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2011年5月 1日 (日)

ダービーはいつも劇的に…

「グリーンサイド」と「オレンジサイド」の2回で今回の信州ダービーを振り返ってみようと思いますが、まずは勝った方のグリーンサイドから。

JFL前期第8節 @アルウィン
松本山雅FC 2-1 AC長野パルセイロ
[得点者]
4分土橋(長野)
45+1分今井、90+1分木島弟(松本)

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試合の感想の前に、改め「ダービー」の集客力の高さに脱帽でした…
会場上空の雲行きが怪しく、強風が吹き荒れるコンディションということで、試合開始前の会場には空席が見られたが、キックオフを過ぎてからも観衆が押し寄せ、最終的に11663人の観衆を動員。入場料金設定の違うJリーグと、JFLの動員数を単純に比較することは一概にはできないが、今節行われた柏、神戸、C大阪、磐田のホームゲーム動員数より上回り、J2でこれを上回ったのはFC東京(17572人)だけという数字が残された。

確かに、入場料金設定に1000〜3000円程度の違いはあるが、今回残された数字は「誇り」としていいものだろう。

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さて、試合の方に入りますが、メンバー表をみた時点でかなりびっくりさせられたと同時に、ついに「松田シフト」に出たか…という印象を与えた。

[松本山雅スタメン]
ーーー木島兄ー木島弟ーーー
ーーーーー北村ーーーーーー
ー鐵戸ーーーーーーー今井ー
ーーーー渡辺ー須藤ーーーー
ーー多々良ー松田ー飯田ーー
ーーーーー白井ーーーーーー

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開幕戦は松田をボランチに置く4-4-2でスタートしたが、思い描いたようなサッカーが出来ず逆転負け喫した山雅。吉澤監督、柴田コーチは「松田を活かすシステム」に変更するため、これまでこのチームで一度も採用したことがなかった3バック導入を決めて大事な一戦に挑んできた。また、トップ下の位置には前節スタメンだった弦巻ではなく、「タメを作れる選手」と監督が評する北村を起用。

開幕戦に向けて長い時間準備してきた4-4-2を諦め、松田と心中することを選んだ吉澤山雅。はたしてその「バクチ」が吉と出るか凶と出るかだったが、立ち上がりは会場上空の天候同様「怪しい雲行き」を見せながらのスタートとなってしまう。

コイントスで権利を得たパルセイロのキャプテン、宇野沢は迷わずエンド交替・前半風下を選択。すると、風の影響をモロに受けたことと、初の3バックへのとまどいがチームを襲い、2分のFKでは藤田のヘディングで「あわや」のシーンをいきなり作られ、動揺がおさまりきらないうちに、右サイドを攻略され土橋に綺麗な一撃を浴びて早々と失点を喫してしまう…

時間にして3分20秒(ぐらい)

パルセイロらしい細かいパス交換だけではなく、追い風を利用した長いパスにロングシュートを多様して攻め続ける相手に対して防戦一方となる山雅。3-5-2のシステムにしたのはいいが、今井、鐵戸の両サイドが押し込まれ、3バックシステムの「良さ」を全く活かせない。さらには強風のためボールが思うように前に進まず、自陣で耐える時間帯が続く。

だが、監督から「今日はまず守備を頑張って欲しい」と言われていた松田がディフェンスラインに「ここを耐えろ!」と檄を飛ばす。相変わらずボールはパルセイロに回され続けるが、徐々に全体のライン、そして守備ブロックが安定していき、守りの中から「リズム」を作り出していく。また、松田ばかりに注目が集まるが、ボランチの渡辺匠の動きも「さる者」であった。

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川崎、山形、熊本でプレーした経験豊かなボランチは、ボールに積極的に絡んでパスの供給源になるというプレーではなく、バランスを重視した「黒子」に徹し、終始、危険なエリアをいち早く察知して献身的な動きで周囲をカバー。中盤の底でコンビを組む須藤、そして両サイドの鐵戸、今井の攻撃参加が出来る流れ(下地)を地味ながらも、しっかり作り出していく。

30分を過ぎた頃には完全に守備が安定し、パルセイロも序盤ほどやりたい放題と行かなくなると、やっと「中盤の5」の両サイドの活躍が生まれ始める。ここまでは、木島兄弟の突破だけが頼りだった山雅の攻撃だが、今井、鐵戸が絡み出すと厚みのある攻撃に変わっていく。

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両サイドでチャンスメークが増えれば、中で待つ木島(兄)の動きも鋭さを増していく。34分には強引に持ち込んでゴール前まで迫り、39分にはFKのチャンスからこぼれ球を蹴り込んで同点ゴールかと思われたが、ここはGK諏訪を倒しておりキーパーチャージでノーゴール。しかし、両サイドの攻撃参加に木島の闘志溢れるプレーで、守備一辺倒だった山雅は息を吹き返す。

そしてロスタイムに、山雅の中で最も「信州ダービーを知る男」が大きな仕事をやってのける。

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鐵戸が左サイドを駆け上がり中へボールを入れたが、一度はDFがクリア。しかしこのこぼれ球を須藤が拾ってそのままシュート。今度は大島がブロックするが、詰めていた今井昌太が拾ってシュート!

