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2011年8月 2日 (火)

クリーンに勝つことの素晴らしさ

監督交代後、7戦を消化して5勝2分と、いいペースで勝ち点を積み重ねてきている松本山雅。しかしここ2試合では、順位上で上を行く長崎、Hondaには勝ち切れず連続ドローが続いた中で町田戦を迎えたのだが、この試合はではチームの精神的支柱である松田直樹を出場停止欠く状況であり、改めてチームとして総合力が試される試合となったのだが…

[町田スタメン]
ーーディミッチー勝又ーー
ー酒井ーーーーーー鈴木ー
ーーー柳崎ーー小川ーーー
津田ー太田ーー田代ー藤田
ーーーーー修行ーーーーー

[山雅スタメン]
ーーー木村ーー片山ーーー
ー木島弟ーーーーー久富ー
ーーー渡辺ーー須藤ーーー
李ー多々良ーー飯田ー阿部
ーーーーー石川ーーーーー

メンバー的には不動といえる構成となった町田に対し、山雅は松田だけではなく弦巻も出場停止であり、さらには木島兄も足首の状態が思わしくなくベンチスタートと、主力を欠く状況。そんな状態の中でも、加藤監督は新加入の李(イ・ジョンミン)を含めた「新しいオプション」を求めたいこともあり、李をスタメンで使ってくるシステムを町田戦に向けて準備してきた。しかし、チームはオプションを探るどころか、松田という支柱を失ったことで非常に安定性を欠いたまま試合に入ってしまうのだ。

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それに対して、町田のポポヴィッチ監督は「山雅がどう出てくるか?」ではなく、あくまでも自分たちのスタイルを貫き通そうということだけを伝えてピッチに送り出したのだが、試合は圧倒的な町田ペースで始まっていく。2分にゴール前やや左でボールを受けた勝又が最初のシュートの放ってペースを掴むと、ボランチの小川、柳崎が常に高い位置を取り、セカンドボールをことごとく支配して中盤を制圧。それに対して、山雅のボランチ須藤、渡辺は完全に押し込まれてしまい、全体のラインが下がってしまい最終ラインから2トップまでの距離が最初から間延びした感じになってしまう。

そんな相手に対して、いつものように攻撃を司る前の4人は常に前から激しいプレスを仕掛け、山雅は最終ラインで仕方が無くボールを回すだけになってしまう。さらには、無理に前にボールを出せば高い位置で張っている柳崎、小川が前でカットして、再びそこから町田の攻撃がスタートしていく。

9分には太田からのロングフィードが右サイドを駆け上がった鈴木に入りシュートを放ち、続く10分にはディミッチ→勝又とボールが回り、最後は走り込んできた小川が鋭いミドルでゴールを狙う。12分には小川のカットからチャンスを掴んでディミッチが狙い、13分にも裏のスペースを狙うスルーパスで山雅ゴールを脅かす町田攻撃陣。

完全にペースを握った町田攻撃陣のやりたい放題が続く中で、「精神的支柱」のいない山雅は立て直す術が見あたらない。前半20分を過ぎたところで、加藤監督はベンチで出番を待っていた木島良輔(兄)に、速くもスタンバイを命じる。当初は片山に頑張って貰って後半30分過ぎの勝負所で木島兄を使いたかったのだが、前半37分というやや早い時間帯にも関わらず片山に代わって木島兄を投入。

片山の交代に関しては、試合後、加藤監督は「あの出来であれば仕方がないでしょう」と苦い表情で語ってくれたが、そうは言っても、前線にまったくボールが入らない状況では、やや可哀想な気もするのだが… まあ、そうは言っても、前線だけではなく、サイドでも起点を作ることができ、さらには一人で勝負も出来る木島兄を投入し、なんとか流れを変えようとする加藤山雅。また、この交代の裏には町田最終ラインのポジションも影響していたことを見逃してはならない。本来、町田の最終ライン構成は藤田が左、津田が右というパターンが多いが、この日は両者が逆のポジションを取っていたのである。

