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2011年8月30日 (火)

天皇杯・群馬県予選決勝

アルテ高崎がJFLの戦いで見せている内容、そして目指す方向性は決して今の順位(16位)が妥当であるとは思ってはいない。試合を見ずに、結果や成績だけで語れば「弱いチーム」と思うかも知れない。しかし、後藤監督が信念を持って指導し続け、選手たちも数段ネームバリューのある選手たちと戦うことで、「そこでの戦い方」を身につけ、そしてカテゴリーに合った(沿った)成長を続けていた。

そして日曜日(28日)の天皇杯・群馬県予選決勝戦にて、アルテ高崎は勝ち上がってきたザスパ草津U-23と対戦したが、6-0と相手を寄せ付けずに一蹴。結果的にU-23は大敗を喫してしまったが、それについて「実力不足」と言われてしまえばそれまでなのだが、実力不足以上に「カテゴリーの差」があまりにも大きく出てしまったと言えるだろう。

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さてアルテだが、毎週のようにJ準会員クラブやSAGAWA、Honda FCといった強豪チームと対戦することにより、速さや当たりの強さに順応してきた。しかし、U-23の立ち位置は県リーグ3部であり、このカテゴリーで切磋琢磨することは難しい。それを補うために地域レベル、大学、JFL勢と練習試合を積極的に組んできたが、やはり練習試合は「トレーニング」であり、相手にはとってあくまでも「調整」でしかなかった。

真剣勝負で高いレベルと渡り合ってきたチームと、そうでないチームの違いがモロに出てしまえば、個のレベル差とかは関係無かった。負け惜しみかも知れないが、「個」ではアルテの選手と比べて、それほど差はないと思う。しかし、チームとしての集団戦となった時には、レベルの高い相手とやりあっているアルテとU-23では経験値が違いすぎた。

まあ、その経験値の違いが「実力差」と言うのでしょうが…
ということで、ここからは試合を振り返りたいと思います。

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[アルテスタメン]
ーーー松尾ーー伊藤ーーー
益子ー山藤ーー小島ー石沢
田中ー山田ーー増田ー布施
ーーーーー岩舘ーーーーー

[U-23スタメン]
ーーー藤崎ーー森川ーーー
ー清水ーーーーーー宮下ー
ーーー枝本ーー市川ーーー
川瀬ー安田ーー飯山ー西野
ーーーーー笠原ーーーーー

前節のパルセイロ戦では、チーム状況もあり無理をして途中出場した土井だが、この日はベンチスタートとなったが、それ以外はベスト布陣で挑んできたアルテ。しかし、システムに関してはブロック型の中盤ではなく、フラットに近い形で中盤を構成してきた。それに対して、U-23は藤崎がメンバーに復帰。しかし、ここまで正GKとして勝利に貢献してきた後藤聡志が直前の練習で右腕を負傷してしまい、決勝戦は無念の欠場となってしまった。

そんな中で始まった試合だが、U-23のファーストアタックを凌いだアルテは、山藤が左サイドに展開し、走り込んだ益子が拾って中央へクロス。そして中で伊藤が頭で合わせ、あっさり先制点を奪っていく。

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シーズン当初から、守備ラインの弱さは懸念材料でもあったU-23。両サイドバックの川瀬と西野は、そもそも守備の人ではない。しかし、チームのメンバー事情もあり今のポジションに落ち着いていた。そしてCBの人選に関してだが、この部分こそ一番の悩みどころでもあり、最終的に安田ー飯山に落ち着いたのは天皇杯予選が始まる直前であり、常に守備面では不安を抱えたまま試合を続けている状態でもあった。

そんなこともあり、チームは常に守り勝つというよりは、攻め勝つという色合いが強かったのだが、いきなり先制点を奪われたことで、目の覚めたU-23は積極的に仕掛けてアルテゴールに迫っていく。5分に川瀬が左サイドを突破してクロスを上げると、中で待っていた森川が落として最後は市川がミドル。その後も川瀬の突破からのクロスに森川が頭で合わせてゴールを狙う。

先制点を奪い、余裕が生まれてしまったアルテは、ややボールウォッチャーになってしまい、ラインもかなり間延びした感じとなり20分まではU-23のパスワークに苦しむ時間帯を迎える。そんな劣勢の中で、松尾は「間延びしているから全体をもっとコンパクトにしろ」と仲間に指示。徐々に全体のラインをコンパクトにし出すと、グループでの守備(囲い込み)が鋭くなり、U-23は20分までのようなパスを繋いで前に動いていくことが出来なくなってしまう。

