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2011年5月 2日 (月)

その「差」とはなんなのか…

信州ダービーレポ2回目は「オレンジサイド」から見た視点です…

JFL前期第8節 @アルウィン
松本山雅FC 2-1 AC長野パルセイロ
[得点者]
4分土橋(長野)
45+1分今井、 90+1分木島弟(松本)

開幕戦で4-0と快勝したパルセイロだが、2戦目の大事なダービーではライバルを前にまたも「甘さ」を見せてしまい、2008年9月7日戦以来のダービー勝利とはならなかった…

[パルセイロスタメン]
ーー宇野沢ー藤田ーーー
ー栗原ーーーーー向ーー
ーーー大橋ー土橋ーーー
有永ー大島ー小川ー高野
ーーーー諏訪ーーーーー

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開幕戦と全く同じスタメン/システムで挑んできたパルセイロに対し、山雅は開幕戦での敗戦を受け、3バックシステムを導入。それを知っていたパルセイロは「相手の序盤の動き、そして連携は絶対にぎこちないはず」という読みをしていた。また、この日のピッチは激しい強風が吹き荒れていることもあり、チームは益々「先手必勝」という思いを強くする。

その思いがあったからこそ、コイントスで権利を得たキャプテン宇野沢は、特に監督の指示は無かったが「前半風下」を選択し、序盤で試合を決めてやろうと決意してエンドチェンジを決めた。

そしてその考え、狙いは全て的中する…

激しい強風を真正面から受ける山雅はボールを繋げず、パルセイロは前からの鋭いプレスでボールを奪い、さらには相手DFのファールを誘発。そしてそのFKからいきなり藤田が「あわや」の場面を作ると、完全に山雅守備陣というか全体が混乱。続く3分には、高野が右サイドを攻略し、宇野沢と繋いで最後は中でフリーだった土橋が綺麗に蹴り込んで早々とパルセイロが先制。

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この場面、パルセイロの速い右からの崩しも見事だったが、中盤のマークが混乱していた相手をしっかり見て動いた土橋の「読み」も、また見事であった。

驚くほど早い時間、それも攻め込んでいる時間帯で先制点を奪い、理想的な滑り出しとなったパルセイロは、その後も宇野沢、藤田の2トップが精力的に動き回り、さらには両サイドバックの高野、有永が高い位置をとり続けて攻勢に出る時間帯が続いていく。

それに対して、山雅の両ウイングバックを務める今井、鐵戸はマッチアップする高野、有永の「上がり」に対処するだけで精一杯となり、押し込まれて3バックが持つ「良さ」を何一つ出せない。

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強い風の前にまともにビルドアップできず、苦しみ続ける山雅。それに対して、おもしろいようにパスが繋がり、さらには風を利用した普段あまり見られない長いパスも織り交ぜて攻撃に出るパルセイロ。序盤〜中盤は、完全に両サイドを制圧し、山雅陣内で試合を進め、ゲームの主導権をガッチリ握りながら時間は進んでいく。

しかし4分の得点後は、試合を思うように進めるものの、決定的場面を作り出すまでにはなかなか行かない。そう、粘り強く攻撃を跳ね返し続ける山雅の守備陣が、徐々にパルセイロが繰り出す攻撃に対応出来るようになってきたのだ。また、この日の特徴として、前節ほど大橋がボールに絡む機会が少なかった。いや、少なかったというよりも、マッチアップする相手ボランチ、渡辺の動き、そして絶妙なポジショニング取りの前に大橋は活躍の機会を制限されてしまう。

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大橋の活躍があってこそ土橋が前で活きてくる訳だが、時間が経つにつれてこの試合では大橋の存在感は開幕戦に比べて薄くなり始めてしまい、徐々に中盤のバランスが不安定になっていく。それと同時に、あれほど苦しんでいた山雅の動きが少なからず「良さ」を取り戻していく。

それでも、全体的な試合の流れを見ればまだパルセイロのものであり、木島兄弟の突破と、両ウイングバックにボールが入らない限り、山雅の攻撃は恐れるほどのものではなかった。パルセイロ的に考えれば「前半1点しか取れなかったことは不満だが、1点リードで折り返せはまずは良し」という考えをベンチだけではなく、サポーターもあったはずであろう。

そして前半は45分が過ぎ、ロスタイムを迎えたが、そこでパルセイロは悪夢のような瞬間を迎えてしまう。

残り時間を安全に流せばいいものの、ボールを奪われてしまい左サイドを駆け上がる鐵戸の足下にいいボールが入り、そこから中へクロス→小川が木島兄と接触しながらもクリア→こぼれ球→木島弟が拾って後ろへ流す→須藤がシュート→大島がカット→このボールが今井の足下に入り、ワントラップして強引にシュート!

