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2011年11月28日 (月)

専修がフロンターレになった日

今年の日本のリーグ戦は、下から上がってきたチームに勢いがある。トップリーグであるJ1はJ2優勝して昇格してきた柏レイソルがここまで首位。JFLでは地域リーグから上がってきた長野パルセイロが優勝の可能性を残したまま現在2位。そして関東大学サッカーリーグでもこれと同じように、(2部優勝を経て)昇格してきたチームが優勝争いに絡んでいる。

その名も専修大学サッカー部。

前期はリーグナンバーワン(タイ)の18得点を挙げ、攻撃力の高さを見せつけたが、その反面でリーグワースト(タイ)の18失点と、奪った得点をすべて帳消しにしてしまう守備の拙さが祟ってしまい、3勝3分3敗という成績で7位どまり。しかし、2部から昇格してきたチームの成績としは決して悪くはなく、後半戦は守備面で成長できれば化けるかも知れないと感じさせた。そして6月で前半戦が終了し、8月末の天皇杯東京都予選で再び専大を見たときには、チームが大きく変貌していたのである。

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学生の部決勝で前期好調だった早稲田に勝利して、波に乗る専大は準決勝でJFLの横河武蔵野と対戦。そしてこの試合こそ、今の専大の流れを決定づける試合となった。武蔵野はベストメンバーで挑んできたのだが、そんな相手にも臆することなく専大は立ち向かい、終始ボールを支配して人もボールも動くサッカーで武蔵野を圧倒。終わってみれば専大が大量6得点を奪って圧勝。そして天皇杯出場権を賭けて町田ゼルビアとの対戦を迎えたが、ここでも一歩も引けを取らない戦いを見ていく。

Jリーグを目指す町田を相手に、120分間互角の展開を繰り広げ、ついにはPK戦まで試合はもつれることとなるのだが、最後は惜しくも敗退。結果的に天皇杯出場はならなかったが、守備面の徹底、チーム力の底上げを狙いとした夏合宿は非常に実りの多い物となり、その成果が実戦で大きくでることとなった。しかしだ、選手は格上に対して善戦しただけではまったく満足していなかった。いや、満足するどころか、「もっとやれたはず、絶対勝てたはず」と、悔しさの方をストレートに口にしていたのだが、その悔しさ、そして勝利への飽くなき執念が後半戦の躍進に結びついていく。

9月にリーグ戦が再開されてからの11試合で7勝3分1敗という好調を維持する専大。そして課題であった守備面も、後半戦はGKが朴、最終ラインが松本ー鈴木ー栗山ー北爪と固定しだしてから徐々に安定。11節順大戦から14節の駒大戦までは、これまでの専大らしく?大量得点は挙げるものの、失点も2と「打ち勝つ」試合が連続して続いたが、15節の流経大戦で3-0と完勝したあとは、20節の慶大戦でPKで与えた1失点のみに押さえ込み、守備面でも完全に覚醒した専大。

7勝3分1敗で得点は29、失点は10。前半戦の9試合で18失点していたチームが、後半は11試合で10失点と、ついに1試合平均1点を下回ることに成功。そして自慢の攻撃力は1試合平均2.63という脅威の数字を叩き出し、ついに首位の座を奪うまでに登り詰めた。2部優勝→1部昇格→そして昇格後即優勝ということすら夢では無くなった専大は、26日(土)、フクダ電子アリーナにて同勝ち点(36)で並ぶ2位筑波大との大一番を迎えたのである。

[専大スタメン]
長澤ーーー大西ーーー仲川
ーーーーー町田ーーーーー
ーーー下田ーー庄司ーーー
松本ー鈴木ーー栗山ー北爪
ーーーーーパクーーーーー

[筑波大スタメン]
ーーー瀬沼ーー赤崎ーーー
曽我ーーー玉城ーーー不老
ーーー上村ー八反田ーーー
ーー山越ー谷口ー田代ーー
ーーーーー三浦ーーーーー

まず驚かされたのが、筑波大のスタメンだった。

風間監督は常日頃「1年生が中盤に入ると(流れについてこれず)混乱してしまう場合もあるので、とりあえずは後ろをやらせてみてチームに慣れさせる」と口にしており、昨年も谷口がCBを経験。そして今年は、車屋紳太郎がその流れでCBを任される機会が多く、ここ数試合は完全にレギュラーとしてCBに固定されてきた。しかし、その彼が今節は出場停止ということもあり、どうメンバーを組んでくるか楽しみであったが、風間監督はなんと3バックを選択。

ただ、風間監督は普段の試合から「オレはね、3-5-2とか4-4-2とか4-3-3とかシステムでサッカーを考えることはしていません。あくまでもね、サッカーというのはピッチ上で選手が何を考えてプレーするかのことだから、システムは形式的なものであってあまり気にはしていない」と戦術論、システム論に素っ気ない感想を語ってくれていた風間監督が、あえて3バックという賭とも言えるプランに出てきた。

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しかし、このシステムは完全に裏目となってしまう。立ち上がりこそ、チャンスを作った筑波大だが、前半5分以降は完全に沈黙。いや、沈黙というか、相手3トップ+トップ下の町田、そして左サイドバックの松本のアタックの前に防戦一方に。

