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2011年5月 6日 (金)

激闘再び、大学界の茨城ダービー

2011関東大学サッカーリーグ
前期第1節 @西が丘
筑波大学 2-3 流通経済大学
[得点者]
60分赤崎、62分瀬沼(筑波大)
21分堀河、65分征矢、66分中美(流経大)

開幕が延期されていた関東大学サッカーリーグだが、今週から2011シーズンがスタート。そして開幕から、いきなり筑波vs流経という大学サッカー界の「茨城ダービー」が実現し、今回の対戦も多分に洩れず、激しい撃ち合いとなった。

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[筑波大スタメン]
ーーー赤崎ー瀬沼ーーー
ー曽我ーーーーー上村ー
ーーー谷口ー八反田ーー
山越ー石神ー松田ー不老
ーーーー三浦ーーーーー

[流経大スタメン]
堀河ーー征矢ーーー椎名
ーーー河本ー関戸ーーー
ーーーー中里ーーーーー
比嘉ーー乾ー山村ー天野
ーーーー増田ーーーーー

小澤(現水戸)、森谷(現横浜Fマリノス)、原田(現仙台)、須藤(現Honda FC)といった主力選手が卒業した筑波大だが、中心選手として期待される八反田、3年生になった瀬沼、そして2年後に間違いなく「争奪戦」の対象になるであろう赤崎秀平と谷口彰吾や、成長著しい上村、曽我といった有力な2年生がチームに残っており、メンバー構成的に大きな変化を特に感じなかったし、大方予想通りのメンバーだった筑波大。

対する流経大だが、昨シーズンが結果的に3年生主体となったこともあり、ほとんどメンバーは変わっていないが、システムを中盤がボックス型の4-4-2から、攻撃的姿勢を強めた1ボランチ(アンカー)の4-3-3システムに変更して開幕戦に挑んできた。まあ「ほとんど変わらない」とは書いたものの、乾、堀河の両名は4年生でありながらも大学リーグは初出場であり、どこまでやれるのかという点や、昨年導入を模索したが、噛み合わなかったこのシステムが実践で通用する(噛み合う)のか? という部分では未知数だった。

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試合は序盤から攻め合う展開となったのだが、ペースを握ったのは流経大。

今年の流経大は前線に人数を増やしたことで、自分たちから積極的に仕掛け、守備においても前からどんどん行こう!という姿勢を全面に押し出している。しかしだ、常に「イケイケドンドン」のサッカーをするのではなく、落ち着くところ、我慢するところでは山村や中里の位置でじっくり時間を使いながらボールを回し、相手の動きを伺いながら隙を見つけ、「行ける」と判断した時から一気にスピードを上げていく。

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昨年の試合ではほとんど見られなかった「緩急」を、上手く使い分けるようになってきた流経大。前から行くときは行く、じっくり構えるときはしっかり見る。そんなの当たり前だろ? と思われる方は多いはずだが、プレスが速くなり、どのカテゴリーにおいてもスペースの潰し合いが厳しくなった現代サッカーにおいて、そんな「当たり前」を実践することは見ている側が感じるほど簡単ではないのだが、開幕戦での流経大はそれをスムーズにやってのける。

当然ながら、ボールをキープすることに長け、長短のパスも正確であり、視野の広さが自慢の中里、山村といったタレントが後ろに控えているからできることでもあるのだが、前線で速い攻守の切り替えを繰り返す堀河、椎名の動きがあるからこそ、4-3-3というシステムが活きてくるもの。

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そしてゲームは、新しいシステムに挑戦した流経大にどんどん傾いていき、21分、関戸から前線の征矢を経由して、ゴール前やや左に位置していた堀河にボールが渡ると、少し中に切れ込んでからシュート! これが決まって流経大が先制。これまでの3年間は、ドラゴンズ、JFLチームでプレーしていた堀河だが、抜擢となったこの試合で見事に期待に応え、貴重な先制点をたたき出す。

