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2008年8月31日 - 2008年9月6日

2008年9月 5日 (金)

インターハイ準決勝・流通経済大学付属柏高校 vs 佐賀東高校

インターハイ準決勝・駒場スタジアム
流通経済大学付属柏高校(千葉第一) 2-0 佐賀東高校(佐賀)

◆普通のチームでも戦えることを証明した試合

 これまで九州と言えば、長崎の国見、福岡の東福岡、熊本の大津、鹿児島の鹿実などが有力校として知られ、これらの県は強豪地域と呼ばれるようになっていた。そんな九州地区にありながら、若干遅れを取っていたのが佐賀県である。だが、冬の選手権でも佐賀北が健闘するなど徐々に全国レベルの力を付けてきていた。そして今大会、満を持して佐賀東高校が乗り込み、見事ベスト4進出を果たし、決勝進出をかけて「王者」である流経柏に挑むのであった。

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 今大会の佐賀東には、流経の田口泰士、城西の大迫勇也のような飛び抜けた選手は存在してはいない。だが、その一人に頼るのではなく、全員で連動してカバーしあうサッカーが実を結んだことで、この大会は勝ち抜いてきた。基本システムはオーソドックスな中盤がボックス型の4-4-2。一番シンプルな形である。高いラインを保ち、前からのプレスをかけ、両サイドの早い崩しでチャンスを掴む佐賀東の攻撃パターン。そしてこの日もその攻撃は流経柏に対しても大いに通用し、互角の展開を繰り広げるのだった。

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 前半は両サイドを広く使った攻撃の前に、全くと言っていいほど良さがでない流経柏。たまに反撃に出るが、それも久場の個人技による突破のみで、連続攻撃とは繋がらない。逆に佐賀東は桃井宏和、中原秀人からの展開や突破で次々とチャンスが生まれていく。まさかの展開で劣勢に立たされた流経柏だが、斉藤孝裕、馬場勝寛らのディフェンスラインが体を張って守り抜き、前半はなんとかスコアレスで折り返す。

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 前半に引き続き、後半も良い流れで入りたかった佐賀東だが、いきなりの一撃でこのあとのゲームプランが乱れてしまう。後半3分、久場を起点に右に大きく展開し、それをダイレクトで左に戻した時には、14番吉村は完全にフリーとなっており、難なくゴールを決め流経柏が先制。この一点で前半はバラバラだった流経柏の攻撃に、「流れ」が生まれるようになってくる。この日は中盤ではなく、FW(1.5列目)で出場した田口も、前半は相手の厳しいマークの前にさっぱりの出来だったが、後半に入ると本来のキレのある動きを取り戻し、攻撃の起点として十分に役割を果たすこととなる。

 そして残り5分を切った後半25分、右からの久場のセンタリングに対して、田口が迷わず左足を振り抜いて、見事な一撃を決め試合を決定づける2点目をたたき出した。前半こそ全員の運動量で上回った佐賀東が優位に進めたが、目の覚めた後半は流経柏の独壇場だった…。前半の佐賀東を上回る運動量で、次々と攻撃を仕掛ける姿は、去年2冠を達成した先輩達の姿とだぶるようだった。

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 試合後の田口は「先輩たちを上回るにはこれ(インターハイ)を取るしかない」とみんなで話し合っていました…と語った。3月の時にはこのチームはどうなってしまうのか…と言われたチームが、今は目標の頂点まであと一つのところまで上り詰めた。あの時からは想像できないような、力強く王者の雰囲気を漂わせるチームに成長したのである。あと一つ(1勝)で年をまたいで「3冠達成」となる流経柏だが、準決勝終了時点で本田監督は「やはり千葉対決で…」という言葉が笑顔で出たのだった。

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 敗れてしまった佐賀東だが、基本技術とチームワークさえあれば、全国でも立派に戦えることを照明したと言えるだろう。また蒲原昌昭監督はこんなおもしろいコメントも残した。「田舎のチームだから、最初はみんなナメてかかったり、観衆もナメて見るのですが、ちょっとおもしろいプレーをすると、おおっ!という歓声があがるんですよね、その歓声が私たちの快感だし、やる気に繋がるんですよ」と語った。サッカー後進の地と呼ばれる場所は、まだ全国各地にあるのだが、この佐賀東の快進撃や目指すスタイルは、全国の高校生や指導者に必ずや共感を呼ぶことだろうと実感した試合であった。

インターハイ準々決勝・市立船橋 vs 作陽高校

インターハイ準々決勝・埼玉スタジアム第二
市立船橋(千葉第二) 4-0 作陽高校(岡山)

