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2008年8月3日 - 2008年8月9日

2008年8月 9日 (土)

インターハイ2回戦・市立船橋vs矢板中央

レッズランド・第一グラウンド
市立船橋(千葉第二)3-1 矢板中央(栃木)

◆手が届きそうで届かない名門との差
 1回戦を逆転勝利で飾った矢板中央(以下矢板)の高橋監督は、攻守にバランスの取れた今年のチームに手応えを感じる中で2回戦を迎えた。相手は前回王者の市立船橋(以下市船)であり、試合前には熱い檄を飛ばす監督の姿が見られた。「ここで市船に勝たなければ、いつまで経っても”序列”は変わらない」と、この試合がいかに大事な戦いであるかを選手に語りかける。「名門」に勝って、新しい歴史を築き上げたい監督の気持ちが、痛いほど伝わってくるミーティングが繰り広げられていた。

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※写真1:試合前の矢板中央のミーティング。監督の熱い檄が飛ぶのであった

 さて今年の市船だが、プリンスリーグでは苦戦が続いたものの、6月末のインターハイ予選では、チームに一筋の光明が差し込むこととなる。これまでBチームだった2年生が急成長を遂げ、レギュラーに抜擢され試合で活躍を見せ、競争が激しくなりチームが活性化されたのである。こうして今大会でも多くの2年生がエントリーされ、春先とは一味違う「市船」として挑んできた。そして市船の中村充考の腕に巻かれたキャプテンマークには「2連覇」と書かれており、こちらも大会に賭ける意気込みを、大いに感じさせるのだった。

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※写真2:先制のPKを冷静に決めるキャプテンの中村

 試合はワントップの富山を起点として、2列目の選手が豊富な運動量で動き回り、矢板ペースで動き出す。しかし、ポゼッション、シュート数でこそ市船を上回って見せたが、バイタルエリアでは自由にさせておらず、名門の試合巧者ぶりが徐々に見えてくる。前半の給水タイムを終え、終盤に差し掛かろうとするころには、しっかりと流れを引き戻すところもさすがである。そして26分にカウンターからチャンスを作り、相手ファールを誘いPKを獲得。これをキャプテン中村が決めて市船が先制した。

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※写真3:初戦では津工業の監督に絶賛された吉田だが、この日は自由に動けず

 リードを奪われた矢板は全体的に前がかりになり、より攻撃的な姿勢を鮮明にする。だが、青木將英を中心としたディフェンスラインを破ることができず、徐々に焦りの色が見え出してきた。48分には見事なカウンターから追加点を奪い、試合運びの巧さをまざまざと見せ付けるのだった。そんな時、矢板の高橋監督は「とにかく1本(1点)とれば流れは変わる!」と選手を鼓舞しつづける。63分にはその願いが叶ったのか、途中出場の湯澤がゴール前の混戦からオーバーヘッドで決めて1点差に追いすがる。

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※写真4:矢板のエース・富山も厳しいマークの前に沈黙 この1点を奪った直後の66分、市船のDF水野輝が2枚目の警告を受けて退場となり、矢板が数的有利な状況となる。残り時間はロスタイムを入れても6分はあるだろう。同点に追いつくには十分と思われた時間だった。攻撃の選手を次々と投入して攻勢を強める矢板だが、落とし穴は思わぬところに隠されていた。前がかりになりすぎて、相手ゴールキーパーがクリアしたボールに対して、反応したのが前線に一人残っていた市船の鈴木だけであった。ボールは無情にもそのまま渡り、なんなく追加点を奪われてしまい3-1となり勝負はこのまま決してしまった。

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※写真5:退場は残念だったが2年生らしからぬ安定したプレーを見せた水野

 試合後の矢板ベンチは、常連校だけが持つ試合運びの巧さに脱帽していた。しかしこの「巧さ」こそ、矢板が熱望していたものであり、勝つことで手に入れようとしていたはず。しかし、今回はその機会を逃してしまったが、貴重な体験は必ずや秋以降に生きてくるはずである。

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※写真6:今大会からゴールを守る若尾。この日はビッグセーブを連発

インターハイ2回戦・鹿児島城西vs羽黒高校

レッズランド・第一グラウンド
鹿児島城西(鹿児島)3-2 羽黒高校(山形)