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加藤監督は、藤田の攻撃力に関しては高く評価していたが、津田に関しては「守備の人」ということもあり、津田のいるサイドはそれほど攻撃には絡んでこない。だからこそ、津田のいる(と思われる)左サイド側に、攻撃力のある木島弟を配置したのだが、フタを開けてみるとポジションは逆であり、木島弟は藤田の攻撃参加の前に持ち味を発揮出来ない時間が続く。そんなこともあり、木島兄を津田の前に配置して、弟の方をFWにスライドさせる変更に出たのだ。

結果的に、その選手交代とポジションチェンジはそれなりの効果をもたらし、さらにはセットプレーでの飯田の高さと合わせて前半の終盤になんとか町田ゴールに迫るチャンスを作り出した山雅だが、こちらも得点を奪えないままスコアレスで前半を折り返す。

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後半に入ると、まず最初に決定機を迎えたのは山雅であった。

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47分、ゴール前正面の位置からFKのチャンスを得ると、新加入の李が直接ゴールを狙っていくが、シュートはバーを直撃して得点ならず。しかし、この一連の流れから始まった町田のカウンターを山雅守備陣は止めることが出来ず、酒井から左に出たボールを勝又がトップスピードのままゴール前まで持ち込み、最後は中に飛び込んできたディミッチがしっかり合わせて町田が先制。

ここまで、いい流れをいくつも作っていながらも得点出来なかった町田が、電光石火のカウンターでいとも簡単に先制点を奪うと、町田は無理をせず山雅の攻撃に対してどっしり構えるディフェンスで盤石の試合運びを見せていく。それに対して山雅の攻撃なのだが、相変わらずボランチの位置取りが悪く、全体のラインがコンパクトにならず、前半の町田が見せたような全体が連動する攻撃を作り出すことができず、木島兄の「強引技」によるチャンスメーク以外から、町田守備陣を脅かすシーンが生まれてこない。

そんなイヤな流れの中で、誰もが「注意しないと…」と感じてい部分で問題が発生してしまう。

途中交代で入った木島兄は、まったく不要な場面でもらわなくていいイエローを貰ってしまい、さらにはサイドからFWに回った木島弟が、彼をマークする田代と厳しいマッチアップを繰り返す中で、56分にラフプレーから1枚目のイエローを受けてしまう。またも木島兄弟が揃ってイエローを貰うことで、試合は徐々にヒートアップしていく。

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そんな中でも、ポポヴィッチ監督が志す「クリーンなサッカーでファンを魅了しよう」というビジョンをしっかり遂行する町田が、相手のラフなチャージに対してもうまく対応し、76分に1点目とは逆のパターンから、今度は勝又が蹴りこんでリードを2点差とする。

リードを2点差とされた山雅は、さらに窮地に追い込まれることとなってしまう…

79分、木島弟がマーカーである田代に競り合いの際に「跳び蹴りですか?」という激しいチャージをかましてしまい、2枚目のイエロー…ではなく、このプレー単体で一発レッドとなってしまい、2点のビハインド、さらには残り時間がまもなく10分という時間で山雅は数的不利な状況に陥ってしまう。

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10人となってしまった山雅だが勝負を諦めず、83分に塩沢を投入して最後の勝負に出ると、終盤は一進一退の攻防が続くのだが、90分にオフサイドラインぎりぎりを抜け出した塩沢が中に折り返すと、詰めていた木島兄が蹴りこんで1点差に追いすがる。負けたくないという思いも当然だが、弟の失態をなんとかカバーしてやりたいという思いを感じさせるシーンであったのだが、今日の山雅は最後まで「締まり」がなかった…

せっかく同点に追いつき、残された時間(ロスタイムの3分)で飯田を前に出してパワープレーで同点を目指そうとしたところに、あろうことか須藤の判断ミスもあり太田にカットされると、これを勝又が拾って後は独走。そして勝負を決める3点目を奪い取って勝負あり。