◆点差ほどない両者の実力

 名将と呼ばれた布監督が去り、あとを引き継いだ石渡監督の時代となっても名門の名に恥じない成績を残しつづけている市立船橋高校。これに対して、かつては「サッカー後進地」のひとつだった岡山において、情熱のすべてを注ぎ込み、全国有数の強豪校に成長させた野村監督率いる作陽高校。組み合わせが決まったときから、両指揮官とも口にこそださないが、ベスト8での対決を意識したカードが予想通り実現したのだった。

 今季のプリンスリーグでまさかの10位という順位で終えたことから、例年に比べ「今年は弱い」とも言われた市立船橋だが、大会に入ると順調に勝ち上がり、新しいメンバーたちは次々と自信を深めていた。特に大会前にはレギュラーではなかったGK若尾直道の成長は目を見張るものがあった。さて、作陽高校だが、前の埼玉栄戦は得点こそ1-0で最小スコアで勝利したが、退場者を出しながらもしっかりと勝利をもぎ取るところは、市船同様試合巧者ぶりを感じさせ、この日の対戦を非常に楽しみなものにしていた。

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 だが試合は予想もしなかった展開を見せてしまう。作陽はこれまでワントップに起用されていた辻本ではなく、1年生の岩崎優を起用するという奇策にでる。それでも序盤はボランチの亀井拓実、原田顕介の出だしが良く、ボールを優位に回し、ワントップにもボールが良くはいるのだった。しかし、10分以降市船が試合に慣れ出すと、完全に流れが相手のものとなってしまった。作陽の生命線である亀井のポジションに鬼プレスがかかり、全くと言っていいほど形が作り出せなくなってしまう。

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 こうして、作陽にとってもどかしい時間が続いた後に、注意しなければならない、笈川大樹、中村充孝にいいようにやられてしまい、前半だけで3点のビハインドを背負ってしまった。苦しい前半を終えた作陽イレブンに対して、野村監督は「3点差を跳ね返すのは無理、とりあえず後半だけは勝って終われ」と檄を飛ばし、選手をリラックスさせてピッチへ送り出した。

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 後半にはいると3点の貯金がある市船は、前半のような鋭いプレスは影を潜めていた。作陽は前半以上によい攻撃の形を作り出すのだが、伝統とも言える市船の堅い守備を前にしてゴールを奪えない。いい展開を作り出すが、バイタルエリアでは簡単に自由にさせてもらえず、ボランチが放つミドルシュートばかりとなってしまう。まったく形を作れなかった前半、形は作れるがフィニッシュに持ち込めない後半。1点の重さが身にしみてきた瞬間に、またも作陽は手痛い一撃を浴びてしまった。

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 後半17分、たった1本の縦パスで中村が抜け出し、GKをも交わしてなんなく無人のゴールに流し込み、試合を決める4点目をゲット。完全に勝負ありとなってしまった。結果的に0-4で敗れてしまった作陽だが、やろうとしていたサッカーは非常にわかりやすく、美しいものだった。しかし全国を勝ち抜くにはまだ、タフではなかったということだろう。パスのスピード、戦術理解度などは市船に劣っているとは全く思えない。しかし大舞台での経験値という点では市船に「一日の長」があったと言えよう。

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 もし、全日本ユースや冬の選手権で再戦があっても、この日のような点差になることはないだろう。決して作陽は弱くはなかった…、4失点負けという屈辱が必ずチームを強くしてくれと感じるのだった。そして去り際に野村監督は「また一度壊して作り直して出直します」と語って会場を後にしたのだった。野村監督がそんな一言を残した裏側で、サッカー協会の一員として会場に訪れていた布・前監督がにこやかな笑顔で石綿監督と「やったね」と一声かけて握手を交わした姿が印象的だった。

2008年9月 2日 (火)

今年3回目の信州ダービー

2008年8月31日 長野県松本平広域公園総合球技場
第13回長野県サッカー選手権決勝(兼・天皇杯長野県予選)
AC長野パルセイロ 1-2 松本山雅FC

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今年3回目の「信州ダービー」となったこの対決。
まあ、北信越リーグや、全社予選での対戦では、「信州ダービー」でもいいのですが、この大会は「長野県サッカー選手権」であり、県内の大会であるから、正直どの試合でも「信州ダービー」なので、こう呼んでしまっていいのかなあ?という疑問も少々ありました(笑)

さて、今年の両者の対戦成績は長野の1勝1分(6/8@アルウィン0-0、8/17@福井2-1)であり、さらには来週の9月7日にも同じカードが組まれており(北信越リーグ最終節@南長野)両者にとって、なんともやりづらい状況の中で試合を迎えていた。