パルセイロにとっては、痛すぎる失点…

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今井のシュート自体は「スーパー」なものであり、褒めるしかないだろう。また、2009年の全社決勝でも素晴らしいミドルを決めたり、昨年の山雅JFL初勝利を導き出した横河戦の決勝ゴールなど、本当に「持っている選手」だなぁと感じさせる瞬間でもあった。

ただこの場面では、木島兄弟に両ウイングバックと、注意すべき選手が全て揃ってしまった瞬間でもあり、もっと集中して中を固めて守るべきではなかっただろうか?

まずは鐵戸にいいボールが入ってしまってはいけないし、木島兄と競り合った小川は接触したため倒れてしまい、もう一人のCBの大島は須藤のシュートをブロックするためにポジションをやや右に動かしていた。そんなこともあり、今井のシュート時に体を寄せるべき選手が誰なのか? という点が曖昧になり見事な一撃を浴びてしまう訳だが、センター2枚が動いていたその時、なぜ左の有永はカバーが遅れてしまったのか…

鈴木さんがあれだけ「グループで守備する」「リスクをどう無くすか」って毎回言ってきたじゃない…

結局、前半ポゼッションで7:3の割合で山雅を圧倒したパルセイロだが、最後の最後に喰らった痛恨の一撃でリードを失ってしまい、後半は再びリセットされた形でスタートすることに。それにしても、あれだけ攻めている時間が長かったのに、1点しか取れなかったこと、そしてシュート数も5本だけに終わってしまったことはいただけないし、山雅としては松田の特長を活かす3バックシステムが機能しだしたことの現れでもあった。

そして後半だが、予想されていたとおり激しい強風に煽られて、前半の山雅同様前に進めない。さらには、追い風に乗って攻勢を強める山雅の前に防戦一方となるパルセイロ。そんな状況の中で薩川監督は1枚目のカードを切ってくる。

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20分、前線からのプレスを強くするためでもあり、お世辞でも「いい出来」ではなかった栗原に替えて冨岡大吾を投入。そしてダイゴが入ったことにより、宇野沢がサイドに流れてダイゴ、藤田の2トップに変更。そして、前半から豊富な運動量でチームの攻撃を牽引した宇野沢がサイドに廻ったことで、やや流れを取り戻したパルセイロは、宇野沢、ダイゴ、藤田の3人によるカウンターで活路を見いだそうとしていく。

しかしだ、ゲーム全体の流れは依然として山雅が握っており、中盤でのボール支配も不利な状態は変わらない。土橋の運動量が下がりだしたこともあり、須藤、北村が自由にボールをさばくシーンが増えだし、大橋はバランスを取るよりも中盤の守備に奔走する時間が続き、ベンチは27分に土橋を諦め塚本を投入。

この時点で、薩川監督は「勝ち点3を狙う」ではなく、確実に「勝ち点1」を取ることにシフトチェンジするのだ。そう、監督はリスクよりも確実、そしてバランスを選択してピッチに塚本を送り出した。

大橋ー塚本という組み合わせになったことで守備面では安定感をやや取り戻し、その結果として、37分に後半最大のビッグチャンスを呼び込むこととなる。ゴール前でダイゴ粘ってが持ち込み、あとはシュートを流し込むだけ…という場面だったが、シュートは無情にも枠の外。

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前半に引き続き、決めるべきところで決められなかったパルセイロ。
点が取れないのであれば、残された時間を「静かにクローズさせる」ということが最低限のタスクであったのだが、またしてもそれが出来ずに終わってしまう…

トータルタイム90分を過ぎ、残りはロスタイムの2分間。引き分けでもいいということもあり、ゴールキーパーの諏訪は焦らずにゆっくりボール持って前線にフィードする。しかし、折からの強風もあり、高く上がったボールは距離が出ず、相手陣内に届くどころか自陣にまで戻されてしまう。