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結果的に、終始流れを掴んでいた町田の完勝で終わったこの試合だが、松田直樹という支柱がなければ、ここまで「もろいのか?」ということを露呈してしまう試合をやってしまった山雅。

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元々、試合の立ち上がりは良くない山雅だが、粘り強い守備の中から徐々に流れを掴んでいき、「ここ一番」というところでしっかり得点して勝ってきたのだが、今日の山雅には「粘り」というものは全く見えてこなかったし、チームを引っ張っていくリーダー不在を大いに感じさせてしまうゲームでもあった。このチームにはゲームキャプテンとは別に「ピッチ上の総監督」という立場の人間がいるが、その人にすべてを任しているようではキャプテンの意味はないし、そんな大きな存在がいないからこそ須藤にはリーダーシップを発揮して欲しかったのだが、この日は精細を欠いたプレー同様、チームを引っ張っていく姿にも不満の残る内容となってしまった。

須藤自身も、今日の出来、そして不甲斐ないチームに「これじゃいけないと思っています」と試合後に語ってくれたが、その危機感を持つ中で、どうやったら松田や木島兄の力に頼らなくてもいいチーム(※別に2人がいらないという訳ではありません)になるのかを? をチーム全体で考えていくことが必要だし、2人の力に頼りっぱなしの状態から脱却しなければ、この先にも続いていく上位との対決は難しいものになってしまうと言えるはずだ。

だからこそ、松田もいない、弦巻もいない、鐵戸も今井もいない、木島良輔はベンチという状況の中でも「やれるんだ」という姿を見せなければいけなかったのだが、現実的には相手に完全に飲み込まれてしまい、手も足も出せないままもどかしい戦いを披露してしまい、その結果として加藤監督は早い時間から木島(兄)に頼ることを選択したのだが、この日の山雅はこの時点で「負け」だった。己のチームに課した「新しいオプションを求める」ということが出来なくなった、もしくは諦めた時点で、この試合の勝敗はすでに決まっていたのかも知れない…

そしてこの日のもう一つのポイントだが、木島弟(徹也)の一発退場であることは間違いない。

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後半34分、競り合いの中でマッチアップする田代選手に、結果的に「跳び蹴り」を食らわすこととなり、この日2枚目のカードは確実な状況となったが、今村主審の下した判定は2枚目のイエローカードではなく、「極めて危険なプレー」と判断し、このプレー単体でのレッドカード(一発退場)を命じたのである。このプレーの直後、山雅サポーターとて「やってしまった…」と言ったところであろうし、誰の目にも最低でもイエロー→2枚目で退場は明らかだったこともあり、判定に異を唱える状況ではなかった。いや、それどころか「またおまえかよ…」という諦めのような雰囲気の方が強かった。そして試合後の加藤監督もあのプレーの判定について異論を唱えることはなかった。

また、この日は木島兄も不要なイエローをもらっているのだが、この兄弟の高い攻撃能力は誰もが認めるところだが、すぐに熱くなってしまい、自分を制御出来ないところを修正していかなければ、いくら能力が高くてもこのままでは計算できる戦力として頭数に入ってこなくなってしまうかもしれない。

加藤監督は試合後、木島弟の退場、木島兄の警告について「これまで彼らにはいろいろ話しをしてきましたが、突発的な行為に関してはどうにもなりません… アクシデントでカードを貰うなら仕方がないが、あんなプレーではどうにもならないし、チームとして許されることではない」と強い口調で語った。

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しかし、その反面で「カードを毎回のように彼らが貰っているが、その背景となるプレーも考える必要があります。何がそうさせるのか、チームとしてしっかり検証しないといけないと思っています。あと、彼らを今後使っていくかという部分に関しては、私の意見(考え方)もありますが、他の選手がどう思っているのかも聞きたいところです」とも語ってくれたのだが、その表情には柱がいないとまとまらないチーム、諸刃の剣でもあるキーマンがいなければ勝つ術があまり見つからないチーム状況に対する「苦悩」が大いに見受けられたし、会見場に試合終了から30分を過ぎても現れなかったことが全てを表していると感じさせてしまった。(※会見場に訪れたときには「1回雷を落としてきました」という表情でもあった…)