この1点で流れをさらに引き寄せた流経大は、試合を優位に進めていく。3トップは攻撃だけではなく、守備面でも大きな働きを見せ、高い位置からプレスを掛けていくことで筑波大はラインを下げざるを得ない形となる。さらには、押し込まれた状況の中で守備ラインの混乱が続いたこともあり、風間監督は25分過ぎからやむを得ず谷口と石神のポジションを入れ替えを行い守備の修正を図っていく。

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すると、谷口が最終ラインに入ったことで落ち着きを取り戻した筑波大は、やっと司令塔の八反田、そしてサイドで起点となる上村、曽我にボールが入るようになり反撃の機会が生まれる。そして32分に瀬沼、35分は赤崎と連続して惜しいチャンスを作りだし、やはり強力2トップにボールが入れば筑波大の攻撃は危険であるということを改めて証明する。

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後半戦だが、前半終盤から筑波大がペースを盛り返したこともあり、一進一退の攻防が再び続き、両チームとも序盤からいい形でシュートまで持ち込む場面を作っていく。そんな攻防の中で、ハーフタイム時に「CBとボランチの前のスペースをしっかりケアしないと…」ともらしていた川澄コーチの懸念が案の定表面化していく。

前からのプレスがはまっているうちは問題なかったが、2トップにボールが入ればやはり破壊力満点の攻撃を繰り出してくる筑波大。1ボランチの4-3-3とは、主導権を握っている時間帯であれば非常に効果的だが、守勢に回ったときには守備の枚数が少ないために危険も伴う。さらに相手2トップは、昨シーズン21得点を叩きだしたリーグ屈指のコンビでもあり、流経大としては「いかに2人とボールが入らないようにするか?」が守備のポイントであったが、渡ってしまうとやはりピンチを招いてしまう。

そして、トータルタイム60分を迎えようとした頃から、この試合のクライマックスといえる「白熱の6分間」が始まる。

前半はほとんど攻撃に絡むことのなかった筑波両サイドバックが攻撃に絡みだし、60分には石神ー山越という守備の人がチャンスを作り、最後は中に入ってきた赤崎が蹴り込んでついに同点。川澄コーチが「注意すべき」と言っていたエリアに危険人物を入れてしまえば、この同点ゴールはある意味、生まれて当然の結果でもあった…

ここまでの60分間は、まさに「思い描いたとおり」の展開を続けていた流経大だが、この失点により完全に浮き足立ってしまい守備が混乱。キックオフのリスタートをミスから赤崎に簡単に奪われ、そのままシュートまで持って行かれてしまう。決定的場面を迎えたが、ここは増田のファインセーブで難を逃れる流経大。しかしCKのピンチが続き、一旦はクリアするもののセカンドボールを谷口に奪われ右に展開される。そしてボールを受けた右の不老はそのまま縦にドリブル突破を図り中へクロス。そして中で「フリー」で待っていた瀬沼にドンピシャのタイミングでボールが入り、これを難なく決めてあっという間に筑波大が逆転に成功。

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それにしても、この場面、クロスを上げられたことは致し方がないとしても、中の瀬沼がフリーだったのは激しくいただけない… 

さて、たった2分間で逆転を許してしまった流経大だが、試合はこれで終わらない。そう、いつも「二転三転」が当たり前となっているのが両者の対戦だ。さらには、ここからの流経大は昨年と大きく変わっており、脅威の底力というか勝利への執念をギラギラと見せつけることとなる。

1点ビハインドとなった流経大ベンチでは、いくつかの交替プランを用意していた。一つは単純に攻撃のテコ入れを図るための選手交代を模索し、もう一つは山村を最終ラインから前(ボランチ、もしくは前線のターゲット)に置き換えるパターンの2つを考えていた。そしてベンチは、最初のカードとしてサイドアタックから中に切れ込んで勝負ができる中美を投入。

