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2011年6月14日 (火)

新生山雅が示したもの

監督交代という「荒治療」に出た松本山雅にとって、非常に重要なゲームとなったアルテ高崎戦。そしてこのゲームにて大量5得点を奪い、結果的にリスタート初戦を無事に飾ることは出来たのだが、結果と同じぐらい重要なはずである「変わった姿」もしくは「変わる予兆」を見せることが出来たのであろうか…

[アルテスタメン]
ーーーー土井ーーーーー
白山ーーーーーーー山藤
ーーーー松尾ーーーーー
ーーー益子ー小島ーーー
川里ー山田ー増田ー布施
ーーーー岩舘ーーーーー

[山雅スタメン]
ーー木島兄ー木島弟ーー
ー北村ーーーーー木村ー
ーーー松田ー渡辺ーーー
鐵戸ー須藤ー飯田ー阿部
ーーーー石川ーーーーー

前節の秋田戦と同じシステム・メンバーで来たアルテに対し、システムを4-4-2に戻し、メンバーも3人入れ替え、佐川印刷戦以来の「兄弟2トップ」を組んできた山雅。

アルテのキックオフで始まったゲームは、いきなりボールを奪った山雅がCKを奪い、そこから畳み掛ける攻撃を見せていく。2分には一連の流れのスローインから右サイドで木村勝太がボールを持つと、そのまま突進。PA内に切れ込んでこの試合のファーストシュートを放つと、一直線でゴールマウスに飛んでいくがポストに嫌われゴールならず。

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しかし5分、アルテも反撃。FKのチャンスから、山田が競り勝ったボールに松尾が反応してゴールに蹴り込んだが、ここは惜しくもオフサイド。続く6分には、土井が左サイドでボールを奪うとそのまま突進。8分にはGKからボールを松尾が競り勝ち、セカンドを拾った土井がシュート。

ポゼッションでこそ山雅がリードする展開だったが、チャンスの数では五分五分と言ってもいい立ち上がりを見せた両者。このまま攻め合う展開を見せるのかと思われたが、「個の力」で優る山雅が9分に鐵戸ー木村のパス交換から鐵戸がサイドを駆け上がりチャンスを作ると、そこからは一方的な山雅ペースに替わっていく。

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13分には木島兄がシュートを放つと、続く15分には連続してCKを獲得してアルテゴールに迫る。そして9分のチャンス以降、山雅の攻撃で目立ち始めたのがロングキックの多用であった。最終ラインのどの位置からも、速いタイミングで縦に入っていく木島兄弟目がけて入れていくか、両サイドの裏のスペースを狙って蹴り込んでいく。

時間をかけず、効率的に相手陣内に入っていく山雅。吉澤前監督時代でもやっていた戦術の一つであるが、この日見せた戦い方は今までの形に対して、選手それぞれの役割分担をもう一度明確化させた上で「リスクをとことん排除しながら、最も効果的かつ効率的に攻める」という方法論を追求していく。

18分には、須藤から出たロングボール1本で木島兄が抜け出すチャンスを作り、19分には渡辺が見せた絶妙なインターセプトから北村へ展開。21分にも前線の木島に入ると素速くシュート(ここはDFがブロック)そして23分、カウンターから木島弟が持ち込んでシュート! 今度こそ決まったかと思われたが、バーに嫌われまたも得点出来ず。

9分以降、山雅のやりたい放題の時間が続くのだがゴールマウスにも嫌われ、どうしても得点が奪えない。少し嫌な展開になってしまいそうな雰囲気も漂いだしていたが、そんな空気を前節欠場した飯田が吹き飛ばしていく。28分、FKのチャンスを掴むと、キッカーの鐵戸が飯田とひとこと言葉を交わしてからボールをセット。試合後の飯田は「鐵さんから、あそこ(ファーサイド)に蹴るから」と言葉を交わしたことを語ってくれたが、その言葉どおりにいいボールが飯田のポジションに入り、あとは頭で叩き込むだけであった。