これが決まって前半終了間際でついに山雅が同点に追いつく。

前半終了間際のゲームプランでは、まず前半は0-1で終わらせることが最低条件であり、風下となる後半に一気に仕掛けようという考えがあった。しかし、劇的なロスタイム弾で追いついたことで、試合の流れ大きく変わり、山雅の方に余裕が生まれてくる。

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そして後半は予想通り追い風に乗る山雅の圧倒的なペースで進み、4分には有永のクリアミスを鐵戸が奪い最初のシュートを放つと、5分には木島兄のシュートから連続してチャンスを掴み、前半は序盤は沈黙していた両サイドが水を得たかのように駆け上がりパルセイロゴールに迫っていく。

ゴールキック、DFのクリアが前に飛ばす、前線の宇野沢、藤田にボールがなかなか入らない時間が続くパルセイロ。そしてこの時点で薩川監督は「勝ち点3」にこだわらず、「引き分けでよい」という発想になり、足がつり始めた土橋を諦めて、攻撃力のある富所ではなく、バランサーの塚本を投入。

無理をしないパルセイロ。どうしても勝ちたい山雅。

試合は時折カウンターでパルセイロが攻め込む時間帯があるものの、大半は山雅ペースで進む。しかし、上記にあるとおり、引き分けでもいいパルセイロは無理をしてこない。そのため、チャンスを次々と作り上げるものの、どしても「決勝点」を奪えない山雅。

そして90分を過ぎ、アディッショナルタイムが2分と表示される。

残された時間は2分しかなく、このままドローで終わりかと思われたが、またもロスタイムにドラマが待っていた。

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途中交代で入った塩沢が右の今井に展開し、ドリブルで駆け上がり中にグラウンダーのクロスを入れると、中で北村が軽く横に流し(さわった程度?)、木島弟にボールが渡と体制を入れ替えてシュート!

ロスタイムに入っての劇的な決勝点が決まって2-1となり、またもダービーの勝者となった松本山雅。これで北信越リーグ1部に昇格して以降の対戦成績を11勝3分3敗とした。

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結果的に最後はホームの山雅が勝利したが、試合内容は「風」を差し引けば僅差であり、両者に大きな差がるとは感じられない試合であったことは否定できない。JFLでは1年先輩であるが、まだチームが完成されていないこともあり、この日の山雅は「先輩の力」をライバルに対して見せつけることは出来なかったのと同時に、最大の敵が繰り出す攻撃の鋭さを改めて感じたはずだ。

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ただ、不思議と毎回両者の対戦では山雅が「勝負強さ」を見せつける。試合後、吉澤監督や木島弟など、口を揃えて「ダービーは大事な試合ですが、チームはJリーグ昇格を目指して戦っているので、ダービーということを意識せず、とにかく勝利を積み重ねることだけを考えて戦っています」と答えた。

ただ、そう答えた人がいる反面で、キャプテンの須藤は「応援してくれる人たちのダービーに賭ける意気込みを知れば知るほど、この試合で負けたら松本の街を歩けなくなるかも…なんて考えながらプレーしました」と答え、新加入の松田直樹は「先日『クラシコ』を見ましたが、このダービーを作り上げてきた人たちの思いを知り、とにかく凄いと思った。そんな人たちのため、自分は何ができるかわからなかったが、『勝利すること』で恩を返せるかな?って思って最後までプレーしました」と語るなど、ダービーというものを自分なりに考えてピッチに立っていた選手がいたこともまた事実。

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まあ、ダービーを意識するかしないかは別として、山雅には「J昇格」という目標があり、そのためには、引き分けではなく貪欲に勝利を求める「気合い、気持ち」がパルセイロよりも優っていた。

そんなところが勝敗を分けたような気がしてしまうし、それが両者の間に「1年の差」を産んだ原因でもある。

まだまだ、監督が目指すサッカーに到達していないし、松田を含めた新戦力が完全に「噛み合っている」とは言い切れない今の山雅だが、ダービーでの勝利が起爆剤となり、一気に上昇していくきっかけを掴んだと言えよう。

「特に意識しませんよ…」と語る選手もいるが、やっぱり、この試合はいつも「特別」なのであると感じさせるゲームでもあった。

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それでは「オレンジサイド版」に続きます。

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