走っていく。すると、センターバックの伊藤が勝又の動きに釣られてしまい、ゴール前でシュートコースを空けてしまう。シュートを決めた鈴木も素晴らしいが、勝又の「頭を使ったプレー」に脱帽の瞬間であった。

この3点目が決まった時点で、琉球の集中は完全に切れてしまい、あとは町田のやりたい放題。14分には勝又ーディミッチのワンツーからシュート、16分には伊藤のミスをディミッチが奪って決定的場面を作るがここはシュートミス。19分にも左右の揺さぶりを仕掛けて鈴木がシュート。どれも琉球のDFは簡単に振り切られてしまい、町田の決定力がもっと高ければ、5失点では済まないレベルの試合になっていたはずだ。

そして76分、今度は右CKから短く勝又に繋ぎ、さらにこれを後方のディミッチへ。ワントラップして体勢を入れ替えてズドン! 流れ、シュートと、どれも素晴らしすぎるものであり、こんなゴールを見られた町田サポは言うことナシ!と誰もが思える一撃。それに対して、琉球DFの対応出来なさすぎはなんなのか…

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さらに82分には途中交代の北井にもゴールが生まれ、町田は大量5得点を奪って今季ホームで初勝利を飾った。

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試合の一部で琉球が押し込む場面もあったが、全体通してを見れば、町田の「やりたい放題」で終わったこの試合。2得点に2ゴールに絡んだ勝又の活躍はMOMで間違いないだろうが、中盤の底で素晴らしいボール奪取を繰り返した柳崎、小川の活躍、そしてDF出身であるポポヴィッチ監督が「守りは跳ね返すだけではなく、常に攻撃の起点となるように」と指導しているが、それをしっかり実践できた最終ライン、そして最後まで豊富な運動量でチームに貢献したユ・ソンヨルの動きにも高い評価を与えていいだろう。

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また、試合後に「毎試合、見に来なかったサポーターに『見に行けば良かった…』と思わせる試合をしていきたい」と語ったポポヴィッチ監督。この日はあいにくの天候も重なり、GW期間中でありながらも3011人しか観衆が集まらなかったが、この日の試合内容は監督が語ったとおり、もっと多くの人に見て貰いたい試合でもあった。

確かに琉球ディフェンスがあまりにも酷かったという面もあるが、それを差し置いても町田の出来が素晴らしかった。高い位置をキープする最終ライン。バランスを重視しながらも、攻撃への速い切り替えを実践するダブルボランチ。熟成された連携で攻撃を繰り出す前線の4人。この日はあまりにもパーフェクトすぎた町田。

やはり、今季のJFLはこのチームが中心になってリーグが動いていくだろう…と実感させる試合でもあった。

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さて最後に思わぬ惨敗となってしまった琉球だが、この試合を見る限りでは「なんで長崎やHondaに勝ったのか?」という疑問すら沸いてしまい、どんなサッカーをしたいのか? どんなサッカーを目指しているのか? という部分がまったく見えてこなかった。特に、両サイドバックが効果的に攻撃に絡んだシーンは皆無であり、せっかく前に持ち込んでも、前に出しどころもなく、下げて立て直すわけでもなく、どうみても「無理だろ?」という体勢から蹴ってしまって挙げ句の果てにゴールキック…という場面が繰り返された。

まあ、攻撃面に関しては、永井兄弟、我那覇といった「計算出来る選手」がいることもあり、ちょっとした修正だけで良くなるであろうが、守備面での混乱はちょっと問題。しかし、そうは言っても中4日で次戦SAGAWA SHIGA戦がやってくる訳で、短い準備期間でチームはどこまで立て直してくるのか注目してみたいし、立て直した上で、本来の姿であるはずの「FC琉球」というチームを見てみたいものである。

2011年5月 2日 (月)

その「差」とはなんなのか…

信州ダービーレポ2回目は「オレンジサイド」から見た視点です…

JFL前期第8節 @アルウィン
松本山雅FC 2-1 AC長野パルセイロ
[得点者]
4分土橋(長野)
45+1分今井、 90+1分木島弟(松本)

開幕戦で4-0と快勝したパルセイロだが、2戦目の大事なダービーではライバルを前にまたも「甘さ」を見せてしまい、2008年9月7日戦以来のダービー勝利とはならなかった…