3バックの利点とは、両サイドアタッカー(ウイングバック)が高い位置を取り、相手の両サイドを自陣に封じ込めることが可能となってくるが、ひとたび劣勢に回ってしまえば両サイドは最終ラインに押し込められ、全体のラインもズルズル後退してしまい、いいように相手にやられてしまう。そしてこの日の前半は、専大のやりたい放題が続いていく。

10分にCKから「影のストライカー」となりつつある栗山がヘディングで狙い、完全に決まったかと思われたが筑波大上村がゴールラインギリギリのところでカット。14分には長澤のアタックからチャンスを広げ、最後は松本がシュート。19分には町田、20分には鈴木と立て続けにシュートの雨あられを浴びせていく専大。そして23分、またも長澤のシュートからCKのチャンスを掴むと、ファーで合わせた栗山のヘディングシュートが決まってついに専大が先制。

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まったくと言っていいぐらい、相手に押されっぱなしでシュートどころかチャンスも作れない筑波。5分すぎに玉城がシュートを放った以降は専大ゴール前に近寄ることすら出来ない。しかし、1点を先制されて危機感を感じたのか27分にやっとチーム2本目となるシュートを赤崎が放っていくのだが、結局筑波・前半のシュートはこの2本だけ。しかし、専大は筑波の反撃をまったく許さない。直後の28分、町田の突破からチャンスを掴み、またも長澤がシュート。これがキレイに決まって早くもリードを2点差とする。

その後も得点こそ入らなかったが、町田、仲川、長澤、下田、松本がやりたい放題で、ついに筑波大・風間監督も前半途中、それもあと2分で前半終了という時間に関わらず、再三ピンチを作る原因となってしまった右サイドの不老をベンチに下げ、FW登録の中野を同じ位置に投入。より攻撃的なサイドアタッカーを配置することで劣勢をはね除けたかった風間監督だが、その意図どおりに試合は行かず、なんと後半開始早々から交替で入った中野に代え、CBの古屋を投入し、システムも以前通りの4-2-3-1に変更。

[筑波後半システム]
ーーーーー瀬沼ーーーーー
曽我ーーー玉城ーーー赤崎
ーーー上村ー八反田ーーー
山越ー谷口ーー古屋ー田代
ーーーーー三浦ーーーーー

後半に入ってシステムを普段の形に戻した筑波。これで専大とやり合えるかと思われたが、立ち上がりはまたも専大に押し込まれまたも嫌なスタートとなってしまう。46分にいきなり長澤がシュート。ここは三浦のセーブで事なきを得たがCKのピンチは続く。そしてこのCKの場面でまたも栗山のヘッドが筑波ゴールを襲うがここは枠を捉えきれず。

しかし、立ち上がりの猛攻をなんとか凌ぎきった筑波は徐々にだが、劣勢から普通の試合に引き戻すことに成功。さらには前半は攻撃参加することが出来なかった山越が果敢な姿勢を見せ、ゴール前に顔を出すシーンも増えていく。そして筑波にとってこの日最大のチャンスは53分に訪れた。

左サイドから攻め上がる山越。そして中へクロスを入れると、待っていた赤崎はスルーして後ろでフリーとなった八反田がワンテンポおいてシュート! しかし、このシュートはDF(味方?)に当たってこぼれるが、これに山越が飛び込んでシュート! 決定的な場面を迎えたが、無情にもシュートは枠を逸れていく…

どうしても得点を奪えない筑波。

それにしても、ワントップに入った瀬沼はほとんどの時間で前を向いてプレーすることは出来なかった。やはりストライカーは前を向いたプレーをしてなんぼのもの。そしてもう一人の点取り屋である赤崎も、この日は専大の高い位置からのプレスの前に「らしさ」を出せず終い。

後半8分ぐらいからペースを掴みだし、得点を予感させるチャンスを作りながらも、それを活かせずに終盤を迎えてしまうとかなりイヤな雰囲気が漂い出す。同点に追いつきたいという思いが焦りになり、バランスを崩した形となってしまい、裏に大きなスペースが生まれだしてしまう… そして案の定、ラスト10分を切ったところからは再び専大が鋭い攻撃で筑波ゴールに襲いかかる。後半スタートから大西に代わって玉田が投入されたが、そうも調子がイマイチで周囲との連携もぎこちない。前半は流れるような展開が続いていたが後半は玉田のブレーキもあり、ややペースが乱れてしまった専大。

しかしだ、ここ数試合鉄壁の守りを見せる守備陣が粘り強く対応し、そしてベンチも玉田に代えて東を投入し、打開策を打ち出していく。調子のいいときというものは、1つの策で失敗しても2つ目の策で見事にリカバリーできるもの。そう、この東を投入したことで、再び躍動感が甦った専大。

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75分には長澤がこの日5本目となるシュートを放ち、82分にもCKから筑波ゴールを脅かしていく。さらに86分には松本がシュート! またも決定的な場面であったが、守護神・三浦の好セーブがなんとか筑波を救っていく。だが、ロスタイムに突入して3分、再び町田→長澤の連携で崩されて試合終了間際にとどめとなる3点目をゲット。これで長澤は得点ランキング首位タイとなる12点目を決め快勝劇に華を添えた。

