« 天皇杯、9/4開催分1回戦結果 | トップページ | 第47回全国社会人大会組み合わせ »

2011年9月 5日 (月)

「怖くない」という言葉の意味 【第91回天皇杯・1回戦】

現在、JFLで16位のアルテ高崎。そして、JFL昇格を目指して関東リーグで首位を走るY.S.C.C.(神奈川)が天皇杯1回戦で激突。この対戦だが、もしかすれば昨年のJFL入替戦で実現していたかも知れない試合でもあり、さらにはアルテの現在の順位を考えれば、今年の年末に対戦(入替戦で)する可能性がゼロではないこともあり、密かに天皇杯1回戦の中で注目を集めるカードでもあった。

Img_0003

[アルテスタメン]
ーーー松尾ーー伊藤ーーー
益子ー山藤ーー小島ー石沢
田中ー山田ーー増田ー布施
ーーーーー岩舘ーーーーー

[Y.S.C.C.スタメン]
ーーーーー辻ーーーーーー
吉野ーーー吉田ーーー須原
ーーー平間ーー小澤ーーー
後藤ー服部ーー白井ー渡邉
ーーーーー小林ーーーーー
(※吉田がやや前に出て4-4-1-1になる場合も)

先週と同じメンバーできたアルテに対し、Y.S.C.C.(以下YS)もベストの状態で挑んできたこの試合。両者とも、蹴ってくるサッカーではなく、繋いでゲームを組み立てていくことをモットーとしているのだが、それについては先週のU-23戦も同様であり、この試合でもカテゴリーが下(関東リーグ1部)となるYSがJFLのアルテに対して、どこまで「自分たちのサッカーをやれるか」がゲームのポイントだった。

さて、今週は台風の影響もあり、ピッチはやや水を含んだ状況であり、さらには、試合中にいつ激しい雨となるかわからない天候でもあった。そんなことも考慮して、YSの鈴木陽平監督(天皇杯では登録上、選手兼監督は認められていないため、この日はコーチの松久氏が監督扱い)は試合前、「天候によって自分たちの判断でサッカーを変えていこう」と選手に指示してピッチに送り出したが、その意図とは違う意味で「らしくないサッカー」を展開してしまう。

YSのキックオフで始まった試合は、いきなり、昨年までアルテでプレーした吉田明生が持ち込んで左サイド奥へ進入。いい形でチャンスを作ったが、ここはアルテキャプテン・増田がしっかり対応してクリア。そしてこのクリアボールを繋いだアルテは一気にYSゴール前までボールを運び、PA近くで松尾が倒されFKのチャンスを得る。ここでCBの山田が頭で合わせ、群馬県予選決勝同様、に早い時間帯にアルテが早々と先制点を挙げ、ゲームの流れを一気に自分たちの方に引き寄せていく。

Img_0032

この日も幸先良く先制点を奪ったことで、楽にゲームを進めることができたアルテは、4分に先週2ゴールを挙げて勝利の立役者となった伊藤がシュートを放ち、6分にはFKのチャンスを掴むとクイックリスタートから松尾が右に展開。右サイドを駆け上がった布施がシュートを放つなどYSを圧倒。守備面でも、全体のラインをコンパクトに保ち、前線、中盤が連動したプレスを見せ、YSの持ち味である「繋ぐサッカー」を完全に消し去ることに成功し、しばらくの間は「仕方なしに縦に蹴るだけ」という流れだけに封じ込める。

だが、前半15分を迎えようとした頃から、激しい雨に見舞われ、それと同時に徐々にアルテの素速い動きだしも失速していく。アルテ・後藤監督は試合後「今週は台風の影響で、グラウンドで練習できる機会がほとんどなく、コンディション作りで苦労しましたが、それが影響して運動量が上がらなかった結果に結びついてしまいました」とコメントしてくれたが、ここからアルテにとって苦しい時間帯を迎えることに。

18分には、YSのキーマンでもある辻がドリブル突破からチャンス掴みCKを獲得。そしてこのセットプレーの場面では吉田がシュートを放ち、23分には左SBの後藤が果敢な攻撃参加を見せチャンスを広げ、続く24分にはまたも後藤のクロスからチャンスが生まれ、アルテDF山田のオウンゴールを誘発するが、ここは辻が飛び出していたという判定でオフサイドとなりノーゴール。

Img_0121

アルテの運動量が下がったこと、そして相手のスピードにも慣れが出て来たことで、YSらしい「繋いでサイド展開」が顔を出し始め、チャンスを作れるようになっていく。しかし、アルテベンチも黙ってやられ続けている訳ではない。後藤監督が松尾とピッチサイドでシステム変更を確認しあい、4-4-2から4-4-1-1に変更して相手の動きに対応していく。

