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2010年12月24日 (金)

高知大、明大も撃破

全日本大学サッカー選手権
準々決勝 @西が丘
明治大学 0-2 高知大学
[得点者]
17分福本、90+3分香川(高知大)

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高知大が鹿屋体大に勝利して2回戦(準々決勝)進出が決まった時点から、新潟経営大には大変申し訳ないが「明治は次の戦いが非常に厳しいものになるだろう…」と感じていた。それぐらい、1回戦で高知大学は素晴らしい試合を見せてくれたのである。

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さて明大だが、リーグ戦後半から山田、小林というチームの中核を欠きながら戦いが続き、さらには宮阪、丸山の両名は大学選抜遠征での疲労もあり、決して万全のコンディションではない状態であり、今大会でもメンバー構成において苦しいやりくりが続いていた。

万全の試合で完勝した高知大。圧勝したものの、どこかに不安を抱え続けていた明大の戦いは、1回戦終了後の予感が的中する試合となった。

[高知大スタメン]
ーーー福本ー布施ーーー
ー芝野ーーーーー香川ー
ーーー酒井ー西山ーーー
塚本ー山部ー實藤ー赤木
ーーーー片山ーーーーー

[明大スタメン]
ーーー久保ー山本ーーー
ー三田ーーーーー田中ー
ーーー宮阪ー豊嶋ーーー
奥田ー吉田ー松岡ー鹿野
ーーーー高木ーーーーー

1回戦とまったく同じスタメンの高知大に対して、明大は宮阪がスタメンに復帰し、三田を左アタッカーに置く布陣でスタート。

立ち上がりこそ、互角の展開を見せた両者。ともに繋いでいくサッカー、そして連動が生み出す美しいサッカーを目指す同士ということもあり、スピーディでテンポのいい流れで試合は進んでいく。

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16分、明大陣内右サイドで松岡が相手を倒してしまいFKを献上。そしてここで1枚目のイエロー。高知大のキッカーは西山。フワっとした浮き球のボールが入ると、ゴール前で待っていた福本が左足で合わせて高知大が先制。この場面、早いボールを警戒していた明大守備陣。しかし、入ってきたボールはややゆるい浮き球であり、完全に裏をかかれた格好となり、一瞬のスキが生まれたことで福本をフリーにしてしまった。

ここからは、高知大の一方的なペースとなっていく。1回戦同様、福本、布施、芝野、香川の攻撃陣が冴え渡り、明大守備陣を翻弄。さらにこの試合でも、西山ー酒井のボランチコンビが攻守に渡って大車輪の活躍を見せる。明大がボールを奪っても、ボランチ2人の早い寄せにより、そこから先の展開が生まれない。

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高知大攻撃陣の「個」の力の前に守備陣は混乱し、攻撃においても相手の組織的守備の前に、何一つ良さを出させてもらえない。この日は先制された焦りから、普段のサッカーを完全に忘れてしまう明大。神川監督は「落ち着け!」「時間はあるんだから」と、選手に檄を飛ばすのだが、なかなか届かない。明大らしいコンパクトなサッカーも、早い連動も封じ込められ、らしさを奪われた明大は次第に「自滅」のような形でボールを奪われ続けて、ペースを取り返せないまま前半を終える。

すると明大は、後半から宮阪に替わって矢田を投入。矢田を1回戦同様、左アタッカーに据え、宮阪の代わりに三田をボランチにスライド。神川監督は当初、初戦と同じスタメンで行こうと考えていたのだが、矢田のコンディションが良くないこともあり、この日は宮阪で行けるところまで行って、勝負どころまで矢田は温存したいと考えていた。試合終盤の勝負か懸かった場面で、矢田の突破力、スピードに託すことを描いていたのだが、予想よりも早くテコ入れが必要となってしまったのだった。

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しかし、後半に入っても高知大ペースは全く変わらない。開始直後、香川が持ち込んで福本にラストパス。決定的な場面を迎えたが、ここはGK高木が渾身のセーブで福本のシュートはじき出す。

そして48分、試合の流れを完全に決めてしまう出来事がおこる。福本の動きに翻弄され続けた松岡が、この日2枚目のイエローで退場となってしまう。1点のビハインドを追う展開でありながら、数的不利で戦うことに。すぐさま、明大・神川監督はCBのポジションに丸山を投入し、システムをワンボランチの4-3-2に変更。

だが、こうなってなってしまうと、簡単に流れを引き戻すことはできない。最後は最終ラインを3バックにして、中盤を4枚にした攻撃的布陣に出るのだが、實藤、山部が立ちはだかる高知大最終ラインの前に、シュートすら打たせてもらえない。

