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2010年6月 2日 (水)

経験値を上げるアルテ

アルテ高崎が、今おもしろい。

ザスパを中心に見ている人間が、こういうことを書くと「なんでだ?」とか、「ザスパだけみてればいいだろ?」と思われそうだが、正直、今のアルテとザスパをかつての「敵対関係」と思うこと自体、ナンセンスだと思うので、あえて書かさせていただきます。

そりゃ昔(といっても、リエゾンとフォルトナの時代)は、両者の関係は最も最悪だった。リエゾンのオーナーだった飯島さんもそれは認めている。さらに、ザスパとなりJを目指した時には、アルテも明らかに対抗心を燃やして準会員申請をしてきた(認可はされず)ほどだし…。

埼玉(大宮)人の私は「前橋と高崎」という地域が、どれほど対抗心を持っているのかわからないが、大宮人である私は「浦和」と名の付くもに対しては、異常に対抗心があるので、それと大きな差はないと考えている。まあ、そんな過去の事情、地域間の対立もあり、ザスパとアルテは相容れられない関係であったことは否定できない。

そのアルテだが、2004〜2005年当時(この時期はFCホリコシ)は、Jを目指していたこともあり、今では考えられないような力(金)の入れ方をしていた。しかし、結果を出せず徐々にトーンダウン。さらに、内部のゴタゴタが続き、一時はチーム消滅してしますのでは?とまで噂された時期もあった。だが、後藤義一監督が就任してから、チームは激変。また、ザスパとの関係も、決して良好とまでは言えないが、練習試合を頻繁に行うなど、改善されつつあることは確かだ。

さて、本題に移ろう。

JFL第13節で、アルテ高崎は3位と好位置につけている町田ゼルビアと対戦。正直、試合を見たわけではないので、内容に関しては不明だが、好調を維持する相手に対し3-2と堂々の勝利を収め、5年ぶりの3連勝を達成し、順位も9位まで浮上させた。

今季、4試合ほどアルテの試合をみているが、それらの試合内容から町田戦の結果を考えると、まったく「大番狂わせ」とは思わない。逆に、今のアルテならどの相手でもそれなりな試合は出来ると考えるほどだ。というか、昨年の前期は7勝7分3敗という、好成績を残していたことを、皆さんは覚えているだろうか?

今から2、3年前、チームが無くなるのでは?とまで言われたチームが、なぜ復活したのか?

これは偏に、後藤義一という人物の熱意なしには語れない。

Img_3557

なぜ、アルテに後藤さんがやってきたのかは、私も知らない。今度ぜひ、本人に聞いてみようと思うので、この件はまた後ほど。で、後藤さんが就任した時には、正直なところ、「ないないづくし」の状態であった。昨年までいた選手で契約続行(契約といってもプロという訳ではなく、単に選手登録しただけ)したのは数名だけ。その選手たちも、チームの先行きが不安で、プレーに身が入らない。当然、クラブにはお金がない。

選手もいなければ、やる気も無い。さらには金もないでは、何も始まらない…

チームの環境は最悪だった。
練習場こそあるものの、生活面での支援もなく、ユニフォーム以外の練習着は自費購入という有り様。さらには、選手の生活面での支援は何もしてくれない。元々、アマチュア契約のため、当然チームからの報酬はない。ただ、プロとしての報酬はないものの、チーム(クラブ)が地元と連携して、仕事先を斡旋する形はあちこちのクラブで見受けられるが、アルテにはそれがほとんどない。選手たちの生活面は、選手自身がアルバイトを見つけてどうにかするしかなかった。

そんな状況にも関わらず、意外にも、とにかく「上」でやりたいという選手が集まってきた。

しかし、集まった選手のほとんどは、高校、大学で注目された選手が皆無で、当然、大きな大会で結果を残したこともない。ただ、彼らは「やる気」だけはあった。後藤監督は就任と同時に、このやる気のある選手たちを、絶望させないようにすることからチーム改革をスタートさせる。選手一人一人と面談し現状を把握して、生活面が安定できるように知人や仲間に協力を依頼して、以前よりまともにサッカーに取り組める環境作りを行った。こうした地道な監督の努力が実り、一度は去った選手もこのチームに再び合流する。

次に監督は、戦えるチームにするために、組織的な守備をたたき込むことにした。レベルが劣るチームが「勝つこと」を考えた場合、守備を強化することが一番である。まずはこの部分で徹底的に指導を始めたのだが、これが見事に的中。昨年の前期は7勝7分3敗と驚きの好成績を残すことに。