YSの吉田の動き、そして左SB後藤の動きに手を焼いていたアルテだが、松尾のポジションを1.5列目に下げることで、確実に相手を捉えられるようになると、ゲームは再び拮抗した展開に戻りだしていく。そんな一進一退のゲーム展開の中で30分、アルテ左SBの田中が攻撃参加で切れ込み、中へクロス。

試合後、ゴールを決めた伊藤は「田中のクロスはマイナス気味に入ってくるから、今のポジションなら絶対にボールが入ってくると確信していました」と語ってくれたが、そのとおりに入ってきたボールに対し、伊藤は迷うことなくボレー一閃。これが決まってアルテがリードを2点に広げる。

早い時間で先制点を奪い、その後はやや悪い流れになりながらも前半途中で2点目を奪い、まるで先週の試合のリプレーのようなゲーム展開を見せるアルテ。普段のJFLでは決定力不足と言われるが、これが格下となれば、キッチリ決めてくるところは「さすがJFL」と言えよう。

Img_0223

また、2点のリードを奪ったことで、運動量は相変わらず上がっては来ないものの、落ち着きを取り戻したアルテは、相手の攻撃を受けながらも、中には行かせないディフェンスでしっかり対応していく。松尾は試合中にメンバーに向かって「大丈夫、落ち着いてやれば怖くない」と声を出していたが、これこそ、アルテとYS、そしてJFLと地域リーグの違いだったのかも知れない…

確かにこの日のアルテはコンディション調整が上手く行かなかったこともあり、動きは先週に比べて良くなかった。しかし、良くないなら良くないなりに、相手の攻撃をしっかり見切って対応。また、「怖くない」と言った部分に関してはサイドからのクロスの精度であり、パスのスピードなどについて指していたのだが、パスを繋いでサイドまで展開するという流れまではいいのだが、その先のゴール前に入って来るボールはことごとく精度を欠く、またはその前で読み切られてしまう場面が続出。

これがJFL同士の戦いであれば、サイドを破られた時点で失点も覚悟しなければいけないが、この日の相手、いやこのカテゴリーには「その怖さ」が無かったのである。

-----------------------------------------

結局、前半2-0のまま折り返して勝負は後半戦に突入したのだが、アルテは前半のメンバーから変更は無かったが、YSは吉野に代えて松田を投入し、4-4-2の形に変えて勝負に出た。アルテはハーフタイムで守備の修正を促したのだが、メンバーを代えてきたYSの攻撃に後手を踏んでしまい、後半は立ち上がりから、またも苦しい時間帯を迎えてしまう。

前半以上に中盤の平間にボールが集まりだし、左右への展開、揺さぶりがさらに増え始め、YSらしいサッカーがピッチ上で躍動。しかしだ、前半同様、中央で守備を固めるアルテ守備陣をどうしても崩しきれない。これについてYS・鈴木監督は試合後、このように語っている。

「アルテさんの上手い守りにはめられてしまいましたね…パスは回せましたが、シュートらしいシュートを打たせてもらえませんでした(※後半はポゼッションで相手を圧倒するも、シュートはわずかに1本だけ)。私たちは、パス回しをするためにサッカーをやっている訳ではありません。

いかにゴールに近づき、そしてどうやって得点を奪うかを考えた末に、パスサッカーをしているのですが、もっとゴールへのクオリティ、アジリティを上げていかなければいけないことを痛感させられました。今日はアルテさんという、JFLのチーム(格上)に対して、自分たちのサッカーが通用しなかったし、あえてボールを持たされたという感じでしたね」

後半16分に、吉田がワンツーでゴール前に迫ったが、それ以降はしっかり守るアルテのディフェンス網を突破する事は出来ず、ボールを奪われて鋭いカウンターから、何度も「あわや追加点…」という場面を招いてしまうYS。しかし、ベンチに退いた松尾が「決まらねえよ…」とため息まじりでこぼしたように、バーに嫌われ、さらにはGKの好守もあり、どうしても試合を決定づける3点目が入らない。

Img_0355

そして後半37分、右サイドを駆け上がった益子がGKをかわしてシュートを放ち、今度こそ決まったかと思ったが、DFがゴールに戻って間一髪でクリア。まあ、決定機で追加点が奪えないのもアルテらしいところか…

試合は結局、終始落ち着いた守備を見せたアルテが2試合連続で無失点に抑え、2回戦の川崎フロンターレ戦(10/8 15:00 等々力)に駒を進めた。

-----------------------------------------

後藤監督は試合後、「勝ったのは良かったけど、あんまり内容は良くなかったね」と、率直な感想を述べたが、この天皇杯予選&1回戦において、例え格下とはいえ、しっかり2試合とも無失点で抑えたこと、そしてこれまでゴールを挙げてはいなかった選手(伊藤、竹越)がゴールを挙げ、チームの調子が上向きになったことに対して喜びの声を上げた。