[パルセイロスタメン]
ーー宇野沢ー藤田ーーー
ー栗原ーーーーー向ーー
ーーー大橋ー土橋ーーー
有永ー大島ー小川ー高野
ーーーー諏訪ーーーーー

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開幕戦と全く同じスタメン/システムで挑んできたパルセイロに対し、山雅は開幕戦での敗戦を受け、3バックシステムを導入。それを知っていたパルセイロは「相手の序盤の動き、そして連携は絶対にぎこちないはず」という読みをしていた。また、この日のピッチは激しい強風が吹き荒れていることもあり、チームは益々「先手必勝」という思いを強くする。

その思いがあったからこそ、コイントスで権利を得たキャプテン宇野沢は、特に監督の指示は無かったが「前半風下」を選択し、序盤で試合を決めてやろうと決意してエンドチェンジを決めた。

そしてその考え、狙いは全て的中する…

激しい強風を真正面から受ける山雅はボールを繋げず、パルセイロは前からの鋭いプレスでボールを奪い、さらには相手DFのファールを誘発。そしてそのFKからいきなり藤田が「あわや」の場面を作ると、完全に山雅守備陣というか全体が混乱。続く3分には、高野が右サイドを攻略し、宇野沢と繋いで最後は中でフリーだった土橋が綺麗に蹴り込んで早々とパルセイロが先制。

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この場面、パルセイロの速い右からの崩しも見事だったが、中盤のマークが混乱していた相手をしっかり見て動いた土橋の「読み」も、また見事であった。

驚くほど早い時間、それも攻め込んでいる時間帯で先制点を奪い、理想的な滑り出しとなったパルセイロは、その後も宇野沢、藤田の2トップが精力的に動き回り、さらには両サイドバックの高野、有永が高い位置をとり続けて攻勢に出る時間帯が続いていく。

それに対して、山雅の両ウイングバックを務める今井、鐵戸はマッチアップする高野、有永の「上がり」に対処するだけで精一杯となり、押し込まれて3バックが持つ「良さ」を何一つ出せない。

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強い風の前にまともにビルドアップできず、苦しみ続ける山雅。それに対して、おもしろいようにパスが繋がり、さらには風を利用した普段あまり見られない長いパスも織り交ぜて攻撃に出るパルセイロ。序盤〜中盤は、完全に両サイドを制圧し、山雅陣内で試合を進め、ゲームの主導権をガッチリ握りながら時間は進んでいく。

しかし4分の得点後は、試合を思うように進めるものの、決定的場面を作り出すまでにはなかなか行かない。そう、粘り強く攻撃を跳ね返し続ける山雅の守備陣が、徐々にパルセイロが繰り出す攻撃に対応出来るようになってきたのだ。また、この日の特徴として、前節ほど大橋がボールに絡む機会が少なかった。いや、少なかったというよりも、マッチアップする相手ボランチ、渡辺の動き、そして絶妙なポジショニング取りの前に大橋は活躍の機会を制限されてしまう。

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大橋の活躍があってこそ土橋が前で活きてくる訳だが、時間が経つにつれてこの試合では大橋の存在感は開幕戦に比べて薄くなり始めてしまい、徐々に中盤のバランスが不安定になっていく。それと同時に、あれほど苦しんでいた山雅の動きが少なからず「良さ」を取り戻していく。

それでも、全体的な試合の流れを見ればまだパルセイロのものであり、木島兄弟の突破と、両ウイングバックにボールが入らない限り、山雅の攻撃は恐れるほどのものではなかった。パルセイロ的に考えれば「前半1点しか取れなかったことは不満だが、1点リードで折り返せはまずは良し」という考えをベンチだけではなく、サポーターもあったはずであろう。

そして前半は45分が過ぎ、ロスタイムを迎えたが、そこでパルセイロは悪夢のような瞬間を迎えてしまう。

残り時間を安全に流せばいいものの、ボールを奪われてしまい左サイドを駆け上がる鐵戸の足下にいいボールが入り、そこから中へクロス→小川が木島兄と接触しながらもクリア→こぼれ球→木島弟が拾って後ろへ流す→須藤がシュート→大島がカット→このボールが今井の足下に入り、ワントラップして強引にシュート!

