2018年3月 8日 (木)

ザスパクサツ群馬、闇のち「晴れ」になる?

昨年10月に自分らがブチまけた「ザスパの闇」



思い起こせば、そもそもの原点は2013年秋の「菅原氏のザスパ入り」が決まった時だった。あの時、「火中の栗を拾った人」として救世主扱いされた菅原氏だが、J2ライセンスの件の裏側や、クラブ経営の具体的改善策を打ち出す前に募金活動を始めたりと、「何が救世主だよ」と苦々しく氏のことを見ていた。しかし、植木さんよりも経営能力はあるし、何よりも地元財界との繋がりが強い人間であることから、クラブがいい方向に向かうのであれば「毒も薬になる」と考え、しばらくは様子見させてもらっていた。



 だが、徐々にやりたい放題のクラブ運営をやり始め、八角選手の件が表面化した以降、今度はサポーターとの関係性もひびが入り始め、2017年シーズンに至っては、試合会場には姿を見せない、クラブにもいるのかどうかわからない…という状況の中で、チームは開幕から連敗が続き、夏の時期を前にしてJ3降格待ったなしとなってしまう。そして連敗を重ねる中でサポーターの居残りが起こり、さらにはGMを交えたサポーターカンファレンスの開催を要求するも、両者の意見が対立したまま、結局カンファレンスが見送りとなってしまう。



 そんな状況を見て、「もう菅原にクラブを任せていては、このクラブが死ぬ」と強く思うようになった。誤解の無いように言葉を付け加えるが、個人的にはJ3降格しようがJ2に残留しようが、それはどうでもいい部分だった。カテゴリーの上か下ということ以上に、クラブとって大事なのは「地元で愛されるクラブかそうでないか?」だと思っているが、このまま菅原氏のやりたい放題が続くようであれば、完全に地元から見放されるクラブになってしまう…という危機感を強く感じたのだった。しかし、たった一人で何かをできる訳でもなく、どうすれば変えられるかのか?を悩んでいるときに、ある有力な支援者から連絡をもらった。



「市川くん、やるしかないよ…」と。



正直な話、自分一人でだったら、遠くから菅原批判しているだけの「負け犬の遠吠え」でしかなかった。だが、その時はたった一人であったものの、本当に心強い援軍を得たことで「やれるんじゃないか?」という感情が芽生えてきた。そして「ザスパを変えるため」という目的のために仲間が集まると同時に、情報も集まり始め「ここまで揃えばなんとかなる」という部分まで到達することが出来た。



 その中で、Jリーグと日本サッカー協会に集まった情報を整理したうえで、「ザスパの現状」という形で報告し、菅原氏の行動に関わる部分の調査依頼を実際に行った。ただ、その中で「壁」というものを感じたのも事実だった。Jリーグ側はその情報自体を受け取ったが、その後、あろうことか菅原氏本人に電話した上で、本人から「ない」と返答があったことをもって、「何もないそうです」とあっさり調査打ち切りとされたのである。Jリーグ側では「コンプライアンスの重視」を謳い、コンプライアンス部門を作っているにも関わらず、特に詳しい調査もしないまま、本人に電話をして終了としたのであった。ただ日本サッカー協会の方は、もう少し突っ込んだ部分まで調査をしてくれたのだが、あくまでも「犯罪に関わる部分がないと踏み込めない」というニュアンスの回答で、グレーでは罰することはできない…という感じで、サッカー協会の調査も終了していた。期待していたJリーグ、サッカー協会への調査依頼が不発に終わってしまったこともあり、次のプランをどうするか?という中で、ネット上告発と、会場でのアクションという「実行」に移るしかないという方向性に固まっていった。



 ただ、いつ実行するのか?という部分の問題もあったが、「10月17~19日のどこかで臨時で取締役会(役員会)が行われる」という情報が大きなきっかけになった。すでにその時点で「クラブ名を変えたい」「自分主導にしたい」という話が出ていたことは掴んでいたこともあり、「何かを決められてしまう前に、アクションを起こさないと手遅れになる」と考え、14日にまず自分がネット上で告発を行い、翌日の試合で「あのアクション」につながり、そしてエルゴラッソ、サッカー批評で伊藤さんによる「ザスパの闇」の告発という形に繋がっていった。そして、あの試合で見事に火をつけることはできたし、風を起こすことは出来た。しかし、このアクションにはリスクは当然ある。「この情報、どっから手に入れたんだよ?」「(情報の)ソースを出せ」「こいつまたねつ造だろ?」と案の定叩かれまくりでした。そして事情を掴み切れないライト層サポーターからも「余計なことをするな」的な批判を受けたし、「刺されないように気を付けて…」とまで本当に言われた。



 だが、このまま菅原体制を続けたままでJ3に落ちて行けば、それこそクラブが本当に潰れてしまうし、死に向かって行ってしまう。また、大学サッカー界の中で「ザスパにだけは行きたくない」という話を実際に聞いたし、群馬の高校生を含めた育成年代の選手から、ほとんど見向きもされない現状が目の前に広がっている。そしてその流れは、菅原体制になってから、より強いものになってしまったし、観客動員も成績に呼応しダウンが続いていた。そんな苦しい状況に関わらず、国体に選手を派遣し、さらにはtonan前橋への移籍を続けたが、そこにどんな強化プランがあったのだろうか?



 そして10月19日、臨時の役員会がグリーンドーム内で行われたが、その場で菅原氏は「来シーズンも引き続き、クラブ強化に当たりたい」と、続投したい意向を述べたが、その場で数名の株主(取締役)から「いつまで居座るつもりなんだ」と叱責されたが、その中の一人が、現在ザスパの会長として、経営面で奈良体制を支える遠藤氏であり、この後の11月4日、またも臨時で役員会が開催され、そこで都丸氏と菅原氏の退任、森下監督の解任が決定され、翌日にリリースされ、菅原氏は即日退任という形になった。







 だが、この決定は自分たちが求めていたものでもなかった。本来は菅原氏と、その菅原氏のやることをチェックもせず、黙認・容認し続けた都丸氏、それぞれの調査を行い事実確認を経て、正式に解任されるという形で出て行ってもらいたかったのだが、「成績不振の責任をとって」という形の辞任で菅原氏には逃げ出されてしまった。そして都丸氏も同じく解任ではなく辞任であるため、後任に関する人事権を都丸氏が持つ状態のままになってしまった。



 これは誤算でもあった。ことを起こしたときに「火をつけるだけ火をつけて置いて、まさかその先は何もない…じゃないだろうな?」という批判を受けましたが、実際に「後任に据えたい人選」は用意していた。しかし都丸氏自身は辞任ではなく、退任という形をとり、さらに「後任を決めてからの辞任」を公言したことにより、肝心の人事権を都丸氏に握られたままになってしまい、思い描いた通りに話は進まなくなる。さらに、ここまで力になってくれた一部株主の人たちにも、後任人事は「やはり地元の人であって欲しい」とういう思いを持っていた。そんな中で「次期社長に奈良先生がなる」という話が入ってきたこともあり、こうなれば「株主のみなさんと、奈良さんを信じるしかない」という方向性に固まった。



 ただその期間の中で、「僕は教師しかやってこなかったから、経営に関しては自信がない」ということと「ザスパの内情をこの目で見て驚愕してしまった」という話も入ってきたことで、どうなるんだ?と思ったし、菅原派に近いとされる新しい株主(取締役)の就任が決定的だ…という話も入ってきたことで、流れ的には再び好ましくない方向性に進みそうな時期もあったが、12月27日の臨時株主総会を迎え、そこで奈良さんの取締役入りがまず決定された。そして、株主である遠藤さんも「経営面のバックアップは随時していく」と申し出てくれたことで、奈良さん自身も腹を決めてくれた。







 こうして、ザスパは奈良体制として新しいスタートを切ることとなり、都丸体制時には切り離しをしようとしたチャレンジャーズの活動にも理解を示し、シーズンが始まってから頻繁に木村監督とも連絡を取り合い、これまで以上にトップとチャレンジャーズの交流を増やすことを約束し、さっそくトレーニングマッチや普段の練習でもチャレンジャーズの選手がトップの中に交わる姿が見られるようになった。そしてサポーターとの関わりも大きく変化を遂げようとしており、「多くの人に開かれたザスパになる」ということを、有言実行している。