◆見せつけた高いポテンシャル
 これまで鹿児島のサッカーといえば「鹿実」を思い浮かべることが多かった。事実、平成となってからは国見、東福岡、市立船橋と並び立つ名門として時代をリードしてきた学校である。だが今年は、そんな名門すら凌駕するチームが現れた。鹿児島城西高校である。U-18日本代表にも選ばれたエース、大迫勇也を擁して九州プリンスリーグを圧巻の成績で優勝して今大会に挑んできた。

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※写真1:城西に驚異を与えた羽黒のサイドアタッカー・小泉

 2回戦からの登場となった鹿児島城西。初戦の相手は1回戦で松山工を下した山形県の羽黒高校である。羽黒高校と言えば、近年はブラジル人留学生を迎え、急激にレベルアップを果たしてきた。初戦を勝ち抜き、大会前から「この試合」に照準を合わせてきた羽黒に対して、城西は初戦。さらには試合間隔が10日ほど空いており、小久保監督も試合の入り方を心配していたのであった。

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※写真2:期待された留学生のパウロだが、この日は厳しいマークの中で沈黙

 さて試合だが、羽黒は城西対策なのか初戦とは異なる4-5-1の形で挑んできた。左サイドの小泉を中心に、スペースを有効に使った攻撃でチャンスを生み出す。だが優勝候補と呼ばれるだけあって、城西の守備はさすがに強固である。粘り強く相手の攻撃を跳ね返すと、試合の流れを徐々に引き戻す。そして10分に訪れたセットプレーのチャンスを見事に活かして、先制点を奪って見せた。

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※写真3:羽黒のエースナンバーを背負う今野。起死回生の同点弾を決めて見せた

 しかし先制点こそ奪ったが、プリンスリーグで見せた全体の連動から生まれる、流れるような攻撃は影を潜めていた。芝生の状態が良くないことも影響しただろう。だがそれにしても、動きにいつものキレがなかった。それでも試合は有利進めていた城西だが、前半ロスタイムのワンチャンスを見事に決められて、リードを保てないままハーフタイムを迎えた。

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※写真4:本調子ではないと語るも、2ゴールを決め才能の片鱗を見せた大迫

 監督が不安視していた部分がまさに的中したのであった。試合勘が戻ってはおらず、大会初戦ということもあり固さからか普段の動きを披露できない選手たち。後半に入っても動きはよくならず、38分についに逆転弾を浴びてしまう。しかし、この失点で目が覚さめたのか、後半から出場した平原慎也の突破から何度もチャンスを作り出す。エース大迫もついに爆発して同点、逆転弾を一気に決めて苦しみながらも大事な初戦をものにするのだった。

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※写真5:後半から出場し、停滞していたチームに躍動感を与えた

 試合後の大迫は今日の出来を「100点満点中10点」と自らとチームの出来を酷評した。決して大迫の出来が悪かった訳ではないが、こうもはっきりと「ダメだった」と言い切った。しかし、自分たちが積み重ねてきた確かな努力があるからこそ、この発言に繋がった。だからこそ、この先の個人として、チームとしての爆発をもっと期待したい。

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※写真6:もう一人の「大迫」である大迫希。サイド攻撃の中心として活躍

2008年8月 8日 (金)

インターハイ1回戦・矢板中央高校vs津工業

埼玉スタジアム第四グラウンド
矢板中央高校(栃木)5-3 津工業(三重)

◆またも美しき敗者となった津工業
 高川学園に引き続き、冬の選手権でベスト4に進んだ津工業も大会初日に早くも登場した。選手権でエースとして大活躍した中野真人こそ、コンディション不良のためメンバー登録から外れたものの、国立のピッチに立った5人がスタメンに名を連ねていた。対するのはU-18日本代表候補の富山貴光を筆頭に、攻守のバランスに優れたチームに仕上がった矢板中央である。

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※写真1:選手権にも出場した飯田。この日も大活躍を見せた

 ともに攻撃力が自慢のチームであり、前橋育英対野洲の試合同様に注目を集めた試合は、両者とも「看板」に恥じぬ「攻め合い」を見せてくれた。前半12分にエース富山を起点に先制点を奪った矢板だったが、その直後から津工業の圧倒的な攻撃力の前になすすべもなく沈黙する。ボランチの鈴木が起点となり、左右のスペースを蹂躙。特に左サイドの飯田裕之のプレーが冴え渡り、13分、17分、19分と立て続けに前田侑弥のゴールを演出。たった6分間の間に飯田—前田のホットラインだけで3点をあげ、試合の流れを決定づけたかに見えた。

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※写真2:津工業の前田(左)は6分間でハットトリック達成させた