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いろいろな面で苦悩いっぱいだった加藤監督に対して、町田のポポヴィッチ監督は素晴らしいパフォーマンスを見せたチームに満足感を感じているようで、終始にこやかな表情で会見に臨んでくれたのだが、この試合を振り返るにあたって「今日の相手にはブルース・リーがいたようだね」と笑いを誘う余裕すら見せてくれた。

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それにしても、この日の町田も(今季、町田の負けゲームを見ていないので…)素晴らしかった。序盤から前線の4人が高い位置から積極的にプレスを掛けてボールを奪い、中盤、最終ラインもどんどんラインを上げていき、山雅攻撃陣を前に行かせない。そして高い位置でセカンドを奪えばすぐに鋭い攻撃を仕掛けて相手ゴールに接近。ディミッチ、勝又の連携も冴え渡り、そこにサイドバックの藤田まで攻撃に絡む分厚い攻撃を見せていく。

そんな中で、最後まで豊富な運動量を見せつけ、試合終了間際でも相手DFに走り勝って3点目を挙げた勝又の働きは文句なくMOMであるのは間違いないのだが、彼と甲乙付けがたい働きをしてくれたのがボランチの小川であり、木島兄弟を封じ込めたCBの田代であろう。ポポヴィッチ監督は常日頃、ファンを魅了するプレーとは「華麗かつフェアなプレーを見せること」と選手に言い聞かせてきたのだが、この日の小川や田代は相手のようなラフなプレーや挑発に乗らず、終始落ち着いたプレーを見せ、影のMOMと呼べるプレーを随所で見せくれた。

先日の金沢戦では出場停止ということで、ポジションを大前に譲った小川だが出場停止空けから定位置に戻り、この日も素晴らしい出足で山雅に攻撃のスイッチを入れさせない動きを見せ、奪ってからすぐに自身も攻撃に絡む積極性を大いにアピール。元々FWであり、その攻撃力は定評があったのだが、今季はバランサーとしても花開こうとしている。そして最後に1点は奪われたものの、1失点で試合を終えたCBの田代は試合後、サポーターの前で胸を叩きながら「ハートで負けなかったこと」をアピール。自分の気持ちの弱さに負けてしまった木島弟に対して、年齢ではまだまだ「若手」の部類に入る田代だが、町田に活躍の場を求めてから日々成長していることを印象づけるプレーを見せてくれた。

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それにしても、試合後の会見にあった「今日の試合で相手のラフプレーに乗ることなく、最後まで私が教えたサッカーで戦い、そしてクリーンに勝利したチームに誇りを感じます」と語ってくれたポポヴィッチ監督の言葉は非常に説得力があるものだったし、なによりも今季最高の観客動員(8113人)を集めた試合に「ふさわしい内容」で勝利した町田ゼルビア。こんな試合を披露できれば、必ずリピーターが増えるであろうと感じさせるゲームをしっかり見せてくれたのである。

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2011JFL後期第5節 @町田
町田ゼルビア 3-1 松本山雅
[得点者]
49分ディミッチ、76・90+2分勝又(町田)
90分木島良(松本)
[警告]
76分星、81分柳崎、83分藤田(町田)
52分木島良、56分木島徹、60分渡辺(松本)
[退場]
79分木島徹(松本)
※イエロー2枚の退場ではなく、プレー単体のレッドカード

[ゲームスタッツ]
シュート数:町田22、松本14
ゴールキック:町田10、松本10
コーナーキック:町田3、松本5
直接FK:町田13、松本15
オフサイド:町田2、松本4
PK:町田0、松本0

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