 かつての植木さんも「そんなことは出来なよ」「それ誰がやるの?」「忙しいから」で、手を付けないといけない部分を野放しにしてきた。そして菅原体制時はいうに及ばず。どちらにせよ、「地元からの信頼」という部分を築けないままトップを去った、過去の体制とは違う姿を見せる奈良新体制。今ザスパに一番必要なのは、勝利、J2復帰以上に、地元から愛される、そして信頼されるクラブになること。



「強い弱いに、カテゴリーに左右されない、愛されるクラブになって欲しい。」



これが菅原氏に「No」を突きつけた自分が、クラブに求めるもの。



そして今回、ネット上、スタジアムでアクションを見守って切れたサポーター、賛同してくれたサポーター、さらに疑問をサッカー協会などにぶつけてくれた、多くの他クラブサポーターの皆様に厚く御礼申し上げます。



しかし、ここがゴールなのではありません。あくまでもザスパは「変わるきっかけ」をもらっただけの状態であり、今回の新体制への移行の是非はここから先の成果次第。そしてこのきっかけを「チャンス」にできなければ、それこそクラブは終わりを迎えてしまいます。その部分、ことを起こした一人として、肝に銘じておきたいと思います。

2017年4月29日 (土)

自衛隊サッカーが誇る「ナショナルダービー」

第51回全国自衛隊サッカー大会・準決勝
空自 入間・横田基地 0-2 空自 FC 3DEP
海自美保 0-8 海自 厚木マーカス



この結果により、明日の西が丘での対戦カードは
10:00 3位決定戦
空自 入間・横田基地 vs 海自美保
12:00 決勝戦
空自 FC 3DEP vs 海自 厚木マーカス
となりました。



結果的に見て、順当というか、妥当なカードとなった決勝戦。
今大会というか、自衛隊が絡んだサッカーチームを見渡した場合、昨年まで地域リーグ(関東2部)で戦っていた厚木マーカス、そして埼玉県リーグ2部で戦うFC 3DEP(以下三補)は、抜きん出た存在であることは疑う余地はない。確かに厚木なかよしや、今日準決勝で敗れた空自入間も良いチームであったが、三補と比べた場合、選手それぞれの「個」という部分では劣っている気はしないのだが、11人というチームとしての成熟度の部分で差が見えてしまったところが勝敗を分けたところであろう。



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この2チームに関しては、両者とも前半の入りは良かった。しかし、その攻撃とて、県リーグやカップ戦で同等、もしくはそれ以上のレベルのチームを、普段から相手にしている三補にとって、凌ぎきれないものではなかった。慌てず対応すれば、相手がラッシュを仕掛けてきても、それを受け流す術を身につけているのである。そしてチームは「前半を我慢して乗り切れれば、後半になれば運動量は下がって来るので点は取れる。そして先制点が取れれば、相手が前ががりになるので、追加点も奪える」というゲームプランを描いていたが、見事なまでにそれを実践。



まあマーカスに関しては、強いの確かなのだが、ちょっと組み合わせにも恵まれたかな?という部分もあり、ベスト8、準決勝は危なげなく快勝。ちょっと苦労する場面が少なかったことが、逆に決勝で悪影響にならねばいいのだが…という部分もあるが、やはり優勝候補筆頭という立場には変わりはないだろう。このように、結果的に優勝候補筆頭と、対抗本命が決勝戦に進んだ今大会。しかし、順当な結果で良かった気もするのだ。



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自衛隊サッカー大会とは、普通に考えて「自衛隊隊員、そして所属部隊のための大会」であることは間違いないのだが、近年は多種多様なサッカーを見る、楽しむという文化が広がりを見せていることもあり、自衛隊サッカー大会というものも、身内(部隊)だけの大会から、「一般の方にも見てもらえる、楽しんでもらえる大会」に変わって行く必要性もあるのでは?と思うのだ。中には、「自衛隊のサッカーってどんなレベルなんだろう?」と興味を持って、初めて大会を見に行く人もいるかもしれない。そんな人のためにも、明日の決勝戦のカードが、マーカスと三補という、自衛隊サッカーにおける「ナショナルダービー的存在」であったことは本当に良かったとも言える。



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この両チームは、この大会に向けて集まったチームではなく、普段からより高いレベルを目指すために活動を続けているクラブチームでもある。マーカスに関しては、関東リーグから降格してしまい、17年ぶりに神奈川県リーグで戦うことになったが、2004年には地域リーグ決勝大会にも出場した伝統あるクラブでもある。そして三補の方だが、歴史の長さはマーカスとあまり差はないが、本格的な強化が進んだのは38回大会(平成16年)以降からであり、2014年に埼玉県リーグ2部で優勝し、2015年シーズンはチーム初の県リーグ1部を経験。現在は2部で活動中だが、1部復帰を目指してリーグ戦に挑んでいる。



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どちらのチームも、普通の一種カテゴリークラブとして、地域に根付いた活動なども行いながら、チーム力アップに日々励んでいる。そんなクラブチームだからこそ、目の肥えたファンにも「自衛隊のサッカーって体力勝負なだけではなく、戦術浸透度も高くてなかなかおもしろい!」と感じてもらえるはず。だからこそ、明日は自衛隊が誇る自慢の2チームが、一般のサッカーファンも納得するような、素晴らしい決勝戦を見せて欲しいところでもある。よく言われる「自衛隊員の熱き戦い!」というような、抽象的な表現ではなく、掛け値なしに「おもしろい」と感じてもらえる試合を見せられれば、大会の一般的な知名度や価値というものも、もっと高まっていくはず。



どの部隊が優勝を掴むか? ということも大事だが、大会自体の一般的価値を上げるためにも明日の決勝戦は、まず「名勝負」となることを期待したい。

2017年4月27日 (木)

第51回全国自衛隊サッカー大会、ベスト4決まる

駒沢オリンピック公園第二球技場、補助競技場で行なわれている、第51回全国自衛隊サッカー大会だが、本日27日は準々決勝4試合が行われ、本大会のベスト4が決まった。



駒沢第二球技場
海自 下総 2-3 空自 入間・横田基地
空自 FC 3DEP 4-1 海自 A.N.F.C



駒沢補助競技場
海自 美保 2-0 空自 浜松
海自 大村航空基地 1-5 海自 厚木マーカス



以上の結果により、明日行われる準決勝は以下のようになりました。
4月28日(金)駒沢補助競技場
10:00 空自 入間・横田基地 vs 空自 FC 3DEP
12:00 海自 美保 vs 海自 厚木マーカス



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やはり今大会も、昨年まで関東リーグ2部で戦っていた厚木マーカス(今シーズンは神奈川県リーグ1部所属)と、過去に埼玉県リーグ1部まで登ったFC 3DEP(今シーズンは埼玉県リーグ2部)の力がやはり抜きん出ているのは間違いない。自衛隊の大会とはいえ、この2チームは単なる「部隊サッカー部」としてだけではなく、地域に根ざしたクラブチーム的な役割を持っているからこそ、やっているサッカーの「質」というものが一味違う。基本的には『自衛隊員だけ』で構成していることもあり、一般のクラブチームのように『新しい戦力』を増やしにくいというマイナス点はあるものの、そんな中でも常に高いレベルを維持しているのは、日頃の鍛錬ぬきには語れない。



そして今日のFC 3DEP(以下三補と称す)は、前回大会(2015年大会)において、同じくベスト8で激突し、1-1の末PK戦で敗れた海自 A.N.F.C(厚木なかよし)が相手となり、「今度こそ勝つ!」という強い気持ちを持って試合に挑んできた。



さて三補だが、この大会に向けてというよりも、埼玉県内の大会出場のため、実は1月8日からすでに今年の公式戦が始まっていた。そして埼玉県リーグの方も4月の頭から始まっており、試合勘という部分では問題ナシの状態だった。さらに今シーズンは、東京国際大学のセカンドチームや、ザスパ草津チャレンジャーズなど、自衛隊大会にはいないであろう、レベルのチームを相手に公式戦や、TRMをこなして来たこともあり、チームのベースアップは確実に進んでいた。