守備のベースが出来たと判断した後藤監督は、後期からパスを繋いだ攻撃ができるチームへ変貌させようとした。しかし、守備での約束事はスムーズに出来たのだが、攻撃に関してはなかなかうまくいかない。攻撃のパターンを考えようとすると、これまで出来ていた組織的守備にほころびが生じ、後期は大きく崩れて2勝6分9敗で終わり、年間成績も14位まで降下してしまった。

しかし、これまでの17位や最下位という順位に比べれば、大きな飛躍であった。ここで手応えを感じた後藤監督は、今年こそ、守備と攻撃のバランスが取れたチームにしたいと意気込んでいたが、ついに覚醒したと言ったところである。

後藤監督は、今のチームに対して、以前こう語っている。

「選手のやる気が非常に高い。みんな、とにかく「上」でやりたいという選手が集まっているので意欲が高く、教えたことをすぐに理解して実践してくれる。また、選手に日頃から『まずはここで結果を出せ』と、常に伝えています。上でやりたいなら、まずはここで結果を出せないようでは、だれも見向きもしてくれませんからね。だから選手は練習からいつも必死だし、試合では絶対に走り負けていないと思います。(彼らは)決して巧いプレーヤーではないが、全力を出して戦っています。全力でやれば、無名の選手でも、やれないことはないんですよ」

そして、チームの課題についてはこのような見解を示す。

「彼らはね、もう十分強いチームと戦えるだけの技術は持っているんだけど、経験だけはどうにもならないんだよね… (3節ガイナーレ戦で)前半、見事な試合をして、完全に流れを引き寄せているにも関わらず、ワンチャンスでやられてゲームを失ってしまう。やっぱりね、強いチームはまず、失点しないし、『ここ』というところで点が取れるんだよね。まあ、経験があるから勝負どころとかがわかってくるんだけど、そこばっかりは指導の中で『こうなんだ!』と教えられないから難しい。ゲームをこなして、チームとして経験値を上げていくしかないですね」と語ってくれている。

サッカーをやりたい。選手を続けたい。よりレベルの高いリーグでプレーしたい。ここならレギュラーを取れると思った。プロになるためのステップアップとして、このチームに来たなど、選手がアルテに集まった理由はいろいろあるが、誰もが「チャンス」を求めてチームの門を叩いたことは間違いない。

このように、とにかく「サッカー界で生き延びたい」という意欲の高い選手と、理論武装して自らのサッカー論に合わせて選手を起用していくのではなく、今いる選手の特徴を掴んで、それを成長させる手腕に長けた後藤義一監督が一つになったことで、アルテ高崎は化学反応を起こした。

これがもし、選手育成型の監督でなかったら、アルテは今も最下位争いをしていたかもしれない。戦術重視の監督というか、普通の監督は、練習において「基礎」と思われる練習はしない。あくまでも戦術と連携を高めていくことだけに主眼を置く。だが、後藤監督は違った。アルテというJFLに属するチームだが、やり方は横浜FCユース時代と同じように、まずは徹底的に走る、蹴る、止めるという基本動作を徹底的にたたき込んだのである。

可能性はあるものの未熟だった選手が、後藤監督という、「名コーチ」の指導を受けたことで、飛躍的にスキルを上げ、戦える集団へと変えたのだった。まあ、基本動作+気迫なんて、後藤監督の現役時代そのままのようなんですが…(笑)

で、アルテのやっているサッカーだが、シンプルそのものである。中盤がフラットな4-4-2。ラインを高く保ち、守備においてはしっかりブロックを作り、相手を前に行かさせない。技術がない部分に関しては、相手よりも走ることと気迫でカバー。そして、中盤のルーズボールも、ほぼマイボールにすることが出来ており、ここから攻撃に転じるパターンも、速攻だけではなく、繋いで崩す形も加わり、攻撃の形も昨年より進化している。

10節の松本山雅戦でも「やっぱり経験だよね」と語っていた後藤監督だが、それ以降は3連勝と、一気に上昇気流に乗ってきている。今季、すでに5敗しているが、その内容はすべて「紙一重」と言っても過言ではない。その敗れた試合で得た経験の一つ一つが、アルテというチームを成長させ、強くしてきたのである。

これから先、アルテ高崎を「格下」と思って戦えば、必ずや痛い目に遭うだろう。
後藤アルテ、非常に気になるチームでもある。

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