確かに、これまでのアルテは「内容は悪くはないが、結果が出ない」という状態が続いていたが、この2試合で先制点を奪い、流れを引き寄せて楽な試合展開にしたことは評価していいし、選手にとっても「いいきっかけ」となったはず。また、勝てないことで空回りしていたチームだが、先週勝ったことで自信が生まれ、1回戦でも流れが悪くなる場面もあったが、そこをしっかり耐えて抑えきることが出来たことこそ、一皮むけることが出来た証であろう。

Img_0020

確かに、この2試合の戦い方は、サイドに展開して崩すというアルテ本来のサッカーとはやや違っていた。一発勝負は勝ってナンボという考え方から、勝ちにこだわろうと後藤監督は選手に言い聞かせてきたが、勝ったことにより自信が生まれ、この日も最後まで慌てることなく対応。あとは、週末から再開するリーグ戦(ブラウブリッツ秋田戦)に、この流れを持続させたいところだが、会場はすでに2年以上勝ってはいない、ホームの浜川。

アルテにとって、今度こそ不名誉な記録を断ち切りたいところだが、果たして「記録ストップ」となるだろうか? 正直、天皇杯2回戦でフロンターレと戦うこと以上に、そちらの方がアルテにとって非常に重要な気がしてならない。

-----------------------------------------

さて、ある意味で「完敗」を喫してしまったYS。これについて、「ボールを回せていたし、いいサッカーが出来ていた」と評価する人も少なくはないと思う。しかし、YSには「JFL昇格」という目標があり、2年連続してそれが目の前に迫りながらも、あと一歩というところで涙を呑んできた(2年連続地域リーグ決勝大会・決勝リーグにて4位)残念な結果が残されている。だからこそ、チームには「今年こそ」という思いは強いし、三宅前監督からバトンを受けたDFリーダーの鈴木陽平が選手兼任監督となってから、昨年以上のチームに生まれ変わろうと準備を続け、あと1勝すれば今年も関東リーグ優勝というところまで来ている。

そんなこともあり、JFL昇格を占うため、そして選手の実力、チームの力がどの辺にあるのかを知るために、このアルテ戦は非常に重要な試合でもあった。

予想どおり、YSの繋いで展開するサッカーはアルテを相手にしても繰り広げることは出来た。しかし、繰り広げるだけで、その先の「脅威」にまではならなかった。これは、昨年もその前も同じだったのだが、地域レベルとしては、最高傑作と呼べるほどチーム戦術が徹底され、美しいサッカーを繰り広げ続けてきた。だが、楽しく美しくは「強い」の同義語ではないのだ。

Img_0105

松尾に「怖くない」と言われたこと、そして鈴木監督も「通用しなかった」と言った部分を、どのように改善していくかが、YSのJFL昇格に大きく関わってくるだろう。昨年、地域決勝で戦ったパルセイロも、かつては楽しく美しいサッカーで昇格を目指したが、挫折を繰り返し続けた結果、鈴木政一という「勝つサッカー、そして負けないサッカー」を知る智将を招いたことでチームは変貌を遂げ、現在はJFLの首位争いに加わるチームになっている。

YSにだって、そこまで行ける能力はあるはず。チームコンセプトにこだわり続けることも悪くはないが、「負けないこと」を身につけることは、これから先の戦いにおいて、チームに絶対プラスとなっていくはずだが、リアリスト路線、そして試合巧者ぶりを残された期間でどこまで身につけられるだろうか? いろいろな意味で、この日のアルテ戦は「Y.S.C.C.の実力」を知らしめる内容となったが、この日の結果を、なんとか今後の戦いに活かして欲しいもの。

この日の会場には、元チームメートであり、現在はパルセイロでプレーする寺田洋介の姿もあったが、彼だって、Y.S.C.C.が上がってくることを待ち望んでいるのだから…

-----------------------------------------

第91回天皇杯・全日本サッカー選手権
1回戦 @群馬サッカー場
アルテ高崎 2-0 Y.S.C.C.
[得点者]
3分山田、30分伊藤
[警告]
41分小島(高崎)

[ゲームスタッツ]
シュート数:高崎13、YS7
ゴールキック:高崎12、YS9
コーナーキック:高崎3、YS11
直接FK:高崎12、YS11
オフサイド:高崎2、YS4
PK:高崎0、YS0

« 天皇杯、9/4開催分1回戦結果 | トップページ | 第47回全国社会人大会組み合わせ »

天皇杯」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/176307/52653372

この記事へのトラックバック一覧です: 「怖くない」という言葉の意味 【第91回天皇杯・1回戦】:

« 天皇杯、9/4開催分1回戦結果 | トップページ | 第47回全国社会人大会組み合わせ »