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だが、全てがいいことだけではない。これまで三補のサイドアタッカーとして活躍してきた春本選手は今大会、空自入間・横田基地メンバーとして参戦であるし、チームのエースに成長した真木選手は、研修などもありしばらくチームから離れており、復帰というか出られる試合は29日のみという状況だった。確かに「全自」では、普段の県リーグ公式戦では登録メンバーではないため、参加しない齋藤雄太(大成シティ坂戸FC所属)や、小木曽真悟(アルマレッザ入間所属)の2人が「助っ人」として入って来てくれるものの、やはりベースとなる主力戦力が抜けてしまうのは痛いところ。だからこそ、今大会では点取り屋として田代選手の活躍が期待されたが、今日の試合を含めて、十分すぎる活躍を見せている。しかし、三補の躍進を語る上で、熊谷哲平という人物の存在を忘れてはいけない。



大東大卒業後、ザスパ草津の前身である、リエゾン草津でプレーし、その後はシンガポールリーグでプロとしてプレーした経歴を持つ、異色の自衛官。さらにこの「三補」だけではなく、オギ、雄太とともに、飯能ブルーダー(現・アルマレッザ入間)、坂戸シティ(現・大成シティ坂戸)でもプレーした選手で、サッカー選手としての実力、そして指導者、トレーナーとしての実力も、自衛隊という枠を飛び越した存在でもある。そんな彼の指導方法、トレーニング方法、サッカー理論をチームに長い間植え付けてきたこともあり、近年ではマーカスと並ぶ存在に成長してきた三補。また、プロに近いとも言えるほどのサッカー論理以上に注目したいのが、『まずサッカーを楽しめ!』ということを重視している点だ。



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自分たちがやっていても、楽しいと思えないサッカーをしていたら、見ている人に自分たちのサッカーが響くわけがないし、つまらないと思うはず。だからこそ、やりたいサッカーをやりきって、まずは自分たちが楽しみ、充実感を味うことを重視している。そんなプレーが出来ていれば、必ず見る側にも響くし「楽しい」と思ってくれるはず。だからこそ『まず楽しもう』ということを大事にするのが、三補イズムというか、熊谷イズムの基本。自衛隊のサッカーなんて誰が見るの?と思うかもしれない。しかし、少なくもともマーカスや三補、そして厚木なかよしなどの、全自の上位常連チームのレベルは、決して低いレベルではないし、見ていて十分面白いと感じるものだし、自衛隊の大会だけではなく、これらのチームの視線というものは、内向きだけではなく、外にも向けられているのである。



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さて、話を試合の方に戻すが、前半の立ち上がりから勢い良く前からのプレスを掛け、三補になかなかチャンスを与えず、ゲームの流れはなかよしが握っていく。しかし、末永、新井の真ん中2枚が固めるディフェンスラインと、中盤の雄太がしっかり体を寄せ、攻められながらも決定的な場面を作らせず、前半をスコアレスで折り返す。そして後半に入ると、一気に攻めのギアを上げた三補は、両サイドアタッカーの桑本、オギのチャンスメークから、どちらも田代が中でしっかり決めてリードを広げていく。そしてスコアを3-1としてアディショナルタイムに突入したが、ここで普段の県リーグ公式戦では絶対に見られない連携で得点が生まれることとなる。シティ所属の雄太がドリブルで持ち込み、相手DFを十分引き付けた上で、フリーになったオギにラストパス。これをアルマレッザ所属のオギがしっかり決め、さらに得点を重ねて4-1と、最高の形で「リベンジ」を達成して準決勝にコマを進めた。



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この試合、間違いなく前半は海自 A.N.F.Cはいい動きをみせていた。しかし、三補からすれば、じっくり構えて焦らずやれば、間違いなく流れを取り戻せるという自信があった。これこそ、普段から県リーグやカップ戦で、高いレベルの相手と対戦することで「もまれてきた」からこそ、生まれてくる自信というか、「試合慣れ」という部分が顔を出した場面でもあった。



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こうして、準決勝は「入間ダービー」が実現したのだが、上記にも記したとおり、相手チームには春本選手がいるし、空自入間チームを統率するのは、これまた元三補の河崎健太郎氏。この「空自入間・横田基地サッカー部」も、三補同様にアグレツシブに攻撃的なサッカーを目指すチームである。入間ダービーといのは間違いないが、それ以上に「三補イズムダービー」とも言えるこの試合は、とても面白い試合になりそうだ。



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今年の自衛隊サッカー大会も、あと2日。そして4試合でラストを迎えることになるが、明日は平日開催ということもあり、観戦するのが難しいという人も多いだろうが、ぜひ29日に味の素フィールド・西が丘で行われる3位決定戦、決勝戦は観戦して欲しいところ。 そして、「日本一礼儀正しい」と言われる、自衛隊サッカー大会のみどころの一つである表彰式が見られるのも、最終日の特典。「整列、敬礼、回れ右、休め」の号令に、一糸乱れぬ動きを見せるこの表彰式を、この機会にぜひ決勝戦と合わせて一緒に見てはどうだろうか?

2017年4月23日 (日)

三補、タイトル奪還へ白星スタート

第51回自衛隊サッカー大会・初日
駒沢オリンピック公園・補助競技場
FC 3DEP(空自 第三補給処サッカー部) 1-0 陸自 FC伊丹sta
得点者 25分田代

正直なところ、27日の準々決勝までは余裕でしょ? と思っていましたが、どんな大会でも最初の試合というものは難しいもの。特に三補の場合、この大会では「マークされる」チームの一つであるため、さすがに楽に勝たしてはもらえなかった。

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確かに最初からいい感じでボールが回り、サイドからチャンスを何度も作ったが、相手もしっかり中を固めていたこともあり、なかなか崩せずじまい。結果的に、GKが前に出ていたところを田代が見逃さず、意表をついたロングシュート1発で勝負が決まったが、反省点というよりは「初戦の硬さ」というものが出てしまったかと? という試合でもあった。

その点に関しては、この試合でゲームキャプテンを務めた斎藤雄太(普段は大成シティ坂戸FCに所属)も『初戦はどうしてもこうなりがち。まずは勝つことが大事だから、悪くはない。継続して自分たちのサッカーやっていきましょう』と話している。

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得点は1点しか奪えなかったし、崩して奪った得点ではない。だが、繋いで崩す、バイタルまで侵入する、連動した攻撃をやるということは出来ていたし、このチームのレジェンドでもある熊谷哲平も『アイデアが大事。考えてプレーしよう』と声を掛けていたが、場した選手たちも、そこは意識しながらボールを回していた。ただ、得点力という部分に関しては、普段このチームでキャプテンを務める、真木基希不在というのも影響している。先月から、仕事上の都合で他部署に研修に出ているそうで、明日以降の欠場がすでに決まっており、出られるのは最終日(3位決定戦or決勝戦)のみとなるそうだ。米子北高校在籍時に選手権出場の経歴を持ち、部隊配属後にすぐに中心選手としてチームを引っ張っる存在になった彼が不在なのはやはり痛いところ。だからこそ、今大会ではもう一人のエースでもある、田代廣奈にかかる期待は大きいところ。

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しかし、今日の相手である陸自 FC伊丹staだが、粘り強い守備で対応し、攻撃面でも後半の30分には『あわや』というシーンを作り出し、最後まで三補を苦しめた。多分、本来の所属している普段のリーグカテゴリーから考えれば、実力差があるのは間違いない部分だが、この大会の面白さとは、部隊の名誉というものが掛かってくることもあり、普段の実力以上の力がでるからこそ、見ていておもしい試合が結構生まれるもの。

確かに大会の優勝チームを見れば、ほとんが去年まで関東リーグに在籍していた厚木マーカスなのだが、当然他のチームが優勝したこともある。この大会に出場してくるチームは、みんなマーカスや三補に、そしてなかよし(海自 A.N.F.C)と言った、上位進出の常連チームに勝ちたいのである。その『勝ちたい』という強い意志があるからこそ、番狂わせも起きるし、何より試合時間が決勝、3位決定戦以外は35分ハーフの70分でゲームが行われる。90分でやれば、カテゴリーが上のチームの優位はなかなか揺るがないが、70分であれば番狂わせも起こりやすい。これこそが、この大会の面白さなのかもしれない。

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明日以降も、駒沢オリンピック公園の補助競技場、もしくは第二球技場で大会が行なわれているので、ぜひ興味がある方は会場に足を運んでみてください。