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90分をまもなく過ぎようとするころ、ロスタイムを示す「3」という数字が場内に表示される。残された時間でなんとか追いつきたかった明大だが、ここでも焦りを見せてしまい、香川にボールを奪われるとそのままドリブル突破を許してしまう。上がっていた最終ラインは追いつくことは出来ず、残された砦はGK高木のみ。香川は高木の動きを冷静に読み取り、ゴールに流し込み欲しかった追加点を奪い、そのままゲームは終了した。

明大のチグハグな攻撃、そして退場劇があった。
しかし、それ以上に高知大の動きは素晴らしかった。前線のアタッカー陣だけではなく、全体の鬼プレスがあったからこそ、明大は本来の動きを封印されてしまった。「自滅」という言い方も出来るかも知れない。だが、自滅に追い込むまでの「必然的な流れ」がこの試合にはあったのである。

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素晴らしすぎる内容で勝利した高知大。
ダークホースから、一気に優勝候補筆頭に登り詰めたと言っても言い過ぎではないだろう。

高知大学・野地照樹監督はベンチで一人、涙を流していた…

そして試合後、監督はこのように話をしてくれた。

「素晴らしかった…(試合内容であり、自分たちの選手の出来に対して)

今年の秋、関東リーグの終盤戦4試合を視察したのですが、どれもハイレベルな試合で内容に感動しました。特に明治の試合は、最後の最後で追いついた劇的な試合(11/13 2-2 中央大学)で一番おもしろかった。大学選手権の組み合わせが決まったときに、勝ち上がればその明治とやれるということもあり、私だけではなく選手の意識も非常に高かったです。

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ただ、その明治にどうやれば勝てるのかわかりませんでした。ビデオを見ましたが、スキルは非常に高く、戦術眼も高い。ただ、いろいろな指導者に聞くと『先制するしかないですよ。先制されると意外にもろい。しかし、先制されたら厳しいですね』と言われましたが、試合をしてみてその言葉の意味はなんとなくわかりました。

試合前、特に明治だからということは意識せず、『自分たちのサッカーをしよう!、そしてサッカーを楽しめ』ということだけを徹底させてきました。ただ、選手には『相手は前の試合で11点取っているから、選手に絶対に隙があるはず。監督(神川さん)は気持ちを引き締めろと言っていると思うが、選の心のどこかには隙はある。この試合、隙を見せた方が負けとなるから、絶対に隙を見せないでプレーしよう』とだけは伝えましたが、これが結果に繋がりましたね。

過去に、総理大臣杯で準優勝し、今年の大会でもベスト8まで勝ち残り、勝負出来るメンバーが揃っていたと思います。また、その中でも4年生がしっかり主力になりチームを引っ張っていたこともあり、大会前に『もういちどしっかり勝負しよう』と声を掛けました。

ただ、この勝利は流経大の中野さん(中野雄二総監督)のおかげでもあります。

ウチのような地方の大学は、遠征の際に練習場を確保するのが大変なのですが、流経大さんのご厚意でグラウンドやトレーニング施設を利用することが出来、そしてトレーナーまで手配してくれました。最高の環境で、最高のケアがあったからこそ、いい準備が出来ました。流経大の練習場で『ウチ(流経大)はインカレに出られず悔しい思いをしましたが、その分高知大さんには頑張って欲しい』と中野総監督に言われましたが、これに対して最高の形で応えられたと思います」

さらには、近年力を着けてきたことに対してはこのように語ってくれた。

「国立大学でもありますから、学業との両立が絶対だし、ウチから率先して選手をスカウトすることはありません。限られた予算、限られたメンバーの中でしか出来ませんが、その中でどうしたら関東や関西の有力私学と同等のサッカーができるか考えながらトレーニングを続けています。

私がここ(高知大)に来て、33年になりますが、一つ一つ階段を上り詰め、やっとここまで成長してきました。また、今年から、徳島、愛媛、岡山、広島といったJクラブと結成した『中四国サテライトリーグ』が生まれ、これにより高いレベルのチームと試合できるようになったことが、チーム全体の底上げに繋がりました。

特に、11月29日に行われた岡山戦が、チームに大きな自信を与えましたね。この試合、前半は何も出来ませんでしたが、もっと自信をもってプレスをかけようと声を掛けて後半に突入すると、格上に対しても臆すことなく自分たちのサッカーが出来るようになり、今のベストと呼べる形が完成したんですよ。

ただ、ウチはあくまでも『雑草』です。雑草のごとく、ひたむきに戦うだけですよ…」

確かにメンバーを見れば、名のある選手はアジア大会日本代表に選ばれた實藤友紀のみ。ただ、彼とてU-17日本代表であったものの、高校サッカー選手権の出場経験はない。その他のメンバーでも、高校時代に全国経験しているメンバーはごくわずか。また、関東や関西の有力チームの大半は整った専用施設を持っているが、高知大にはサッカー部のためだけの施設は無いに等しく、いまだに土のグラウンドの上で練習している状態だ。