先日(8月17日)の対戦では両者とも、全社の本戦出場を決めていたこともあり、無理に戦う必要もなく、若干ペースダウンした内容となっていた。そして迎えたこの日の「天皇杯予選」だが、山雅とパルセイロは違う考え方に基づいて試合に挑んでいた。山雅は残された今シーズンの試合全てで、ベストメンバーを揃えて全力で挑む体制としていた。対するパルセイロはあきらかに「9月7日」を意識したメンバー構成で挑んできた。

 基本システムである3-4-3ではなく、4-4-2のシステムを採用し、要田などの主力はベンチスタートさせ、言い方は悪いが1.5軍でこの試合に挑んできた。しかし、この1.5軍で山雅に勝てないようでは、短期決戦となる全社や地域決勝を見据えた「ターンオーバー」は到底無理である。だからこそ、天皇杯という檜舞台の出場権を賭けた大事な試合に、このメンバーをぶつけてきたのであった。

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 実はこの試合を前にして、山雅はパルセイロ対策として3トップを想定した練習をこなし、この日もそれに対応するシステムで挑んできた。しかし、ふたを開けてみると、パルセイロは2トップで来ており、吉澤監督は完全に裏をかかれてしまったのである。だがそんな状況に対して、5番斉藤の臨機応変な対応により山雅は冷静さを取り戻すこととなる。

 両者とも攻守の切り替えが早く、「信州ダービー」にハズレなしということを改めて教えてくれる好ゲームが展開される。貞富から繰り出される長短折り合わせたパスからチャンスを作り出すパルセイロ。阿部、大西が頻繁に顔を出し左サイドからチャンスメークする山雅。両者の良さが出る中で、最初の決定機はパルセイロに訪れる。貞富、佐藤が立て続けに決定的な場面を作り出すも、GK原がまたもゴールの前に敢然と立ちふさがり、スーパーセーブを連発して得点を与えない。すると36分、柿本が落としたボールに竹内が反応。ペナルティの外からノートラップで豪快にミドルを放つと、鋭い弾道を描いてゴールに吸い込まれていくのだった。

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 吉澤監督の相手のシステム予想は外れてしまったが、パルセイロというチームの分析には余念が無く、ポゼッションはすれども、基本的にスロースターであることから、キープはされても絶対に慌てない。そして前半のうちに是が非でも先制点を奪って、後半戦を優位に進めようと選手に伝えていた。確かにポゼッションではパルセイロに負けていたが、ディフェンスラインとGKが集中を切らすことなく、無失点で乗り越えたことからチャンスは生まれていた。

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 後半に入ると、守って鋭いカウンターという意思統一がチーム全体に行き届いた山雅が優勢に試合を進める。パルセイロはなんとかこの状況を打開するために要田を投入して3トップに変更する。だが、中盤からのチェックがさらに鋭くなり、パルセイロは貞富、土橋の位置から効果的なボールが生まれなくなってしまう。そんなパルセイロにとってもどかしい時間が続く中で、64分に見事なカウンターアタックから山雅に追加点が生まれた。

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 これにより試合を完全に自分たちのものにした山雅が、試合終了直前に1点こそ返されたが、ほぼ完勝で天皇杯出場権を得ることとなった。シーズン当初は全くかみ合わなかったチーム。6月8日の信州ダービーでもスコアレスドローであったが、もし「判定」があれば大差で負けのジャッジをくだされたであろう、この試合。だが、北信越で4位が確定してしまってから、皮肉にもこのチームは本当のポテンシャルを見せることとなる。

 この日見せたパフォーマンスがシーズン当初から見せていれば、優勝すら出来たであろう。しかし昨年のことを思い出して欲しい。北信越で優勝を果たし、地域決勝の一次ラウンドが「ホーム松本」という絶対有利の中で、「敗者復活」から勝ち抜いてきたMi-oびわこKusatsuに敗れた。Mi-oもバンディオンセに勝てない状況の中で、絶対絶命の中からチーム力をつけていくことで、一気にJFL昇格を勝ち取ったのである。

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 正直、この決勝の山雅は去年のMi-oがだぶるようだった。いくら9月7日に焦点を置いていたパルセイロとはいえ、この日は完敗と言える内容だった。この次はベスト布陣で挑むとは言え、今の山雅はそう簡単に勝てる相手ではない。JSCが負け、もしくは引き分けでも優勝となるが、他力本願での優勝では地域決勝での活躍は正直望めない。

 ここに来て一気に開花した山雅、最後の最後まで苦難するパルセイロ。運命の最終戦は果たしてどうなるのだろうか?不安でもあり、楽しみでもある。泣いても笑っても残された試合はあと一つ。さあ、決戦の地である南長野へ…

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