2017年4月21日 (金)

一種カテゴリークラブの登録減少傾向を考える

今回は、一種カテゴリーの中で中心となる、社会人サッカー(アマチュアカテゴリー)に関わる、アマならではの過密日程の話と、一種クラブの登録数減少傾向について考えていきたいが、まずは『過密日程』の話から初めて行きたい。



先週の日曜日、普段からお付き合いのある埼玉県リーグ1部所属の大成シティ坂戸FCの公式戦へ行ってきた。そしてその試合後、シティの小西選手と中村選手と一緒に、次に行われたアルマレッザ入間 vs ドリームス(東京国際大4軍)との試合を観戦した。そこでは、選手ならでは視点や戦術など、なかなか興味深い話をしながらの観戦となったが、ちょっとした雑談の中から「選手と仕事」の話になり、それが「社会人サッカーと過密日程」という話まで発展(笑)。



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『今日みたいに、前日から比べていきなり10度以上気温が上がるとキツいっすよね』と日体大サッカー部出身である中村選手が話すと、かつてザスパ草津チャレンジャーズでプロを目指してプレーしていたコニが『ダイキさん、出てきていきなりヘバってましたよね(笑)』と振ると、さらにダイキが『いや、オレ今日これから仕事なくてホント良かったわ(笑)。あったらヤバかった』と続ける。そこで私が、『そういえばさ、マヒト(千葉選手)は去年、アメリカ出張から帰ってきて、すぐに試合に出てたよね?』と話を振ると、二人は『そうそう、人数足りないからって、無理に来てもらったんすよね』となり、さらに『中居さん(前シーズン限りで引退)もそれ、あったよね』となり、『これ、社会人ならではの過密日程っていうヤツだよね(笑)』という感じで話が続いていった。



ここまで、かなり個人的な話ですいません。
さて大成シティ坂戸FCには、何名か『前所属・ルミノッソ狭山』という選手がいますが、彼らがかつてプレーしたチームは職場からの援助も打ち切られてしまったこともあり、最終的に廃部という形になってしまったが、今なお本田技研工業の社員として普段は仕事に励んでいる。そんな中で、会社での業務の一環として、海外出張や研修などがあり、社会人ならではの『過密日程』というものとも戦いながらプレーすることもある。また、ホンダで働く選手だけではなく、他の選手も『オレ、今日これから仕事なんで、後半15分ぐらいで交代にして』なんていう場合もあるし、実際に開幕戦でこれはあった。



彼らは本当にサッカーが大好きで、やれる限り高いレベルでやりたいと常に願っている。しかし彼らプロ選手ではなく、普通の会社員として生計を立てていることもあり、仕事とサッカーの両立というものをやっていかなければいけない。まあ普通の社会人サッカーをやっている人なら、ごく当たり前の話でもあるが、このようにハードのスケジュールな中でプレーしている選手もいるんだ!ということも、ぜひ知ってほしいところ。また、現在は中国社会人サッカーリーグに所属する三菱自動車水島FCは、JFL所属時代『夜勤明けでそのまま遠征』なんていうハードなスケジュールをこなしながら試合に挑んでいたなんていうこともあった。



過密日程というものは、言い方は悪いが、別にACLを戦うJクラブ勢や、日本代表の『海外組』だけの話じゃない。



でも社会人サッカーの面白さ、魅力、好きになるポイントというのは、見ている側と同じように普段は仕事をしながら、空いた時間にトレーニングして、週末の試合のためにすべてを努力する選手たちが、週末のピッチ上でガラリと別人となることじゃないかな?と思ったりもする。そう、アイドルのキャッチコピーではないが、普通の社会人が「週末ヒロイン」ならぬ『週末ヒーロー』になるということこそ、魅力であると言えるだろう。



彼の実力はプロに比べてしまえばそれは低いかもしれない。だが、自分と同じような生活をしている人間が、週末になるとちょっと輝くヒーローになる。そんな見方が出来れば、カテゴリーに関係なく、そのにあるサッカーや選手に対して、自然にリスペクトできるはず。そしてこの件は、サッカーだけの話じゃない。どんなスポーツであろうと、競技志向でやっているアマチュア選手は、もっとリスペクトされていいと思う。そして見る側が、そんなアマチュア選手たちを支えることこそ、『そのスポーツの裾野を広げる』ということにも繋がっていくし、スポーツ文化というものを地域に広げていくきっかけになるし、減少傾向が進んでいるアマチュアクラブ数の歯止めをかけるきっかけにもなると考える。



さてここまで、仕事と競技の両立という観点で見てきたが、ここからは『アマチュアカテゴリーの減少傾向』という部分にもっと触れていきたい。



2016年度の都道府県ごとの正確なデータが出ていないところもあるため、ここでは社会人サッカー連盟がこれまでに公表してきた数字(2007年度〜2015年度まで)をもとに、一種カテゴリークラブの登録数が減っている現状をまず記していきたい。



まず、一種カテゴリークラブの登録数がピークを迎えたのは、日本がワールドカップ出場を決めた1997年度で、この時の登録数が7968チーム。そしてここから10年後の2007年度は6646と減少したが、2015年度の統計で調べた際には、ピーク時の数字から約4割減となる、4842チームと大きく数を減らしてしまっている。また、各県の登録状況を見てみると、面積の広い北海道(382)がやはり一番多く、2番目に兵庫県の366、3番目に埼玉県の342と続くが、300以上の登録クラブ数を記録するのはこの3地区だけとなっている(4位以下は静岡286、東京271、京都233、愛知157、福岡151、神奈川147、大阪142)。それに対して最小は秋田県の19で、山形25、青森・和歌山28、三重31という順になっている。



さらに10年前の登録クラブ数と比較した際に、結果的に登録数がプラスになっているのは宮城県(58→113)と福岡県(108→151)だけで、静岡県(462→286)、埼玉県(509→342)、兵庫県(478→366)は100クラブ以上の大幅減となっている。また、正全国的な確な数字は出てはいないものの、2016年度は神奈川県を除いたほぼ全地区でさらに減少が進んでいる模様だ。



このように、各都道府県協会に登録する一種カテゴリークラブ数の減少に、なかなか歯止めが掛からない状態が続いており、日本サッカー協会も全国社会人サッカー連盟も喫緊の課題として改善に取り組んでいかなければいけないという認識はそれぞれ持っている。また社会人連盟側では、登録が減少していく要因を、登録費用や大会参加料などの問題や、試合会場の確保や試合運営に関わる手間、3級以上の審判資格保持者の所属が必須になる件などがネックになり、登録数が増えていかないというのが大きく影響していると考えている、



このような『煩わしさ』が登録増を阻む要因になっているのは疑いのない部分でもあるが、それ以上にインターネットの普及が進んだこともあり、やりたい仲間だけを募って、自分たちだけで『サッカーを楽しむ』という環境が進んでいることも大きく影響しているだろう。登録するためには費用も手間もかかるし、規則もある。さらに『競技志向』ではなく、とにかくサッカーを楽しみたい!という、『エンジョイ志向』のクラブや個人は、より登録というものを避ける傾向にあると言えるだろう。



楽しんでやりたいのに、時には本気のチームとやらなければいけなくなる。そうなれば、相手にも失礼になるし、何よりやっている自分たちが面白くなくなってしまう。だからこそ、自分たちと同じようなレベルが集まり、独立した自分たちのリーグを作ってやったほうがいいというのは、ある意味で自然な流れでもある。



そんな現状に対して、特に社会人連盟の方では、『エンジョイ志向』の人たちが、どうすれば登録してくれるか? どんなメリットを作っていけば登録が増えて行くか、ちょうど今試行錯誤を続けている最中でもあるのだ。その中の一案として、登録費用の無料化案や、ビギナークラスの公式リーグ戦を設定するなど、いろいろな案を検討すると同時に、登録しているクラブへの「サッカーファミリーとしての特典」というものをどう設定するか?を練っている。



社会人連盟では、現状の「全社」「地域CL」「クラブチーム選手権」という、3本の柱を崩すこと、日程を変更していくということは考えていないとのことだが、社会人連盟の牛久保会長は『何よりもエンジョイ志向の人たちを、まずサッカーファミリーの仲間になってもらうことが大事だと考えます』と話してくれているように、これらのサッカー志向層も取り組める大会作りというものをやっていきたいと考えているし、アマチュアでは大会への参加する際の遠征費や、その大会でかかる経費を負担するようなプランも検討していきたいと語ってくれている。