さらには、関東や関西のリーグ戦とは違い、試合数も少なければ競い合う強豪校も少なかった。地域的なハンディ、国立大学としての制約などが絡み、長い間全国の強豪から大きな差をつけられていたが、野地監督の粘り強い指導により、平成4年度に行われた第41回大学選手権にて、四国勢として初のベスト4に入り、その後の平成8年度でも再びベスト4進出。そして平成14年、20年の総理大臣杯でもベスト4に入り、21年大会では優勝こそ逃したものの、ついにファイナリストの地位まで登り詰めた。

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いい選手がいなくても、いい環境が無くとも、サッカーへの情熱、そして「サッカーを楽しむ心」があれば、一歩一歩だが着実に成長する。野地監督の信念と、選手それぞれが「地方でもやればできる」という気持ち続け、これが融合したことにより、全国の強豪に肩を並べるまでに成長したのである。そして、無名と言っても過言ではない存在ばかりだった選手も、高校時代、選手権や全日本ユースで活躍した選手たちに対しても、まったく劣ることはなかった。いや、それどころか、布施や香川、芝野といったアタッカー陣は、誰よりも輝きを放っていた。

さて、高知大学だが、26日に中京大学と準決勝を行うが、たぶん明大以上に手こずる相手となるだろう。

総理大臣杯で見せた堅守速攻のサッカーは、やはりインカレでもその力を発揮している中京大。間違いなく、高知大は攻める時間は多いかも知れないが、攻守の切り替えが一歩でも遅れることがあれば、中京大の鋭いカウンターの餌食になるはず。そして抜け目なく狙ってくる、セットプレーも要注意だ。

中4日から、中2日の強行軍で迎える準決勝。高知大は明大戦のように、いい準備をして試合を迎えることが出来るだろうか? そして、堅守を誇る相手に対しても、1回戦の鹿屋体大戦のように粘り強く行けるかがポイントとなってくる。

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さて、敗れた明大神川監督だが、開口一番「完敗でした…」とコメント。また、この日のスタメン起用で迷いがあり、それが結果的に采配ミスに繋がってしまったことも素直に認めてた上で、このように語ってくれた。

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「相手の速いプレスの前に、ウチの攻撃は完全に寸断されてしまいましたね。そして高知さんが最後まで足が止まらなかったのも驚きでした。完敗です。

相手の(前線の)4人には、個の力でも負けてしまいましたが、組織的な動きや守備に関しても明治は負けてしまいました。本当、今の大学サッカー界は、全国的な地域ハンディはもうないと思いますね。

ただ、今年はリーグ戦にしても、総理大臣杯にしても、インカレにしても、どの学校も『明治に勝とう!』と意気込んで来ていましたね。そういう意味では、ウチは相手の底力を発揮させる『引き立て役』になっていましたね(笑)。まあこのように、全国の強豪からマークされることは、非常に嬉しいことであり、認められた証拠だと思っています。

そんな中でも、タイトルは1つ取れたし、全国大会にも全部出られたので満足はしています。また、メンバー構成で苦しむ中でも、控えの選手たちが成長してくれたこともあり、大きな穴が空くこともなくシーズンを乗り切りました。ただ、今はそれほど悔しくないですが、明日以降、悔しさが奥からわき出てくるのでしょうね… 

これで4年生は引退となりますが、今年残してくれた財産は本当に大きなものでした。これを下級生たちがどう活かすか楽しみなところです」

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結局、最後まで山田、小林の両名は復帰出来ないままに終わってしまった今年の明大。彼らにとって、前期は最高のシーズンであったが、後期はやはり不満の残るものであったが、その悔しさをJリーグという次のステージでぜひ晴らして欲しいものである。

そしてこの日は敗れてしまったが、今年1年を振り返れば「層の厚さ」を実感させる1年であった。

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前期までは4年生が中心となってチームを牽引してきたが、後期にはいると矢田旭、梅内和麿、野間涼太といった1年生たちが急成長を遂げ、さらにチーム内競争が活性化され、盤石の体制を築いていった今年の明治。来年も、関東を引っ張るのは「紫魂の勇者」であると感じさせた後半戦でもあったはず。

大学3冠、そして天皇杯ベスト8という目標を立てていたのだが、結局のところ関東リーグ制覇のみで終わってしまった今年の明大。天皇杯に関しては、かなり「夢」な目標であるが、大学3冠に関しては、決して出来ないことはないと考える。

当然、今年のチームでもコンディション次第で目標達成は可能であっただろうし、来年以降のチームでもその思いは変わらない。今年の4年生が果たせなかった目標を、下級生達が達成できるか、この先も見守っていきたいところだ。

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