さて、この日のアルテだが、明らかに普段のJFL公式戦とは違うサッカーをやってきていた。普段であれば、U-23同様、ポゼッションを高めてボールを繋ぎ、サイドに展開して崩すというサッカーを目指しているのだが、前に速い(長い)ボールを入れて効率的に攻め込んでいく形を徹底していく。

後藤監督は「今日は内容ではなく、勝つことが重要でした。それに、ここ最近、リーグ戦で結果が出ていないため、どうしてもここで勝ちたかったし、この試合(大会)は一発勝負なので、あえて勝ちにこだわった試合(内容)に徹底しました」と試合後に語ってくれたとおり、内容以上に「勝つこと」を意識してきた後藤アルテ。

ボールを持っている時間こそ多いのだが、相手の連動した守備の前に数的有利を作られてしまい、なかなか次の「出しどころ」が無く、そこで下げるか奪われてしまうU-23。さらには練習試合の時から目立っていた無理なパス交換を狙ってしまい、ミスからボールを奪われる場面が何度も目につき始めてしまう。

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県予選4回戦までの格下クラスであれば、彼らの実力からすれば大きな問題ではなかった。しかし、準決勝のtonan前橋戦は正直不安でもあった。tonanの試合を3試合見たが、流れも良くない、結果も出ていないという状況であり、格上の相手であるが、今の両者の調子からすれば互角にやり合えると感じていた。ただ、あくまでも互角であり、勝てるという確信を100%持つことは出来なかった。だが、彼らは見事にその壁を乗り越えて、決勝までたどり着いた。

しかし、決勝で戦ったアルテは、出場している選手こそ練習試合と同じであっても、内容は全く違う「本気モード」であり、そんな相手を前にして手も足も出せない時間が続いていく。

さて、あっさり先制点を奪ったアルテは、少々気の抜けた時間もあったが、全体のラインを修正した後は、完全に一方的な試合となり、攻撃では相手の守備の枚数が揃う前に速攻を仕掛けて効率よく攻め立て、守っても素速いブロック形成に的確なプッシュアップでU-23の攻撃をシャットアウト。

2-0で前半を折り返したが、JFL公式戦にて11試合連続勝ち星のないアルテ。だからこそ、相手が県3部のチームであろうと関係なく、この試合で勝っていい流れを取り戻したいという思いは強かった。ハーフタイムにロッカールームに戻ってから、後藤監督が話しを繰り出す前に、誰からではなく、みんなから『2-0っていうスコアはセーフティじゃない。次の1点を取った方が後半の主導権を握るからしっかり集中して戦おう』と声を掛け合い後半のピッチに飛び出していった。

そして後半開始早々の46分、いきなりのCKのチャンスを掴むと、こぼれたボールを小島が蹴り込んでスコアを3-0として、欲しかった「後半の1点目」を奪い、さらに試合を優位に進めることとなる。

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「2点差だが、最初の1点を奪えば試合はわからない」と声を合わせて後半のピッチに立ったU-23だが、集中しなければいけないセットプレーの場面で、またも不用意なマークから3点目を奪われてしまい勝負あり。その後は、アルテにやりたいようにサッカーをやられてしまい、終盤を迎えて体力的にも気力的にも限界となってしまったU-23は立て続けに3失点を喫してしまい、終わってみれば0-6という大差でアルテに敗れ、目標であった天皇杯出場は今年もお預けとなり、アルテは4年連続10回目の本大会出場を決めた。

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ザスパ草津U-23については、また、別の機会で将来的展望などを含めて書きたいと思いますので、勝って天皇杯本大会にコマを進めたアルテ高崎の方だけ触れたいと思います。

まず、試合後の後藤監督だが、このように語ってくれている。

「素直に勝ったことは嬉しいです。

ここまで、JFLでは本当に長いこと勝てていませんでしたので、この一発勝負の試合では内容云々ではなく、とにかく結果にこだわってやろうと選手に伝えて準備してきました。だから今日は普段やるようなサッカーではなく、勝つサッカーをしっかりやろうと決め、選手はそれをしっかりやり切ってくれました。