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エンジョイ層を取り組むことで、どう一種カテゴリーが変わっていくか? ということを見通すのは、現状ではちょっと難しい話かもしれない。しかし、高校、大学まで本気でサッカーに打ち込んでいた選手が、卒業と同時にプレーする機会がない、プレーするクラブがない。だからプレーすることをやめてしまうというのは、サッカー界にとって損失だし、もしかすればそのまま埋もれてしまう才能もあるかもしれない。どんな形であろうと、プレーする場所を提供し続ける。そして生涯現役というものを実践し、サッカーというスポーツが日本の文化となっていくために、もっと本気で協会も連盟も、いわゆる『エンジョイ層』というものを代表チームを頂点とした『サッカーファミリーの仲間』として取り込んでいく必要がある。



今のアンダーカテゴリーサッカーの話題といえば、J3カテゴリーの拡大が最大の話題でもあるが、J3クラブを拡大することに以上に、しっかりとしたアンダーカテゴリーと、幅広い底辺や土台というものを、まずはしっかり作っていくことのほうが大事なのでは?と思うのだ。J3というカテゴリーにも「定数」というものが、近い将来生まれることとなる。そうなれば、J3からJFLに降格するクラブも当然出てくることとなる。そうなった時に、JFLや地域リーグといった『受け皿』が脆弱であったら、落ちてくるチームが受けるダメージは相当なものになってくるもの。またちょっと視点を変えると、現状の地域リーグでは、大学勢のセカンドクラブの進出が各地で増えてきているのだが、そこでプレーしていた選手たちが卒業する際に、プレーしようと思ったら元の場所(カテゴリー)より下でやるしかなかった。だからやめてしまった…では、それも悲しいこと。



大学勢の進出を、単純に悪とは決めつけないし、時代背景的にも各地域リーグの1部で大学勢が有力クラブになることは仕方がないことでもある。だが、仕方がないで終わらせてしまったら、『彼らの卒業後の場所』というものの選択肢を減らしてしまう結果にも繋がってくる。だからこそ、登録クラブ数は増えてほしいし、今1部や2部にいるクラブは、なんとか切磋琢磨して、ともに同じリーグで戦う学生たちの『受け皿』としての役目も担ってほしいとこと。また、そんなアマチュアクラブを盛り立て、やる気をさらにアップさせるのは、見る側の役目でもある。



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一種カテゴリーの再浮上とは、クラブ、協会、サポーター、それぞれが自分のできることを考え、それを行動に移していくこと。それができた上で、初めて綺麗なサッカーピラミッドというものが完成するのだが、今はまず社会人連盟と各都道府県協会が、どんなテコ入れをするか見守りたいし、サポーターたちの盛り上げにも期待していきたい。

2017年3月21日 (火)

ファン重視だからこその提言

藤枝MYFCの大石監督という人は、これまでの取材などを通して「心を揺さぶる人だ」と常々思ってきたのだが、先日の対 FC東京U23戦における試合後の話を聞いて、その感じ方はやはり正しかったと確信した…

ちょうどこの試合の1週前に行われた、SC相模原 vs 長野パルセイロのゲームにも行って来たが、この試合の後半に物議を呼びそうなプレーがあった。0-1で相模原負けている中で得たセットプレーのチャンス。そしてこの場面でPA内で相模原FWと競り合っていた松原が「ファールないよ!」的に手を挙げてアピールしていたが、その次の瞬間、こぼれ球を拾った相模原の選手がシュート。なんとこのシュートが松原の手に当たったのだった。しかし主審の判定は「故意ではない」とジャッジし、ノーファールの判定でプレー続行となった。

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そして試合後、相模原・安永監督は「これは批判ではなく、あくまでも問題提起として捉えてください」と前置きした上で「故意ではないとは言え、そもそも手を挙げていなければシュートが手に当たることは無かった。手を挙げる必要性も無かったのにわざわざ挙げて当たったものは、故意、故意ではないに限らずハンドでしょ? その曖昧な基準はおかしいですよね」と話してくれていた。

そして話を本題の大石監督の件に戻そう。

実はこの試合でも物議を呼びそうなプレーが2つあった。最初は0-1とホームの藤枝が1点リードされている展開の中で迎えたCKのチャンス。ここで藤枝が同点ゴールか? というシーンが飛び出し、副審もゴール判定をする仕草を見せたが、レフリーは「ゴールラインを超えてはいない」とジャッジし、副審に確認することもなく、プレーは続行された。

これに関してゴール裏にいたので確認していたが、間違いなくインゴールだった。しかし、あのプレーの際にDFと藤枝の選手がともにもつれるかたちとなり、その反動でゴールとぶつかって、ゴールの位置が若干ズレたことが判定を難しくさせる要因にもなっていた。

そしてもう一つのプレーが、このノーゴール判定からあまり時間が経たない中で飛び出した。攻勢に出る藤枝が高いラインを保っていたが、その裏のスペースを突かれてカウンターからGKとの1対1の場面を迎えてしまう。そして藤枝GK田口が、入って来た相手選手をPA内で倒してしまった。

大石監督も試合後「あれはPKでしょうね」と語ったように、見ていた人の大半も同じようなことを感じたはずだが、主審の判定はまさかのノーファール。この二つを踏まえて大石監督は試合後、こんな意見を語ってくれた。

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「どっかのバカがさ(大石監督と安永監督は以前からの友人であり、S級取得時の同期でもある)、先週なんかまくし立てちゃったみたいだよね(笑) 気持ちはわかるけど、言い方というものはやっぱり考えないといけないと思いますよね。

でもやっぱり、彼(安永監督)の言葉じゃないですが、ジャッジはハッキリして欲しいとは思います。まあ審判も人間だから間違いはあるとは思いますし、今日の2つジャッジなんかは帳尻合わせという感じもしましたよね? だって僕がいた位置からだって「入った」のはわかりましたし。

でも僕としては「入った、入っていない」を争う訳じゃなく、副審がアピールをしていたのだから、確認ぐらいあってもいいのでは? という部分は徹底して欲しいと思います。またその後のPKなんかは、僕が見たって「やってしまった」と思いましたし、あそこで取られて2点目を失っていたら、今日は間違いなく勝てなかったとも思います。そして『たぶんそう思う』の話になりますが、その前のノーゴール判定の後だったから『取りにくいな』という心理的な部分が影響してのジャッジだったたとも思います。

でもね、帳消し的にジャッジしたらそれはいけないと思うんです。僕も選手だったから、そう思える場面は何度かありましたよ。でもね、僕は選手たちに『ジャッジの判定に異議は唱えるな』と普段の練習から言い聞かせているので、ウチのノーゴール判定には何か言うつもりはありませんよ。ただ、あのジャッジで勝ち点3を失ったかも知れないFC東京(U23)さんは浮かばれないじゃないですか? それにね、観に来てくれているお客さんに対しても、疑問を感じさせるジャッジがあるのは失礼だと思うんです。

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サッカーのゲームって、自軍の11人と相手の11人の22人で作るものではないんです。審判団の4人を含めた26人で作るものだし、26人それぞれがみんなを尊重し、信頼しあって初めて出来るものだと思うんです。そして観に来ていただいたお客さんに、いい試合を見せなきゃいけないじゃないですか? でもそんな『帳尻合わせ?』とみんなが感じるようなジャッジをしてしまったら『なんだよそれ…』と感じてしまう。

今年から審判団に対して、試合後に意見・報告出来るようになったじゃないですか? だからウチのノーゴールはともかく.「あれはPKではなかったのか?」とは質問するつもりでいます。さっきも話しましたが、負けた場合、判定に不服を唱えるというのは僕が選手に説いている『異議を言わない』の精神に反するので言いませんが、今日はとりあえず勝ったし、相手が被った不利益でもあるので質問するつもりでいます。やっぱり、ジャッジには信頼を置きたいじゃないですか?」

このように、会見とは別の場所で話をしてくた大石監督。

大石監督が言いたいのは、ジャッジ一つで勝った負けた!ではなく、あくまでも「いい試合をお客様に見てもらうために」質問するということ。そして友(安永監督)の本当に意図していた部分がわかっていたからこそ、大石監督も敢えて問題提起をしてくれたのであった。

