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2011年5月12日 (木)

慶大、古豪復活に手応えアリ

2011関東大学サッカーリーグ
前期第2節@江戸川陸上競技場
慶応大学 1-1 流通経済大学
[得点者]
68分河本(流経大)
90+1分森田(慶大)

開幕戦をともに自分たちのカラーで勝利した同士の対戦はドローという結果に終わったが、内容に関してはほぼ慶応の一方的なものとなり、明大に勝利したことがフロックではないことを実証する結果となった。

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[慶大スタメン]
日高ーー大塚ーーー武藤
ーーーー河井ーーーーー
ーーー松下ー増田ーーー
黄ーー松岡ー笠松ー藤田
ーーーー中川ーーーーー

[流経大スタメン]
堀河ーー征矢ーーー椎名
ーーー河本ー関戸ーーー
ーーーー中里ーーーーー
比嘉ーー乾ー山村ー天野
ーーーー増田ーーーーー

2003年からコーチ、そして2007年からは監督として指導してきたイ・ウヨン監督の後を受け、今年から慶応大学監督に就任した須田芳正新監督。オランダで指導者としての勉強を積み重ねた指揮官は、そこで学んできた攻撃的サッカーを見事に取り入れるだけではなく、これまでボランチなど中盤での起用が多かった藤田をサイドバック起用したり、才能豊かな1年生をチームに抜擢するなど、斬新な選手起用でチームを活性化させた。

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慶大のキックオフで始まった試合は、開始直後から1年生の武藤が積極的なアタックを見せ躍動するだけではなく、左サイドの日高が連続して中に切れ込む動きを見せ、流経大は前節のような「前からの守備」が全くと言っていいほど機能していかない。3トップ+司令塔の河井陽介が自由にボールを動かし、思うように試合を進める慶大は、1年生ボランチ増田の絶妙な押し上げもあり、序盤から完全に試合のペースを握っていく。

前節は堀河、征矢、椎名の3人が前からプレスを掛けることで、筑波のラインを押し下げ、さらには空いたスペースに関戸、河本、中里が押し込んで行き優位にゲームを進めたが、この日は完全に「その逆」をやられてしまった流経大。武藤、藤田とマッチアップする左の堀河は、相手アタックの前に完全に沈黙し、最悪といえる立ち上がりとなってしまった。中野総監督も前半10分にも満たない時間帯から、テクニカルエリア最前線まで乗り出して「ポジションを確認しろ!」と劇を飛ばすが、躍動する増田、武藤という1年生に蹂躙されてしまう。

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完全にボールだけではなく、中盤の自由まで支配されてしまった流経大だが、センターバックが4人並んでいるような最終ラインは劣勢の中でも粘り強いディフェンスを見せ、主導権は握られながらもシュートまでは簡単に持ち込ませない。

なんとか流れを変えたい流経大は20分すぎから、武藤、藤田に押し込まれていた堀河と椎名のポジションを入れ替えて打開を図るのだが、後手後手に回ってしまった流れを簡単に取り戻すことが出来ず、常に慶大に先手を奪われて苦しい時間帯が続いていく。そんな苦々しいゲームの流れ同様に、流経大のゲームコンダクターである中里の動きからも輝きが消えてしまう。前節はマイボールの局面で、ほとんど顔を出していた中里だが、この日はボールに関われないどころか、顔を出すことすら出来ない。

まあ、とにかくバランスの悪かった流経大の中盤だが、悪すぎたというよりも、慶大のプレス、そしてアタックが実に素晴らしく、関戸、河本が動くスペースをことごとく消し去れてしまい、そのしわ寄せにより、中里のプレーエリアが制限されてしまった。

このように、完全に中盤のラインが押し下げられてしまい、全体が間延びしてしまった流経大は攻め手を失ってしまい、ただ前線にロングボールを入れるだけとなり、さらには前線の3人がオフサイドラインに何度も引っかかり(記録上はオフサイドの数が少ないのは主審が流しただけ)手も足も出ない状況に陥ってしまう。

20分にポジションチェンジした流経大だが効果は出ず、ついに38分というやや早い時間帯で関戸→村瀬という交代策に打って出る。そしてこの直後、突出した個の力を持つ流経大は、CKのチャンスから前半最大のビッグチャンスを迎える。

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CKのこぼれ球が山村に入ると、ファンタジスタも真っ青なドリブル突破を見せ、さらには股抜きからあっという間に2人のDFを交わしてゴール前に進入。そしてシュート! という場面まで持ち込むがここはGK中川のファインセーブで得点は奪えない。