そしてこのボールを両チームの選手が競り合うが、飯田がいち早くボールに触り前に蹴り出すと、前線の塩沢がうまくボールをさばいて右の今井に展開。前半ロスタイムにゴールを叩きだした男は、この場面でも決定的な仕事に関わり、彼が出したボールからまたしてもゴールが生まれ、パルセイロは土壇場でまたも「緑の壁」の前に屈することとなる。

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この時点も、失点を防ぐ方法はいくつも考えられた。
キックの精度が素晴らしいとまでは言えない諏訪。後半に入ってから、何度もキックが高く舞い上がり、攻撃に結びつけるどころか逆にピンチを招いてしまうことが続いていた。であるならばこそ、あの場面は失点を絶対に避けなければいけないし、高いキックも禁物だったはずであるから、グラウンダーのボールで確実に味方に繋げるべきではなかっただろうか?(これについて、試合後の諏訪は「蹴りどころがなく、タッチに切るのも有効ではないと考えました」とコメントしてくれたが…)

試合のスタッツを確認すると、パルセイロが与えたFKは間接、直接を含めて14しかなく、後半に至っては5つしかなかった。サッカーにおいて、セットプレーを与えることは失点に繋がる可能性が高くなるため、無用なファールは避けるべきものであるが、パルセイロの守備は劣勢においてもファールを犯したり無用なイエローを貰うことなく見事に対応していた。しかし、前半も後半もロスタイムで「流れ」の中でやられてしまえば、そこまで集中していたものを全て台無しにしてしまう。

どちらも「あと2分」というところで、リスクマネジメントが頭から離れてしまった瞬間でもあり、山雅の勝負強さを見せつけられた瞬間でもあった。

試合全体を通して、パルセイロの攻撃が山雅より劣っていたとは全く感じないし、昨年からのメンバーが8人残っていても十分どのチームでも通用することは明らかとなった。しかし、いいサッカーだけでは勝てないという現実を、最大のライバルにまたも見せつけられてしまったことを忘れてはならない。

いいサッカーが勝つサッカーではないことぐらい、2006年の頃からわかっているはずなのだから…

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試合後、薩川監督は「今日の負けは素直に認めます。言い訳はしない。ただ、勝ちたかったなあ…」と素直すぎる感情を述べた。また、後半の勝負所での交替について「富所を使う考えはなかった。あの流れの中で、アイツを入れて守りのリズムが壊れることは避けたかった。だからバランスを取れる塚本を投入した」と語ったが、これだけは正しかったのか間違っていたのは微妙なところでもある。

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選手としては、Honda FCの一選手で終わっている吉澤監督に対して、Jリーガーとなり天皇杯優勝など大舞台を経験している薩川監督とでは、経歴の差は歴然。しかし、指導者としての経歴ではJFL優勝の経験を持ち、プロ監督としても先輩である吉澤監督の方がまだまだ上。

チームの力を最大限に引き出すため、大一番を前にしてシステムチェンジを断行する決断力と勇気、そしてモチベーションコントロール。さすがにチームを指揮して4年目の監督であると思わせたし、負ければ自分の「首」が飛ぶこともよく自覚している…

そんな監督としての経験や覚悟の差、そして(山雅の)選手が持つ「勝利への執念」が最後の最後で差を分けたと思わせた信州ダービー。しかし、その差は昨年の天皇杯予選決勝で感じたものよりも確実に縮まっている。だからこそ、次の対戦は本当に楽しみなのだ。

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次の対戦は7月3日の南長野。あと2ヶ月という時間があり、パルセイロにとって十分経験値を積み重ねることは出来るはず。まあ、灼熱の中での戦いになるだろうが、風に左右されるよりはマシだし、ピッチ状態もアルウィンよりも良質のコンディションを維持する南長野であれば、違った結果が生まれるかも知れない。

ダービーという、リーグ戦とはまた違うプレッシャーの中で感じた「JFLで戦うことは簡単ではない」ということが、チームにしっかり刻まれれば、この敗戦は無駄ではないといえるだろう。そして、この苦い経験が明日の栃木ウーヴァ戦の糧となっていることを期待したい。

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