過去にいくつかのジャッジに対して物議を呼ぶものがあったが、その大半は勝った、負けたや自軍の利益のためという側面が多かったが、今回の『大石提言』は『Jリーグ全体の発展と、ファンを大切にしたい』という思いがあるからこそ。

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こう言ってのけることが出来る、大石監督の器の大きさに感銘を受けるとともに、こんな人として素晴らしい大石監督に指導を受ける藤枝MYFCの選手が羨ましくも見えた。試合内容に関しては、まだまだな部分も多く、観客数動員でも他のクラブよりも劣ってはいるものの、地道にひとつずつ成長する藤枝のクラブの成長を、今後も見守りたい。

2017年3月20日 (月)

宇野沢祐次がもたらす「一体感」

昨日のゲームは3-0で勝利した長野パルセイロ。



スコア的には快勝かもしれないが、流れの悪い時間帯があるなど、改善すべき点もあった。しかし「改善すべき点はある」と言っても、昨年とは意味合いが全く違う。昨年は「どうするべきなのか…」であったが、今年は「もっと良くなるために」という前向きな改善点だ。



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そんな昨日の試合で、最も大きな仕事をやってのけたのは宇野沢祐次だった。昨年は6試合0ゴールと、長野に移籍してからワーストの成績で終わり、周囲どころか本人すらも「終わり」を覚悟した。しかしGMとして帰ってきたミノさんは「このクラブに絶対必要な男であり、彼抜きのクラブはありえない」と考え、今季も契約を結ぶに至った。



開幕戦こそベンチ外であったが、ホーム開幕戦となったこの試合では、満を持してのベンチ入りとなったウノ。そして71分、ついに出番の時がやってきた。しかしこの時間帯は、ラインを上げられず相手に押し込まれる苦しい展開が続いていた。こんな難しい時間帯だからこそ、ベンチは「ピッチ上に安定をもたらしたい」と考え、ウノの投入をチョイスした。



浅野監督も「彼がいるといないでは全く違います」と試合後に話したとおり、宇野沢投入後の長野は変わった。ベンチとしては当然ゴールという結果も欲しいところであったが、それ以上に「安定、安心」をもたらすことをまず求めたが、選手はウノの登場により、間違いなく「スイッチ」がはいった。そしてピッチの選手を後押しするサポーターも、宇野沢登場にボルテージは一気に上がった。そして登場から6分後に、宇野沢自身だけではなく、このクラブに関わる人、全てが待ち望んだシーンを迎えた。一度は跳ね返されたシュートを再び押し込み、約1年9ヶ月ぶりのゴールがホームスタジアムで生まれた。

ピッチ上の選手は「ウノさんがゴールを決めたんだから、絶対にこのまま勝つ!」と、それぞれ強い気持ちを持ったし、それにより厳しい時間を乗り越えることも出来た。さらにその結果として、最後に佐藤悠希のゴールも生み出すなど、ベンチが想像した以上の効果を生み出した宇野沢投入。

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しかしこれこそが、美濃部GMが「必要な選手」と言った根底にある部分でもある。彼は単なるストライカーなのではない。このクラブにおいては、唯一無二の精神的な柱でもある。彼が練習であろうと、試合であろうと、ピッチに立てば空気は変わるもの。昨年のことについては、もう今更なのでなにも言わない。ウノにしてもチームにしても「そんな時間はあるもの」なのだから。しかし今は、美濃部GMも浅野監督も「いるだけで空気を変えられる選手」と考えている。スタメンで使うのか? それとも今回のように「スーパーサブ」としての起用になるかはわからない。しかし監督にとっては、背番号10は特別な存在であり、どんな時でも「やってくれる」という強い信頼がある。

確かに冒頭に書いた通り、決していい内容ではなかったこの試合。しかし、宇野沢という柱が苦しい状況で入ったことで、チームに今年のスローガンである「一体感」というものが生まれた長野。宇野沢祐次の復活とともに、今年の長野は「違う」ということは確実にアピールできたはずだ。

2016年5月 4日 (水)

フェアプレーの大切さ

昨日の町田ゼルビアvsFC岐阜であった「こんなこと」を少しお話しさせてもらいます。



後半に入って両チームとも接触プレーが増え、テレビに映らないというか、音声が拾わない部分でそれなりにバトルが起きそうな伏線がいくつかあった。そして後半30分ぐらいの時に岐阜陣内のコーナー付近に町田が攻め込んだ際に、ボールを持っていた谷澤に阿部がキッついチャージをかました。

この場面、阿部はファールを取られたが、両者が倒れた際に言い争いになり、ちょっと荒れそうな雰囲気になりましたが、そんな場面にベテランGKの高木義成選手がうまく割って入り、まずは谷澤を「まあまあ」となだめて落ち着かせ、さらに阿部にも冷静にやり切ろうと声を掛け、荒れることなくその場をうまく収めてくれた。

それにしても高木選手だが、後半開始直後のハイボール処理でガツンと体を当てられ、左太腿をかなり強打していたし、さらに町田サポからも「早く立てよ」と言う声が出る中で、彼自身だって「イラッ」となってもおかしくはなかったが、なんとか立ち上がり、手だけの動きだけではあったが、町田サポに「まあまあ、早く立つから大丈夫」と意思表示してたのは実に素晴らしいこと。

こんなことがあったら、あのファールの時点で止めに行くどころか、カッとなって走って行ってしまう選手もいるだろうが、あくまでも冷静に、フェアプレーで試合をやり切ろうとする彼の姿勢にちょっと感動。さらにゴール裏にいたボールボーイにも何度か気さくに語りかけ、「今jrユースなの?」とか話しかけていた高木選手。

ちょうど先日、カマタマーレ讃岐の北野監督が、レフリーの誰か(副審か第四審判のどちらからしい)が担架要員に向かって暴言に近い言葉を掛けたとか、そのことについて嘆いたばかりであった中での高木選手の声かけは、改めて「プロ選手は憧れの対象にならないといけない」という大事なことを示してくれたと思う。

たぶん高木選手にとって、特に気にしたことでもないだろうし、普段からやっていることなのだろうが、正直なところ、それができていない選手は多いし、フェアプレーに対しての考え方だってあいまいな選手がいることも否定できない。だからこそ、プレーは熱く、頭の中はクールで!とよく言われるのである。

「のうこうおじさん」という、ユニークなキャラとしても知られる高木選手だが、これからも自分らしいプレーを続けて欲しいし、これからプロを目指す子供たちが憧れる素晴らしい選手であり続けて欲しいと願います。そして高木選手のスタイルというものが、多くの選手に伝わって欲しいとも思います。

2016年4月14日 (木)

新たなる挑戦に出た神川監督

先日の日曜日、やっと今季のグルージャ盛岡を見ることが出来た。

今シーズンのJ3リーグで、実は最も注目していたのはグルージャ盛岡であった。そして、なぜ注目かと言えば、関東大学リーグ、そしてインカレなどを制し、天皇杯では次々とJクラブを打ち破った学生サッカー界の名門、明治大学サッカー部を率いた、神川明彦氏が監督に就任したからである。

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明大サッカー部監督時代、「いい素材なんだが、あともうひと伸びすれば…」という選手たちを、何人も見事な選手に育て上げ、明大全盛期を確立した名将であり、大学サッカー界の主人公の一人でもあった神川明彦氏。そして大学サッカー界と言えば、流経大の中野さん、駒大の秋田さん、福大の乾さんなど、ロングランで指導を続ける名物監督が多く、神川監督もそんな先人たち同様に「永久監督」として明大に関わり続けるかと思われた。しかし、S級ライセンス取得でチームから離れる時間も増え、肩書きも「総監督」に代わり、ユニバーシアード代表監督に就任する際には、大学側に「休職届」を提出するなど、退路を断つ覚悟で次なる展開を模索していた。