6得点できたことは良かったですが、それ以上に失点ゼロに抑えられたことの方が、ウチにとっては価値があると思います。まずは、この勝利で1人1人に自信が戻ってくれればいいと思いますね。

まあ、今日は『JFLのプライド』を見せられたかな? とも思っていますが、試合前、選手には相手とのカテゴリー差はあるけれども、謙虚にひたむきにやろうと伝えてピッチに送り出しました。そんな中で、選手はしっかり戦い、その『差』も見せてくれました。

これで今年も天皇杯に出られますが、1つ勝てばJ1のチームとやれますね。練習試合とかではなく、本チャンで格上と戦えることは選手にとって大きな励みになるし、実際に戦うことで選手って成長するんですよね。でも、2年連続で鹿島さんが相手だったんですけど、今年は違う相手(1回戦を勝てば2回戦は川崎フロンターレ)なんでとても楽しみです。J1とやれるようにしっかり準備して、1回戦(神奈川代表:Y.S.C.C.)を勝ち抜きたいと思います」

これまで、今季16位と苦戦が続いているアルテだが、この日の試合を見て、改めて「JFLというリーグで戦っていることはダテではない」ということを実感させられた。

かつて、アルテ高崎(当時はFCホリコシ)とザスパ草津は、前身であるフォルトナとリエゾン時代から相容れられない関係でもあった。しかし、最後の直接対決から7年という時が流れ、それぞれのチーム状況は激変。すでに、Jリーグを目指すチームではなくなったアルテは「意欲はあるが、ネームバリューも経歴もない選手たち」にとっての登竜門となろうとしている。

クラブ、そしてチームを取り巻く環境は、JFL18チームの中で最悪とも言えるし、環境面、選手の生活面での保証から考えれば、まだザスパ草津U-23の方が恵まれている。だが、「JFLにいるチーム」ということは、チームを選ぶ際の大きな決め手となっているし、さらには、このチームで頑張った結果として、杉山琢也、岩間雄大(ともに長崎)、小川裕史(長野)、秋葉勇志(東京V)のように、レベルの高いカテゴリー、そして上を狙えるチームに移籍する選手も出ており、このような「実績」があることによって、環境とか待遇なんてどうでもいい、とにかく高いレベルでやりたい、そしてチャンスを掴みたいという選手がアルテの門を叩いている現状もある。

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そして彼らのような選手を生み出した背景には、横浜FCでユースチーム監督として、育成段階の選手を指導した後藤監督の経験が活かされていることを忘れてならない。JFLというカテゴリーにいるチームだが、結果を残すこと同時に、選手をいかに育てるか? そしていかに理想のサッカーに近づくか? を追求しており、ユースチームではないものの、限りなく育成組織としての役割も担っていると言えるだろう。

Jクラブの下部組織ではあるものの、現状は県3部のU-23。環境は良くないが、それでもJFLという高いカテゴリーに属するアルテ。このように、それぞれのチーム状況は違うものの、両者に共通して言えることは、育成型のクラブであるということだ。

今回は大差を付けられたU-23だが、彼らにとっても「JFLのチームは強い」ということを肌で感じる事が出来た貴重な機会となったであろう。そして、トップチームとはまた別に、大きな壁となる存在があることを認識出来たことはよかったのではないだろうか? 

そして両者の今後だが、これからも互いに切磋琢磨できる相手として、それぞれが成長していくことを望みたいし、アルテには群馬全体のサッカーレベル向上のため、今後もtonanそしてU-23の大きな壁として存在してもらいたいところ。しかし、壁としての存在で有り続けるには、JFL残留が絶対条件となるので、まずはその点を今年もクリアして欲しいところであり、この日の勝利をきっかけに上昇気流に乗ることを期待したい。

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第16回群馬県サッカー協会長杯
決勝 @敷島県営サッカー場
アルテ高崎 6-0 ザスパ草津U-23
[得点者]
4・30分伊藤、46分小島、85分土井、89分竹越、90+1分益子(高崎)
[警告]
15分布施(高崎)
30分西野、48分枝本、51分藤崎、57分吹田(草津)

[ゲームスタッツ]
シュート数:高崎22、草津11
ゴールキック:高崎17、草津14
コーナーキック:高崎5、草津0
直接FK:高崎13、草津9
オフサイド:高崎0、草津4
PK:高崎0、草津0

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