パルセイロにとっては、痛すぎる失点…

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今井のシュート自体は「スーパー」なものであり、褒めるしかないだろう。また、2009年の全社決勝でも素晴らしいミドルを決めたり、昨年の山雅JFL初勝利を導き出した横河戦の決勝ゴールなど、本当に「持っている選手」だなぁと感じさせる瞬間でもあった。

ただこの場面では、木島兄弟に両ウイングバックと、注意すべき選手が全て揃ってしまった瞬間でもあり、もっと集中して中を固めて守るべきではなかっただろうか?

まずは鐵戸にいいボールが入ってしまってはいけないし、木島兄と競り合った小川は接触したため倒れてしまい、もう一人のCBの大島は須藤のシュートをブロックするためにポジションをやや右に動かしていた。そんなこともあり、今井のシュート時に体を寄せるべき選手が誰なのか? という点が曖昧になり見事な一撃を浴びてしまう訳だが、センター2枚が動いていたその時、なぜ左の有永はカバーが遅れてしまったのか…

鈴木さんがあれだけ「グループで守備する」「リスクをどう無くすか」って毎回言ってきたじゃない…

結局、前半ポゼッションで7:3の割合で山雅を圧倒したパルセイロだが、最後の最後に喰らった痛恨の一撃でリードを失ってしまい、後半は再びリセットされた形でスタートすることに。それにしても、あれだけ攻めている時間が長かったのに、1点しか取れなかったこと、そしてシュート数も5本だけに終わってしまったことはいただけないし、山雅としては松田の特長を活かす3バックシステムが機能しだしたことの現れでもあった。

そして後半だが、予想されていたとおり激しい強風に煽られて、前半の山雅同様前に進めない。さらには、追い風に乗って攻勢を強める山雅の前に防戦一方となるパルセイロ。そんな状況の中で薩川監督は1枚目のカードを切ってくる。

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20分、前線からのプレスを強くするためでもあり、お世辞でも「いい出来」ではなかった栗原に替えて冨岡大吾を投入。そしてダイゴが入ったことにより、宇野沢がサイドに流れてダイゴ、藤田の2トップに変更。そして、前半から豊富な運動量でチームの攻撃を牽引した宇野沢がサイドに廻ったことで、やや流れを取り戻したパルセイロは、宇野沢、ダイゴ、藤田の3人によるカウンターで活路を見いだそうとしていく。

しかしだ、ゲーム全体の流れは依然として山雅が握っており、中盤でのボール支配も不利な状態は変わらない。土橋の運動量が下がりだしたこともあり、須藤、北村が自由にボールをさばくシーンが増えだし、大橋はバランスを取るよりも中盤の守備に奔走する時間が続き、ベンチは27分に土橋を諦め塚本を投入。

この時点で、薩川監督は「勝ち点3を狙う」ではなく、確実に「勝ち点1」を取ることにシフトチェンジするのだ。そう、監督はリスクよりも確実、そしてバランスを選択してピッチに塚本を送り出した。

大橋ー塚本という組み合わせになったことで守備面では安定感をやや取り戻し、その結果として、37分に後半最大のビッグチャンスを呼び込むこととなる。ゴール前でダイゴ粘ってが持ち込み、あとはシュートを流し込むだけ…という場面だったが、シュートは無情にも枠の外。

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前半に引き続き、決めるべきところで決められなかったパルセイロ。
点が取れないのであれば、残された時間を「静かにクローズさせる」ということが最低限のタスクであったのだが、またしてもそれが出来ずに終わってしまう…

トータルタイム90分を過ぎ、残りはロスタイムの2分間。引き分けでもいいということもあり、ゴールキーパーの諏訪は焦らずにゆっくりボール持って前線にフィードする。しかし、折からの強風もあり、高く上がったボールは距離が出ず、相手陣内に届くどころか自陣にまで戻されてしまう。

そしてこのボールを両チームの選手が競り合うが、飯田がいち早くボールに触り前に蹴り出すと、前線の塩沢がうまくボールをさばいて右の今井に展開。前半ロスタイムにゴールを叩きだした男は、この場面でも決定的な仕事に関わり、彼が出したボールからまたしてもゴールが生まれ、パルセイロは土壇場でまたも「緑の壁」の前に屈することとなる。

