« 2010地域カテ王者は讃岐に | トップページ | 残された時間はあと10日 »

2010年12月 8日 (水)

長野のNEXT STAGEとは?

これまでの数年は「4強」による激しい争いを繰り広げてきた北信越リーグ。

しかし、2009年度で松本山雅とツエーゲン金沢が「卒業」。そして今年、4強の1つであったジャパンサッカーカレッジ(JSC)も、目標こそJFL昇格を掲げていたが、チーム予算を縮小して挑んだため、優勝争いは開幕前から長野優位と言われてきた。

Img_0455

骨のあるライバルがいたからこそ、「無駄に熱いリーグ」と言われてきたのだが、今年に入ってその構図が完全に崩れ、長野が「どう勝つか」だけに注目が集まっていたと言えるだろう。

さて長野だが、昨年の全社準決勝で敗れたことで、3年半チームを指揮してきたバルディエール・バドゥ・ビエイラ監督に別れを告げ、コーチとして指導していた薩川了洋氏を監督に昇格させて新しいシーズンに突入。また、本格的強化が始まった2006年以来、昇格を逃し続けてきたこともあり、JSC同様、予算に関しては前年を下回る額で新チームは始動することとなる。

そのため、新戦力に関しては、元Jリーガーを派手に補強するのではなく、ライバルであるJSCから宇野沢、諏訪、麻生といった確実に活躍を期待できる選手をピンポイント補強し、その他は新卒などの若い選手をポジションごとに獲得するだけにとどまった(※ロアッソ熊本から網田慎のみ、期限付きで獲得

しかし、昨年からのレギュラーの大半はそのままであり、さらにはJSCから移籍してきた選手も、北信越や全国の舞台での経験もあることから、リーグ、そしてチームに馴染むまでに時間はかからなかった。こうして、薩川パルセイロはバドゥ体制+JSCの美味しいどころ取りというような形でスタートしていく。

チームの骨格は昨年のままであり、大きな変化は無いかと思われたのだが、チームを支える最終ラインに一抹の不安を実は薩川監督は抱えていた。

Img_2623

これまでの長野といえば、3バックが基本であったが、薩川監督の理想の中にはいつも4バックがあった。「3」なのか、はたまた「4」なのか? とりあえず、シーズン突入前に薩川監督は「3」のままで行くことを決断するのだが、その3枚の組み合わせにも悩むこととなる。4年目の籾谷と、柏時代から見てきた2年目の大島が軸となり、最後のもう1枚を誰にするかがポイントだったが、三橋も本城もイマイチフィットしない。また、新しくなった3バックと、ボランチの連携も上手くいかず、監督にとって不満の残る連携が続いてしまう。

ただし、ここまでで取り上げたことは、あくまでも「全国で戦う上での不安」であり、北信越で戦う上ではあまり問題ない話でもあった。

4月11日についに開幕を迎えるのだが、初戦を8-0、2戦目は2-0、3戦目も5-0と3戦連続無失点と上々のスタートを切ったかに思えたのだが、それは相手とのレベル差を考えれば当然の結果であり、違う見方をすれば「こんな緊張感のない戦いで大丈夫なのか?」と感じさせた。

そして迎えた第4節のヴァリエンテ富山戦、ここで長野は手痛いドローを喫してしまう。シュート数では5-18と相手を圧倒。完全にゲームを支配しながらも、ガッチリ守りを固める相手をどうしても攻略できない。シーズン前のTMで見たときと同じように、バランスを取るはずのボランチが、その役目を全うしていないのだ。

これが、これまでのような「4強時代」であったのなら、間違いなく優勝戦線が離脱してしまう事態になっていたであろうが、運が良かったといっていいのか微妙だが、長野のポテンシャルからして、バランスが悪くても北信越では負ける相手はいなかった。

勝ち続けているものの、何か釈然としない状況が続いた長野に現実を見せつけられる瞬間が訪れる。

天皇杯長野県予選の決勝だ。
相手は当然ながら松本山雅FC。

これまでは同カテゴリーのライバルだったが、相手は今や全国リーグの舞台で戦い、長野が戦っている相手とは比べものにならない強敵と渡り合ってきている。長野としては、ライバルと戦える1回だけのチャンス故にどうしてもモノにしたかったが、山雅は長野が考えていた以上に成長し、そしてしたたかさを見せつけた…