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この試合は今季の優勝を賭けた大一番となるはずの試合だったが、終わってみれば専大の完勝、いや圧勝で終わった。そして専大は勝ち点を39に伸ばし、さらに得失点差で2位明大に9、3位筑波に11と差をつけ、最終節を仮に敗戦で終えたとしてもありえないぐらいの大敗を喫しない限り優勝をほぼ確定的としたのである。

それにしてもシーズン当初、誰がこのリーグ展開、そして専大の躍進を予想したであろうか? 恥ずかしながら私は流経大を大本命に推していた。あれだけのメンバーを揃え、さらには高校時代からの実績もズバ抜けている。ワールドカップを体感してきた選手もいる。オリンピック予選を戦うメンバーもいる。しかしだ、フタを空けてみればノーマークの専大が自慢の攻撃力に磨きを掛けつつ、さらには試合を増していくごとに守備が安定し、実にバランスの取れたチームに成長していった。

そしてこの躍進を考える上で、監督である源平貴久氏の存在を忘れることは出来ないだろう。

確かにチーム躍進の原因を考えれば、ゲームを組み立てる町田也真人、庄司悦大というセンスの高い選手がいたことは見逃せない。そして急成長を果たした長澤和輝、そして最上級生となった松本陽介など、どんな場面でも「勝負」できるタレントが今年は見事に揃っていた。

しかし、タレントが揃っているからと言って勝てるのかと言われればそう簡単ではない。そのタレントや個を引き出す、そして成長させる手腕とビジョンがなければチームは進化していかない。そんな中で、一気に今年華開いた専大のサッカーと言えば、イケイケな攻撃サッカー。そしてその攻撃サッカーはまさしく川崎フロンターレのサッカーそのものであった。

源平監督と言えば、フロンターレの前身である富士通川崎時代に活躍した選手(川崎フロンターレとなって2年目の1998年シーズンで現役引退)であり、現在でも富士通の社員の一人である。しかし、フロンターレとの関わりは今なお続いており、関塚隆氏(現U-22代表監督)が作り上げたサッカーを、大学サッカーというカテゴリーでも体現したいという思いの元、指導を続けてきた。

また、源平監督だけではなくコーチもフロンターレ関係者が在籍しており、その流れからフロンターレU-18出身選手も専大サッカー部の門を叩いている。このように、フロンターレの流れを汲む専大が、3トップ(気味)、そして攻撃サッカーを目指したのは必然でもあった。かつて、我那覇、ジュニーニョ、チョン・テセ、レナチーニョといった蒼々たる攻撃陣を揃えて躍進したチームと、今年の専大は非常にかぶるものがある。そしてボランチの庄司はさしずめ、中村憲剛といったところか?

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また、当初は攻撃力は非常に光る物はあるが、守備に難がある… といったところもフロンターレに似ていた部分だが、こちらも本家同様、力を着けると同時に守備も安定。後半戦において守備の要となった鈴木雄也、栗山直樹のCBはまだ3年生であり、来年も活躍も期待されるところだ。フロンターレ流の攻撃サッカーを植え付けた首脳陣。そして練習から「しっかりシュートを打て!」と厳しく下級生に指導するなど、リーダーシップを発揮した4年生、そしてこの先が期待される数多くの下級生が揃い、実にバランスの取れたチームに成長した専大。

ここ数年の優勝チームを見てみると、どちらかというと最初から「強い」と前評判の高かったチームが優勝してきたが、今年は勢いと成長という、これまでとは違ったキーワードが優勝に結びついた関東大学サッカーリーグ(まだ優勝は決定してはいないが、事実上専大の優勝は決定的)。新興勢力の躍進と同時に、今年は名門校が軒並み大苦戦。上位の常連であった国士舘、中大は下位に低迷し、駒大に至ってはまさかの2部降格と、明らかに大学サッカーの「流れ」が大きく代わろうとしている。

ただ、優勝チームの勝ち点が40を超えないのも、ちょっと格好が付かないので、なんとか最終戦の神大戦は勝って欲しいものだが、源平監督は試合後、にこやかに「間逆(攻撃サッカーと守備サッカー)の対決ですから、簡単な試合にならないでしょう…」と語ってくれたが、なんとか最後はしっかり勝って優勝を決めてインカレに挑んで欲しいものである。

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そして、関塚氏の遺伝子を引き継ぐ専大の攻撃サッカーが、全国の舞台で躍進するところも是非とも見てみたい。

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関東大学サッカーリーグ
第21節 @フクダ電子アリーナ
筑波大学 0-3 専修大学
[得点者]
24分栗山、29・90+3分長澤(専大)
[警告]
79分赤崎(筑波大)
59分玉田、73分東(専大)

[ゲームスタッツ]
シュート数:筑波大6、専大17
ゴールキック:筑波大15、専大7
コーナーキック:筑波大2、専大8
直接FK:筑波大12、専大15
オフサイド:筑波大1、専大0
PK:筑波大0、専大0

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