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この時点も、失点を防ぐ方法はいくつも考えられた。
キックの精度が素晴らしいとまでは言えない諏訪。後半に入ってから、何度もキックが高く舞い上がり、攻撃に結びつけるどころか逆にピンチを招いてしまうことが続いていた。であるならばこそ、あの場面は失点を絶対に避けなければいけないし、高いキックも禁物だったはずであるから、グラウンダーのボールで確実に味方に繋げるべきではなかっただろうか?(これについて、試合後の諏訪は「蹴りどころがなく、タッチに切るのも有効ではないと考えました」とコメントしてくれたが…)

試合のスタッツを確認すると、パルセイロが与えたFKは間接、直接を含めて14しかなく、後半に至っては5つしかなかった。サッカーにおいて、セットプレーを与えることは失点に繋がる可能性が高くなるため、無用なファールは避けるべきものであるが、パルセイロの守備は劣勢においてもファールを犯したり無用なイエローを貰うことなく見事に対応していた。しかし、前半も後半もロスタイムで「流れ」の中でやられてしまえば、そこまで集中していたものを全て台無しにしてしまう。

どちらも「あと2分」というところで、リスクマネジメントが頭から離れてしまった瞬間でもあり、山雅の勝負強さを見せつけられた瞬間でもあった。

試合全体を通して、パルセイロの攻撃が山雅より劣っていたとは全く感じないし、昨年からのメンバーが8人残っていても十分どのチームでも通用することは明らかとなった。しかし、いいサッカーだけでは勝てないという現実を、最大のライバルにまたも見せつけられてしまったことを忘れてはならない。

いいサッカーが勝つサッカーではないことぐらい、2006年の頃からわかっているはずなのだから…

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試合後、薩川監督は「今日の負けは素直に認めます。言い訳はしない。ただ、勝ちたかったなあ…」と素直すぎる感情を述べた。また、後半の勝負所での交替について「富所を使う考えはなかった。あの流れの中で、アイツを入れて守りのリズムが壊れることは避けたかった。だからバランスを取れる塚本を投入した」と語ったが、これだけは正しかったのか間違っていたのは微妙なところでもある。

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選手としては、Honda FCの一選手で終わっている吉澤監督に対して、Jリーガーとなり天皇杯優勝など大舞台を経験している薩川監督とでは、経歴の差は歴然。しかし、指導者としての経歴ではJFL優勝の経験を持ち、プロ監督としても先輩である吉澤監督の方がまだまだ上。

チームの力を最大限に引き出すため、大一番を前にしてシステムチェンジを断行する決断力と勇気、そしてモチベーションコントロール。さすがにチームを指揮して4年目の監督であると思わせたし、負ければ自分の「首」が飛ぶこともよく自覚している…

そんな監督としての経験や覚悟の差、そして(山雅の)選手が持つ「勝利への執念」が最後の最後で差を分けたと思わせた信州ダービー。しかし、その差は昨年の天皇杯予選決勝で感じたものよりも確実に縮まっている。だからこそ、次の対戦は本当に楽しみなのだ。

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次の対戦は7月3日の南長野。あと2ヶ月という時間があり、パルセイロにとって十分経験値を積み重ねることは出来るはず。まあ、灼熱の中での戦いになるだろうが、風に左右されるよりはマシだし、ピッチ状態もアルウィンよりも良質のコンディションを維持する南長野であれば、違った結果が生まれるかも知れない。

ダービーという、リーグ戦とはまた違うプレッシャーの中で感じた「JFLで戦うことは簡単ではない」ということが、チームにしっかり刻まれれば、この敗戦は無駄ではないといえるだろう。そして、この苦い経験が明日の栃木ウーヴァ戦の糧となっていることを期待したい。

2011年5月 1日 (日)

ダービーはいつも劇的に…

「グリーンサイド」と「オレンジサイド」の2回で今回の信州ダービーを振り返ってみようと思いますが、まずは勝った方のグリーンサイドから。

JFL前期第8節 @アルウィン
松本山雅FC 2-1 AC長野パルセイロ
[得点者]
4分土橋(長野)
45+1分今井、90+1分木島弟(松本)

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試合の感想の前に、改め「ダービー」の集客力の高さに脱帽でした…
会場上空の雲行きが怪しく、強風が吹き荒れるコンディションということで、試合開始前の会場には空席が見られたが、キックオフを過ぎてからも観衆が押し寄せ、最終的に11663人の観衆を動員。入場料金設定の違うJリーグと、JFLの動員数を単純に比較することは一概にはできないが、今節行われた柏、神戸、C大阪、磐田のホームゲーム動員数より上回り、J2でこれを上回ったのはFC東京(17572人)だけという数字が残された。