それにしても驚きなのは山村のドリブル突破。普段見られないプレーなのだが、涼しい顔してスルスルっとやってしまう才能に改めて脱帽だ。

結局、流経大が前半に作ったチャンス、そしてシュートはこの1本だけと、完全に慶大の前に押さえ込まれた内容だったが、実は慶大も前半のシュートは日高の2本だけ。3トップが実に素晴らしい動きを見せるだけではなく、全体が連動する「トータルフットボール」を展開したものの、最後までシュートは簡単に打たせてもらえず、ゲームの印象からやや以外と感じるスタッツが残された。

また、前半31分に左サイドで躍動した1年生FWの武藤が負傷退場してしまったことも、慶大にとっては痛いところであった。序盤からエンジン全開で攻め続け、左サイドを圧倒した1年生アタッカーの動きを最後まで見たかったのだが…

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何も前半はやらせてもらえなかった流経大だが、ロッカールームに戻ると選手を待っていたのは中野総監督の厳しい檄であった…

「おまえたちさあ、相手はウチよりもインターバルが1日少ないんだよ。相手はね、中2日なんだよ。体力的に厳しいのは絶対に向こうなのに、なんで運動量で負けているんだよ。なんのために1日リフレッシュさせたんだ?…」

そんな厳しい檄を受けた選手たちだが、後半のピッチでも慶大の激しい出足の前に、やはり後手後手となってしまう。さらに流れの悪い中からピンチを招き、6分にゴール前で藤田をドフリーにしてしまうという決定的場面を迎えてしまうが、ここはシュートミスで難を逃れる。すると直後の8分、流経大ベンチは堀河を諦めて保戸田を投入。さらには、村瀬を前に出し、中里の前を椎名ー河本に替えるなど、なんとか流れを取り戻そうと必死のポジションチェンジを繰り返す。

そんなポジションチェンジの中で15分、チャンスを掴んで村瀬が直接ゴールを狙うがここもGK中川の好セーブでゴールを奪えない。だが、前半に比べるとやや、ボールが回せるようになってきた流経大に驚きの瞬間が訪れる。

いや、流経大だけではなく、訪れた観衆も驚いたことであろう…

23分、村瀬から前線に浮き球が入るのだが、誰がどう見てもGKがキャッチするかと思われたこのボール。しかし、なんでもないこの浮き球を慶大GK中川が、なんと判断を見誤り、ボールは頭上を越え裏に抜けていた河本の足下に転がっていく。

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河本の前にはDFはおらず、あるのはガラ空きのゴールだけ。「蹴る前に一瞬びびりましたよ…」と試合後に語った河本だが、冷静に蹴り込んでまさかまさかの流経大先制でゲームが動き出していく。

圧倒的攻勢を誇っていた慶大だが、たった一つのミスにより1点を追う展開となり、82分に赤木を投入して河井を前に出すシステムに変更していく

ーーー日高ー河井ーーー
黄ーーー松下ーーー森田
ーーーー増田ーーーーー
赤木ー松岡ー笠松ー藤田
ーーーー中川ーーーーー

攻撃的姿勢をより強めた慶大に対して、流経大は新しい選手を投入するのではなく、今いる選手のシステムを変えてその攻撃に対応しようとする。また、監督はそのキーマンに豊富な運動量を誇る征矢を指名し、彼と中里に中盤を託すこととなる。

ーーーー河本ーーーーー
村瀬ーー椎名ーー保戸田
ーーー中里ー征矢ーーー
比嘉ーー乾ー山村ー天野
ーーーー増田ーーーーー

しかし、このポジションチェンジの意図が選手に伝わってはいなかった…
征矢をボランチに下げたのは、中盤で相手を追い回すことであり、攻撃のバリエーションを増やすことではなかったのだが、それを本人も周囲も意図を正しく読み取ってはおらず、そのことがロスタイムに生まれた痛恨の同点弾の遠因となってしまう。

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ロスタイムに村瀬から前線にスルーパスが入り、それに反応したのが征矢だった…

この厳しいパスに反応したのが保戸田であればまだ良かったのだが、征矢が走ってしまい、ボランチの一角が空いてしまう。すると慶大はそのスペースを狙い撃ちして、速いリスタートから速攻を仕掛ける。一気に左サイドからチャンスを作ると、藤田を経由して最後は負傷した武藤に替わって入った森田が蹴り込んで土壇場で同点に追いつく。