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すると、交替出場で入った中美がファーストタッチで左の比嘉に絶妙のボールを入れて展開。すると、ボールを受けた比嘉は不老を抜き去って中へ鋭いクロスを入れる。これにゴール正面に走り込んだ征矢が体をなげうって渾身のダイビングヘッド一閃! あまりにも見事であり鮮烈な同点ゴールが決まって、試合は再び振り出しに戻る。

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だが、クライマックスはまだまだ続く…

鮮烈過ぎるダイビングヘッドの余韻がさめやらぬ場内だが、最終ラインの天野は落ち着いて前線の征矢に向けてフィードし、2列目の河本が征矢にボールが入るのと同時に動き出して、タイミング良く追い越して縦でボールを受ける。そしてこれをテンポ良く左斜め前にいた中美に繋ぐと、躊躇無く中美はゴールに向かって突進し、DF2人を背負いながらも強引に右足でシュート!

征矢のゴールも素晴らしかったが、この中美のゴールはまさに圧巻だった…

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たった6分間の攻防だったが、6分間にこの試合のおもしろさの全てが詰まっていたと言っても過言ではない。「守備がザルなんだろ?」と言われるかも知れないが、それを否定する気はない。だが、両者が繰り出した攻撃のクオリティは非常に高いものであり、守備にケチをつけるよりも攻撃の素晴らしさを素直に賞賛したい。

筑波の2得点は「強力2トップ」ならではの決定力が炸裂し、流経大の2得点はシュートもさることながら、フィニッシュまでの実に素晴らしい流れは、カテゴリーを超え、サッカーを愛する人ならだれでも唸るものであった。

また、再びリードを奪ってからの流経大の戦い方は憎らしいほど冷静であり、そしてしたたかで、チームとして「まとまり」を強く感じさせる。

ベンチは当初、天野をCBに回して右サイドに誰かを入れるか、中里と山村の位置をそのまま入れ替えるというプランを考えていた。しかし、あっという間の逆転劇でプランを変更し、しばらくはピッチ上の様子を見ることにしたのだが、ピッチの上の選手たちは中野総監督が想像する以上に「大人」であり、監督やコーチに指示されるのではなく、自分たちでどう試合を乗り切るかを考えていたのだ。

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そして彼らの出した答えは、アンカーシステムの4-3-3ではなく、中盤の底を2枚にする4-2-3-1システムに自主的に変更し、筑波大の動きにしっかりと対応していく。また、ラスト2枚で投入された4年生の保戸田、村瀬も自分たちの役割を理解した上で落ち着いたプレーを見せ、試合をそのままクローズさせることに貢献。

[流経大最終形]
ーーーー征矢ーーーーー
保戸田ー椎名ーーー中美
ーーー中里ー村瀬ーーー
比嘉ーー乾ー山村ー天野
ーーーー増田ーーーーー

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上記のとおり、クライマックスは60〜66分の6分間であったが、試合全体を通して高いクオリティが維持されの、濃密な90分間となったこの試合。昨年同様開幕戦に勝利した流経大だが、昨年と比べて内容の違いは明らかであった。悪い流れながらも、相手とのレベル差が明確に存在していることで、時間が経つにつれてなんとなく点が取れてしまった昨年の開幕戦。

それに対して、試合中盤で集中が途切れる瞬間はあったものの、スキルの高い攻撃、高い戦術眼、そして何よりも「絶対に負けない」という強いメンタルがチームに備わって、ライバルを相手に激戦を制したことは今後に勢いを付ける結果となった。

キャプテンに就任した増田は「昨年の不甲斐ない結果をシーズンオフに見つめ直し、自分たち4年生がしっかりリーダーシップを発揮して、一丸となって戦えるチームを作ろうと思い準備してきました」と語り、比嘉は「もう1回このメンバー(流経柏で優勝した仲間)と日本一になろうと誓い、必死になってやってきた。昨年は悔しい思いをしたので今年は三冠は狙うつもりで頑張ります」と語ってくれた。