Img_0443

これまでの同じ戦術、戦い方を見せた両者
しかし、長野は相変わらず「いい試合」しか出来ず、山雅の吉澤監督には「戦ってきた相手が違いますから」と余裕の発言までされてしまう。

試合は0-1であるが、限りなく差を見せつけられてしまった長野。チームはバドゥ時代かた積み重ねてきた攻撃サッカーは継承し続けていたものの、7月から3バックを捨て4バックに変えていたが、大事な大一番でまたも結果を残せなかった。

そんな手痛い敗戦を喫した翌日、長野だけではなく、全国のサッカー関係者を驚かせる知らせが公式に発表される。

ジュビロ磐田で「完全優勝」を果たしている鈴木政一氏が、長野の強化本部長に就任したのである。

バドゥを監督に招聘したときも驚いたが、鈴木氏の強化部長就任もインパクトは強烈であり、そしてこの招聘こそ「チームの本気度」がわかるものでもあった。

バドゥ時代から、長野は地域リーグでは群を抜いたチームを作り上げ、その攻撃力に対してはどのチームも実力を認めていた。豊富なタレントを擁し、地域リーグらしからぬ、洗礼された攻撃サッカーを見せた長野。だからこそ、2008年の地域リーグ決勝大会では優勝候補、昇格候補に名前を挙げられた。しかし、攻撃サッカーの裏に、守備面の甘さ、勝負弱さが隠されていたことが表面化してしまい、雨の本城で屈辱的なグループリーグ敗退という悪夢の結果を招いてしまう。

そして、昨年も勝負に徹した「緑の壁」を最後まで攻略できず、またも涙をのみ、クラブはバドゥとの決別を選択。だが、ここで問題だったのだが、最高指導者の首だけをバドゥから薩川了洋に変えただけであり、チームの根本的問題にはメスが入っていなかったのである。

奇しくも、長野の同時昇格した讃岐も、昨年までは同じように理想論を追求したチームであった。しかし、連続して昇格失敗に終わった羽中田体制からの脱却を選択し、「勝つこと」を一番の目標とした現実路線に転向するために北野誠氏を監督に招聘。これが見事に的中したのだが、長野も「今さらながら」という感もあるが、勝ち方を知り尽くす名将に頼ったのである。

Img_5270

鈴木氏が強化本部長に就任してからの長野は、少しずつその影響力を発揮していくこととなる。これまでは、なんとなく籾谷を中心に跳ね返していただけという感のあったディフェンスラインが、徐々に「グループとして」機能するようになっていく。また、鈴木氏はチームが強くなるキーマンに大橋を指名。彼には「長野の福西」というような活躍を要求し、試合中では多くの注文が飛ぶようになる。

これまでの長野の中盤といえば、どちらかというと攻撃一辺倒でバランスを時として崩してしまうことも多かったが、大橋がバランサーとして急激に成長を見せていく。そんな中で全社を迎えた長野。まだチームは地域決勝に向けて改良中でもあり、決して万全な状態ではなかったものの、それでも3連戦で延長戦にもつれ込みながらも勝ちきれる勝負強さを身につけて行った。

そして決勝で讃岐と対戦したのだが、やはり3戦連続延長戦を戦った体力面でのハンディは大きかった。また、相手の取った戦術は薩川監督は口が裂けても言わないだろうが、長野が最も苦手とするタイプであり、ものの見事に相手の策にはまってしまう。チームの最終目標地点はあくまでも地域決勝だが、取れるタイトルは全て狙うと宣言した長野。しかし、天皇杯長野県予選に続く完敗に、チームの課題はかなりハッキリしてきた。

Img_0075

長野というチームが地域決勝の壁を破るには、固く守る相手を打ち破ることも大事なのだが、それ以上に、まずは「失点しない」ということが大きなポイントとなっていく。バドゥ体制時の長野は「攻め勝つ」という選択肢しかなかったが、鈴木強化本部長加入後に守りの意識が改善されていく。

