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2010年10月22日 (金)

戦い方の幅を広げたカマタマーレ

カマタマーレ讃岐の試合を見る機会はそう、なかなかない。
当然ながら、天皇杯、全国社会人大会、地域決勝だけに限られてくるのだが、今大会で見た讃岐はこれまでのイメージから大きく姿を変えていた。

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昨年、四国リーグで優勝を逃し、全社での「復活」を賭けて大会に挑んだが、同じく権利獲得を目指していたツエーゲン金沢に準々決勝で敗退。バルセロナのような、華麗で魅力溢れる攻撃サッカーを志していた2年間の羽中田体制では結果が出せなかった。

予算ギリギリどころか、オーバーしている状況でJFL昇格を逃してしまった讃岐としては、残念ながら羽中田氏の留任という選択はなかった。社長の熊野實氏はチームの内情を理解した上で、最善の結果を引き出してくれるであろう人材を求め、その中から熊本での実績のある北野誠氏を招聘する。

そして今年、四国リーグで優勝を飾り、地域決勝の出場権を獲得した状況で、全社に挑んできた。

さて、冒頭に書いたとおり、今年の四国リーグでの戦いは正直見てはない。だからこそ、人から聞いた情報でしか新しいカマタマーレを知らなかった。だからこそ、今年の讃岐はどうなのか? 昨年の羽中田体制からどう変わったのか非常に興味があったのだが、いい意味でこれまで聞いていたカマタマーレ像を打ち壊す内容を見せてくれた。

羽中田体制の頃の讃岐と言えば、ポゼッションで優位に立って攻め勝つサッカーを志したが、今年の北野体制でも四国リーグでの戦いはその延長線上のものだった。しかし、守備面では大きく成長し、昨年は14試合で10失点だったが、今年は5失点のみと堅守ぶりが発揮され、2年ぶり5回目のリーグ優勝を果たしたが、北野監督は四国リーグでの戦いを全く満足していなかった。

「四国のレベルでは、ウチの攻撃力だけで勝ててしまう。だけど拮抗した力を持つ相手との戦いになる全国大会では勝てる保証はどこにもない。さらには、どんな過酷な状況でも、3連戦以上を戦わなければいけなくなる。だからこそ、自分で限界を作るな。そして現状に満足しないで、とことん走り抜け」

北野監督は選手に対し、試合だけではなく、練習時にも常に緊張感を持たせていたと言う。

さて、今大会の讃岐の戦いだが、ポゼッションを高めて攻め勝つというスタイルは完全に封印し、しっかり守って相手にボールを持たせた上でカウンターでしとめるというサッカーに徹底。これについて北野監督は大会終了後にはっきりと「この大会や地域決勝に向けてテストした」と認めた。

特にこのスタイルが効果を発揮したのは準決勝と決勝であろう。相模原と長野という、ともに攻撃的スタイルを売り物にするチームに対して、真っ向勝負するのではなく、相手の戦い方を伺いながら、隙を突いてとどめを刺す… この大会や、連戦の厳しさ、本当の勝負時を熟知する北野監督の経験が、ものを言ったという感じである。

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システムに関してだが、基本的には中盤がボックス型の4-4-2をベースとしてきていたが、対戦相手や時間帯、選手の疲労や交代により、4-2-3-1や、3-5-2を用いて戦うなど、非常に柔軟な対応の出来るチームであることを印象づけた。

さらに、決勝ではメンバー表上では4-4-2だったのだが、ピッチ上のシステムではサイドバックに入ることが多い下松がやや高い位置を取り、最終ラインが3バック気味になっていた。そして最終ラインの左に入った相原には、長野のキーマンである宇野沢のマンマークを命じ、相原はこのタスクをやりきって、長野の攻撃の生命線を断ち切ることに成功。

[決勝戦スタメン:変則3-5-2]
ーーー岡本ー飯塚ーーー
ーーーー吉澤ーーーーー
齋藤ーーーーーーー下松
ーーー中島ー綱田ーーー
ー相原ー波夛野ー神崎ー
ーーーー家木ーーーーー

さらに、長野のFW、平石の動きの悪さに起用を諦めた長野・薩川監督は、62分にサイドプレーヤーの麻生を投入し、宇野沢をFWに位置に変えると、讃岐もこれに合わせてシステムチェンジ。