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その後の前半残り時間も山雅ペースで試合は進み、時には木島弟が下がり目のポジションをとり4-4-1-1(もしくは4-2-3-1)の形を取りながら、35分、42分、43分に同じような速い展開からチャンスを作っていく。それに対してアルテは、ついに8分の土井のシュート以降、1本のシュートを打てないまま前半戦を折り返すこととなる。

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前半は山雅の一方的な展開で進んでしまったこのゲーム。後半戦のポイントは、山雅の攻撃の起点となっている最終ラインからのロングボールを、アルテはどう封じていくかであったが、思わぬ展開から後半の45分は始まっていく。

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48分、CKのチャンスを掴んだアルテ。一度はDFがクリアしたが、こぼれ球を山藤が拾い、再び中に入れると松尾が蹴り込んでワンチャンスを活かしたアルテがゲームを振り出しに戻す。これで勢いづいたアルテは、全体の出足もよくなり、懸案だった最終ラインへのプレスも掛けられるようになり、山雅は前半のような「思いどおり」の展開が出来なくなる。

失点した直後に、またも浮き足立ってしまった山雅を横目に、後藤監督が目指すパスサッカーで相手ゴールに迫っていくアルテ。52分には、山藤、布施、松尾が細かくパスを繋ぎ、最後は小島がシュート。続く54分、58分にも中盤の益子、小島が前に押しだし、チャンスを広げていく。しかし、山雅守備陣もさすがに「負けられない」という思いは強く、時間とともに落ち着きを取り戻していく。

試合前、加藤監督は「19番(土井)、17番(松尾)、15番(山藤)の3人が、アルテの攻撃の中心となるので、絶対に彼らを自由にやらせてはいけない」という指示を与えていたが、CBの飯田、須藤が後半に入ってから土井を完封。ターゲットマンを封じ込められたアルテは徐々に攻め手を失っていく。また、後半直後に失点を与えてしまったことを踏まえ、松田は自らの判断から「今日は守備のバランスを取る」ということに重点を置いたため、アルテが狙いたかったスペースの「ギャップ」が生まれず、せっかく掴んだかと思われた流れを再び手放してしまう。

そして61分、CKのチャンスを掴んだ山雅は、セカンドボールを拾った鐵戸が中にいいボールを入れると、ファーで飯田が頭で合わせ再びリードを奪う。2-1とした山雅は、前半のようなロングボールと速い展開を駆使したサッカーで相手ゴールに襲いかかるが、アルテも交代策でなんか対抗しようとしていく。サイドで速い突破を見せる小林定人、中盤でゲームを作れる石沢を相次いで投入するが、ゲームの流れを変えるまでには至らない。

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スコアは2-1のまま終盤を迎え、ピッチには後藤監督の「堪えどころだ!」という声が響くのだが、ロングボールから生まれる速い展開の前に、前半同様、引き気味となってしまうアルテ。さらには大事な場面でトラップミス、パスミスが生まれてしまい、76分、木島弟にこれをさらわれてしまい、あっけなくゲームを決定づける3点目が生まれる。

ここまで何とか耐えてきたアルテだが、バックパスのミスをさらわれての失点で完全に集中が切れ、あとは山雅のやりたい放題となってしまい(アルテにとって)ゲームは崩壊。その後も攻撃の手を緩めない山雅は2ゴールを追加し、合計5得点を奪って快勝。

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さて、新体制初戦となった松本山雅だが、今後の方向性というか、分かりやすいビジョンとして「残り試合を全部勝つ意識でやる」「これで積み重ねてきたサッカー(堅守速攻型)を継続しながら、効率的に勝てるチームを模索していく」「チーム内競争の基準を明確にし、全ての選手に高いモチベーションを維持させる」ことを打ち出した加藤新監督(※詳細は監督会見を参照)。さらにこの試合では、攻撃面ではお世辞でも「良かった」とは言えないが、1失点を喫したことを受け、松田はバランス重視に走るなど、勝つサッカーより、負けないサッカーへとさらに舵を切ってきたと言えよう。