確かに、入場料金設定に1000〜3000円程度の違いはあるが、今回残された数字は「誇り」としていいものだろう。

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さて、試合の方に入りますが、メンバー表をみた時点でかなりびっくりさせられたと同時に、ついに「松田シフト」に出たか…という印象を与えた。

[松本山雅スタメン]
ーーー木島兄ー木島弟ーーー
ーーーーー北村ーーーーーー
ー鐵戸ーーーーーーー今井ー
ーーーー渡辺ー須藤ーーーー
ーー多々良ー松田ー飯田ーー
ーーーーー白井ーーーーーー

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開幕戦は松田をボランチに置く4-4-2でスタートしたが、思い描いたようなサッカーが出来ず逆転負け喫した山雅。吉澤監督、柴田コーチは「松田を活かすシステム」に変更するため、これまでこのチームで一度も採用したことがなかった3バック導入を決めて大事な一戦に挑んできた。また、トップ下の位置には前節スタメンだった弦巻ではなく、「タメを作れる選手」と監督が評する北村を起用。

開幕戦に向けて長い時間準備してきた4-4-2を諦め、松田と心中することを選んだ吉澤山雅。はたしてその「バクチ」が吉と出るか凶と出るかだったが、立ち上がりは会場上空の天候同様「怪しい雲行き」を見せながらのスタートとなってしまう。

コイントスで権利を得たパルセイロのキャプテン、宇野沢は迷わずエンド交替・前半風下を選択。すると、風の影響をモロに受けたことと、初の3バックへのとまどいがチームを襲い、2分のFKでは藤田のヘディングで「あわや」のシーンをいきなり作られ、動揺がおさまりきらないうちに、右サイドを攻略され土橋に綺麗な一撃を浴びて早々と失点を喫してしまう…

時間にして3分20秒(ぐらい)

パルセイロらしい細かいパス交換だけではなく、追い風を利用した長いパスにロングシュートを多様して攻め続ける相手に対して防戦一方となる山雅。3-5-2のシステムにしたのはいいが、今井、鐵戸の両サイドが押し込まれ、3バックシステムの「良さ」を全く活かせない。さらには強風のためボールが思うように前に進まず、自陣で耐える時間帯が続く。

だが、監督から「今日はまず守備を頑張って欲しい」と言われていた松田がディフェンスラインに「ここを耐えろ!」と檄を飛ばす。相変わらずボールはパルセイロに回され続けるが、徐々に全体のライン、そして守備ブロックが安定していき、守りの中から「リズム」を作り出していく。また、松田ばかりに注目が集まるが、ボランチの渡辺匠の動きも「さる者」であった。

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川崎、山形、熊本でプレーした経験豊かなボランチは、ボールに積極的に絡んでパスの供給源になるというプレーではなく、バランスを重視した「黒子」に徹し、終始、危険なエリアをいち早く察知して献身的な動きで周囲をカバー。中盤の底でコンビを組む須藤、そして両サイドの鐵戸、今井の攻撃参加が出来る流れ(下地)を地味ながらも、しっかり作り出していく。

30分を過ぎた頃には完全に守備が安定し、パルセイロも序盤ほどやりたい放題と行かなくなると、やっと「中盤の5」の両サイドの活躍が生まれ始める。ここまでは、木島兄弟の突破だけが頼りだった山雅の攻撃だが、今井、鐵戸が絡み出すと厚みのある攻撃に変わっていく。

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両サイドでチャンスメークが増えれば、中で待つ木島(兄)の動きも鋭さを増していく。34分には強引に持ち込んでゴール前まで迫り、39分にはFKのチャンスからこぼれ球を蹴り込んで同点ゴールかと思われたが、ここはGK諏訪を倒しておりキーパーチャージでノーゴール。しかし、両サイドの攻撃参加に木島の闘志溢れるプレーで、守備一辺倒だった山雅は息を吹き返す。

そしてロスタイムに、山雅の中で最も「信州ダービーを知る男」が大きな仕事をやってのける。

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鐵戸が左サイドを駆け上がり中へボールを入れたが、一度はDFがクリア。しかしこのこぼれ球を須藤が拾ってそのままシュート。今度は大島がブロックするが、詰めていた今井昌太が拾ってシュート!