[変更後システム:4-4-2]
ーーー岡本ーー飯塚ーーー
ー齋藤ーーーーーー吉澤ー
ーーー中島ーー綱田ーーー
相原ー波夛野ー神崎ー下松
ーーーーー家木ーーーーー

相手の動きに対して、自在にシステムを変えてくる讃岐。ポゼッションで圧倒しているのは長野なのだが、低い位置でボールを持たせているだけで、簡単にバイタルエリアに進入させない組織的守備をみせ、相手をいなしていく。最終ラインでボールをカットすれば、素速く前線にフィードして、カウンターからシュートで終わることを徹底。

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大会を通じ、選手全員が監督が目指すサッカーを理解するだけではなく、選手同士でも意思疎通出来ていたことが優勝に結びついた讃岐。そしてもう一つ、この大会に賭ける監督の意気込みの違いが優勝という結果にたどり着いたとも言えた。

「このチームには、四国リーグでの優勝しかなかったのですが、大会前、選手達に勝って(優勝して)『歴史に名前を残そう』と伝えました。

よく、ウチのチームに対して、すでに地域決勝の出場権があるから、今大会は『調整ですか?』と質問する人もいましたが、このレベル(地域クラス)で簡単に調整なんて出来ません。試合をこなしながら調整出来るものなら、その選手たちは地域リーグになんかいませんよ。

ただ、地域リーグに属するカテゴリーのチームは、なかなかいい相手とは練習(試合)を組めません。大学にしろ、Jにしろ、JFLにしろ、日程の問題でそう簡単にTMを組ましてもらえない。関東地区であれば、チームも多いのでいろいろな相手と戦うことでレベルアップ出来るのですが、四国ではそう簡単に出来ません。

だからこそ、この大会はとてもいい経験の場でありました。同じレベルかそれ以上のチームが真剣勝負で競い、緊張感を味わえる場は、最高の経験になりますからね。それに、この緊張感をまた味わいたいとも思っていましたから(北野監督は2005年のロッソ熊本時代にコーチとして全社優勝を経験)。

戦い方については、敢えてこの大会では『こういう戦い方(リアクションサッカー)』を選手に徹底させました。リーグ戦ではポゼッションを高めたサッカーをしていたので、やれないことはないですよ。ただ、チームとして、戦い方の幅を広げたかったし、強敵を相手にして勝つ方法を選手に理解して欲しかった。

また、今大会でウチはファールや警告が少なかったと思います(実際、5試合戦ったチームの中で警告6、退場0は最小、最多は警告16、退場2の相模原)。環境にしてもそうだし、試合においての主審のジャッジにしても、文句をいう選手がほとんどだった。僕はね、そういうところの意識改革からチーム作りをスタートさせました。

確かにこのレベルでのジャッジは本当にレベルが低いが、文句を言って審判団を敵に回しては勝つ試合も勝てなくなる。一人でも仲間が多い方がいいだろ? と選手には徹底的に教え込みました。また、クリーンなサッカーをすれば、ファンも増えてくれますしね。

とにかく、この大会では選手個人としてだけではなく、チームとして大きな自信になりました。地域決勝まであと1ヶ月ですが、もっといいサッカーが出来るように、トレーニングして決戦に向かいます」

大会終了後、北野監督はこのように語ってくれたが、その表情はとても自信に満ちていたことを付け加えておく。

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当初は相模原と長野が抜け出た存在かと思われていた今年の全社だが、終わってみれば、その2強に完勝した讃岐が、チームとしても、香川県勢としても初優勝を飾り、一躍11月21日から始まる第34回地域リーグ決勝大会の主役に躍り出た。

羽中田時代の理想を完全に捨て去り、冷静かつ冷酷に相手を沈める北野堅実路線の讃岐は面白い存在であるし、昨年優勝の松本山雅同様、この大会での優勝を起爆剤として、一気に勝ち進んでいく可能性もある。

最後に余談になってしまうが、11月21日から始まる地域決勝で、讃岐は決勝で戦った長野、ベスト4に入った福島と同グループに入り、高知ラウンドはまさに「死のグループ」となった感もあるが、果たして長野を返り討ちに出来るだろうか…

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