 だが、矢板も試合を諦めない。前半のロスタイムに高橋佑樹が起死回生となる2点目を奪い、盛り上がった状態でハーフタイムを迎えた。ここで矢板の高橋健二監督は相手ボランチに対するケアを指示し、前半に鋭いキレを見せた津工業の飯田に対しては、ドリブル突破が魅力の湯澤洋介を投入して、戦局を優位なものにしようと手を打った。そしてこの策が見事に的中し、湯澤が飯田とのマッチアップを有利に進めると、完全に試合の流れは矢板に傾きだす。

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※写真3:矢板のエースである富山。こちらも2得点2アシストと大活躍

 40分にはエース富山の一撃で同点に追いつき、矢板の勢いは止まらなくなる。4分後には再び富山が決めて再びリードを奪う。60分にはトドメとなる5点目を叩き込み、試合の行方を決定づけるのだった。矢板の高橋監督としては3失点という結果に不満が残るものの、2点のビハインドをひっくり返しての勝利は「してやったり」といえるゲームであった。

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※写真4:途中出場で見事に試合の流れを変えた湯澤(左)

 対する津工業の藤田監督は「前半ロスタイムの失点が痛かった……」と切り出したが、ゲームに対しては自分たちの「らしさ」を出せたことをポジティブに評価していた。確かに5失点してしまったが、彼らが方向性を失わない限り、進化を続けることだろう。1・2年生も多いチームだからこそ、今後の成長に大いに期待したいものだ。

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※写真5:1年生ながらゴールを守った竹谷。成長に期待したい

インターハイ1回戦・前橋育英vs野洲高校

しらこばと運動公園競技場
前橋育英(群馬)3-2 野洲高校(滋賀)

◆「攻撃的」の裏に潜む「もろさ」
 今から3年前、「セクシーフットボール」で頂点に立ち、高校サッカーの在り方に一石を投じた野洲高校。これに対して、これまでに数多くのJリーガーを輩出してきた「タイガー軍団」こと前橋育英高校。そんな実力校同士の試合がいきなり実現し、一回戦屈指の好カードと呼ばれたこの試合。最後まで固唾を呑むハイレベルな試合を見せてくれた。

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 開始直後から高いラインを保ち、連続攻撃を仕掛ける野洲。だがいきなり育英が狙いどおりの形から先制点を奪ってみせる。前半2分に相手のパスをカットして、裏のスペースにスルーパス。8番三浦からのパスを受けた西澤厚志が走り込み、あっさりと先制弾を叩き込む。攻撃的な野洲の最終ラインの裏には大きなスペースがあり、育英はそこを徹底的に狙う戦術を用いてきたのである。

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※写真2:先制点と3点目を挙げた育英の西澤。素晴らしい決定力を見せてくれた

 だが野洲も黙ってはいない。先制点を奪われても焦ることなく自分たちのスタイルを貫き通し、ダイレクトパスから次々とチャンスメーク。7分にはサイドチェンジからDFを振り切り、最後は6番上田が楽々決めて同点とする。だが13分にまたも裏をつかれて、ペナリティエリア内でファールを犯してPKを献上し、追加点を奪われてしまう。ポゼッションでは圧倒的に野洲なのだが、育英もボランチとディフェンスラインが連動してバイタルエリアに簡単には進入させない。攻める野洲、守る育英という展開だが、野洲が育英の術中にはまったといえよう。そして野洲にとって痛すぎる追加点が、前半終了間際にまたもカウンターから奪われてしまった。

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※写真3:U-17代表にも選ばれた坂本(右)この日はPKの1点のみで終わった

 前半終わって1-3というまさかまさかのスコアで、驚きの声もあがったしらこばと競技場。もう攻めるしかない野洲は、3バックに対しても攻撃の指示を出し、前半以上の攻撃を展開する。39分にはPKを獲得しこれをエース坂本一輝が冷静に決めて1点差に迫る。しかし追いすがられた育英も、疲れの見えだした中盤を次々と交代し、フレッシュな選手を送り込む。これで運動量が落ちることなく、野洲の攻撃に対して最後までプレッシャーをかけ続け、追撃を1点で抑えることに成功して、厳しい戦いを征するのだった。

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※写真4:大会優秀選手にも選ばれた潮入(中央)もっと見てみたい選手だった