この場面だが上記にあるとおり、征矢のポジションを狙われた訳だが、それ以前に流経大の終盤の試合運びがチグハグであったことを付け加えねばならないだろう。40分を過ぎた辺りから、勝利を意識してセットプレーではことごとくキープを選択した流経大。勝ち点3をとるためには、決して悪いやり方ではないと思ったのだが、セットプレー以外ではプレーはまさに中途半端。守るならとことん守るだし、キープするなら徹底してやればいいものの、中途半端に攻めに出るから、奪われたり逆襲にあったりするのだ。

結果的に試合は1-1のドローで終わったが、両者にとって評価しづらいドローであったことは間違いない。両者とも「負けなくて良かった」「勝ちきれなかった」という思いがあるから…

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流経大の中野総監督は試合後、意外にもサバサバとした表情で、「今日は引き分けで妥当ですよ」と語り始め、このように続けた。

「確かにあの内容であれば、前半の早い時間で相手に点を奪われていてもおかしくはなかったし、得点もまさにタナボタ。流れからすれば完全な負けゲームなんですけど、結果的に勝ち点1は獲得した。これを『勝ち点2を失った』と考えるよりも『慶大の首位独走(勝てば勝ち点6だったから)を阻んで良かった』と考えた方がいいと思うんですよね」

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しかしだ、積極性がまったくなく、相手にいいようにやられてしまった選手たちについては、試合後、中野総監督から激しいカミナリが落とされたのは言うまでもない。また、失点シーンに繋がるプレーを結果的にしてしまった征矢に対して、「一生懸命プレーすることはいいのだが、一生懸命になりすぎて自分の役目を忘れてしまっては意味はない。もっとかしこくプレーしなければ…」と厳しい言葉が投げられた。

奇しくも、先日行われたJFL公式戦、町田vs琉球戦で町田のポポヴィッチ監督は「上手い選手だけでは私は使わない。上手いことは当然だが、選手それぞれがサッカーにおいて『かしこく』なければウチのチームではレギュラーになれない」という言葉を残してくれているのだが、中野さんが征矢に求めたところは、まさにそれと同じであった。

「技術もそこそこあるし、前節いい勝ち方をしたのに、次にコロっと変わったチームになってしまうところは、まだまだ甘チャンの学生なんですね…」とも語った中野監督だが、「慶大に離されないですんで良かったと考えて、すぐに切り替えることですね」と締めてくれた。

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そして慶応大学の方だが、試合はドローに終わったものの、内容では流経大を終始圧倒。これまでは「河井のチーム」という印象が強かった慶大だが、今年はオランダ帰りの須田監督が持ち込んだパスをしっかり繋ぐ攻撃サッカーと、4年生だけではなく、新加入の1年生も交えた「部全体」で戦うトータルフットボールが早くも開花しようとしており、今年のリーグ戦優勝争いの一角であることを、この2試合で十分印象づけたであろう。

また、上記でも名前を挙げた増田湧介(清水東)、武藤嘉紀(FC東京U-18)だけではなく、横浜Fマリノスユースでキャプテンだった保田隆介、ヴェルディユースの山浦新など、ユース年代で活躍した選手がトップチーム入りしており、これからの成長が非常に楽しみな慶応大学。

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ここ最近は流経大、明大が隆盛を誇っている関東大学サッカーリーグだが、優勝から遠ざかってすでに50年以上の時が過ぎている慶大の巻き返しは非常にリーグを面白くするはず。そしてリーグ戦の日程も慶大になんとなく味方しており、開幕2戦で強豪と戦ったあとの3、4節は昇格組との対戦となっており、ここをしっかり勝ちきれれば一気に波に乗ることも考えられる。

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最後に余談ですが、今年から慶応大学のコーチに「この人」が加わっておりまして、12月の「引退試合」以来の再開を果たしましたが、元気にコーチ業に励んでおり、最近はモウリーニョの本を読むなど、指導者としての道を必死に勉強中だ。

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そして「今年の夏合宿は草津でやることを考えていまして、ぜひとも(ザスパ草津U-23と)試合をしたいですね」と語ってくれた冨田賢。

嬉しいじゃないですか! 強い相手と試合をしたいと語っていたU-23のメンバーにとって、かなり手強い相手であるであろう、今年の慶応大学。ここは「考えています」ではなく、「実現」という方向になるよう、ぜひともお願いしますよ、冨田コーチ!!

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