地域決勝1次・決勝ラウンドで、再度讃岐と対戦した長野だが、ともにPK負けしたものの、1-1、0-0と内容はドロー。さらには6試合で失点は2と、決勝ラウンドに残った4チームの中では最小を記録(得点9は讃岐と並んで最多)。最後の最後に来て、長野は「勝つ方法」ではなく、「負けない方法」を身につけたと言っていいだろう。

ディフェンスリーダーの籾谷も、「苦しい戦いが続いているが、まずは守備陣がゼロに抑えれば最悪でも勝ち点1は確実に奪える。1次ラウンドが終わった後、ディフェンス組だけでミーティングを重ね『決勝ラウンドは絶対に無失点で抑えよう』と意識を高めてきました。ノザ、耕平、大島との連携。そしてキーパーとも。大会を通して、キーパーが裏のスペース(ボール)を上手く対応してくれたので、自分たちとしてはとても守りやすかった」とコメントしてくれている。

Img_0650

結果的に讃岐に1勝もすることは出来なかったが、長野の目標は讃岐に勝利することではなく、JFLに昇格することが最大であり唯一の目標である。かつての長野であれば、理想を最後まで追求するのだが、相手の戦術の前に封じ込められておしまい。というパターンだったが、地域決勝に入ってから「鈴木効果」が見事に発揮された。

長野エルザ時代、2度地域決勝にチャレンジしたが、あの時のチーム力に残念ながら全国と対等に戦う力はなかった。そして2008年、ハッキリ言えばあの時点で昇格していなければ本当はおかしかった。要田、土橋、貞富、丸山、籾谷といったタレントを擁し、戦力は間違いなく出場チームの中でもNo.1だったはずなのだが、それでも昇格失敗。そして翌年も…

全社決勝の讃岐戦で「課題が…」と書いたが、長野の課題なんて本当は2006年からちっとも変わっていなかった。バドゥ体制から薩川体制に変わってもだ。サポーターだってわかっているはず。まずは目の前の試合を勝ってほしい。いい試合、魅力的なサッカーはそのあとでいいということを。

理想論だけで勝ち上がろうとした長野。だが、ギリギリのところでクラブは切り札を招聘し、路線変更とまでは行かないが、チームにこれまで足りなかった「勝者のメンタリティ」を植え付けていく。

そして第34回地域リーグ決勝大会で、やっと勝ち抜くことに成功した。
2006年から本格的強化を始めてから足かけ5年。かなり遠回りしてしまったが、やっと1歩前進することが出来た長野パルセイロ。

Img_0689

「長野からJ」という目標に到達するには、超えなければいけないハードルはまだまだ山ほどある。さらには最大のライバルである山雅と比べれば、チームの実力だけではなく、観客動員数、クラブ経営、試合運営ノウハウ、施設面などで大きく遅れをとっている現状にしっかり目を向けるべきである。

チーム強化に関しては、来季からはもっと「鈴木カラー」が前面に出てくることは間違いない。あとは、クラブがチームに対して万全のバックアップが出来る体制を作れるかがポイント。また、すでに北信越リーグで有料試合を行っている長野だが、これまで以上に運営面でのスキルアップ、そして顧客満足に努める必要性もあるし、「長野にクラブがある意義」を高め、地元での認知度・好感度を上げていかなければならない。

当初から「J入り」を表明こそしているものの、スタジアム施設の問題から、即J準加盟→1年でのJ2昇格は難しい状況にある。だからこそ、「Next Stage」の第一歩はクラブの基盤をこれまで以上に強くすることが重要であり、将来的に目標(J入り)を達成するためにも、JFL元年はこれまで以上に「愛されるクラブ」になることも必要だ。

ただチームを強くするだけでいい時代は終わった。
そして来季からは、これまで以上のビジョンを持ったクラブに成長してほしいと願う限りである。

« 2010地域カテ王者は讃岐に | トップページ | 残された時間はあと10日 »

地域リーグ」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/176307/50242452

この記事へのトラックバック一覧です: 長野のNEXT STAGEとは?:

« 2010地域カテ王者は讃岐に | トップページ | 残された時間はあと10日 »