そして神川監督は昨年11月、学生時代から合わせて30年という、長い月日を共にした明治大学に別れを告げ、J3リーグ・グルージャ盛岡の監督に就任という驚きのニュースが飛び込んできた。昨今ではプロ選手経験者のない人や、プロクラブでの指導歴の少ない人が就任することも珍しいことではなくなって来たが、元桐光学園の佐熊監督のプロ挑戦以来、久々に学生サッカー指導者からの挑戦者が現れた。明大サッカー部という、慣れ親しんだ場所から「立場を追われた」という訳ではなく、本人が望めばその立場は永久でもあった。しかし神川明彦は、その立場に甘んじるのではなく、チャレンジという新しい一歩を選択した。 だからこそ、この機会に「なぜそんな選択にたどりついたのか?」を聞きたかったし、メイジ全盛期を作り上げた監督が、お世辞でも強いチームとは言えなかったグルージャを、どう変えて行こうとするのかこの目で確かめたかった。

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さて、注目していた神川グルージャの新シーズンだが、ここまで3試合を終えて勝ち星ナシで最下位に沈んでいた。そして迎えた相模原でのアウェイゲームだが、結果的にスコアレスドローに終わり、この日も初勝利を挙げることは叶わなかった。しかし、貴重な勝ち点1を手にしたことで最下位脱出に成功したが、そんなこと以上に、この日見せたグルージャのサッカーは、大いに可能性を感じさせたことは勝ち点以上に大きな収穫であった。 J3に参入して3シーズン目のグルージャだが、これまでのサッカーは「どうすれば対応出来るか?」を考え抜いたリアクションサッカーをベースにやって来た。しかし神川監督はこのクラブでも、明大でやってきたハードワークしながら高いラインを保ち、自分たちが積極的にアクションを起こし、「繋いで崩して」を繰り返すサッカーを盛岡でもやろうとしている。

しかし、グルージャというクラブは間違いなく明大サッカー部の環境よりも劣る。練習環境もそうだが、ユース年代で名を馳せ、プロにも行けたのでは?と言われるような逸材が集まった明大サッカー部とは違い、グルージャはまさに雑草軍団である。神川監督が就任したからと言って、すぐにあの時代と同じような強いチームになる訳ではない。たが明大時代もそうであったが、名将と言われる裏には戦術論以上に、モチベーターとしての力量も見逃してはいけない。この日もいい流れを何度も作り、決定的場面を何度も作り出したが、なかなか得点を奪えない。そんな中で自信を失いそうになる選手に「やり切れ!」と声をかけ続けた。

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いろいろなカテゴリーを見る中で、カラーの違う監督を何人も見てきた。試合中も寡黙な表情を崩さず微動だにしない人、感情を露わにして動き回る人、状況を判断してその都度細かな指示を出す人、すぐに怒ってしまう人…本当に監督とは十人十色。そんな中で神川監督は、感情が出るタイプではあるが、決して怒り散らす人ではなく、厳しい時間帯でも選手と一緒に戦い、そして檄を飛ばす熱血指揮官でもあり、言うなれば司令官として上からクールに見るのではなく、部下とともに前線で共に戦う部隊長のようなタイプ。だからこそ、明大監督時代から惹きつけられてきたが、プロ監督になってもそのスタイルに変わりはなかった。

しかし、まだ神川グルージャは結果を出てはいない。だがチームは限られた戦力の中で、しっかりと成長の爪痕を残し始めていることも確かだ。ただ守って、長いのを前線に入れるだけからの脱却も進んでいるし、明大時代から、フェアプレーの徹底を説いてきた神川監督のチームらしく、レフリーに何度も異議を唱えた相模原の選手とは対照的に、グルージャの選手には そのような場面はなかった。確かに、4試合を終えての勝ち点はまだ1。だが神川新監督の下、新しいグルージャは「こういうサッカーをやるんだ」というものを、しっかり表現し始めている。 そしてもう一つ、プロ監督してやりたいこととして挙げていた、クラブの土台作りというものにもトライしようとしている。

グルージャというクラブが、盛岡や岩手という土地で根を張るにためには、まずしっかりとしたサッカーをやることが大事と考え、トップチームの改革に乗り出しているが、それと同時に学生を指導してきた監督らしく、育成にも力を入れるべく下部組織の整備に対しても余念がない。 このように、トップチームの強化を図りながら、下部組織の整備も進めるとなると、これは1年や2年で済む話ではない。そう考えれば、今の時期は目先の結果ではなく、まずサッカーの「質」というものに注目してあげたいところ。そして神川監督は「もう少しメイジの香りがするサッカーをやりたいし、それを体現できる選手は欲しいよね」とも語ってくれているので、これから先は、より「神川色」が強まっていく補強状況にも注目していきたい。

さて最後に、なぜ明大監督という「安住の地」を捨て、環境的、財務的にも万全ではないグルージャ盛岡の監督という立場を選んだのかを、神川監督に直接伺ってみた。

『長い間、僕は本当に“明大”という場所で、いろんな人に世話になってきましたが、最近になって僕は自分が育てた選手たちから「教わること」がたくさんあったことに気がついたんですね。長友なんか、今や世界のスター選手じゃないですか? でも彼はそんな座に甘んじることなく、常に前向きにチャレンジしている。長友だけじゃなく、多くの教え子たちもどんどんチャレンジしていますが、そんな姿を見て「人にはチャレンジしろと言って、じゃあ自分はいったい何をしているんだろう…」と。そこからですね、自分も新しいことにチャレンジしなければいけない!と思ったのは。

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それがきっかけで、S級にチャレンジしようということから始まりました。しかし最初に受講を希望した2009年は、受講する前に行なわれる受講者選考の段階で落ちました(笑)。そして大学2冠や天皇杯でのJクラブ撃破を経て、やっと2011年に受講することが出来ましたが、久しぶりに「教える」から「教わる」立場に変わるとうまく行かない(笑)。その際には恥ずかしい思いも沢山したし、インストラクターの方にはいろいろ迷惑をお掛けしてしまい、出来の良い受講生とは言えなかったと思います。まあそれでも、なんとかS級を取得出来ましたし、その後はユニバーシアード監督などを経て、明大以外での活動も増え、さらにチャレンジしたいというか、次の仕事をどうしよう? という時期を迎えていたときに、幸いにもいくつかのオファーをいただくことが出来ました。

そしてその中には、グルージャ盛岡の副社長である平川さんからも連絡もありました。その後、それぞれのお話を伺いましたが、僕は都心部のクラブではなく、まだこれからという地方クラブで、トップチームの指導だけではなく、アカデミーも含めた土台作りもしたいと考えていたので、グルージャさんのオファーが一番自分の理想にマッチしていたこともあり、今回監督という職を受けさせていただきました。 まあ、大学の指導者と言えば、長く勤めている方も多いですが、僕のような変わり者がいてもいいと思うし、他の学校の指導者の中でも同じような夢を持っている人もいるからこそ、やってみようと思ったし、僕が一石を投じることにより「神さんがやれるなら、じゃあ続いてみたい!」と思ってくれることも期待しているんですよね。

まあチームとしてはまだまだですが、全員がハードワークしながらもフェアプレーをモットーに、魅力的なサッカーをやれるクラブにしていきますので、今後もよろしくお願いいたします!』


このように語ってくれた神川監督。

本来であれば、明大監督として、安定した生活も約束されていたはずなのに、敢えて「チャレンジする」という、冒険に出た。確かに全ての環境が揃っているメイジに比べ、盛岡では苦労することも多いだろう。しかし、ただチームを強くする監督という役割だけではなく、地域の活性化や新しい世代の育成というように、GM的役割にも関われるこの地は、彼にとってまさに「願ったり叶ったり」の場所でもあったのだ。

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まだもう少しの間、苦労が続く時間になるだろうが、クラブもサポーターも長い目で、神川明彦の挑戦を見守って欲しいところでもある。

2015年3月26日 (木)

ほろ苦となった新スタジアム初戦

2015年 明治安田生命J3リーグ 第2節
長野パルセイロ 1-2 SC相模原


長野パルセイロにとって、この日の試合はただのホーム開幕戦ではなく、待ちに待った『特別な日』であったのだが、結果はなんともほろ苦いものとなってしまった…


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試合を振り返る前に、少しクラブの歴史に触れたいが、JFLに昇格した2011年から2位、2位、優勝と、常に優勝争いを演じて来た長野パルセイロ。そして2012年までのJFLでは、J準加盟クラブになり、その上で原則4位以内に入ればJ2昇格が可能であった。


