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2009年12月31日 (木)

勝ち方を忘れてしまった「カナリア」

第88回全国高校サッカー選手権 開幕戦 @国立競技場
帝京 1-3 ルーテル学院
【得点】
32分小牧(ルーテル)、56分稲垣(帝京)、68分・79分山本(ルーテル)

廣瀬体制となって、やっとチームの「形」が見えてきた帝京高校。今年は3年連続の選手権出場ということもあり、大会前から「名門復活」「全国制覇」の目標を掲げていた。しかし、都大会からケガ人続出でベストメンバーが組めない試合が続く帝京は、この試合でも大黒柱のキャプテン板垣梓をスタメンから欠くなど、不安材料を抱えたまま、開幕戦のピッチに立った。

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対するルーテルは、ベストな状態でこの試合を迎え、いつもどおりの4-4-1-1というシステムで挑んできた。だがルーテルは、前線で9番小牧、11番山本、17番伊津野の3人がめまぐるしくポジションチェンジを敢行し、時には4-3-3とも言えるような形をとり、帝京守備陣に揺さぶりをかける。さらに中盤の24番佐藤も豊富な運動量で、右に左にと位置を変えることから、帝京のマークには次第にズレが生じ出す。

豊富な運動量を見せつけるルーテルがペースを握り、帝京陣内で試合をする時間が増えていく。完全に劣勢に回ってしまった帝京は、悪循環のスパイラルに陥っていた。開幕戦、それも国立競技場という大舞台。雰囲気に飲まれるなという廣瀬監督の指示もむなしく、自分たちの「らしさ」を見失った強引のサッカーに終始してしまう。ボールキープ率だけでいえば、帝京が前半から上回っていたが、ムダにボールを持っているだけだったのだ。ルーテルの激しいプレスの前に、「帝京魂」は沈黙。

おい、カナリア色のユニフォームが泣いているぞ、
古沼さんが見ていればどう思う試合だろうか…

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20分以降は、右に飛び出す山本、左サイドから起点を作る伊津野・小牧の3人が、おもしろいように帝京ゴールに襲いかかる。27分にルーテル、初めてのビッグチャンスを掴むが、これを山本が外してしまい、帝京は命拾いする。完全に崩された形だったが、シュートミスで助けられた帝京だったが、今度は自分たちのミスで痛い目に遭うこととなる。32分、ゴール前正面で、DF同士のまさかのミスで、ボールを9番小牧の奪われて、難なくこれを決められルーテルが先制点を奪う。

完全に自滅であった。大ピンチは相手のミスで難を切り抜けることができた。しかし選手はここで「切り替え」が出来なかったのである。気持ちの切り替えが出来ていれば、32分の失点シーンで、あのような判断ミスはしなかったであろう。かつて、国立競技場の「常連」だった帝京、国見高校と並んで「勝ち方」を熟知していた時代の帝京高校の姿はそこにはなかった…。

前半を0-1で終えた帝京。廣瀬監督は、気持ちの切り替えをしっかりすること命じた。そして1点返せば自分たちのペースを取り戻せるから、冷静になって戦おうと選手に伝え、後半のピッチへ送り出す。さらに廣瀬監督は、後半開始から稲垣を投入。ケガあけでコンディションは100%ではない状態だが、彼の力に頼るしかなかった。

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さて後半は、風上に立った帝京が意気を吹き返す。後半開始直後にFKのチャンスを得ると、キッカーには「アジアの大砲Jr」である、高木利弥が立つ。彼の左足から放たれたボールはルーテルゴールを襲い、さらにチャンスを広げていく。また、キャプテン稲垣の投入も、試合の流れを変えるきっかけとなり、中盤でタメが作れるようになった帝京は、前半のような意図の見えない攻撃から大きく変化する。

ルーテルも、前半のような前線からの鬼プレスはやや影を潜め、完全に守備を重視した「受け身」のサッカーに変わっていく。しかし、ルーテルは地区大会6試合全て無失点で勝ち上がってきているのは伊達ではない。さらに決勝ではインターハイベスト4の大津にも、見事なカウンター戦術で2-0と破った「実績」があるのだ。後半は、どう帝京の攻撃を「いなす」のか楽しみでもあったが、ルーテルは思わぬ形でまさかの失点を喫してしまう。