 この日会場に集まった観衆にとっては、互いの持ち味が出た好ゲームだったかも知れない。だが近年の野洲の課題である、守備の不安定さは改善されてはいなかった。育英にしても攻撃はいいが、毎年見られる「もろさ」が顔を見せる場面もあって、反省点が残る試合であったことは間違えない。ただ野洲にとっては、良くも悪くも最後まで自分たちのスタイルを面留いていたこともまた事実。そして育英も、自分たちの良さを出しつつ、相手をしっかりと研究して勝つ方法を探し、それを実行出来たことは流石である。

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 高校サッカーにおいて、どちらのスタイルが正しいという答えはない。しかし、「トーナメント方式」という大会において、野洲サッカーは今、分岐点を迎えようとしているのかも知れない。魅力的であり、将来に通じる戦いとしては野洲が取り入れる方法論は間違ってはいない。だが、トーナメントにおいて、一撃必勝のスタイルの方が向いていることも事実。はたして冬に向けて野洲の逆襲はあるのだろうか? 山本監督は「1年を通してチーム育成を考えている」とコメントを残しており、秋以降にその答えがでるはずだ。

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※写真6:野洲・山本監督。秋以降にどんなチームに仕上げてくるのだろうか?

インターハイ1回戦・麻布大渕野辺vs高川学園

先日の4日、雷雨のため決勝戦が中止となり
両校優勝(市船、流経大柏)となったインターハイ埼玉大会。

ちょっと日にちが過ぎてしまって、今更?って感じですが
1回戦から振り返ってみようと思います。

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しらこばと運動公園競技場
麻布大渕野辺(神奈川)0-0(PK4-2)高川学園(山口)

◆名将の去った名門校が進むべき道
 冬の選手権ベスト4に進出した2チームがいきなり顔を見せることとなった大会初日。越谷のしらこばと競技場の第一試合には、山口県の高川学園が登場。多々良学園時代から引き継ぐ「オレンジ色」のユニフォームで登場した高川学園だが、ベンチには長年同校を率いてきた白井三津雄氏の姿は無かった。実は今年の6月をもって、自身の体調面の問題から監督を辞任していたのである。選手にとっても、後を引き継いだ渡邉監督にとっても口にこそ出さないが、精神的支柱を失った中で迎える大会初戦に対して、少なからず不安を胸に隠していた。

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※写真1:渕野辺7番森くん(右)

 チームには国立のピッチを踏んだ選手も残っており、観衆の大半は高川学園有利を予想していた。実は私自身もそう思っていた。しかし高校生年代の戦いは本当にやってみるまでわからないもの。いざフタをあけてみると、渕野辺の積極的な攻撃の前に、高川学園は苦戦を強いられていた。渕野辺の6番平澤、7番森、10番廣川が構成する中盤の選手が、次々とドリブルとショートパスを多用してバイタルエリアに進入。完全に中盤でのポゼッションを優位に進めた渕野辺のペースで試合が進み、防戦が続く高川学園。

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※写真2:相手DFと競り合う渕野辺10番の廣川くん

 なんとか前半をスコアレスで押さえた高川が、後半はどう反撃にでるか注目した。やはり相手の攻撃の起点となるボランチをケアすることで、前半のような危ない場面が少なくなる。しかし、攻撃に関しては狙いであった両サイドの裏を使った攻撃は最後まで出来なかった。一進一退の攻防が続く中、高川はセンターバックのキャプテン高間を残り5分、最前線にあげてパワープレー勝負に出る。だが、ここでもフィニッシュの正確性に欠け、スコアレスのままPK戦に突入し、高川学園は無念の1回戦負けとなってしまった。

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※写真3:国立のピッチにも立った原田。ゴールを決めることは出来なかった

 白井監督の後を引き継いだ渡邉監督の全国デビューは、黒星で終わってしまった。しかし、かつての名将も強豪校に育てるまでには20年以上の月日を費やした。そんな名将の後を引き継いだ渡邉監督は、「やはり70分という時間は難しいし、1年を通して見たときに今はまだ半分の時期なので、いい経験が出来たし、現状では全国で戦えないということがわかりました」と語ってくれた。そして渡邉監督は、選手を攻めるよりも選手の力を120%まで発揮させてあげることが出来なかった、自分の力不足に不満を示したのだった。選手も発展途上ならば、自分もまだまだ発展途上であり、全国大会の厳しさを改めて感じることとなったこの試合。最後は選手に「ありがとう」という言葉をかけて会場を後にした渡邉監督。次の冬の選手権には選手も監督も成長した姿を絶対に見せてくれるだろう。

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※写真4:全員の挨拶で終わった高川だが、冬にはまた勇姿を見せてくれだろう

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