そう、長野パルセイロは成績面では2011年から毎年ノルマをクリアしていたのだが、ホームスタジアムである南長野総合運動公園球技場 が、Jリーグが定める『J2基準』を満たしていないため、J2参戦にこぎつけることが出来なかった。そしてスタジアム建設がスタートした2014年シーズンは、優勝でも2位でもいいから、昇格することだけが目標だった。そしてJ2に上がったと同時に、新スタジアムのお披露目と行きたかったのだが、その悲願を達成することが出来ないままシーズンを終えてしまった。


J2に上がれなかったことは残念であったが、クラブ、選手だけではなく、サポーターにとっても待望の『我が家』が完成したことは、やはり嬉しいことであり、期待感もより高まるものだった。そしてスタジアムの各所には、これまでチームの歴史を作って来た選手たちの幕が貼られるなど、レジェンドたちへのリスペクトを忘れない、サポーターの粋な演出が新スタジアムに華を添えてくれた。


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そして迎えた試合だが、いきなりチャンスをつかんだのはパルセイロだった。試合開始直後、右サイドの金久保から中にクロスが入る。一旦は流れるかと思われたボールだが、佐藤悠希は躊躇なくオーバーヘッドでこのボールに反応すると、シュートは見事にゴールに吸い込まれて行った。新スタジアムでの初戦という記念すべきこの試合で、開始わずか1分(公式記録上は2分)で生まれたファーストゴールは、この日を待ち望んでいた全ての人が興奮するような、スーパーゴールという劇的すぎる形で飛び出した。これ以上ない『南長野劇場』の幕開けだった。そしていきなり先制点を奪った長野は開幕戦のフラストレーションを吹き飛ばすかのような動きを見せ、序盤は試合を優位に進めて行く。


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たが、新監督に経験豊かな辛島啓珠氏を招き、さらには町田と並んでJ3リーグとしては充実度の高い補強を成功させ、チーム力を昨年終盤とは比べようもないほどアップさせた相模原はそんな展開でも慌てることはなかった。今季から完全移籍で晴れて相模原の一員になった高原に、清水からレンタルでやって来た樋口、そして経験値の高い森など、J3としては別格な選手も揃えたこのチームだが、シーズン前のトレーニングマッチで最も目立っていたのは、岐阜から新天地を求めてやってきた須藤右介だった。


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これまでの相模原と言えば、高原ばかりに注目が集まっていたが、サッカーの本質的には地域〜JFL時代に培われた曽我部や菅野(現長野パルセイロ)がサイドで起点となる攻撃的サッカーが持ち味とも言えた。しかし今シーズンから就任した辛島新監督は『バランスの取れたサッカー』を掲げ、これまでのサッカーからさらに上を目指そうとする中で、須藤という新戦力は戦術的にも高原や樋口以上に存在感を増して来ている。後ろから蹴って素早く前に押し上げるのではなく、中盤でタメを作ってから、押し上げのタイミングをしっかり作り、そこからアクションに移行するコンセプトが、トレーニングマッチから浸透していた。そしてCBもこなせる彼が前で体を張ってくれるからこそ、相模原の最終ラインは落ち着いて対応することが出来たのだ。


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劇的すぎるオープニングゴールだったが、『前の試合でチャンスでも消極的過ぎだった。だからこそ、無理やりでも打っておこうという』という、佐藤の積極性が生み出したゴールであり、GKの佐藤健は『まさか打って来るとは…』と思い返しくれたあのゴールは、崩した上での必然ではなく、佐藤悠希の積極性が生み出した偶然でもあった。だからこそ、最初は押し込まれた相模原だったが、時間の経過とともにじっくりボールをキープして、前に出やすい状況を作る自分たちがやるべきサッカーを取り戻し始めた。それに対しての長野だが、須藤、トロがボールを持った時に2トップのどちらかはプレスに行くが、3ボランチの中で『誰が行くのか?』の判断が常に曖昧であった。そして前線にボールが収まったとしても、やはりその場面で『誰が行くのか?』が曖昧であり、この部分(中盤の完成度ではなく)でのコンセプトが相模原より劣っていたことにより、同点ゴール、そして仙石の退場にも繋がっていってしまう。


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内容的に言えば、これ以上ない形でスタートしたはずだったこの試合だが、終わって見れば1-2と逆転負け。それも相手との完成度の違いを見せられた上での完敗だった。仙石の退場がなければ…と思う人もいるかも知れない。だがそれは明らかに違うと言える内容でもあった。スタッツを見ると長野のシュート数は結果的に相模原を上回る8本を放った。しかしそのほとんどは、終盤のパワープレーが生んだものであり、相手もその流れを見極めた守備をしていたので、相手から見て驚異になるものではなかった。そして退場となった2枚目の警告シーンだが、これは妥当なジャッジであったと言えよう。そう考えれば、今季は『中盤の要』として期待されている仙石だからこそ、前半ですでに1枚貰っている状況を考えながら、もう少し冷静にプレーして欲しかったところでもあった。


そして試合後、地元メディアは美濃部監督に対して『待望の新スタジアムでの開幕戦で、先制点が取れたし、若い選手も出場するなど収穫もあったかと思いますが…』と言う質問を投げかけた。しかし監督は至って冷静にこのように答えてくれている。


『結果から考えたら、収穫は少ないと思うし、内容にしても収穫は少なかったです。今は自分がイメージしてるサッカーと、全然かけ離れた内容になっているので、なんとか立て直さないといけないと感じています。そう考えれば、今日の試合からの収穫というものは無かったと感じます』


まあ、予想していた通りの返答だった。何かいいコメントが欲しいのはわかるが、あの内容で「いい動きが出来ている」とか、「方向性は間違っていない」と返事が返って来たら心配になるが、そこはさすがに美濃部監督。正しく現状を分析しているのだ。


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補強により、戦力差があるのは仕方のない部分でもあり、『それを今すぐどうにかしろ』と言うのも無理な話。そしてその戦力差というものは、戦いながらチーム力を高めて行くしかないものでもある。だからこそ、その部分に対する批判は不要だと思うのだが、チームの方向性やコンセプトが見えないのは非常に難しい問題でもある。要はこの2試合で『2015年の方向性』が見えてこなかったのがもどかしいのだ。町田戦で見せた粘り強い守りは、今シーズンのベースになるのかと思われたが、この日は素早く展開しようとした町田とは違いを、緩急をつけながらしっかりボールを繋ごうとする相模原に対して、『やるべきこと』がまるで見えなかった。


別に勝てなかったから、チームを批判しているという訳では無い。今年は『最後までもつれるであろう』と見ているからこそ、チームにはイケイケとか『なんとなく』ではなく、地に足をつけた『方向性のあるサッカー』をやってほしいのだ。だからこそ、序盤に勝てない試合があっても仕方が無いと見ているのだが、その中で『何がやりたいのか見えない試合』というものをやられてしまったら、それはたまらない…


美濃部監督とは中盤のシステムや、プレスの位置などの話などをさせてもらったが、『次節は仙石が出場停止と言うこともあり、人の入れ替えをすることになるし、今のチームに一番いいと思われる形を模索することもいいかもしれない』と答えてくれている。


『焦ることはない』と言っても、方向性やコンセプト、そして選手それぞれの動きだしのタイミングがズレたままだと、時間だけが無駄に過ぎてしまうことになる。当然ながら、対戦相手からマークされる存在であることに変わりはないし、その上で相手も戦力を高めている。だからこそ難しい戦いが続くことになるのだが、その中で走る、動くという『基本』の部分で負けてしまったら勝てる試合も落とすことになってしまう。


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エースがいないから? 退場者がでたから? それを言い訳にしていてはいけない。華麗さや理想を求めるより、今は泥臭く走り抜いてしぶとく勝ち抜くしかないのである。そして華麗なパルセイロ、理想を追い求めるパルセイロは、昨年12月の讃岐で捨ててきたはず。そう、獅子は千尋の谷から駆け上がるしかないのである。12月、讃岐に現実を見せつけられ、そして今、自分たちがやるべきサッカーすら見失いかけている長野パルセイロ。だが、そこから這い上がるだけの力は間違いなくこのクラブにはある。もう一度、しっかり自分たちの現状を見つめなおした上で、藤枝のピッチでは華麗さではない『激しさ』もある『獅子の戦い』を期待したいところだ。

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