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56分、前線からゴール前になんでもない縦パスが入る。しかしここでルーテルGKはまさかのミスを犯してしまう。キャッチングミスでボールをつかみ損ねた先には、帝京の10番稲垣が待っていた。これを難なく頭で押し込み帝京が試合を振り出しに戻すことに成功。廣瀬監督の思惑通り、同点に追いつくことが出来た。そして試合の流れも奪い返すことに成功した。あとは逆転のゴールを決めるだけだった…。

かつての帝京であれば、こうなると100%勝ちゲームだった。確かに同点に追いついた後は、ほぼ一方的な帝京ペースでもあった。しかし、今の帝京は大舞台の経験も乏しければ、『勝つ術』というのもあまり持ち合わせていなかった。結局のところ、イケイケの時間帯においても逆転弾を決められず、ルーテル守備陣の粘りの前に、これ以上どうすることもできなかった。本来はペースを握っているはずなのに、「逆転しなければ」という気持ちだけが先走りして、帝京はいつの間に守備に大きな穴を開けていたのだ。

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68分、ロングボールの処理に出てきた帝京GKの位置が、ゴールから離れていることを確認したルーテルFW山本大貴は、狙い澄ましたループシュートを放つ。これが見事に決まって、試合を左右する2点目がルーテルにもたらされる。さてこのシーンだが、帝京はあまりにも全体が前がかりになっていたこともあり、本来ならDFがクリアすべきボールをGK内田が前に出て処理したことが失点に繋がってしまった。後半立ち上がりから中盤にかけては理想的展開だった帝京だが、冷静沈着なルーテルの前に再び追いつめられていく。

後半に入ってペースを握った帝京だったが、結局はルーテルディフェンスを崩すことは出来なかった。同点に追いつけたのはミスからのものであり、自分たちの「力」ではなかった…。時間を刻一刻と過ぎてゆき、残すはロスタイムだけとなったが、帝京にとってはまたしても痛恨の事態が発生。カウンターから、ルーテルがチャンスを掴むが帝京DFがクリア。しかし、そのクリアボールはそのまま山本に渡ってしまい、これを再びループシュート。ボールはGKの頭上を越え、帝京ゴールに吸い込まれていく。

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このまま試合はタイムアップを迎え、1-3でルーテルが勝利し、帝京としては2年連続で初戦敗退となってしまった。

厳しい言い方だが、2点目はGKのポジションミスであり、ゴールをがら空きにして飛び出す必要性はなかったと見るのが妥当といえる。また、帝京の「守り方」も工夫が足りなかったのも事実だ。前がかりになるの「勝負時」なので構わないが、そうなるとカウンターを喰らうかもしれない、というリスク管理も必要となってくるが、カウンターに対してのケアがあまりにも稚拙であった事は否めない。まあ、3点目に関してはルーテル山本もコメントしているとおり「まぐれ」というのが正解だろう。本人曰く「適当に蹴ったら入った」というぐらいだったので…。

正直、かつての「強い帝京」を知るものにとって、この日の敗戦はいささかショッキングな内容だった。ユニフォームのエンブレムには「帝京魂」と刻まれている。魂を伝えることはいいのだが、帝京の伝統であった「勝ち方を知るサッカー」は最後まで見ることが出来なかったから…。

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2003年に名将・古沼貞夫氏から監督を受け継いだ廣瀬監督。しかし名門の指導者という立場になった瞬間から、厳しい現実が待ち受けていた。名門の監督とは、常に「勝利」が要求されるものだが、監督就任から4年間は都の予選を勝ち抜けなかった。そんな時にはバッシングも受けた。それでも廣瀬は指導者としての信念を持ち続け、5年目にやっと全国への扉を開いた。しかし、名門復活への道が険しいことは間違いない。

だが、多くの人は「強い帝京」が帰ってくることを、待ち続けているはず。
カナリア色のユニフォームは、高校サッカー界の象徴の一つなのだから…

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