確かに、この日の内容は攻守に渡って昇格を争う「べき」チームとして、ほとんど満足できるものではなかった。ただ、吉澤監督の更迭→加藤新監督就任という事実が、選手の意識を大きく変えたことだけは事実である。監督も、キャプテンの須藤も、2得点を挙げた木島徹也も揃って「監督が替わったからと言っていきなりサッカーが大きく変わる訳はない」と答えてくれたが、それぞれの選手が「現状を変え、自分を変えなければいけない」という危機意識を強く胸に抱いてピッチに立っていた。

いきなり最初から、すべてが出せるわけではない。であるからこそ、次のダービーまでの「あと2試合」の積み重ねは非常に重いものとなってくるのだが、方向性を打ち出すことと、きっかけを掴むことができた加藤山雅。そして監督が「ピッチ上の監督」そして「チームを牽引していくリーダー」と評する松田直樹は、この試合後にこのように語ってくれた。

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「結果は良かったけれども、だれも(内容には)満足していない。後半、簡単に失点してしまったことなど、まだまだ課題はたくさんありますよ。今日も木島兄弟に頼った攻撃になってしまったりね。ただ、ヨシユキさん(加藤監督)に替わってから、サッカーの細かい部分が変わりましたので、一つ一つのパスや動きを大事にしたサッカーを突き詰め、連携を高めていけばもっと良くなるはず。

あと、今日は『ヒデさん(吉澤前監督)のためにも勝とう』と言ってピッチに出ていきました。そしてここから『25連勝しよう』と言ってね。最初は本当に酷すぎたチームだったけど、随分変わってきたし、1年後(実際には今年の12月)に、笑顔で終われればいい(昇格できれば)と思っています」

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さて、思わぬ大敗となってしまったアルテだが、今日は会場の雰囲気や、相手の「気迫」に最初から飲み込まれてしまったような気がする。それしても監督が「ビビリだから」と会見で言った言葉が半分冗談だとしても、もう半分は当たっていると思うし、ビビリ以上にいいパフォーマンスをコンスタンスに続けられないところが、非常にもどかしく感じる。

2月のチーム始動から見てきたが、今季の仕上がりは非常にいいものであり、武蔵野戦などでは鋭い出足を見せ、実に素晴らしいゲームを展開した。あの時の動きをこの試合でも見せていれば、少なくともこのような大差が付くことは無かったであろうし、もしかすれば終盤まで接戦を演じるだけの力を十分に秘めていると感じていた。

しかし、この日の試合はそれは最後まで出来なかった…

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パスの供給源である最終ラインにガンガンプレスを掛けに行くか、もしくは楔となる木島兄弟を徹底マークするかなど、いくつかの対処方法はあったはずだが、後半立ち上がり以外は、中途半端なままで終わってしまった。本当は出来るはずなのに、それをやらないまま終えてしまい、呆気なく敗れてしまったアルテ。今年はJFL残留という目標以外に、一桁順位で終わるという目標も立てている後藤アルテだが、相手と戦う前に、己の気持ちが負けてしまっていたら最初から勝ち目はない。

やっている内容、目指す方向性は悪くはないアルテ。このチームに必要なことは戦術の修正以上に、自信を持って戦うことと、諦めない強い気持ちを持つことなのだが、次節までにそれをしっかり取り戻すことが出来るだろうか?

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2011JFL 前期第15節 @敷島
アルテ高崎 1-5 松本山雅FC
[得点者]
29・62分飯田、 76・83分木島徹、89分弦巻(松本)
49分松尾(高崎)
[警告]
26分白山、38分益子、64分小林(高崎)
41分木島良、54分木島徹(松本)

[ゲームスタッツ]
シュート数:高崎4、松本16
ゴールキック:高崎11、松本6
コーナーキック:高崎3、松本6
直接FK:高崎18、松本16
オフサイド:高崎3、松本1
PK:高崎0、松本0

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