また、中里は「今日はホリ(堀河)や大知(乾)が初めてだったので、みんなで彼らをしっかりサポートし、盛り上げながらプレーしてきた」と語るなど、チームの雰囲気も非常にいいものとなっている。やはりチームというものは、頼るれるリーダーやしっかりした先輩がいれば大きく崩れることはないのだ。

そして中野総監督も「彼らにはもう一度『結果(日本一)』を出せるようにしてあげたいし、結果が出せるとも思っています」と語りながら、にこやかな表情でこう続けてくれた。

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「今日の試合はね、結果もそうなんだけど指導者として本当に最高の試合だったと思います。勝ったことには大いに褒めますよ。筑波さんが今季最強だと思っていたから、その相手に3点とって逆転勝ち出来たこと、そしていい攻撃の形が出来たことは大いに褒めます。ただね、守備面に関して2失点したことは反省です。勝って手放しに褒めるだけではなく、ちゃんと修正しなければいけない課題が誰にでもわかる形で出たので、締めるべき点をしっかりミーティングで詰めていきたいと思ってます」

そして比嘉の口から飛び出した「三冠宣言」について中野総監督は、勝負は時の運なのでそう簡単に言えませんと口を濁したが、1年間の集大成となる「インカレ」はどうしても取りたいとコメント。ここ数年、大学サッカー界の強豪校として名を上げ、40人以上のJリーガーを産んでいるが、インカレ(大学選手権)制覇がまだない流経大にとって、どうしても欲しいタイトルなのだ。

しかし、今年のチームには山村、増田、比嘉、中里といった、Jクラブが熱視線を送る金の卵だけではなく、村瀬、保戸田、天野、小島、上條、名雪などと言った高校二冠経験者が多数揃い、チームワークも抜群である。経験という面でも、ほとんどのメンバーが1年からトップ、もしくはJFLチームでもまれてきているメンバーばかりであり、彼らの世代に掛かる期待は例年になく大きいものになっている。

昨年、大きく期待を裏切ってしまった流経大だが、「リベンジ」はここからスタートする。

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さて、試合に敗れた筑波大風間監督は試合後、予想はしていたのだが、やっぱり…と思っていたコメントが帰ってきた。

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「つまんない試合だったね。相手のシステムがとか、ウチがどういう形とかじゃなくてさあ、自分たちのミスが多すぎ。あんなミスばっかりしてたら試合になんないよ。相手にビビッているというかさあ、ミスすることにビビっているからプレーも中途半端になる。おもしろかった(思い通りに出来た)のは(得点が入った)5分間だけだよ。それ以外はダメ」とバッサリ。

こういう試合になったことで、上記のようなコメントが出てくるだろうなあ…とは思っていたのだが(笑) しかし、そうは言っても筑波大が繰り出した攻撃のクオリティは、時として流経大よりも素晴らしい場面もあり、赤崎、瀬沼の2トップはバイタルエリアでボールを受ければ、今年も脅威になることを大いに印象づけた。また、中心選手となった八反田は試合後「全然ダメでした…」と語ったが、小澤、森谷の抜けた穴を感じさせないゲームメークを披露。

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さらには注目の新入生、車屋紳太郎(大津高卒)を早くも使ってくるなど、攻撃陣のクオリティの高さは十分示した筑波大。しかし守備面に関しては、統率が取れるようになるまではもう少し時間が掛かりそうだ。この日は石神ー松田というコンビでスタートしたが、すぐに石神と谷口を入れ替えるなど、現状の最終ラインに関してはまだまだ不満の風間監督。選手それぞれのポジションに関して断言しなかったが谷口の能力は高く評価しており、本心はボランチ選任で使いたいところ。

今季の筑波大が安定した戦いをするためにも、一日も早く核となるCBが出てくることを願いたい。

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