これが決まって前半終了間際でついに山雅が同点に追いつく。

前半終了間際のゲームプランでは、まず前半は0-1で終わらせることが最低条件であり、風下となる後半に一気に仕掛けようという考えがあった。しかし、劇的なロスタイム弾で追いついたことで、試合の流れ大きく変わり、山雅の方に余裕が生まれてくる。

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そして後半は予想通り追い風に乗る山雅の圧倒的なペースで進み、4分には有永のクリアミスを鐵戸が奪い最初のシュートを放つと、5分には木島兄のシュートから連続してチャンスを掴み、前半は序盤は沈黙していた両サイドが水を得たかのように駆け上がりパルセイロゴールに迫っていく。

ゴールキック、DFのクリアが前に飛ばす、前線の宇野沢、藤田にボールがなかなか入らない時間が続くパルセイロ。そしてこの時点で薩川監督は「勝ち点3」にこだわらず、「引き分けでよい」という発想になり、足がつり始めた土橋を諦めて、攻撃力のある富所ではなく、バランサーの塚本を投入。

無理をしないパルセイロ。どうしても勝ちたい山雅。

試合は時折カウンターでパルセイロが攻め込む時間帯があるものの、大半は山雅ペースで進む。しかし、上記にあるとおり、引き分けでもいいパルセイロは無理をしてこない。そのため、チャンスを次々と作り上げるものの、どしても「決勝点」を奪えない山雅。

そして90分を過ぎ、アディッショナルタイムが2分と表示される。

残された時間は2分しかなく、このままドローで終わりかと思われたが、またもロスタイムにドラマが待っていた。

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途中交代で入った塩沢が右の今井に展開し、ドリブルで駆け上がり中にグラウンダーのクロスを入れると、中で北村が軽く横に流し(さわった程度?)、木島弟にボールが渡と体制を入れ替えてシュート!

ロスタイムに入っての劇的な決勝点が決まって2-1となり、またもダービーの勝者となった松本山雅。これで北信越リーグ1部に昇格して以降の対戦成績を11勝3分3敗とした。

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結果的に最後はホームの山雅が勝利したが、試合内容は「風」を差し引けば僅差であり、両者に大きな差がるとは感じられない試合であったことは否定できない。JFLでは1年先輩であるが、まだチームが完成されていないこともあり、この日の山雅は「先輩の力」をライバルに対して見せつけることは出来なかったのと同時に、最大の敵が繰り出す攻撃の鋭さを改めて感じたはずだ。

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ただ、不思議と毎回両者の対戦では山雅が「勝負強さ」を見せつける。試合後、吉澤監督や木島弟など、口を揃えて「ダービーは大事な試合ですが、チームはJリーグ昇格を目指して戦っているので、ダービーということを意識せず、とにかく勝利を積み重ねることだけを考えて戦っています」と答えた。

ただ、そう答えた人がいる反面で、キャプテンの須藤は「応援してくれる人たちのダービーに賭ける意気込みを知れば知るほど、この試合で負けたら松本の街を歩けなくなるかも…なんて考えながらプレーしました」と答え、新加入の松田直樹は「先日『クラシコ』を見ましたが、このダービーを作り上げてきた人たちの思いを知り、とにかく凄いと思った。そんな人たちのため、自分は何ができるかわからなかったが、『勝利すること』で恩を返せるかな?って思って最後までプレーしました」と語るなど、ダービーというものを自分なりに考えてピッチに立っていた選手がいたこともまた事実。

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まあ、ダービーを意識するかしないかは別として、山雅には「J昇格」という目標があり、そのためには、引き分けではなく貪欲に勝利を求める「気合い、気持ち」がパルセイロよりも優っていた。

そんなところが勝敗を分けたような気がしてしまうし、それが両者の間に「1年の差」を産んだ原因でもある。

まだまだ、監督が目指すサッカーに到達していないし、松田を含めた新戦力が完全に「噛み合っている」とは言い切れない今の山雅だが、ダービーでの勝利が起爆剤となり、一気に上昇していくきっかけを掴んだと言えよう。

「特に意識しませんよ…」と語る選手もいるが、やっぱり、この試合はいつも「特別」なのであると感じさせるゲームでもあった。

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それでは「オレンジサイド版」に続きます。

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